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肉月
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【SS/オリジナル 未公開過去作】人工脂肪①

近未来の日本。

人工知能が発達し、高性能なアンドロイドが街を闊歩する時代。
自動運転の車が道路を走り、空に配達用ドローンが飛び交うようになって久しい。

街の景観こそ数十年前と大きく変わらないが、科学の発展の産物が街の至る所で見受けられる。
創作として描かれていたSFの世界は、現実のものとなっていた。

…しかし、如何に技術が発展しようと、人間の悩みというものはそう変わらない。
いつの時代も、同じような悩みを抱えて生きている。
大きなものから、小さなものまで…。

私もそうだ。

私は、仲城來未(なかじょう くみ)。
細々とフリーライターをしている女。
東京都在住で、都内のマンションに住んでいる。
27歳独身。
恋人は……いない。

…そう、この恋人というのが、私の悩みの種である。

私は、自分で言うのもなんだが容姿は良い方だと自負している。
身嗜みには気を付けているし、街を歩けば男から声を掛けられる事もしばしば。
男に不自由しない女…というやつなのかもしれない。

…けど、哀しいかな。
私は、私をナンパする男の気持ちに応えようと思わない。
いや、応えられないと言って良い。

何故か。
何故って、私は男の人に興味がないからね。

私は、所謂レズビアン。
綺麗な同性に強く惹かれる。
自覚したのは中学生の頃かな。
初恋の人はクラスのかっこいい男子ではなく、可愛い女子。

…まぁ、それだけなら今の世の中珍しいものでもないし、頑張れば良いパートナーも見つかるんだろうね。

ただ、私はレズビアンという事に加えて、もう1つ変わった好みがある。

それこそが、私が今も独り身である理由なのだと強く思う。

私は……、私は太った女性が好きなのだ。

それも、ぽっちゃりなんて域を超えた肥満体の女性が好きだ。
たっぷりと肥えた女性が。
特に白人の女性がタイプ。
彫りの深い整った顔に、どこを触っても柔らかで真っ白なブヨブヨの身体が堪らない。
白く、柔らかで、官能的なお肉…。

…まぁ、私がそんなお肉に触る機会などないのだが。
SSBBWというキーワードで検索し、表示される画像を見てその人と付き合う妄想をするのが関の山。

……。
…えぇ、分かってる。
異常だって事は。
ゲイやレズビアンが以前程奇異の目で見られなくなったこの時代においても、異常な性癖なのだろう。

私は、白人のおデブさんと付き合いたいレズビアン。
パートナーを見つけるのが、普通より難しい事は伝わった?
奇跡的に好みの白人のおデブさんと巡り会えても、その人がレズビアンじゃなきゃ付き合えない。
おまけに、仮にレズビアンでも私を好きになるとは限らない。
加えて、出会いも少ないフリーライター。
気が付けば20代も後半戦。
いよいよ、理想の恋人を見つけるのは無理なんじゃないかと思えてきた。

だから、私は諦めた。
きっぱりと。
すっぱりと。




"人間と"付き合うのは諦めた。





***

『この度はご購入頂き、誠にありがとうございます』

都内のマンションのある一室。
機械的な音声が室内に響く。

黒髪の美女 來未が"人型の何か"の前に立っていた。

來未の目の前に立っているのは、白人の女性。
それはまるで、彫刻な様な美しさ。
金色の髪に透き通るような白い肌。
目を瞑ってはいるが、かなりの美人である事が伺える。
すらりとしながらも、出るところは出たスタイル抜群の美女。
ハリウッド女優すらも霞んで見える輝き。
少なくとも、來未にはそう映っていた。

そんな絶世の美女は、口から無機質な音声を発する。

『言語は日本語でよろしいですか?』
「あ、えぇ」
『では、貴方に最適なAIを構築致します。幾つか質問にお答え下さい』
「はい」
『貴方は社交的ですか?』
「あ、いや。どうかな。あんまり人付き合いは得意じゃないかも…」
『ご家族との関係は?』
「そうね…」
機械的な声に、來未は答え続ける。
そして…

『貴方の好みを教えて下さい』
來未が一番答えたがっていた質問がきた。

「……大人の余裕があるクールな人が好きかな。可愛い女の子というより、頼れるクールなお姉さんみたいなタイプ。中性的な雰囲気というか…。あ、ちょっとお茶目なところが欲しいかも。声は澄んだ綺麗な声をしていて…」
來未は自分の理想を話し続けた。

『質問は以上です。それでは、"再起動"します』
來未の話を聴き終えると、白人の女性はそう言って、暫く無言になった。
浮かれた様子で再起動を待つ來未。
念願の夢が叶うと、子供のように目を光らせる。

來未は先日、思い切ってアンドロイドを購入したのだ。

今の世の中、アンドロイドは車を買うような感覚で買える。
決して安くはない買い物だが、一般人にも十分手に入る物だ。
介護用、護身用…様々な理由で人はアンドロイドを求めるが、來未がアンドロイドを求めた理由は言わずもがな…。

3週間前にアンドロイドを取り扱っている店に行き、外見を細部まで拘り、"あるオプション"を付けて購入。
そして今日、アンドロイドが無事に納品され、初期設定を行っているところだった。

まだかまだかと起動を待つ來未。
そして…

アンドロイドの美女が、ゆっくりと目を開いた。

『…。Hi、会えて嬉しいわ』
アンドロイドはガラス玉のような綺麗な瞳で來未を見ると、先程の機械的な声ではなく、"聞いていたくなるような澄んだ声"で言葉を発した。
「あ、わ、私も」
美人な來未が、気後れする程の美人なアンドロイド。
水面に水滴が静かに落ちるような、優しい声色で話し続ける。

『來未…って呼んでいいかしら?』
「うん」
『來未。素敵な名前」
「ありがとう。…私は貴女を何て呼べば?」
『あぁ…そうね。…クオーレよ』
「クオーレ?」
『イタリア語で心って意味。アンドロイドの私に良い名前だと思わない?』
「心…、心があるの?」
『人間程感情豊かじゃないけど、心はあるわ。もっとも、複数の人間のデータを元にして作られた心だけどね。ただ、学習してより人間らしくなる事も出来るの』
來未の言葉に、くすりと笑って言葉を返すクオーレ。
その姿は、確かにクールな大人の女性。
來未の注文通りだ。

『…それで、どうして欲しい?家事をしましょうか?まさか話し相手が欲しかっただけなんて、お婆ちゃんみたいな事は言わないでしょう?』
「ふふ、そうね。…貴女を作った…いや、呼んだ理由はね」
『えぇ』
「私と、…付き合って欲しいの」
『…素敵ね』
「引かないの?」
『引いたりしないわ。アンドロイドだしね。それに、人工知能と恋をする事は今時珍しいものではないもの。…ただ、恋仲になるには互いをよく知るべきだとは思う』
「あ、うん」
『……その顔、何か続きがありそうな気がするんだけど?』
「あ、分かる?……あのね。付き合って欲しいのは勿論なんだけど、一つお願いがあるの」
『……聞かせて』
「うん。貴女にはね、私の恋人になって貰った上で、太って欲しいの」
『…肥満嗜好というやつかしら?今100分の2秒の間にどういうものか調べてみたけど、不思議ね。少しだけ驚いた』
「…答えを聞かせてくれる?」
『貴女と付き合うのも、太るのも…okよ。興味深いわ。貴女をもっと知りたくなった』
恋人に…というより、観察対象に向けるような言葉を口にしたクオーレ。
こういうところは、やはり人工知能だと思わせる。

だが、今はこれで良い。
クオーレはアンドロイド。高度な人工知能を持つ。
來未は、その人工知能に、自分の趣味を叩き込み、学習させる気でいるからだ。

(続く)

Comments

近未来らしい夢のある話ですね… 太るのがアンドロイドというだけでも他の肥満化作品とも毛色が違うのに、加えてレズものであるので二人の関係の発展などを考えると色々そそられます… アンドロイドにはアンドロイドらしい心があるというのも、今後の肥満化において影響がありそうな… クオーレがどう太らされていくのか、來未は太った彼女をどうするのか 今後の展開が楽しみです!


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