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ドガァッ!! グボォッ!
「がっ、げはっ!」
「このっ……、調子に乗ってんじゃねぇぞ! テメェっ!!」
ガッ! ドゴ! グボォッ!
勝負の最中に虚を突かれた自分自身への怒りをもぶつけるように……アラトに熾烈なラッシュをかけていく。
殴り合いの劣勢の中、なんとかカイチを力任せに押し倒し、スリーパーホールドの体勢に捕らえたアラトだったが……、ボクサーとして高い技量を持つカイチから全力の殴打の雨を食らっていたアラトには、もはやそのままカイチを仕留めきる体力が残っていなかった。
腕の力が緩んだほんの一瞬の隙に、かろうじてアラトを突き飛ばして脱出。カイチは命からがら再び立ち上がり、今に至っていた。
「クソ……、この、死にぞこないの分際で……! オラ! 今度はきっちり仕留めてやるよっ!!」
「げはっ……、がはぁっ! ……はぁ……はぁ……っ!」
一歩間違えば、そのまま締め落とされていたかもしれない……、アラトの必死さに恐怖を感じてからは、カイチは焦燥感を浮かべつつも、一切の油断を捨てた。
持ちうる技術をすべて総動員し、反撃をもらわないよう細かに体を揺らしつつ、粘り強さに定評のあるアラトの精神を削るように小刻みかつ大胆に拳を繰り出していく。
あたかも練習中のボクサーがサンドバックを相手取るように……、無駄のない綺麗な動きで繰り出される冷徹なまでのパンチが、全てアラトの頬や腹に命中していく。
「がぁっ!! ……はぁ……はぁ……!」
「はっ……まだ、意識あんのかよ……。……休ませねぇぞ、おらぁっ!!」
容赦のない攻撃でアラトはロープ際にまで至り、反射的に腕をロープに絡めてもたれかかった。乱れた息でカイチを睨むも、すぐにその拳が飛んでくる。
ドボオオオォォォ!!
「ぶっ……ぁぁ…………」
垂直に飛んできた拳が、見事にアラトの鼻先を押しつぶす。アラトは短い呻きを漏らし、鼻血と唾液を散らした。
ドガァッ!! ドゴ!
「がぁぁ……っぁぁ……っ!!」
ぼたぼたと出血が見られても、カイチは全く気にした様子もなく、左右のコンビネーションでアラトを嬲っていく。鮮血の粒がキャンバスにしぶき、グローブが肉を打つ音がリングに響いた。
ドガァッ!! グボォッ! ドゴ!
「ぐ、ぶっ……っぁ……があぁ……っ!」
グボォッ! ドボオオオォォォ!!
「がはぁ……ぁあ……が……っ」
ドボオオオォォォ!!
「当然だが、審判はいねぇぞ。……ギブか、あぁ?」
壮絶なラッシュの末、ついにアラトは糸が切れたように膝を崩した。
カイチはそこで拳を解き、前のめりに倒れ掛かったアラトをグローブで支える。カイチの胸に頬を預けつつ、激しい呼吸に連動して汗だくの背中が脈動している。
カイチもまた激しいラッシュを繰り出したばかりで息を乱しつつ、満身創痍のアラトに耳元で囁く。
「…………、ざ、けんな……っ」
「そうか、よっ!」
負けず嫌いが板についたアラトの答えは、大体読めていた。
カイチはアラトの体を突き飛ばし、再び拳を構える。小刻みにステップを刻むと、ロープの反動で帰ってくるアラトの無防備な体に照準を定めた。
ゴッ! ガッ! ドゴ!
「げはっ、がはっ……っぁぁ……」
ドガァッ!! グボォッ!
「ごぁ……がぁ……っ!」
ドボオオオォォォ!! ドガァッ!! グボオオオォォォ!!
頬、腹筋、わき腹。その全身をまんべんなくを殴りつけていく。ガードもままならないアラトは唾液や鮮血を散らし、ただカイチの拳の勢いのままに揺れるばかりとなる。
「っぁ……」
ドボオオオォォォ!!
アラトはままにふらつき、ままにキャンバスに崩れようとする。……だが、カイチはそれを許さず、アッパーでアラトの体を救い上げるようにして無理矢理に立たせた。
再び、無防備な肉体がカイチの目の前に晒され、拷問めいたラッシュが続く。
ゴッ! ガッ! ドゴ!
「っぁ……ぁ…………っ」
ドガァッ!! グボォッ! ドボオオオォォォ!!
倒れ掛かる度に、顎から突き上げられるパンチによって起こされる。意識は薄れ、されど終わらない。生き地獄のように体を襲う衝撃と痛みだけが頭に響くようだった。
アラトが枯れた声で呻きをこぼす度、まるで力の差を見せつけるかのように、頬を振り抜かれ、腹を潰される。
……コイツに、潰される。胸の底で恐怖が渦巻き始める。
……ドボオオオォォォ!!
「……ぁ…………」
殺意すら秘め始めたストレートが、真正面からアラトの顔面をとらえる。
数秒経ち、顔面にめりこんだグローブが抜かれた時、……アラトはあっけない声を漏らし、がくりと膝を折った。
「倒れてぇか、あぁ?」
「っ……ぁぁ…………」
「仕方ねぇ、そろそろ終わりにしてやるぜ。……ど素人がボクシンググローブで俺に挑んだこと、精々後悔しやがれっ!!」
……ドボオオオォォォ!!
カイチが冷たい笑みを浮かべた、その直後……、アラトの顎下から突き上げるよう、盛大なアッパーが繰り出される。
アラトは全身が浮くほどの衝撃で頭をそらした後、そのまま背後に倒れた。
「はっ、勝負ありだなぁ、アラト? 最初の威勢はどこ行ったんだ? もう聞いてねぇか?」
小さい息をこぼすばかりで大の字に倒れたアラトを見下し、カイチが嘲笑する。
しのぎを削りあってきた同クラスの相手だからこそ、こうして拳で打ち倒した時の爽快感、その心を砕く勢いでの過剰な攻撃にすら充実感を覚えていた。
薄く目を開くアラトに見せつけるよう、高くグローブを掲げ、勝鬨を上げる。
遠くなった意識で、それでもカイチが自分を倒し、まるでボクシングの試合に勝利したかのように勝ち誇っている様子をしかと目の当たりにする。
それは……、意気込んで挑んだ勝負だからこそ、アラトにとってはこれ以上ないほどの屈辱となった。
(せっかく、鍛えたのに……こんな、ボクシング……野郎、に……っ!!)
それでもアラトは震える膝で起き上がろうと試みるも……、気力の糸はついに途絶え、そのまま意識を手放した。
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nensei
2019-09-01 08:19:10 +0000 UTCyukibou
2019-08-15 15:11:19 +0000 UTCcuckoo
2019-08-15 13:22:05 +0000 UTC