今月から始めたシリーズです。
ストレス解消のために開いた「タイマン相手を探すアプリ」にて、とんでもなく強くてドライな青年とマッチングしてしまった……、みたいな話です!
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怒りのまま、特に意味もなくはいった路地裏にて。放置気味のゴミ箱を蹴りつける。
それは派手な音を立てて転がり、小さなごみ袋や紙くずががいくつも散乱した。
「くそっ!」
俺の苛立ちの原因は単純で、何もかもがうまくいっていないことだった。自分に問題があるのもわかっているし、なまじ社会人としての理性が働くのも我慢の理由だった。
仕事も、人付き合いも。したがってストレスばかりが募っていく。
「……へっ。いちびってる年下でもいじめて、かるーくストレス解消すっか」
だが、そんな俺にも、抱え込んだストレスを解消する手段があった。
横文字のタイトルととしゃれたアイコンからは連想できない、「タイマンマッチングアプリ」。
安定した社会に非日常を求める者、責任を抱えて不自由さに悩むもの、はたまた単純な喧嘩自慢……が、いわゆるステゴロの対戦相手を求めるためのアプリだ。
最低限のルールの下で、マッチング後に話がつけば、即対戦。最低限順守すべきモラルと互いの条件さえ合致すれば、勝者は敗者に何をしてもかまわない。
苛立ちも何もかも、強ければ解消でき、俺は腕っぷしには自信があった。アウトローの中では人気なそれを、今日も俺は起動した……。
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マッチングしたのは、俺が想像していたよりずっとおとなしそうな男子だった。ちょうど向こうも、一駅分ほど離れた場所で近場で相手を探してうろついていたようで、数分後にこちらまでやってきた。
不良とかち合うことが多い中、想像していたよりも洒落ていておとなしそうな奴だった。だがシルエットを見る限り、身体はしっかりできているようだ。
だが、俺もストレスをためてるんだ。悪く思うなよ。
「……ちわ。●●さん、ですか? よろしくおねがいします」
控えめな声色で会釈するその姿は、今から殴り合う者には見えないだろう。俺もやや無口ぶりながらも、気まずくならない程度に答えた。
「場所は用意してるんで。貴重品とかなかったらそのまま直行しましょう」
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「へぇ、体は結構できてんだな」
「あ、はい。よく言われます」
淡々と着替えをすます中、俺は素直な感想を漏らす。このアプリで出会ったやつは、実際に殴り合うまで案外会話が続いたりするものなのだが、奴は自分への称賛自体にはあまり関心を持っていないようだった。
「……え? ビビってない、ですよね?」
「……っ」
(ぐっ……! お前こそ、とっとと一発ぶち込んでビビらせてやるよ……!)
本当にそう思ったのだろうか。毒気のない奴の言葉に、俺はびきと筋を立てる。
リングに上がったなら、即KOして、ムカつきをすべて晴らしてやる。俺はにや付き、グローブをなじませるように拳を何度か握り込んだ。
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yukibou
2022-06-01 07:19:33 +0000 UTCミケ空
2022-06-01 06:49:41 +0000 UTC