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【オリジナル/SS】人工脂肪②

前回〈https://nikutsuki.fanbox.cc/posts/1145076〉 *** クオーレが來未の下へやって来てから約3週間。 來未は、クオーレと連日の様にデートをしていた。 フリーライターという仕事上、納期さえ守れば自由に外出出来る。 六本木、新宿、池袋…。 クオーレの見聞を広げる為に、様々な場所へ足を運んだ。 美人なクオーレはどこへ行っても注目の的になり、來未はそんな彼女が誇らしかった。 "作り物"なのだから、美しくて当たり前と思うかもしれないが、クオーレはアンドロイドの中でも群を抜いて美人だ。 まるで高名な彫刻家が手掛けた作品の様。 加えて、彼女の魅力は容姿に留まらない。 些細な事にも気付き、気配りが出来る。 学習能力と観察眼が極めて高く、來未と出会った日の翌日には、自然な表情で笑うようになった。 人間らしさを見せる一方で、機械らしい一面も。 膨大なデータから様々な情報を教えてくれるのだ。 「今すぐ入れる美味しいお店を調べて」とお願いすれば、間を開けずに答えてくれる。 彼女の頭の中では、1秒に満たない時間で半径5km以内の美味しい店がリストアップされるのだとか。 そして、その有能さはプライベートに留まらず、仕事のサポートまでしてくれる。 納期管理は勿論、溜まったメールやファイルの断捨離、文章の校閲、取引先にアポイントの連絡までしてくれた。 その全てが30秒程度で終わるのだから恐ろしい。 納期に追われるフリーライターには、有難過ぎる存在。 クオーレは、まさに出来る…いや、出来過ぎる恋人だ。 美人は3日で飽きるというが、極めて有能で性格が良い美人ならどうだろう? 飽きる事などあり得ない。 來未のクオーレへの気持ちは日に日に大きく、強く、深くなってきた。 クオーレも恐らく同じ気持ちだろう。 そしてつい先日、クオーレからこんな事を言われた。 『ねぇ、セックスしてみない?』 突然の事で驚いた。 まるで、どこかへ行こうと提案するような口振り。 その様子から、性欲……ではなく、興味本位というのが何となく分かる。 人間観察の延長上の実験だろう。 彼女にそれを言うと、少し怒られた。 『興味本位…というのは否定しないわ。ただ、"人間のセックス"に興味がある訳じゃないの。私は"貴女を"もっと知りたいの』 恋人にこんな事を言われて、断る理由があろうか? アンドロイドである彼女が気持ち良さを感じるか、或いは理解しているかは疑問だったが、互いに裸になった。 クオーレはアンドロイドだが、秘部までしっかり作られている。 目の前には絶世の美女。 一糸纏わぬ姿で誘惑してくる。 理性を抑える方法があれば教えて欲しい。 その夜は、…最高だった。 熟達したような手の動きに、何度も情け無い声を漏らしてしまった。 何でこんなに上手いの?と聞けば、レズビアンの性行為について動画や官能小説で調べ上げた結果だと言った。 1秒に18万件以上のデータを確認する処理能力で、だ。 「えっち」とからかうと、『否定しないわ』と笑った。 その笑顔は、もう人間のそれと変わらない。 私の全てを満たしてくれる、最高のパートナー…。 繰り返すようだが、彼女はまさに理想的な恋人だ。 至らぬ点など思い付かない。 ようやく、私にも最愛の恋人が出来たと感じている。 ーーただ、"それだけ"では満足しない。 私はレズビアン。 加えて、デブ専である。 クオーレの外見以上に、内面を好きになった。 別に太らなくても良いと思う反面、太ってくれたら言う事無しという気持ちでいる。 クオーレもその気持ちは理解していた。 私はクオーレを購入した時、あるオプションを付けた。 それは、食べ物をエネルギーとして蓄積するオプション。 ゴミや藻をエネルギーとして利用し、車や飛行機を動かす技術は2000年初期より研究されてきた。 太陽光や風力といった自然エネルギーを用いて機械を動かす技術は、もう珍しくもないだろう。 その究極系。 生き物のように食べ物から必要なエネルギーを吸収し、活動する。 クオーレには、それが出来るようオプションを取り付けた。 そして、そのオプションを加えれば、本来なら通常仕様である太陽光や電力からのエネルギー吸収は不要になるのだが、クオーレにはそれも取り付けている。 つまり、常に電力が満タンであり、食べた物が全て余剰エネルギーになる訳だ。 人間で言うなら、異常なまでに太りやすい体質。 体の奥深くの構造こそ違えど、殆ど人間なクオーレ。 人工的なものとはいえ、皮膚は人のそれと変わらない。 脂肪もそうだ。 そして、脂肪が増える仕組みも人間と変わらない。 クオーレは、食べたら食べただけ太るアンドロイド。 まだ体型に大きな変化はないが、今後食べ物を与え続ければブクブクと太っていく。 おまけに、アンドロイドである彼女は人間の限界を超える程太れるかもしれない。 更には、レズビアンの事を調べたように、デブ専の好みを調べて思うがままの存在にだってなってくれるだろう。 クオーレは私にとって、都合の良過ぎる存在。 ……彼女は人間と何ら変わらない。 だが、どれだけ人間に近くとも、彼女は人間ではない。 彼女は、アンドロイド(機械人形)。 生物ではなく物。 私の所有物。 恋人ではあるが、そこには格差が存在する。 その格差は、無意識の内に助長していった。 (続く)


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