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過去作再録 「ユウキとコテツ 2」



「!!?」


 体は足を立ててブリッジ上になり、ユウキの両手がコテツの顎を捕える。ユウキを捕えつつも顎を無理やり吊り上げられる格好になり、コテツは信じられないとばかりに目を見開いた。

 

「っ……! まだ、んな力が……!」


「……初めに言っただろ……、俺は、絶対に負けない……!」


 そうして、両腕を引く。コテツも堪えようとしたが顎先だけでは耐えきれず、背後に体を逸らすように倒れ込んでしまった。

 

 ユウキの首を捕えていた腕が解け、途端に肺に入り込んできた空気にむせながらも、その機を逃さすわけにはいかなかった。

未だ引きずるような息苦しさに表情をゆがめながらも、ユウキは投げ出されたコテツの足を掴み、手繰り寄せるようにして体を寄せる。



「くっそ……、いい加減諦めろやっ!」


「こっちの、セリフだ……っ!!」


 だが、コテツも簡単に腕などを取らせるようなことはしなかった。体が反転しながらもすかさず背を丸めて防御に映り、逆にユウキの手足を奪おうと手を伸ばす。

 

 もう、体力が残っていないのは互いに自覚している。満足に技を返す余裕などない。だからこそ、今のユウキの抵抗はが最後であり、勝敗に直結するこの引き合いに負けることはできなかった。

 

 ユウキがコテツの背後から腕を回そうとするが、させじと首の前に腕を置いてブロックする。コテツがその腕を取ろうとすれば、両の腕を絡ませて阻害し、再び首を狙おうとする。

 

 汗の滴を散らし、密着を解かず、有利な立場で互いに体を掴みあう。



「っぁ……!?」


 投げ出された足を掴もうとしたが、それこそ、反射亭に仕掛けたユウキの罠だった。そしてその一瞬が、コテツにとって命取りとなった。

 

 ユウキはあえて掴ませるようにしていた足を引くと、同時に浮いたコテツの手首を払い、コテツの足を掴むとそれを軸にして体を逆転させる。

 数秒もかからずして、流れるようにコテツの動きを封じてしまう。コテツの首を挟み込むように足を回し、寮の股で締め上げるようにして交差させた。



「がっ……くっ……!」


「……終わり、だな……!」


 決死のポジションの奪い合いの末、ようやくコテツの首を捕えた。荒れた息ながら、その瞬間にユウキは勝利を確信した。向こうは逆に己のミスを悔やんでいることだろう。

 いかにスタミナに優れようとも、もはや逃れる力も残ってはいない筈。何よりここで逃すつもりもない。ユウキは捕まえたコテツの足を自身へと引き寄せ固定しつつ、コテツの首を両足の隙間を削るようにして圧迫し続けた。


「……ぐっ……、んなもんで、勝ったつもりか、ゆーくん……! ……オラぁっ!!」


「……無駄だ……っ」


 とはいえ、やはりスタミナは規格外だ。無尽蔵じゃないかとも思えるが、そうでないことはもう分かっている。

 

 滞る呼吸でもコテツが何とか手を伸ばし、首を挟まれているユウキの足へと伸ばすが、それを引きはがそうとしても、大した抵抗ができるほどの握力は残っていなかった。

 

 それはこちらも同じだ。痛めた肩で首や関節を捕まえたところで止めを刺せる自信はなかった。だからこそ、足を使った。しかも、絶対に逃れられないように両足を。

 だが、考えて繰り出した技ではないからか、完全に呼吸路を奪うようなことにはなっていないようだ。苦しそうに悶えながらも、コテツは口を開けている。


「く、そ……っ! ここまできて、諦められっか……!」


「チッ。さっさと、ギブアップ、しろ……!」


 絶対に逃さぬように意識して、集中して力を込め続ける。すれば、挟み込む足の間から、ごり、と骨の感触を感じる。コテツもまた骨の擦れ合う音でも聞いたのか、嫌な気配でも感じたらしく、ユウキの太股に拳を叩き付け始めた。


「ちょ、首、折れるって……ぐぅっ……! ちゃんと、加減、わかってんねんやろな……?」


「……さぁ、慣れてないからわからない」


 ユウキは素知らぬ風にそれだけ答える。同時にコテツの顔が青くなった。もしかしたら命の危険を感じ、負けん気とギブアップの間で揺れているのかもしれない。力の抜けた拳で何度叩いても、ユウキの絞めは一向にゆるまない。

 

「ぐ、がぁっ……! こ、の……! チビのくせに……!!」


「まだ喋れるって事は、……まだ絞れるって事だよな?」


 カチンときた。ユウキはますます力を込める。喉はさらに圧迫され、首の骨が擦り合う音が何度も鳴り響く。


「っ!?」


 ギシッ……!


「ちょ……マ、ジ……アカンって……! お、おい……っ!!」


 コテツの声が焦燥に苦しさもさることながら、人体でも明確な弱点だ。もしかしたら、地下格闘技の試合での経験で、そういった事故の現場でも見たことがあるのかもしれない。

 

 にしても、コテツは相変わらず静かにならない……。ユウキは締め落とすことを諦め、捕えた首を、そのままあらぬ方向に捻りあげる。

 

 ゴリ……ッ! ……ギシリッ!

 

「うぁっ!! あぁぁっ……!! ぐ……、そ……っ!!!」



 ……フリをした。すればようやく、コテツがユウキの太股を何度も叩く。苦し気に目を絞り、開いた手で何度も叩き続ける。

タップの証だ。ユウキが足の拘束を解く、と同時に、ゴングが鳴った。




 仰向けになって、大の字に倒れるコテツが、いまだそれを実感できぬままで何度も刮目し、呆然と天井を見つめていた。


「タップ、してもうた……!?」


 つい先ほどまで限界すれすれに締め上げられていた喉元をさすり、コテツは呟く。


 体がつい、図らずもタップを選んでしまった。自分も相手も、怪我をする限界というのはなんとなく掴んでいるつもりだ。もちろん、あのまま死ぬか怪我するよりはマシだったのだろうが……。

 

「……う、うそやん、俺、負けたんか……」


「そうだな」


 胸筋を上下させ、熱いと息を吐きながら派手に落胆の息を吐くコテツの隣で、ふとユウキが口を開く。


 すぐに立ち上がるなんてできなかった。疲労に苛まれ限界だった身体を投げ出すよう、隣で転がっていたユウキが、やがてゆっくりと上半身を起き上げる。


「……はぁ、そっか~……」


「……えらく、しおらしくなったな」


 どこか納得を得たらしいコテツに、ユウキは少し目を丸めた。戦意はすっかり消失している。敗北など納得せずに噛みついてくるかと思っていたから、その態度は少し意外だった。


「そりゃ、負けやもん仕方ないやん。勝ち負けのあるもんに挑んどいて、結果にブーブー文句言うんかっこ悪いし」


 だが、それでもやるせなさは残るのだろう。コテツはつまらなそうに髪をかくと、そのまま起き上がる気配を見せず、大の字のままで見せつけるような嘆息をまた吐いた。


「あ~あ、そのこ綺麗な顔鳴かすん、めっちゃ楽しみにしとったのになぁ~!!」


「減らず口は相変わらずだな……。言っとくが、今から鳴くのはお前だ」


 ふと、ユウキはキャンバスを這うようにして、横たわるコテツの胴にまたがった。

 

 その肩を掴んで見下ろし、冷ややかな瞳がコテツを見つめる。そしてこのリングにおける敗北者の末路を今一度思い返し、コテツの頬に一筋冷や汗が滴った。

 

「あー……、やっぱ、俺が下? ゆーくん下手そうやけどなぁ~」


 無遠慮な言葉に、もう何度目かユウキの額に筋が立つ。

 

 ……そういえば、試合の前から何度も何度も侮辱されてきた。挑発のつもりかと思って聞き逃してきたが、その口の悪さは元来のものらしい。


「……まだ元気があるんだな」


 ドボッ!


「ぐはっ!?」


 容赦のない拳が、試合が終わって油断していた腹に腹に叩きこまれる。衝撃でコテツは体をのけぞらせた。


「チビ、下手そう、ゆーくん。 ……今まで散々悪口叩いてくれたな、覚悟しとけよ」


「……はは……、可愛いと思って、ほ、誉め言葉やで?。……でも殴って黙らすとか、めっちゃSやん、ゆーくん……」


 そんな弁明など聞く耳を持たず。その時が来たとばかりに、ユウキは乱暴にコテツの両腕の下に腕を入れる。。


「ちょ……、まさか、俺持ち上げようとしてる? さすがに重いんとちゃうかな~」


 ユウキは何も答えないまま、コテツの肩甲骨の辺りに手を回し、腕をひっかけるようにしてコテツを持ち上げた。少し引きずるようになりながらも、コテツの肩を押しやるようにしてコーナーまでやり、その足を持ち上げた。

 

 胡坐をかいた自分の足の上に座らせるようにしてコテツを固定する。ユウキはどこか満足そうに鼻鼻を鳴らしていた。


「やっぱ、気にしてたんやね~、色々と」


「さっさと脱げよ、……俺も脱ぐから」


「え? このまま流れで脱がしてくれるんちゃうの? 折角対面のポジション整えたのに?」


 ユウキは唸るように言うが、コテツはしらじらしくそんなことを言う。未だ猛々しいその態度にユウキは不服そうに目を細めると、コテツのトランクスを掴んだ。


「っ!?」


 その、性器ごと。リングを照らす特殊なライトで過敏になった感覚は、性欲の反応すらも鋭敏にする。

 

 コテツの性器もまた、トランクスの中で痛みを覚えるほどにそり立っていた。ユウキに乱暴にその先端を布越しに握られ、性器は跳ねあがり、コテツはたまらず背をのけぞらせる。


「ちょ……、な、中身もにぎってもーてるん、やけど……。ゆーくん……? っ……!」


「脱がしてやってんだろ、感謝しろ」


 ユウキは言いながらも、布越しのそれを鷲掴みにして、乱暴に指で握りこみ始める。力を込めて指を立てる度、コテツの肩が震え、声が漏れ出るのを、君がよさそうに眺め続ける。

 

 全く脱がすつもりもない、甚振って楽しんでいる。コテツは身悶えながらも、それならとユウキへ手を伸ばす。


「……そうか。そういうつもり、やったらなぁ!」


「!!?」


 声を荒げると、反撃とばかりにコテツもユウキのトランクスを性器ごと掴んだ。勿論のことライトの影響を受けてユウキの性器も敏感になっており、下腹部につき走る衝撃もまた同様だった。

 

 些細な刺激でも耐えがたい感覚に変わるほど、敏感になって勃起した性器、しかも先端を、ほぐす様に揉みしだき、かと思えば強く握りしめられる。やったことをそっくりそのまま返されて、その痛みと刺激に眼を絞る羽目になった。

 

 ユウキはコテツを責め立てていた一瞬手を止めるも、負けじとすぐにそれを再開した。


「お、前……! 負けたくせに……!」


「ふっ……、いやぁ、俺だけ脱がしてもらうんも、悪いっしょ……?」


「っ……!? くっ……」


 脱がすという名目を立て、火花を散らす。やがてユウキは耐えられなくなり、コテツの肩を掴んだ。


「くはは……、ゆー、くん……! 降参か……?」


「……る、さい……!」


「……!?」


 とはいえ、コテツに襲い掛かる余裕も残されていなかった。ただ、前にあるコテツの肩を必死に掴み、歯を噛みしめて、ひたすらコテツからの責めを堪え続ける。その頬は火照り、瞳が艶やかに揺れている。

 

 本人はただ余裕がないだけ。だが、極めて扇情的なその表情に、コテツは目を見開いて手を止めた。


「……なぁ、やっぱ俺が上やったらあかん……?」


「……ふざけるな」


 背中に手を回し、コテツも震える喉でその耳元に囁きかける。ユウキは息を吐くと、何とかその顔に冷静さを取り戻して体の芯を立て直した。


「……くだらないことやってないで、さっさと終わらせる。もう、脱がすぞ」


「え~。ゆーくんが仕掛けてきたくせに」


 火照った顔を隠す様にコテツから目を逸らし、ユウキはいそいそとコテツのトランクスをはぎ取ってしまう。コテツも呆気にとられながらも、同じように握っていたユウキのトランクスを掴み、汗で滑らせるようにして脱がした。


 足首に引っかかったトランクスを脱ぎ捨てれば、互いの勃起しきった性器が露わになる。対面に座る格好になれば、互いの性器もおのずと線案から触れ合い、滑らかな粘着が交わり合った。


「……で、どんなふうに俺を気持ちよくしてくれるん? ゆーくん」


「う、るさい……!」


 汗の滲むその背中に手を回し、コテツを抱き寄せる。腰に力が込められてされるがままになりながらも、コテツはからかうように言った。

 

 だが、この体勢で行くと決めた以外、ユウキにそれ以上の考えはなかったようだ。よほどなめられていたのが引っ掛かっていたらしい。特に、体格面。


 ……コテツは小さく息を吐くと、荒れた息を吐き続けるユウキの性器に、そっと指をなぞらせた。


「……しゃあないな~、ちょっと手伝ったるわ」


「お、前……っ!」


 コテツもまた、自ずと抱き合うようにユウキの腰に腕を回すと、ユウキの性器を、その艶やかな先走りを塗り広げるようにして刺激し始めた。


 今度は布越しではない。しかも乱暴でもない。過敏になった性器をコテツに扱かれ、得も言えぬ衝撃にユウキは身を震わせる。


「ぐっ……、お前……何して……?」


「ん~、やっぱゆーくんの腰細くって、でも筋肉ついててエロいなぁ」


「……聞いて、ねぇ……! はやく離さねぇと、殴るぞ……!」


 ユウキが低い声で、だが震える喉で唸るのに、コテツはユウキの小刻みに震える腰は抱えたまま、性器からそっと手を放す。

ユウキの先走りで艶めいた指先で、今度は自身の性器の根元へと触れる。


「ホラ、変なライトのせいで、俺のめっちゃ元気やねんけど」


 ユウキのやや茫然となった表情と反応を見やり、ビクン、と性器を動かして見せた。その鼻先で、コテツはにやりと笑みを浮かべる。


「咥えてくれたらうれしいな~……なんて」


「ふ、ざけるな……、負けたくせに」


「ふはっ、やっぱごっつかわいいやん。なぁ、俺の負けでええからさ、やらせてくれたらお互い気持ちよく……」


 コテツがユウキの頭に手を回して、その顔を自分へと近づける。ユウキはその背後から、コテツの腕を掴み、一気に捻りあげた。


「いっ!」


「悪いが、負けたヤツに好き勝手されるつもりはない」


「いててっ、せっかくムード作ったったのに~……」


 コテツの悲鳴を聞くと、ユウキは腕を放し、今度はその体に手をあてがった。


「……重い」


「いだっ!!」


 不満をぼやき、自身の上から突き倒す。コテツはままに体ごと横倒しになり、頭からキャンバスに激突した。


「いっ……てぇ!! 何すんねんコラ! お前が選んだんやろが!!」


 ぶつけた個所をさすりながらコテツが吠える。だが、ユウキはその体を転がす様にして俯せにさせ、上からのしかかるようにその体の上に覆いかぶさった。


 手を伸ばし、背後からコテツの性器を掴む。途端に、ユウキの手の中で性器を弾けさせ、コテツは気の抜けたような声を漏らした。


「ん……、ぐっ……! ゆーくん、結構、積極的やねんなぁ……?」


 背後から触れるユウキの体温を感じつつ、性器を扱かれる。首を逸らせる程度に振り返ったコテツが口を開くが、ユウキは無言のままでコテツの性器を扱き続けた。


「あぐっ……! ちょ、マジ……、アカン……! 先っぽばっか、ヤバいって……!」


 続けられる刺激に、果てるのも時間の限界だった。コテツは火照った顔をしかめ、電流のように襲われる快感からひたすらに腰を震わせた。

 

 ……と、コテツの性器から手が離れた。その腰にユウキの指先が触れられる感触。それから、熱い何かが下腹部に触れる感触も。


「…………え?」


「お前が発情してるところ悪いが……、俺ももう限界だから」


 ユウキは熱いと息を吐いてそれだけ吐き捨てると、コテツの腰を掴んで持ち上げ、その秘部へと、自身の性器の先端を触れ合わせる。

 透明な粘着が、ひたりと背後に触れる感覚。熱い性器の感触を感じ取り、コテツは恐る恐る口を開く。


「……いや、分かっとったで? 分かっとったけどな? ……まさか、そのまま入れるつもりや……」ズブッ……ズブ……!


「うあ……っ!!?」


 言いかけの言葉を呑みこんで、コテツは息を詰まらせ、引きつるように声を漏らした。

 

 コテツが案じていたような行為は全くなく、ユウキはそのままコテツの中に挿入した。腰を動かし、性器がうまく入らないのを、半ば無理やりにこじ開けていく。


「ちょ、いきなり、奥とか……! 俺、んな慣れてないって……!」


「知るか……!」


「ぐぅ、うぁっ……!」


 ここで試合を重ねてきた以上、別段そういう準備について知識がないわけではない。だが、もういいかとさえ思ってしまった。これまで散々にバカにされたのだ、負かすだけでなく、のたうつような目に遭わせてやれれば少しは気が晴れるだろう。何より、ライトで追い詰められているのはこちらも同じなのだから。

 

 だが、コテツはひとたまりもないようにひっしに口を両の手でふさいでいた。なけなしのプライドを守る為か、されど、背後から体内を無遠慮にかき回され、ほぐし尽くされ、より奥へと声はこぼれだしていく。


「ちょ……、くぅ……! い、いったん……抜けって……! これ以上、入る、わけ……!」


「断る……! ぐっ!」


 ほぐれていないコテツの中は、汗や先走りで滑らかだとしてもユウキの性器を阻み、半分ほどの挿入でつっかえてしまう。それでも押し込もうとすれば、それだけコテツは腹部にねじ込まれるような衝撃を感じ、悶えるように声を漏らした。

 

 自身の性器もそれだけコテツの中で締め付けられる羽目になり、熱い体内の壁に圧迫され、粘着を帯びて擦れ合う。ユウキもコテツの腰を掴み、追い詰められたように息を吐く。


「……お、おい……、頼むから、今からでも、慣らすとか、しようや……! うぐっ!! い、ま、動かれ、たら……!」


 今迄には聞けなかったような、余裕のない声がリングの上に響く。ユウキはそれを黙ったままで聞いた。


 そんなコテツの懇願が届いたのか、ユウキはコテツの中から己の性器を一気に引き抜いた。


「ひぐっ!!」


 性器の半分ほどで体内を犯していた性器が抜かれ、そのまま腰が砕けたようにコテツは胸をキャンバスに着け、なんとか腕を立てて起き上がろうとする。

 

 尚もユウキは、冷たい顔もまま押し黙って、そんなコテツの体を横に押して転がした。


「ふぁ……、くっ、ようやく、抜い……」


「……安心するのは早いだろ」


「……へ……ぇ?」


 ただ、体勢を変えただけ。それを悟ったコテツが唖然と口を開く間に、ユウキは自身の性器を再びあてがった。

 

 腰を押し付け、性器を挿入する。自身の熱く勃起した性器をなおも押し込もうとするユウキに、たまったものではないとコテツは顔を青くし、怒声を上げた。


「い、いや……、だからっ! 慣らせっていっとんじゃ! 内臓破れたらどないすんじゃ、ボケ!」


「安心しろ、それはない。せいぜい腫れる程度だろ」


「こ……、このクソチビ! 早う抜かんとぶち犯すぞ!! う、ぐ……っ!!」


「犯されてんのは、お前だろ……!」


 そして、とうとうユウキの性器のすべてがコテツの中に収まった。腹を無理やりかき分けられ、内側から押しつぶされるような感覚。ともすれば食い破られるのではないかと錯覚するほどだった。

 

「うぁっ……くぅぅ、ぁぁっ!!」


 意識も朦朧として混濁し、完全にユウキの性器に貫かれ、支配されていた。コテツが呻く中、ユウキも、挿入した先、コテツの体内から未だ自分を押し出そうとする圧力を感じ、その全体を締め上げられながら、息を吐き、コテツの腰を掴んだ。


「くっ……、動く、ぞ……!」


「っ……!!? がぁ……ああぁっ!」


 ユウキは腰を動かし、打ち付け始める。その先端により深くを押し広げられ、コテツはたまらずキャンバスに指を突き立てた。


「うっ……、くぁ……あぁっ……!」


「はっ……、無様に鳴いたのは、お前の方だったな……!」


 ユウキは火照った涼し気な顔で、どこか満足そうに呟いた。自分の動きに合わせて体を揺らしているコテツを見下ろし、その下腹部、跳ね上がって滴を垂らしている勃起した性器を握る。


「はっ……く……!」


 乱暴には下から犯されている上、追加された性器への刺激に、コテツは腰を跳ねさせ、更に目を振り絞った。


 ただでさえ。体内から扱かれているようなものだ。外部からの刺激に耐え切れず、まもなくして、コテツは勢いよく白濁を吐き出した。


 飛び出ると同時に性器がはじけ、自身の髪までを白く汚す。自身の腹部にまで飛んだ白濁を意に介せず、コテツの凌辱に集中した。

「お、前……!」


 射精させられた屈辱に加え、目まぐるしいほどの刺激に喘ぎ声をこぼす中、コテツは辛うじて声を漏らす。


「くっそ……、お前、覚えとけよ……っ! 絶対、同じ目に遭わせたるからなぁ!」


 リング上で粘着質な音と、激しい凌辱の音が響く中、コテツは恨めしそうに勇気を睨み、震えながらも声を張り上げて言い放つ。

 

 ユウキはそれでも意に介せず、腰を叩き付け続けた。ユウキに遠慮なく犯されるものの、痛みや快楽をを噛みしめて堪え、コテツはかろうじて睨んでいた。


「……はっ、結果に、とやかく言わないんじゃ、なかったのか……?」


「んなもん、こんな……ぐっ……! とにかく、絶対に許さんからなぁ、ゆーくん!!」


 自身の限界も近くなったのか、ユウキの動きが早くなる。それだけ中を犯されるペースも険しくなり、より鋭く速くなっていく凌辱にコテツは指先の震えが止まらず、ひらすらに身悶え続けた。



「ぐっ……、そろそろ、出す、ぞ……!!」


「ぐぅ……うぐっ……! く、そぉぉ~……」


 コテツの悔しげな声がどこか情けなく引き伸びていく中……。ユウキは腰を震わせ、コテツの最奥に白濁を吐き出した。




 目が覚める、と同時に傍らにいる誰かの気配に目を見張ることになった。


「おう、ようやくお目覚めか?」


「……お前っ!!」


 ここは寮の自室。決してこいつを招き入れた覚えなどない。そもそも試合の後の休暇中だ。向こうも自室で療養していると思っていた。

 

 まるでそこにいるのが当たり前のような顔をして、そこにいる。ベッドの傍らまで持ってきた椅子に、背もたれを逆にして座っているコテツは、ひたすら訝しむ様子のユウキに対してあっけらかんと笑みを浮かべていた。


「いやぁ、よほど疲れとってんなぁ。俺とあれだけ試合した後やから、当たり前っちゃ当たり前やけど」


 どうやって入ったのか。どうしてここがわかったのか。疑問はいくらでも浮かんだが、ユウキはひとまず考えを止めた。どうしてここにやって来たかなんて、その答えは決まり切っている。


 即ち、やられるまえにやれ。拳を握って布団を蹴り飛ばそうとしたが、ほぼ同時にコテツはベッドに飛び乗ると、起き上がろうとしたユウキの肩を掴んで、再びベッドへと押し倒した。


 だが、それにしたってお互いに試合のダメージなど抜けていない筈なのに、何を考えて……。痛む体では満足に抵抗できず、ユウキは馬乗りになってくるコテツを睨み付けた。


「くっ……!」


「……いや、別に負けた腹いせとかそういうんやないんやけど。やっぱ俺、基本は上のほうが好きやねんな? 楽しみにしとってんけど、ほら、ゆーくんにあんなことされたやんか? あの後、俺がどんな気持ちで薬塗ったかわかるか~?」


「……っ……!?」


 馬乗りになり、迫っていくコテツの影が、戦慄するユウキの顔を覆っていく。

 

 笑みを浮かべた。だが、半分ほど影が映えたそれは悪役そのものだった。


「だから……、せいぜい今からビビっとけや、死ぬほどブチ犯したるからなぁぁ!!」


「!!?」


 そうして、服に手をかけられる。無論ユウキは抵抗し、ベッドの上で揉みあいになった。


 激しい抵抗に舌打ちを打つコテツがユウキの肩を乱暴に掴んだ時……。ユウキはふと、掴もうとしたその手を止めた。


「っ……!」


 やはり、ダメージは抜けきっていない。コテツの締め技を受けた肩の痛みはまだ残っている。動かそうとすれば響くように鈍痛を感じたし、乱暴に捕まれれば言わずもがなだ。


 さりげなく肩をかばうように隠し、目を逸らすユウキに、コテツは少し戸惑いながらも唇を尖らせる。


「……なんやねん、今更、んな顔したって遅いで」


「……別に、そんなんじゃねぇ……」


 顔を少し引きつらせながらもユウキは言うと、静かに拳を構えた。


「……喧嘩ふっかけられるのは慣れてる。来いよ、すぐに倒してやる、から……」


 顔色の悪い顔でも、大人しく倒されるつもりなどなく、敵意を込めて鋭く睨み付ける。


 だが、不調は目に見えて明らかだ。コテツはきょとんと眼を丸めた後、大袈裟に嘆息を吐いた。


「はぁ~……何でも真剣に捉え取ったらしんどないか~?」


「……何?」


 言っている意味が解らない。変わらずユウキが抗戦の構えのまま、疑るように言うと、コテツはベッドの上で胡坐をかいた。


「冗談やって。当たり前やろ? 試合に負けただけやなく、弱った相手まで闇討ちし出したら、俺もう立ち直られへんわ」


「……弱ってんのは、お互い様だろ?」


 ともかく、矛を引く様子だ。未だ油断はならないながら、コテツの態度にユウキはひとまず拳を解いた。


「そりゃまぁ。さんざんボコボコに殴ってくれたからなぁ~、んで、コレ」


 コテツは腕を伸ばすと、そこから紙袋を一つ、ベッドの下から差し出した。


「今朝、世話んなってた会長が送ってくれてん。関西土産で~す」


冗談めかして言うコテツが、紙袋の中から箱を取り出す。箱を開ければ、中身は包みに入った餅菓子だった。ユウキは差し出されたそれをじっと見つめ、恐る恐る受け取った。


「……毒入りか?」


「はは、練りからしくらいは入ってるかもな?」


「……何を考えてる?」


 相変わらず掴みどころのない態度のコテツに、ユウキは目を細めて尋ねた。

 

 この学園で、試合に敗れたものが勝者の部屋を探し出して訪れる理由といえば、先ほどのように復讐目的が妥当だろう。負かされた上に犯されるのだ。それが厳罰だとわかった上で、屈辱に耐えられない者が現れても珍しくはない。

 

 ……ただ、そうでないなら、ではどうしてこの男はここにいるのか。この菓子箱も。わけがわからず、ただ訝しむように睨んでいた。


「ん~、なんや休み貰っても落ち着かんくてさぁ。手土産もってちょっかい出しに行って、いい雰囲気になったらヤれるかなって」


「帰れ、絶対ない」


 断じるようにユウキはそっぽをむく。コテツはそれすらおかしそうに笑っていた。

 

 包みを一つ取り、菓子を口に放り込む。そんな気ままな様子のコテツを眺めつつ、ユウキはふと、口を開いた。

 

「……普通、負かされて犯された翌日に、その相手の部屋に来るか? 仕返しだろうが、何だろうが……」


「いや、ないやろ~」


「…………」


「はは。でも、言うたやろ? ヒマやったって。わざわざ重い腰上げてちょっかい出しに来たってんで? 俺、この学園やと新参やさかい、しかも他の奴らはな~んか露骨に敵視してくるし、話し相手もろくにおらんねん」


 その理由は分かる。特待生だ。学園からのその待遇と、それに見合った実力が目立てば、多数の生徒から嫉妬の念を向けられるのは理解できる。

 

 チャンピオンのような存在でもなければ、ただでさえ勝者が憎まれるような環境だ。自分も、信用ならない敵が少ないといえば嘘になる。


「…………」


 少なくとも自分は、負けた相手にすぐ会いに行くなんてできない。きっと、コイツは勝つことほどに、負けることにも慣れているのだろう。


 大口を開けて欠伸をしているコテツを見て、ユウキは息を吐き、小さく呟いた。


「……その」


「んー?」


 聞き取れずにコテツが聞き返すが、ユウキは目を逸らし、いいかけの言葉を止めた。


「…………」


 何かを言いかけ、黙っていれば、コテツが不思議そうに顔を覗き込んでくる。ユウキは意を決したように咳ばらいをして、口を開いた。


「…………。……無理やりに犯して、悪かったな……」


 どうしても照れを捨てきれず、目を合わせないまま、ユウキはぼそりと呟く。


 聞いたコテツはぽかんと口を半開きにし、そのまま固まってしまった。


「……あぁ~あ、先回りされてもうた」


「?」


 やがて、少しの間の後にコテツは独り言のように呟くと……、快活な笑みを浮かべ、首をかしげるユウキの肩に腕を回した。


「お……、おいっ!?」


「うっし、遊び行くか♪」


「いや……何!?」


 何事かと思えば、突然、そんなことを言い出す。馴れ馴れしく肩から抱き寄せられ、されるがままになりながら、ユウキは目を見開いた。


「どういうつもりだ、俺たちは昨日試合……」


「え~、せっかく襲いにきたったのに。また寝るんやったら今度こそ犯してまうかもな~」


「……ホントに何しに来たんだ、お前……」


「だから、暇つぶしやって」


 謝った手前、ユウキは手を振り払うことには躊躇いを覚え、静かにコテツの腕を肩から外した。


「俺は……いかない。体を休ませる」


「休ませるって、もう十分寝とったやん」


「いや、……まだ寝る」


「眠たくないのに無理やり寝たり、こんな場所で閉じこもってる方が体に悪いって」


「……でも、寝る……」


「な? うっし、決定」


 コテツの肩の下に手を回し、無理やりに起こした。戸惑うユウキに、コテツはその背中をバシバシと叩いて強引にベッドの上から降ろさせる。


「お、おいっ!?」


「軽いなぁ、おんぶしたろか?」


「うるさい……、負けたくせに」


「言うなぁ~、ま、ゆーくんSやもんなぁ~」


 上着どこ? そういいながら、コテツは勝手に部屋を物色し始めた。ユウキはその無遠慮な足を手加減して蹴りつつ、再びベッドまで腕を引いて戻し、嘆息を吐いた。

 

 ……油断なんてできない。もしかしたら、自分への罠かもしれない。

 

 コイツとの距離感は、それぐらい疑っているのがちょうどいいのかもしれない。何にしても、このまま大人しく帰ってくれる様子でないことだけは分かった。



「……着替えるから、待ってろ」


「お~う」


 不機嫌そうに目を閉じ、ユウキがそういうのに、コテツはベッドに寝転がりながら手を振って応えた。



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