引き続き定点カメラの一部シーンです。
短いですが、シナリオを一部公開していきます。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
主人公:砂生(すなお)
砂生「ふぅ……とりあえず、一通り片付いたかな」
引っ越しの段ボールはまだ残っているが、なんとか生活はできそうだ。
砂生「はぁ……独り暮らしかぁ……」
我ながら思いきった行動に出たものだ。
高校の時に付き合っていた彼女に酷いフラれかたをし、
色々と思い詰めた挙句に受験に失敗している。
人間不信のような状態にまで陥って、本当にどうしようもなくなってしまった。
このままでは、ただの引きこもり浪人生になってしまう。
そう思った僕は心配した親戚から声をかけられたこともあり、
家を出てアパートで独り暮らしをすぐことに決めた。
砂生「今日から独りか……」
このアパートは親戚所有の物件で、格安で貸してもらえている。
とりあえずは心機一転、周りに知り合いの居ないこの状況で、
色々と頑張ってみよう。
砂生「…………っと、挨拶しとかなくちゃ!」
引っ越しが終わって、ちょっと気が抜けてしまっていた。
とりあえず隣の部屋ぐらいは挨拶しておこう。
チャイムを鳴らしてもノックをしても返事が無い。
留守のようなので、とりあえず手土産をドアノブにかける。
また在宅している時にでも、改めて挨拶に伺うことにしよう。
砂生「明日からどうしようかな……」
大学受験についてどうするかは、まだ決め切れていない。
浪人生として予備校へ通うのか、それとも諦めて就職してしまうのか。
なんにせよ、このままでは生活していけない。
砂生「バイトだけでも、早く決めないと……」
とりあえずアルバイト募集サイトで近くを探し、条件の良いレストランを見付けた。
早速、電話してから面接に行くと、人手不足だったようで店長からあっさりと採用を決められた。
とりあえずアルバイトの方は、これでひと安心だ。
砂生「明日から頑張っていかなくちゃな」
ほんの少しだけ不安もあったけれど、それよりも遥かに期待感があった。
明日の初出勤の為にも、今日は早めに寝ておこう。
寝るにはまだ少し早い時間だったけれど、早々に布団に入った。
砂生(ちょっと緊張するなー)
初日だし、少し早めに出勤しようと思って部屋を出る。
すると挨拶の時には不在だったお隣さんが、
少し慌てた様子で部屋から出てくるところだった。
砂生「あ……」
男「あれ、お隣さん?」
砂生「そうです。越してきた西木と言います」
東雲「東雲です、よろしくね」
出てきたのは少しくたびれた感じの、だらしない雰囲気を纏わせた男の人だった。
僕のことに興味を持ったようで、そのまま少し立ち話になる。
東雲「まだ越してきたばっかりだよね?」
砂生「はい、そうです。よろしくお願いします」
東雲「こちらこそよろしく……って、遅刻してたんだった! それじゃ、またね!」
砂生「あ、はい」
東雲さんは急いでいたことを思い出し、慌てて走って行ってしまった。
砂生「……なんだったんだ」
とりあえず、怖そうな人じゃなくて良かったかな。
砂生「っと、急がなくちゃ」
東雲さんと立ち話をしていたせいで、思っていた時間に遅れそうだ。
砂生「今日から働かせて頂きます、西木です。 よろしくお願いします」
制服に着替えて挨拶する。
店長「彼女が色々と面倒を見てくれるから。 東雲さん、よろしくね?」
店長が僕を指導してくれる先輩アルバイトを紹介してくれた。
お隣さんと同じ苗字だけれど、親戚か何かだったりするのかな。
東雲「……」
店長「東雲さん?」
東雲「え……あ、はいっ……すみません! 東雲綾乃(しののめあやの)です。よろしくお願いします」
僕を見て少しボーっとしていた東雲さんが、慌てた様子で頭を下げてきた。
砂生「こ、こちらこそっ……西木砂生です」
あまり化粧っ気がなくて、少し地味な感じはあるけれど、綺麗な人だった。
年齢的には父さんより5,6年若いくらいだろうか。
砂生(うっ……胸がすごく大きい……あまり見ないように気をつけないと……)
顔を見て話していても、つい目に入ってしまいそうな程胸が大きかった。
砂生(……あ、この人も東雲って言うんだ)
左手に指輪があるから、たぶん結婚しているんだろう。
綾乃「わからないことがあれば、遠慮しないで何でも聞いて下さいね」
砂生「はい、ありがとうございます」
それに物腰も柔らかくて、すごく話しやすい。
こんな人が母親だったら、周りから羨ましがられるだろうな。
幼いころに母を亡くした自分にとっては、東雲さんは理想の母親像だった。
東雲「じゃあ、まずは挨拶の仕方からね?」
砂生「はい」
早速、接客時の挨拶の仕方から教えてくれる。
やっぱり歳上の女性だ。 落ち着いている雰囲気が良いし、なによりも体型が良かった。
僕が子供だったら、思い切り甘えたくなりそうだ。
東雲「──それじゃあ、実際に接客して慣れていこうか?」
砂生「大丈夫ですかね……?」
東雲「大丈夫だよ、何かあれば私がすぐにフォローするから」
砂生「それなら……、よろしくお願いします」
習うより慣れろとも言うし、実際に接客してみないと分からないこともあるだろう。
東雲さんがサポートしてくれているうちに、実際の仕事に慣れてしまいたい。
砂生(いつまでも新人って訳じゃないもんな……)
早く仕事に慣れて、雇って良かったと思われるようになりたかった。
東雲「お疲れ様、西木くん。どうだった? このまま続けられそう?」
休憩時間にバックヤードへ戻ると、東雲さんがそう話しかけてくれた。
砂生「そうですね、忙しかったですけど、東雲さんのサポートのおかげでなんとか」
東雲「そっかぁ、それは良かった。 実はね、すぐに辞めちゃう人って多いのよ」
砂生「そうなんですか……僕はたぶん大丈夫です、仕事にもすぐに慣れそうだし」
実際、接客も実際にやってみると、そんなに難しくはなかった。
最初はあまり声が出ていなくて、お客様とのやり取りもぎこちない感じだったけど。
東雲「そうだね、私も途中から安心して見ていられたもん」
砂生「いえいえ、まだまだですよ」
東雲「謙遜しなくていいのに。 そうそう、西木くんって最近こっちに越してきたばかりなんだって?」
砂生「ええ、そうなんですけど……」
東雲「ああ、店長から聞いたのよ。 もしかして、一人暮しとか?」
砂生「そうなんです。 初めての一人暮らしで、色々と大変で……」
自分で決めたこととは言え、慣れないことも多くて苦労している部分もある。
でも一番はやっぱり、気疲れしてしまうことだろう。
一人暮らしは気楽なように思えて、実際は気を張ることが多いと学んだ。
東雲「初めてなら大変よねぇ、まだ若いんだし。 でも凄いわ」
砂生「そうですか?」
東雲「うん。 私が西木くんの歳ぐらいの時は、そんなにしっかりしてなかったよ?」
砂生「僕も別に、そこまでしっかりは……」
しっかりしよう、とは思っているけれど。
実際にそう出来ているかは、自分ではよく分からない。
東雲「しっかりしてるって~。 そうそう、お買い得なスーパーとか知ってる?」
砂生「いえ、まだそういうことも分からなくて……」
東雲「えっとね、この近所だと……」
東雲さんはマップアプリを開いて、色々とお店を教えてくれた。
そんな話の流れで、同じアパートに住んでいることが分かる。
砂生「えっ、東雲さんもこのアパートなんですか?」
東雲「すごい偶然ね! じゃあ、今日は一緒に帰ろうか? スーパー案内してあげるね」
砂生「それは助かります、ありがとうごいます」
そんなやり取りがあって、バイト終わりに案内してもらうことになった。
話していて分かったのは、東雲さんがわりと世話焼きな性格だということ。
面倒見のいいタイプなのかもしれない。