紛争学園のライバル校、西山軍立学園の最強下級年、ナギサの、少年時代の「ライバル」の話となっております!
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ポス
「んにゃ……」
「よぉ、やっぱ人の話聞いてなかったな」
教室にて。チカゲに柔くふくらんだ髪をノートの端ではたかれ、ナギサは突っ伏していた顔を上げる。
机に額を伏せて寝て、同じ下級年のチカゲに話しかけられ、その話を聞いている間に寝てしまった。夢うつつから覚めた後、ナギサはとある懐かしい顔を思い出していた。
「懐かしい夢みたな~」
「あん?」
ペットボトルを開きつつ、ナギサが言う。チカゲは短く尋ねた。
「俺、最強だからさ。ガキの頃からちょっと年上とかにも喧嘩で負けたことねーし。
だからよ、ガテンの現場とかかちこんで、マジの喧嘩屋のおっさんと殴り合ってたんだよな」
「…………」
「そんで、一人。
めっちゃ年上のライバルがいてさ~。あいつが、今んとこ最強のライバルだったわ。懐かしいな~」
ナギサの才覚は早い段階で発揮されており、少年を逸脱した怪力を持っていた。
自分に逆らうものなどいない、自分は最強だと。……力を持て余していながらライバルと呼べる存在は同世代には望めず、ただ一人、いつも喧嘩を愉しむ存在がいた。
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「へへっ、また俺にぶちのめされてえのかよ、おっさん!」
「はっ、いつもボコられて鳴いてんのはテメェだろうが、クソガキ!」
三島(みしま) ダイゴ。
ナギサは腕を組んで、それを待ち受けていた。考え方は幼く、気分は悪を倒すヒーローだった。細かいことなどどうでもよく、ただ暴れられればそれでいい。
ダイゴは唸り、早くも血気盛んに迫っていた。互いに遠慮するような関係ではなく、今にも殴り合いが始まろうとしている。
にらみ合う二人の体格差は明白。だが、二人は億すことも驕ることもしない。今日こそ勝つと勝気な笑みを浮かべていた。
「でも、勝負したかったぜ! 同い年じゃもう喧嘩になんねーんだもん」
「けっ……」
ナギサはその場でとんと跳ねながら、生意気な笑みを浮かべて言う。相変わらずの態度に、ダイゴも少し笑った。
「いつもながら、ガキだからって容赦しねぇぞ……! テメェはぶちのめす!」
これでもう、……こいつが現場に現れてから何度目か。だが、コイツがただのガキでないことはもう十分思い知っている。どんな分野にも……それが喧嘩だとしても、普通の才覚じゃ歯が立たないような天才は生まれてくるということ。
倒し、倒され……、二人は年の差があっても、男同士、喧嘩の腕を競い合うライバルとなっていた。
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ドボォォォォオオオッ!
「くははっ♪ 大人のくせに情けねぇのなっ!」
「ぐ、ぉぉ……この、クソ……ガキ……!」
ナギサのボディブローが深々と突き刺さる。
喧嘩屋として鍛え上げてきた肉体が、一回りも年下の少年の拳に打ち砕かれるのはやはり屈辱だったが、今はもう、当然のこととして受け入れていた。
こいつは、ただチビなだけ。そこらの巨漢などひとひねりにする怪力を持っている。若いというだけで、自分がこれまで相手にしてきた喧嘩屋と何ら変わらない男なのだと……。
(あ、……相変わらず、どこに、こんなバカ力、が……!?)
グボォォォォォォォッ! ドボォォォォオオオッ!
「がぁぁ……ぐぉぉぉぉ……っ!!」
(ははっ、やっべぇ、マジ喧嘩きもちいい……!
殴んのって最高じゃん!)
次々と拳を繰り出し、自分よりずっと大きな肉体を殴り潰していく。
ナギサはぞくと身を震わせ、拳を止めなかった。相対する相手の肉体の感触は得もいえぬほど心地よく、とり付かれるに十分なものだった。
アウトローな刺激に大きな興味を持っていたのも大きかった。ナギサは大人の男としてダイゴに懐き、同時にリングの上で潰しあう「ライバル」として認識していた。
(俺ってこんなにマッチョな大人より強いんだよな……! だったら、コイツに何してもいいよな!)
「ははは……、オラオラァッ!!」
ドボォォォォオオオッ! グボォォォォォォォッ!
「ぐ、ぉぉぉ……あがぁぁ……っ!!」
自分より短く細い腕が、鍛え上げた己の肉体を拳で壊していく。不合理だが、才能というだけで納得させられてしまう。同世代が相手ではまるで喧嘩にならないのも当然だろう。
(はぁ……はぁ……!
やっぱコイツは、バケモンだ……、だが、危ねぇガキはしっかり躾けねぇとな……!)
まだまだ、勝負は始まったばかり。ダイゴは笑みを浮かべた。
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