前回はこちら

前回はこちら ● きっと、これまでも多くの相手を、ただ黙々と倒してきたのだろう。 目的すら感じない、そんな奴の無慈悲な攻撃に、俺はすでに心を折られていた。 「はぁーっ! はぁーっ!」 ここには二人きりしかいない、アプリの性質上やむなしだが。俺はこれまで自分の暴虐を許してきたそのシステムに追い詰...
●
ガッ! ドガァッ!!
グボォッ! ゴッ! バキッ!
ドゴオオオォォォッ!!
「ぐぉぉぉ、ぉぉ……っ!!」
ドゴォッ!!
「がっ……」
今の自分の強さを図りたい、思いつくままに「戦い」の練習をしたい。
奴はきっと深くは考えていないのだろう。怯え、しかし逃げ場のない俺を、奴は容赦なく追い詰めていく。
(いちいち呻きうるせぇ)
一方で、青年は黙々と拳を落としつつ、大げさじゃないかと辟易を覚えていた。
倒れ込む相手の頭をひっつかみ、無理やりに立たせ、膝蹴りを見舞っていく。
「ぁぁ……か、……?」
顎下に膝が入って、意識ががくつく。青年はそれを無理やりに頭を揺らして覚醒させる。
「ほら、立ってください」
もはや反撃などこない。だがそれでは困る。そういわんばかりに、青年は無理やりに立たせていく。
「言いたくないけど。……弱すぎるんすけど。あんだけ煽ってたから、期待してたんすよ……」
「はぁ……はぁ……っ!」
「リアルじゃないと、アプリ入れてる意味ないんですよ。俺を殴り殺す気で来てください」
「も、……も、う……ぁ……が…………」
「言っときますけど、手ぇ止めないっすよ。現実なら、普通は止まらないでしょ」
決して日常では味わえないような非現実、スリルを肌で感じたいから、ここに来た。ファッションやSNSと同様、それが青年の普通のルーティーンだった。
人間も生き物だし、実力の差があるのは仕方がない。だが青年は、弱いなりの必死な抵抗を期待した。もはや自分の勝利は疑っておらず、スリルを味わえないことばかりを憂いている。
「ひっ……ぁぁ……、もう、や、め…………っ!」
考えが安直だった。完全に誤算だった。
悪意も憎悪も感じない、ただ俺と、「リアルな徒手戦闘」を続けたいだけなのだろう。
俺は、ひたすら後悔に身をやつし、早く奴の興味が俺から消えてくれることばかりを願うしかなかった。
(こいつ……マジで……ヤバい……タイプだった……!)
散々に身をえぐられた膝を突き付けられ、俺は年下に命乞いをする。自分でもみっともないと思うが、恐怖で震える体はもはや制御すらままならない。
逃げることすらできないほどの、冷酷なまでの、実力の差。
だが奴は、俺がどうしてもう立ち向かってこないのかと、ただ不思議そうにしているばかりだった。
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前回はこちら ● 脅威なのは、特に膝蹴りだった。 顎下からあてられ、意識をそがれ、腹やわき腹に突き刺さる。奴はさもムエタイ選手のように、その長い脚で器用に俺の身体を破壊してきた。 何度もえぐられた腹部が、また、奴の膝の形に歪む。恐怖のあまり、俺はもう正気を保てなかった。 「もう……膝……やめて……」 ...
yukibou
2022-07-26 12:31:25 +0000 UTCRamia
2022-07-26 12:23:29 +0000 UTCyukibou
2022-06-25 11:07:21 +0000 UTCミケ空
2022-06-25 10:46:20 +0000 UTC