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ゲーム進捗(シナリオ公開)

シナリオの続きです。

これから立ち絵やその他のCGなど混ぜながら、体験版の範囲まで公開していきます。


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//(綾乃視点)

綾乃(ふふ、まさか覆井君の甥っ子さんだったなんてね~……凄い偶然じゃない? なんだか懐かしいなぁ……)[]


西木君の顔を見ていると、あの頃のことが鮮明に思い出される。[]


学生時代の私は体が弱く病気がちで、クラスにも馴染めず浮いた存在だった。[]


一人で過ごしていることが多く、そもそも誰かと話すことも皆無だった気がする。[]


その日も一人、中庭でお昼を食べていた。[]


綾乃「ん……?」[]


すると食べ終わるぐらいのタイミングで、妹の椎菜から電話がかかってくる。[]


綾乃「……もしもし?」[]


椎菜『あ、お姉ちゃん? いま大丈夫?』[]


綾乃「うん、大丈夫だよ」[]


椎菜『よかった。 調子はどう? ちゃんとご飯食べてる?』[]


電話口の妹の言葉に私は苦笑いを浮べる。[]


妹の椎菜はこうして、私を心配して電話してくることが多かった。[]


綾乃(どっちが姉か分からないな)[]


でも、そんな妹の気遣いは嬉しかったし、誰かと話せるのも嬉しかった。[]


椎菜『何かあったらすぐ連絡してね? 我慢しちゃ駄目だからね、お姉ちゃん?』[]


綾乃「分かってるよ、大丈夫だから……ふふ」[]


まるで姉の様に心配する妹に苦笑いしながら顔を上げると、そこを通り過ぎる男子のグループが目に止った。[]


綾乃(あ……)[]


妹との電話に集中していて、彼らが歩いていることに全く気付いていなかった。[]


その中の一人が私のことを見ていて、慌てて妹との電話を切る。[]


綾乃「そ、そろそろ教室に戻るからっ……また電話するね……!」[]


椎菜『え? あ、うん。 じゃあ、またね!』[]


俯きながらそう電話を終えて顔を上げると、まだ彼は私のことを見ていた。[]


男子「皆藤さんって、そんなふうに笑うんだね。 凄く可愛いんだから、いつも笑ってたらいいのに」[]


綾乃「っ……!?」[]


いきなりそんなことを言われて顔が熱くなった。[]


彼はそれだけ言うと、軽く手を上げて去って行ってしまう。[]


先に進んでいた他の男子のグループに追い付くと、楽しそうに笑顔で話していた。[]


綾乃(あれって……同じクラスの覆井晴斗君……だよね……?)[]


話をしたのも初めてだけれど、可愛いなんて言われたのも初めてだ。[]


あまりにも衝撃的な出来事に、私はお昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴るまで、その場で固まってしまっていた。[]


それからというもの、私は覆井君のことを意識するようになっていた。[]


教室でもつい視線の端で姿を追ってしまうし、彼の声に耳を傾けてしまう。[]


綾乃(明るくて、爽やかで……背も高くて、バスケ部でも活躍してて……クラスでも人気があって……なにもかも、私とは違う……)[]


教室でも一人で過ごしてる私とは違って、彼の周りには常にクラスメイト達がいた。[]


晴斗「皆藤さんって、いつも本読んでるよね? どんなのが好きなの?」[]


綾乃「っ……ミ、ミステリー……とか、恋愛物とか……」[]


晴斗「へぇ、そうなんだ。 僕はマンガばっかりだからなー」[]


綾乃「わ、私もっ……マンガも読むよ……」[]


晴斗「そうなの? どんなどんな?」[]


そんな彼の方から、クラスでも気さくに話しかけてくれるようになった。[]


最初は緊張してまともに会話にもならなかったのに、段々とそれに慣れてきて、自然に話せるようになってくる。[]


するとそれを見て、他のクラスメイトも話しかけてくれるようになって、気が付くとクラスにも自然に馴染んで友達も出来ていた。[]


晴斗「皆藤さん、この前のテストどうだった?」[]


綾乃「数学がちょっと……後はそれなりに」[]


晴斗「そっかぁ、やっぱ頭いいよなぁ」[]


綾乃「そんなことないけど……ふふ」[]


廊下で擦れ違うだけでも挨拶してくれたり、軽い冗談を言って笑わせようとしてきたり。[]


私も段々と晴斗君に気を許すようになって、それが恋心なんだと気付くのに、それほど時間は必要なかった。[]


だけど地味な私なんかじゃ、クラスでも人気者の晴斗君には釣り合わない。[]


仲良くして貰えるだけで十分なんだと、そう自分に言い聞かせながらの日々だった。[]


だから憧れるだけで何も言えず、そのまま月日は流れて卒業式の日──[]


晴斗「あ、まだ教室に残ってたんだ?」[]


綾乃「あ……う、うん……」[]


卒業式の後、何となく一人で教室に残っていると、そこに晴斗君がやってきた。[]


晴斗「僕たちもこれで卒業なんだね~」[]


綾乃「そう、だね……」[]


晴斗「なんかあっと言う間だった気がするなぁ。 皆藤さんは?」[]


綾乃「私も……そんな気がする」[]


本当に他愛もない会話だった。[]


いつもと変わらない、本当に普通の会話で、だからこそ嬉しく思えた。[]


晴斗「……じゃあそろそろ行くよ、また会おうね、皆藤さん」[]


綾乃「うん……」[]


話が途切れたところで、晴斗君はそう言って教室を出て行く。[]


また会おうと言ってくれたけれど、もう二度と会えないかもしれない。[]


そう思うと、私はどうしても最後に思い出が欲しかった。[]


綾乃「あ、あのっ……!」[]


晴斗「ん……?」[]


綾乃「あ……さ、最後に、その……握手……して欲しいなって……」[]


晴斗「……うん、いいよ! と言うか、僕もしたかったんだよね……皆藤さんに先を越されちゃったかな」[]


晴斗君はそう言って笑いながら、また私の元に戻ってきてくれた。[]


そして私の手を両手でギュッと握ってくれる。[]


晴斗「絶対、また会おうね」[]


綾乃「っ……う、うん……うん……!」[]


初めて触れた晴斗君の手の温もりに、頭の中が真っ白になりかけていた。[]


手の平に伝わってくる温もり以上に顔が熱くなってくる。[]


もう何もかもがいっぱいいっぱいで、それからどんな言葉を交わして、どうやって別れたのか覚えていない。[]


ただ、その後もずっと私の手には、晴斗君との握手の感触が残り続けた。[]


また会おうなんて、たぶん社交辞令のようなものだったんだろう。[]


それでも私は卒業してからもずっと、いつかどこかで再会できるんじゃないかと、そんな幻想を抱き続けていたのだった。[]


綾乃(あれから何年になるのかな……)[]


結局、晴斗君とは再会できないまま、私は就職し、結婚をして、子供を産んだ。[]


晴斗君とのことは、ずっと私の中に思い出として残っている。[]


綾乃(あの頃は純粋だったなぁ……ふふ)[]


もう思い出の中でもかなり奥の方にしまっていた感情が、再び甦ってきていた。[]


初恋の甘酸っぱい記憶と共に。[]


綾乃(晴斗君はどうしてるのかな……西木くんに聞いてみようかな?)[]


もしかしたら、それが切っ掛けでまた会えるかもしれない。[]


綾乃(なんてね……ふふ、それにしても晴斗君と同じことを言うから、ビックリしちゃった……可愛いなんて歳じゃないのに)[]


晴斗君のあれが社交辞令なら、西木くんのはお世辞だろうか。[]


茜「お母さん、なにか良いことあったの? ずっとニコニコしてる~」[]


綾乃「ふふ、ちょっとね~」[]


娘の茜に指摘されて初めて、西木くんの言葉に浮かれていたことに気付かされる。[]


恥ずかしくて顔が赤くなりそうだった。[]


//(砂生視点)


レストランでのアルバイトにも慣れてきた頃、僕の仕事中に東雲さん一家がやって来た。


砂生「ご注文はお決まりでしょうか?」


同じ職場で働いているとはいえ、今は店員とお客さんの関係だ。


ちゃんと丁寧に対応していると、綾乃さんが笑みを浮べる。


綾乃「お疲れ様、今日は忙しそうね?」


確かに今日は客足も多くて、スタッフは大忙しだった。


砂生「そうですね、お客さんが途切れなくて大変です。 もうヘトヘトで……助けて下さいよ、東雲さん」


綾乃「ふふふ、今日はお休みだからダメ~。 お仕事頑張ってね、西木くん」


まあ、本当に手伝って貰えるとは思っていない。


綾乃さんが軽い感じで話しかけてくれたから、その雰囲気に乗って言葉を交わしただけだった。


砂生「ご無沙汰してます。 ご注文はお決まりですか?」


綾乃さんの向かいに座った旦那さんにも注文を聞く。


東雲「へ……? あぁ……えっと……ん?どっかで会ったっけ……?」


旦那さんは僕の顔を覚えていないようだった。


砂生「えっと、ちょっと前にアパートの前でお会いしたんですけど……」


東雲「アパートの……?」


そこまで言っても、まだ思い出せない様子だ。


綾乃「ごめんね、この人ってすぐ顔を忘れちゃうのよ。 あなた、お隣に越してきた西木くんよ。 ご挨拶したんでしょ?」


東雲「……あー……そうだったような気がしないでもないなぁ……はは、悪かったね」


砂生「い、いえ……」


静真「改めまして、綾乃の夫の静真です、よろしく」


砂生「あ、西木砂生です、よろしくお願いします」


なんだかのんびりした感じの旦那さんだけど、悪い人ではなさそうだ。


今度はちゃんと顔と名前を覚えてくれるといいな。


そんな話をしていると、店長がこちらに気付いて視線を向けてきた。


砂生(あ、マズイかな……)


仕事中に綾乃さんと話し込んでいるように見られてしまっただろうか。


お店は混んできているし、慌てて全員の注文を受け取る。


砂生「ご、ご注文は以上でよろしかったでしょうか?」


綾乃「うん。 ごめんね、呼び止めたりしちゃって? 後で私から店長に言っておくね」


砂生「は、はい」


僕は急いで受け取った注文を厨房に通した。


砂生「ふぅ~……」


店長「西木君。 仕事中に私語は慎むようにね?」


砂生「っ……!? は、はいっ……すみませんでした!」


するとそこに店長がやってきて、さっきの様子を注意されてしまった。


それから暫くして、東雲家の会計も僕がすることになった。


砂生「お会計は三千六百五十円になります」


茜「ね~お母さ~ん! 早く~! お父さん行っちゃったよ~」


綾乃「ちょっと待っててね~、えっと……ごめんね、細かいのがなくって」


砂生「大丈夫ですよ。 四千円お預かりします」


やっぱり家族連れだと色々と大変なんだな。


娘さんに急かされながら、綾乃さんは苦笑いで会計していた。


砂生(でも、こんなに優しいお母さんなら、べったりになっちゃうよな……)


僕も綾乃さんの子供だったら、同じように甘えていただろう。


砂生「三百五十円のお返しになります」


綾乃「ありがとう。 じゃあ、西木くん頑張ってね。 私も明日は同じシフトだから、よろしくね」


砂生「はい、ありがとうございます」


綾乃さんはそう言って、ニコニコと笑顔で手を振りながら、娘さんと帰って行った。


旦那さんはとっくに帰ってしまっていて、店の外で待ってもいなかったようだ。


砂生(明日も一緒に働けるのか~……)


そう考えるだけで、何だか頬が緩んできてしまう。


どうやら僕は自分でも気付かないうちに、綾乃さんに対して好意を抱いてしまっているようだ。


砂生(もしかして……綾乃さんのことが好きに……? いやいや、綾乃さんは人妻だし……父親と歳だってそんな大きくは違わないのに……)


叔父さんと同級生なんだから、父親より二歳年下ということになる。


確かに、そんな歳には見えないぐらい若々しくて美人だけれど、でも人妻であることには違いない。


砂生(まさか、そんな……だけど……僕が綾乃さんのことを……)


これまで僕は、自分の同世代に対してしか恋愛感情を抱いてこなかった。


周りに歳上の女性なんていなかったし、意識するような相手もいなかったから当然だ。


だけど僕はいま、綾乃さんのことを凄く意識している。


でもそれが本当に恋愛感情なのかどうか、まだ確信は持てなかった。


そして翌日、綾乃さんと同じシフトで仕事をする。


するとどうしても意識してしまって、手が空いた時にはつい綾乃さんの姿を目で追ってしまっていた。


砂生「……」


やっぱり綺麗だし、それにお尻と胸が凄く大きい……


仕事中は笑顔を絶やさなくて、明るくニコニコしているのも良い。


同僚「ちょっと西木くん、鼻の下伸ばしてないで働く!」


砂生「っ……は、鼻の下を伸ばしてなんて……!」


同僚「東雲さんのこと見て、ニヤニヤしてたでしょ!」


そんなふうに綾乃さんのことを見ていたら、他のパートのおばさんに注意されてしまった。


笑顔で言われたところをみると、どうやらからかわれたらしい。


同僚「しっかり仕事して、格好良いところ見せなさい!」


パートのおばさんはそう言って、僕のお尻を叩いて去って行く。


砂生「は、はい……」


もしかして周りから見ても分かり易いくらい、表情に出ていたんだろうか。


だとしたら気を付けないと、綾乃さんにも変に思われてしまうかもしれないな。


そして休憩時間になると、たまたま綾乃さんとタイミングが重なってしまった。


もちろん客足が落ち着いてきたタイミングだということはあるけれど。


砂生(綾乃さんと休憩かぁ……)


そんなふうに思いながらドアを開けると、たまたまそこに立っていた綾乃さんとぶつかってしまった。


綾乃「きゃっ……!?」


砂生「あっ……ご、ごめんなさい……! 痛っ……」


綾乃さんの方にダメージはなかったようだが、僕は鼻の頭をぶつけてしまった。


綾乃「えっ!? だ、大丈夫!?」


すると綾乃さんは慌てた様子で僕の頬を両手で包み込み、鼻の様子を見ようと顔を近付けてきた。


砂生「!?」


いきなり目の前に心配そうな綾乃さんの顔が現われ、一気に心拍数が上がってしまう。


綾乃「あ~……赤くなっちゃってるね……ちょっと待っててね!」


砂生「あっ……」


綾乃さんは僕の顔から手を離し、自分のハンカチに冷凍庫の氷を包んで、それを僕の鼻に当ててくれた。


綾乃「冷やせば大丈夫だと思うけど……痛い?」


砂生「い、いえ……これくらい大丈夫です……」


綾乃「そんなわけないでしょう、こんなに赤くなっちゃって……可哀想に……ごめんね?」


砂生「そんな……僕が不注意だっただけですから……」


綾乃さんの柔らかな手の感触や、柔軟剤の少し甘い香り、そしてそこに微かに感じられる綾乃さんの体臭。


そして間近で呼吸を感じていると、どんどん自分の顔が熱くなってくる。


綾乃「だ、大丈夫!? 顔まで真っ赤になって……! 病院に行った方が……!」


砂生「いやっ、大丈夫! 大丈夫ですからっ……! 全然、そんなんじゃなくて……!」


綾乃さんが顔が近すぎてドキドキしてるなんて、そんなこと言えなかった。


綾乃「本当に……? でも……ごめんね、痛かったよね……っひぃっっっ!!?」


僕を心配してくれていた綾乃さんが、いきなり素っ頓狂な声を上げてドアの方を見た。


砂生「!?」


慌ててその視線を追うと、ドアに一匹のゴキブリが。


綾乃「きゃあぁっ! ゴ、ゴ、ゴ、ゴ、ゴキッ……!」


悲鳴を上げた綾乃さんが、反射的に僕の顔を抱き寄せ、そのまま後退りしていく。


砂生「綾乃さんっ……!? んぶっ……!?」


僕の顔は綾乃さんの胸に埋められていた。


息が出来ない苦しさよりも、その柔らかさや匂いの方で頭が真っ白になる。


綾乃「ゴキ……ゴキ……あああっ……」


綾乃さんはパニックみたいな状態で、ゴキブリに怯え続けていた。


パート「なにか悲鳴が聞こえたけど……あらぁ! 休憩中になにやってんの、綾乃ちゃんってば!」


綾乃さんの声を聞きつけて、パートのおばさんが入ってきてくれた。


なんだか勘違いしているみたいだけれど、今はそれどころじゃない。


綾乃「た、た、た、田浦さんっ! そ、そこっ……! ゴ、ゴキブリがっ……!!」


田浦「ゴキブリ? あー……これねー」


田浦さんはそう言って、穿いていた靴を脱いでゴキブリを潰してしまう。


田浦「本当にもう、綾乃ちゃんはゴキブリぐらいで慌てて~」


綾乃「だ、だって……怖いですよ、ゴキブリ……はぁ、助かりました……ありがとうございます」


田浦「それより、西木君が窒息しちゃうんじゃない?」


田浦さんは潰したゴキブリをティッシュで摘まむと、そのままトイレに流しに言ってしまう。


綾乃「え……あっ! だ、大丈夫!? 西木くん! 西木くん!」


砂生「ぷはっ……! はぁっ、はぁっ、はぁっ……だ、大丈夫、です……」


ようやく息苦しさからは解放されたけれど、まだ気持ち天国にいた。


綾乃「西木くん大丈夫!? しっかりして! あ……鼻血が!?」


田浦「あー……この子、綾乃ちゃんに抱きしめられて興奮しちゃったんじゃない? はははは! 意外とスケベだね~」


綾乃「えぇ!?」


砂生「っ……ち、違うんですよっ……! さっき鼻をぶつけてしまって……!」


綾乃「そ、そうなんです! 私がさっき……って、それどころじゃない! ティッシュ、ティッシュ!」


ようやく我に返った綾乃さんが、ティッシュを鼻に詰めてくれた。


そのまま念の為に長めの休憩を取って休んでいたけれど、残り時間も少なくなってきたところで、早退させてもらえることになった。


砂生「お先に失礼しますー」


もうすっかり鼻血は止ったけれど、まだ少し鼻が痛むな。


綾乃「ちょっと待って、西木くん……!」


鼻をさすりながら帰ろうとしていると、綾乃さんが慌てた様子で追いかけてきた。


砂生「東雲さん……」


綾乃「一人で大丈夫? まだ鼻血が出るようなら、ちゃんと病院に行ってね? 私もパートが終わった後なら、連れて行ってあげられるから」


綾乃さんは本当に心配そうに、僕の頬に手を添えてくる。


砂生「っ……」


また顔が熱くなってくるのを感じて、鼻血までまた出してしまいそうな気がした。


砂生「だ、大丈夫ですからっ……! お先に失礼します……!」


そんな綾乃さんの手から逃れるように、僕は足早に立ち去る。


綾乃「あっ……またね、西木くん……!」


背中から聞こえる綾乃さんの声に、僕は振り返らず手を振った。


砂生「はー……今日は疲れたな……」


色々な事がありすぎて、精神的に疲れてしまった。


特に綾乃さんとは本当に、とんでもない状況になってしまったし。


砂生「綾乃さん……いい匂いがしてたな……凄く柔らかかったし……色々と……」


頬に触れてくれた手はもちろん、顔を埋めてしまった胸なんて、とんでもない柔らかさだった。


砂生「大きかった……うん……」


服の上からでも大きいとは思っていたけれど、実際にその感触を味わってみると、想像していた以上だった。


思い出すだけで、また顔や体が熱くなってくる。


砂生「はー……やっぱり、綾乃さんのこと……」


最近は気が付けばその姿を目で追っているし、ふとした時に綾乃さんのことを考えてしまっている。


やっぱり綾乃さんのことが好きになっているんだろう。


ここまでくると、そう自覚するしかなかった。


砂生「年齢なんて関係ないよな……好きになったら、いくつ離れていたって別に……だけど……人妻なんだよな……」


年の差なんて乗り越えられるけれど、そればっかりは駄目だ。


人妻と恋に落ちるなんて、社会的にも倫理的にも、絶対に許されることじゃない。


砂生「だけど、一回好きになるとなかなか諦められないんだよな……前の彼女だって、あれだけ酷くフられたのに、学校卒業するまでずっと引き摺ってたし……」


だからこうして、一人暮らしをすることにもなった。


それでもやっぱり僕は、好きになってしまった人を、簡単には忘れられそうになかった。


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