【SS/フェアリーテイル】デブ専ミラ 進歩
Added 2020-05-11 13:54:12 +0000 UTC妖精の尻尾(フェアリーテイル)。
中世の景観を思わせるマグノリアの街に、拠点を構える魔導士ギルドの名だ。
魔導士ギルドとはその名の通り魔導士達による組織で、世界中に様々なギルドが存在する。
中でも、妖精の尻尾はS級魔導士も複数人いる強豪ギルドだ。
荒くれ者も多く、各地で問題ばかり起こしているが、それでも尚妖精の尻尾に憧れるフリーの魔導士は数知れず。
星霊魔導士 ルーシィ・ハートフィリアもその1人だった。
読書が趣味の17歳。
金色のサイドテール、目鼻立ちがはっきりした顔、豊かながら締まるところは締まったラインを描く身体。
美少女と十分に言える容姿のルーシィだが、そんなルーシィも妖精の尻尾のメンバーであるミラジェーンには旗色が悪い。
月明かりを紡いだ様な長い銀髪、シルクの様な白い肌、透き通る様な水色の瞳、彫刻の様に整った顔立ちに、無駄がない抜群のスタイル。
魔法専門誌のグラビアを飾るに相応しい容姿。
ルーシィはミラジェーンのグラビアを見る度に、妖精の尻尾への憧れが強くなっていくのを感じた。
そして、ルーシィの願いはひょんな事から叶う事となる。
ある事件に巻き込まれた際に、偶々出会った妖精の尻尾のメンバーに認められ、加入する事が出来たのだ。
メンバーとなり、妖精の尻尾のギルドの門を初めてくぐった日。
ギルドの騒がしさに驚いたが、何よりも驚いたのは女性メンバーのレベルの高さ。
モデルが本業ではないか?と疑問になる程の美人揃い。
ギルドに入ってまず目にしたのが、カナという女性。
長い睫毛に、ウェーブのかかった茶髪が特徴的だった。
ビキニにチノパンという奇抜で露出の高い格好をしているが、その格好が様になってしまうスタイル。
所作は乱暴ながら、女性らしい魅力を損なわない美人。
昼間から酒をガブ飲みしていた事から、かなりの酒豪である事が伺えた。
だというのに、余分な脂肪など微塵も見当たらない。
一体、あの酒はどこへ消えているのだろうか?
次に目にしたのが、エルザという女性。
同性ながら見惚れる、凛然とした雰囲気を感じさせる美人。
緋色の長い髪、上半身には鎧を纏っていて、下半身はスカートという服装が印象的だった。
露出は少ないながらも、スタイル抜群なのが鎧の上からでも感じ取れる。
…聞けば、妖精女王という字名で呼ばれるS級魔導士だとか。
ミラジェーンと肩を並べる存在だというが、納得のいく容姿、存在感。
そして、何といっても憧れのミラジェーン。
思わず「わ!本物‼︎」という声を上げてしまうルーシィ。
そんな失礼なルーシィにも、ニコッとした笑みを崩さない。
ルーシィのイメージ通りの…いや、イメージ以上に穏やかな女性。
このにこやかな笑顔に、裏表は無さそうだ。
誰にでも優しい美人。好きにならない方がどうかしている。
念願の妖精の尻尾入りを果たしたルーシィだが、ミラへの憧れは以前にも増して大きくなっていた。
***
妖精の尻尾に入ってから2カ月。
ルーシィは、ミラの事を気軽に「ミラさん」と呼べる仲になっていた。
刺激的な毎日の中で、ギルドでミラと一緒にいられる時間が最近の彼女の癒しである。
看板娘のミラは、テーブルに料理を運ぶ姿すら美しい。
流麗な所作に目を奪われる。
憧れのギルドで、憧れの人と仕事が出来る。
ああ、何て幸せな事だろう…。
……一点不満を言うのであれば、ミラがルーシィに運んでくる料理。
味が不味いとかそういう事ではないが、問題は『量』だ。
「頑張る貴女にサービスよ♪残さず食べてね♡」
そう言って運んでくる料理は、どれもこってりしていて皿から溢れんばかりの山盛り。
男性でも食べ切れるか怪しい程だ。
それを、この身体に詰め込めと?
しかし、あの笑顔には逆らえない。
「あはは…。いや、こんなには…」と一応断る素振りを見せるが、上手く言いくるめられてしまう。
お陰で、体重が4kgも増えた。
4kg…年頃の乙女には緊急事態だ。
元々が細かっただけに、お腹周りがむっちりしてきたのが分かってしまう。
顔も僅かだが丸くなった。
顎を引けば、薄っすら二重顎になる。
このままではやばい…!
今日こそはっきりと断ろう‼︎
だが、結果は言わずもがな…。
それにしても、他のメンバーへ運ばれる食事の量は変わらないようだが、何故皆あんなに痩せているのだろう?
特にエルザとカナ。
ミラが運ぶ料理が、他より明らかに多い。
しかも、どれも太りそうなものばかり。
だが、2人はそれをペロリと平らげる。
何故彼女達は、あんなに細い身体をしているのだろうか?
ルーシィがそこに隠された秘密を知るのは、数日後の夜の事だった。
***
「(ん…?あれ?やばっ…!部屋の鍵がない…!)」
時刻は22時。
街の灯りが少しずつ消えていく時間に、アパートの自室の前で立ちすくむルーシィ。
「えーと、歩いてる時に鍵が落ちる音はしなかったし…あーもー何やってるのよ、あたし!」
焦って記憶を辿れば、ギルドに忘れたのではないかと思い至る。
騒がしいギルドだ。
カシャンという、鍵の落ちる音など聞こえないだろう。
すぐにギルドへと踵を返すルーシィ。
飲み会やイベント等がない通常の日は、21時には閉まるギルド。
しかし、それは明確に決まっている訳ではなく、偶に遅くまで灯りが点いている事もあるようだ。
「(そうだ、ミラさんは残ってるかもしれない)」
看板娘のミラは、 ギルドの片付けで残っている事が多いらしい。
足早にギルドに向かう。
…それにしても、4kgも太ると身体が重いし、太腿やお腹の肉が僅かだがタプタプ揺れる感覚が忌々しい。
途中で休憩を挟みながら走り、ギルドに着いた。
「はぁ…はぁ…(良かった。まだ灯りが点いてる)」
鍵はここにある筈。
野宿しなくて済むと笑うルーシィ。
「!あれ?」
表の扉は閉まっていた。
「(…そりゃそうよね。あ、そうだ!裏口から入れるかも)」
裏に回ると、裏口は開いていた。
狭いバックヤードから、長い木製テーブルが幾つも並べられた広間に出ようとする。
落としたとしたらあそこだろう。
裏口から入り慣れてないルーシィは、広間のカウンターに出てしまう。
「(あ、間違え…ん?)」
薄暗い広間。
奥のテーブルに、ミラが見えた。
ルーシィに対して横向きで座っており、こちらに気づいていない様子。
声を掛けようとしたが、ミラの対面に座っている影にすぐ気付いて止める。
誰だろう?
見慣れない人だ。
雰囲気から女性の様な感じがする。
あんなに太った女性がギルドにいただろうか。
スタイル抜群の美人揃いの妖精の尻尾。
あんなに太っている人がいれば、悪目立ちして一度見たら忘れない。
あんな"緋色の髪をした太った人"なんて、居ただろうか?
「(何してるんだろう?それにしても…っぷ、太り過ぎでしょ。だらしない身体。ミラさんの友達かな?釣り合ってないからあり得ないか)」
白いブラウスは脂肪でぱつぱつ。
遠目で見ても太りようが分かる巨体。
体重3桁は確実。
もしかしたら、150…いや、200kgくらいあるかも?
ああまで太ってると比較材料が無い為、体重が分からない。
それ程のデブ。
細身のミラの前だと、太りっぷりが際立ってしまう。
「ふふ、また太ったんじゃない?まだまだお代わりあるからね❤︎」
しかし、そんなデブに嫌悪する事なく、寧ろ好意的な笑みを浮かべるミラ。
がっつく緋色の髪をしたデブの腹を…
ぶにゅんっ
テーブルの下に手を伸ばして揉む。
「あぁ…♡」
「ふふ、お腹の開発も順調だし、益々私好みのおデブちゃんになってきたわね❤︎」
「はふぅ、ふぅ…ミラ…」
「あぁ、邪魔しちゃってごめんなさいね。さぁ、どんどん食べて♡どんどん太ってね❤︎」
そんな会話は、ルーシィには途切れ途切れにしか聞こえなかった。
「(…やっぱり声も聞き覚えがないな。あんな野太い声のメンバーはいない。それにしても、何話してるんだろ?何だかミラさん、楽しそうだな)」
ニコニコと笑みを浮かべるミラ。
和やかな雰囲気そうだし、声を掛けても良いかな。
早く家に帰りたいし。
そう思った直後、ルーシィが再び止まる。
「ふふ、見事完食ね。流石よ、エルザ。それじゃ、今冷蔵庫からデザートを持って来るわ❤︎」
エルザ…って言った?
(続く)