『ゆうたんっ! ゆうたんってば! あっち行こうっ!?』 『も~。ゆうたんは甘えん坊さんだなぁ~』 『ゆうた~んっ♡ ハグしよっ♡ ハグ~♡』 夢の中で、背の高い美少女が話しかけてくる。 黒髪ショートで……。豊かな乳房がばるんばるん揺れているが、そんなこと気にもせず走り回っていた。 『美瑠玖……』 彼女の名前は、雑賀美瑠玖。 名前の通り、ミルクのような、あまぁ~い香りがする。 歳納優太は、美瑠玖の匂いが大好きで……。毎日のように嗅いでいた。 ……また、あの頃に戻れたらなぁ。 そんな風に思っていると……やかましい音が、耳元で鳴り響いた。 ◇ 「起きろぉ~~~~!」 「うわぁっ!?」 優太が顔を上げると、仏頂面の女子が、目の前に立っていた。 彼女の名前は、渋谷すずめ。黒髪ショートボブの、やや釣り目気味な美少女である。 見た目の通り気が強く、クラス委員長を務めている。 「な、何の音!?」 優太が驚くと、すずめは、スマホを顔の前に突き付けてきた。 「これです。こ~れっ。何度声をかけても起きないので、最大音量のアラームをぶちかまさせていただきました。悪く思わないでくださいよ? ま~た委員会に来ないと思ったら、教室で、ぐぅすかぴぃすか眠っていたんですから。歳納くんのせいです。反省してください!」 「そ、そんな。捲し立てないでよ……」 「全く……。少しは、クラスの代表という自覚を持ちなさい」 ため息をつくすずめだが……優太は、なりたくてクラス委員長になったわけではない。 一年生の時もやっていたから。という理由だけで、二年生でも、押し付けられてしまっただけである。 すずめとは、一年生の時に同じクラスだった縁で、今もこうして交流が続いていた。 交流……というか、説教されている時間がほとんどなのだが。 「これ、委員会で配られたプリントです。ちゃんと読んでおくように」 「ありがとう」 「はぁ……。なんで私が、わざわざこんなことをしなければならないんですか? 歳納くんが、真面目に委員会に参加してくれれば、いちいちこの教室まで来る必要もなかったのに」 「いや……。……前も言ったけど、プリントなら、自分で先生のところに行って、受け取るからさ。わざわざ渋谷さんが来なくても――」 「はぁっ!? 私はそんなこと言ってないじゃないですか!」 「え、あ、うんっ。ごめんごめん」 いきなりすずめが怒り出した理由がわからず、優太は戸惑っている。 すずめは……顔を赤くしながら、優太に聞こえないような声で、小さく呟いた。 「……少しは考えてくださいよ。毎回、教室まで届けに来てあげてる理由を」 「……?」 「とにかく! 次の委員会は、遅れたら許しませんからね! 罰金二億円です!」 「に、二億って……」 「それがイヤなら、今日は罰として、私の買い物に付き合ってください!」 ふんすっ……! と鼻息を荒くするすずめに、優太は申し訳なさそうな表情を向けた。 「ごめん……渋谷さん。僕、今日は……」 優太の様子を見て、すずめの表情が、段々と曇っていく。 悔しそうに、拳を握って、舌打ちをした。 「……あの人のところに、行くんですね?」 「うん……。だから、今日は無理なんだ」 「歳納くんは、もうクラスメイトではないんですよ? ……本来『不登校の生徒の家庭訪問』は、そのクラスの委員長の仕事です。歳納くんがすることではありません」 「そうかもしれないけど……。……それを言ったら、クラスメイトでもないのに、僕にプリントを届けに来てくれた渋谷さんは、どうなるのかな」 「わ、私はっ……。……あぁもう! 勝手にすれば!? 知らない!」 「あっ……」 すずめは、ドタドタと大げさに歩きながら、教室を出て行ってしまった。 しかし、すぐに戻って来て、優太の胸を、拳でどついてくる。 「な、なに?」 「明日! お昼! 弁当を作ってきてあげるので、何も買ってこないように! わかりましたね!?」 「わかっ……たよ。ありがとう」 「ふんっ! さようなら!」 怖い人なのか、優しい人なのか……わからない。 と、いうのが、優太のすずめに対しての感想だった。 ……これだけあからさまな好意を向けられて、気が付かない方がおかしいのだが。 優太の場合――好意を寄せている女子がいるため、他の女子からのそれには、気が付きづらいのかもしれない。 ◇ 「ありがとう優太くん。今日も来てくれて……」 「いやいや。僕が、美瑠玖と喋りたいだけですから……」 「……本当に、ありがとうね」 優太が訪れたのは――幼馴染の、雑賀美瑠玖の家だ。 美瑠玖の母が出迎えてくれたのだが、なんだか昔よりも、ぐったりしているように見える。 当然、単純に年を重ねただけ……という言い方もできるのだが。 それ以上に、何かを背負っているような重さを感じた。 優太は、玄関を上がり、階段を昇って……美瑠玖の部屋の前に立つ。 数回ノックして、声をかけた。 「美瑠玖? 優太だけど……」 カタカタと、キーボードを叩く音が聞こえる。 返事はない。 「もうすぐ夏休みだね……。こ、今年はさ。海……とか、どうだろう。バーベキューとかさ……。昔、よく一緒にやったよね!」 やはり、返事はない。 優太は、小さくため息をついてしまった。 美瑠玖はかつて、活発な少女だった。 背の低い優太を引っ張ってくれる、お姉さんのような存在だったのだ。 異変が起きたのは、中学二年生になる少し前のことである。 美瑠玖は、インフルエンザにかかり、一週間程度休んだ。 休み明け、学校に久しぶりに登校した美瑠玖は……。結局、授業を最後まで受けることができずに、早退してしまった。 ……その日から、一度も登校していない。 当時、美瑠玖と同じクラスではなかった優太が、友人から聞いた話だと、少しダルそうなくらいで、特に普段の美瑠玖と変わりはなかったのだという。 一体……何があったのだろう。 高校は、幸い……優太と同じところに合格できたのだが、一度も通っていない。 こうして、何度も家を訪れているが、声一つ聞かせてくれなかった。 「……美瑠玖。僕……なんか、しちゃったかな」 この質問だって、もう何度目かわからない。 決まって、返事が戻ってくることはなかった。 いくつか、一方通行の質問を繰り返して……。 何の成果もなく、帰宅する。 こんなことを、もう何年も繰り返している。 自分が傷つく……という以上に、美瑠玖の母親が心配だった。 人気者で、文武両道で、活発な明るい美少女の、突然の変貌。 自分が親だったら……と思うと、気が気ではない。 実際、美瑠玖の父親は、変わり果てた美瑠玖を受け入れられずに、乱れ……。 ……結局、離婚をしてしまった。 「……お邪魔しました」 リビングにいる、美瑠玖の母親に、一言かける優太。 「待って。優太くん」 美瑠玖の母親は、泣きそうな顔で、優太を引き留める。 「……無理、しないで良いのよ? 本当に……」 「……大丈夫です」 「ごめんね……。……ごめんなさい」 優太も、泣きそうになりながら……美瑠玖の家を後にした。 ◇ 「美味しいですか?」 「うん……! すごいよ。やっぱり渋谷さんは、料理が上手いなぁ」 「当たり前ですよ! いっぱい勉強しましたからね! ……えへへ」 屋上で、すずめの作った弁当を食べている優太。 味付けが完璧で、なおかつ健康を意識したメニューなので、大満足だ。 それでも……表情は、晴れなかった。 「……あの。本当に美味しいと思ってますか?」 「へ?」 「だって……。……とっても暗い顔をしてるじゃないですか。ま、マズいなら……。正直に言ってください」 「マズくないよ! すごく美味しい。……ごめん。暗い顔は、いつものことだと思うから……」 「いつものことなのが問題なんですよ! ……雑賀さんの件ですか?」 雑賀……。 今の苗字に、優太は全く慣れることができない。 どうしても、別人の話をされているような気持ちになってしまう。 地面に視線を落として……優太は、黙り込んでしまった。 すると、すずめが……手を握ってくる。 「えっ……?」 「わ、私が、いるじゃないですか……」 「……?」 「私じゃ、ダメですか……?」 すずめの顔は、真っ赤になっている。 緊張のせいか、握られた手は震えていた。 勇気を出して……告白したのだが。 この鈍感な男は、状況を把握できていない。 そして、彼なりに考えて……間違った返事をした。 「えっと……。一緒に来てくれるってこと?」 「は?」 「美瑠玖の家に……」 「は、はぁ? なんで、私が……」 「え? じゃあ、どういう……」 「……くっそ」 「く、くそ?」 すずめは、大きくため息をついた。 握っていた手を、振り払って、優太を睨みつける。 「あ~はいはいわかりました。わかりましたっ! 行ってあげますよぉ一緒に! 私が……ガツンと言ってやりますっ!」 「が、ガツンって……。……あんまり、酷いことは言わないであげてほしいんだけど」 「私をなんだと思ってるんですか……。さすがに、不登校の生徒に、失礼なことは言いませんよ……。……私は、普段、歳納くんが、どれだけ雑賀さんのことを想ってあげているのかを、伝えにいくだけです」 「それは……」 「じゃないと! とっ……歳納くんが、可哀想じゃないですか」 「渋谷さん……」 すずめは、顔が赤いことを誤魔化すように、優太に背を向けた。 「……早く食べてください。昼休みが終わってしまうので」 「うん……。……ありがとう。渋谷さん」 「ふんっ……」 こうして、放課後……。すずめも、美瑠玖の家に行くことになった。 ◇ 「は、はじめましてっ! 渋谷すずめです!」 「あら……。ふふ。そんなにかしこまらなくたって良いのに」 「いえいえ! そういうわけには……! ……これ、つまらないものですが、召し上がってください!」 「まぁ……! ありがとう!」 すずめは、照れくさそうに頭をかいている。 さすが……真面目な渋谷さんだなぁ。と、優太は後ろで笑っていた。 「えっと、雑賀さっ……。……美瑠玖さんの部屋は――」 「二階だよ。……お邪魔します」 「えぇ。……本当に、ありがとうね」 美瑠玖の母親の、声のトーンに、渋谷は少し思ったことがあったようだが、そのまま二階へと向かった。 「ここですか……」 「うん……」 「……ふぅ」 すずめは、緊張をほぐすために、深呼吸をする。 よしっ……。と、小さく呟いてから、ドアをノックした。 「こんにちは! 私は渋谷すずめです! 歳納くんとは、親しくさせていただいてます!」 がたっ……! と、音がした。 「雑賀さんっ! お元気ですか! いきなりやって来てしまってすいません! 今日は、お話があってきました!」 「こ、声……デカくない?」 「ドア越しですから!」 「そっか……」 今思うと、自分の言葉に返事がなかったのは、声が小さかったからなのだろうか……と、優太は勘違いをする。 扉の向こうでは……。 背の高い、髪の伸び切った美少女が、慌てたようにドタバタしている。 ――ゆ、ゆうたんが、彼女、連れてきたっ……!? 突然の出来事に、パニック状態だ。 「あの! できれば直接会ってお話がしたいです! ドアを開けても良いですか!」 「だ、だめっ!」 「……美瑠玖」 美瑠玖の声を聞くのは……数年ぶりだ。 優太は、感動して、涙が出そうになったが……。何とか堪えて、ドアの前に立つ。 「美瑠玖、話……できないかな。少しで良いんだ。頼むよ……」 「や、やっ、だ……」 「そんな……」 「か、彼女、できたんだねっ! その人と、仲良くして! 私のことなんて、もう、忘れてっ……!」 「バカ言ってんじゃないですよ! この引きこもりニートっ!」 「渋谷さんっ!?」 「うっさい! もう、ドア開けますからね! 鍵くらいぶっ壊してやりますよ! このあんぽんたんっ!」 「まっ――」 思いっきり、ドアを開こうとしたすずめ。 鍵がかかっているだろうと思って、力を込めたのだが――あっさりと開いたために、バランスを崩して、尻もちをついてしまった。 「あだぁ~っ!」 「だ、大丈夫? 渋谷さん……」 「あっ、あっ……」 薄暗い部屋の中から……こちらを見ている美少女がいる。 雑賀美瑠玖――高校二年生。 身長は、中学生の時からさらに伸びて、170センチを軽く超えていた。 短めに切りそろえられていたイメージの髪は、好き放題伸びている。 極めつけは……おっぱいだ。 よれよれのTシャツから、谷間が顔を覗かせている乳房は――おそらく、Jカップ程度はあるだろう。 ハーフパンツからチラチラと姿を見せる太ももが、ムッチムチでドスケベだ……! そして――。 部屋が開け放たれたことにより、密室空間で熟成されていた、成長期の繁殖誘発甘々雌フェロモンが、一気に漏れ出してくるっ……! 「けほっ、けほっ……。な、なんですか。この匂い……」 「……美瑠玖だ」 この匂い……この甘さ……! 自分が知っているよりも、クリーミーさが増し、より一層しつこい甘さになっているフェロモン。しかし、それでも……懐かしさを感じた。 優太は、おそるおそる、部屋に入ろうとする。 美瑠玖は、突然の出来事に、ぼんやりしていたが、すぐにハッとして、ドアを閉めようとした。 「待ってっ! 美瑠玖!」 「いやだっ! 来ないでっ!」 「どうしてっ……! なんで僕を、一人にしたんだよっ!」 「えっ……」 美瑠玖が、戸惑ったような視線を優太に向けた。 「僕……。ずっと、寂しかったんだよ? お姉ちゃんみたいに思ってた美瑠玖が、急にいなくなってさ……。……好きなんだ。美瑠玖のこと。初めて会ったときから、今日まで……。一秒だって、美瑠玖のことが頭から離れない! だからっ……!」 「ちょっ、まっ……待ってっ……。……恥ずかしいよ。ゆうたんっ……」 「あっ……!」 優太は、自分がとんでもなくキザなセリフを吐いたことに気が付いて、真っ赤になった。 そのすぐ後ろで……笑い声が聞こえる。 「渋谷さん……?」 「あっはっはっ……。ごめんなさい。いやぁ~。面白すぎますよ。なんですか? このベッタベタな青春お遊戯会は! あはははっ! ……良いもん見せてもらいました。あとは――二人で、話し合えますよね?」 すずめは、美瑠玖を真っすぐに見つめた。 「……話すっ、から……。……ゆうたんを、取らないで……」 「はぁ~ん。まるで私が、悪者みたいじゃないですか。……先、帰りますね。歳納くん。明日、しっかりと報告するように。わかりました?」 「あ、う、うん」 「じゃ、私はこれで」 「渋谷さんっ!」 「はい?」 「……ありがとう。本当に。……渋谷さんのおかげだよ」 「ふんっ。……そうでしょうね」 すずめは、普段よりも誇らしげに鼻を鳴らして、帰って行った。 ◇ 「うぅ……。歳納くんっ……!」 ……号泣しながら帰ったのは、彼女だけの秘密である。 ◇ 「最初は、何でもないことだったの」 リビングに移動して……。母親の見守る中で、美瑠玖は静かに語り始めた。 「インフルエンザになるまで、一回も学校休んだことなくて……。なかなか治らない間は、一生このままなんじゃないかって思ったし、体重もすっごく落ちた。髪の毛も……なんか、ぱさぱさしてたし、たった一週間で、私は別人になっちゃったんじゃないかって思ったの」 指を組みながら、小さく息を吐く。 「学校に行くのが、ちょっとだけ怖いなって……。本当に、ほんの少し、そう思っただけなのに……。……教室に入って、授業を受けてたら……全然ダメになってた。普段より、声が出なくて、顔も、なんか不細工で。体育も、できる気がしなくて……! ……そしたらもう、全部怖くて――。ちょっとだけで良いから、家にいたいって思ったの。だけど……そこで逃げちゃったのが、ダメだったんだね」 重苦しい空気の中、美瑠玖は必死で言葉を紡いだ。 「最初は、もう一週間だけ……って思ってた。その間は、ずっと食欲がなくて、やつれて……。……こんなんじゃ、ゆうたんに会えないって思ったの」 「えっ……。……僕?」 美瑠玖は、小さく頷いた。 「ゆうたんも言ってたけど……。……私、お姉さんみたいだったでしょ? だから、ゆうたんに迷惑かけたくないって、思って……。そしたら、食べなきゃって思って。食べすぎちゃって、肌が……ボロボロになったの。こんなんじゃ、ますます会えない……。ダメ……。あぁ……。って……。……その繰り返しで、抜け出せなくなって――今日になっちゃった」 「じゃあ、僕に会ってくれなかったのは――」 「そう……。……だ、大好きな、ゆうたんに、嫌われたくなくって……」 「美瑠玖……」 「……青春ねぇ」 「っ! お、お母さんっ……!」 いきなり茶化されて、美瑠玖は顔を真っ赤にして照れている。 美瑠玖の母親は、美瑠玖のボサボサの脂ぎった髪の毛を、わしゃわしゃと撫でて……ホッとしたような表情を浮かべた。 「少しづつで良いの。……あなたらしく、生きてくれれば、私はそれで十分だから……ね?」 「……うん」 頭の上に乗せられた手を握って、美瑠玖は微笑み返した。 重苦しかった空気が、一気に軽くなったように感じられる。 「で、あの。……急な話なんだけど」 美瑠玖の母親が、優太に申し訳なさそうな表情を向けた。 いや、なんだ、この表情は。 少し、いたずらっぽさのスパイスが、混ざっているような――。 「私ね? 今日から少しの間、出張することになってて……。……美瑠玖、この数年間で、自分のことが何にもできなくなっちゃったから、仲直りしたなら……。……優太くんが、この家に泊って、美瑠玖の面倒を見てあげてほしいの」 「えぇっ!? と、泊まるっ!?」 「ちょっとお母さんっ! 私、そんなダメダメな子じゃないよ!?」 「んふふ。無理して、体壊すよりはマシでしょう? ……明日と明後日は学校だけど、その後は土日だし、タイミング的には、悪くないと思うんだけど……。……どうかしら? 思春期の男女が、一つ屋根の下……! 願ったりかなったりでしょ?♡」 「もぉ~~!」 美瑠玖は、顔を真っ赤にして、母親をポコポコと叩いている。 優太も、真っ赤だが……。……そう言えばこの人は本来、こういうイタズラっぽい人だったなと思い出す。 突然の提案に驚いたが、よくよく考えてみれば――断る理由がない。 美瑠玖と、二人っきり……♡ あの甘い匂いを、久々に嗅いでから、優太は正直なところ、大変ムラムラしていた。 その上――両想いであるということも判明している。 「……わかり、ました。泊まります。この家に……」 「ゆ、ゆうたんっ……。……無理、しないで良いんだよ? 学校、あるのに……」 「いやいや。たった二日だしさ。……それに、話したいこと、たくさんあるから」 「うぅ……。……はぁ~。……ゆうたんが、そう言ってくれるなら……」 「決まりね! じゃあ少し早いけど、私はもう今から家を出るわ! あとは若い二人で、わちゃわちゃやりなさい! ではっ!」 「お母さんっ!?」 行ってしまった……。 ……ついちょっと前まで、陰鬱な表情を浮かべていた人と、同一人物とは思えない。 二人きりになった二人は……。 モジモジしながら、相手が先に喋り出すのを待っていた。 しかし、間が持たず……。美瑠玖の方から、すずめの持って来てくれたお菓子を優太に手渡し、自分も封を開けて食べることで、会話の入り口を模索する。 「んっ……! おいひぃ……!」 「……ははっ」 「な、なに? なんで笑うの? なんか、変だった……?」 「違うよ。……美瑠玖が何かを食べてるところを見るのが、久しぶりだったから」 「なにそれ……。や、やめてよ。恥ずかしい……」 「えへへ……」 「も、もぉ……」 照れつつも、どうやら本当に美味しかったようで、すぐに二つ目を手に取る美瑠玖。 「……私、太ったでしょ?」 「へ?」 「ゆうたんの知ってる、頼れる美瑠玖お姉さんは……。もっと、シャキってしてて、すぅ~ってしてたでしょっ?」 「すぅ~って、なんだろう……。……全然、太ってないように見えるけど」 「嘘だよぉ」 美瑠玖は、対面の席から、優太の隣に移動した。 よれよれのTシャツの、裾の部分を持ち上げて……。 ……自分の腹部を、さらけ出してきた。 「ちょっ、えっ、美瑠玖っ……?」 「見てよ……。お腹、ぷにぷにっ……。太ったのっ」 ぷにゅぅ♡ むにぃ♡ 決して、肉が駄々余りしているというわけではないが……。確かに、指で摘まもうと思えば摘まめる程度には、育っている。 「これを見ても、太ってないって言えるの?」 「……」 「……ゆうたん?」 「……あ、ごめんごめん♡」 Tシャツを捲ったために、もわわぁ~んっ♡ っと美瑠玖の甘々なフェロモンが、香ってきたのだ。 雄を強烈に誘惑する、金玉煮込み促進フェロモン……♡ 雌の要素がたっぷりと詰まった、魅惑の香りに、うっとりしてしまう。 「……♡」 「あ、も、もしかして、臭かったっ……!? 三日くらい、お風呂サボってるからっ……!」 「臭いだなんてとんでもない! ……ずっと、嗅いでいたくなるような匂いがするよ?」 「もぉ……! そういう冗談はやめてよっ……!」 「……触っても、良い?」 「へ?」 「その……。……お腹」 「んぇえぇ……? ……なんでぇ?」 「なんていうか、あの……。み、美瑠玖と会うの、久々だし? 肌に触れたいなぁっていうかさ、あ、あはははっ……!」 「……うん。良いよ」 まさかのOKが出たため、優太は心の中でガッツポーズをした。 ここ数年、シコのオカズは毎回美瑠玖である。 夢にまで見た生肌が、目の前に……♡ しかも、風呂に入っていないということで、とびっきり甘い匂いが、ぷわんぷわん感じられる。 もはやこれは、夢を越えているレベルで、ドスケベだ……! 優太は、ゆっくりと……美瑠玖の腹に、手を伸ばした。 ……むにゅぅう♡ 「うっわっ……♡ 柔らかいっ……!♡」 「やんっ……♡ ツンツンしないでぇ♡」 「も、もう少しだけっ♡」 ぷにゅぅ♡ むににぃんっ♡ つきたての餅みたいに柔らかい腹の脂肪を、夢中でプニつかせる優太。 可愛らしいへそに、視線が向かった。 好奇心に抗えず……指で突いてしまう。 「おぅっ゛♡」 「えっ」 「……っ!♡ も、もう、終わりっ! ゆうたんの変態っ!」 「ご、ごめん……♡」 いきなり出てきた、野太い声に、優太はますます興奮し……。 ――陰茎が、バキバキに硬直してしまった。 「ゆ、ゆうたんっ、それっ……♡」 「え? ……あっ♡」 股間部の膨らみを見て、美瑠玖は顔を赤らめた。 優太も、急いで手のひらで覆い隠す。 「も、もしかして……。えぇっ、えっ、エッチだった? 私……」 「……うん。すっごく。匂いも、お腹のプニプニ具合も……」 「プニプニはやめてっ……! ゆうたん、デリカシーないねっ!」 「ご、ごめん……。だけど……。……僕は、少しふっくらしてる方が、女の子っぽくて、好きだなぁ……」 「なに、それ……。……じゃあ、ゆうたん、昔の私は、そんなに好きじゃなかったってこと?」 「ち、違うよ! 昔からずっと、大好きだった……」 「あぅ……」 自滅した美瑠玖は、もう恥ずかしくて、優太の顔を見ることができない。 対面の席に座り直して、またお菓子を食べ始める。 照れすぎて、会話が続かないため……話題を変えることにした。 「あのさ。その……。……自分のこと、全然できなくなったって聞いたけど。具体的には?」 「あれは、お母さんが大げさなだけっ。……波があって、すっごく気分が落ち込む時もあったの。全盛期は……。……その、お風呂とか? ……トイレも、手伝ってもらってたけど。い、今は、別に、普通だから……」 「そっか……」 「なんでそんな、あからさまに残念そうな顔するのっ」 「ご、ごめん……」 美瑠玖は、もぉ……。っと、不満を露わにしてから、空になったお菓子の袋を、指で弄びつつ、優太に尋ねる。 「……ゆうたんは……お世話、したかったの? 私のこと」 「お、お世話って、いうか……。……なんか、寝かし付けとか、するのかなって」 「そんなに子供じゃないよ!」 「わぁっ、ご、ごめん」 「……したいの? 寝かし付け」 「いや……。……うん」 「変態」 「……ごめん」 優太は、モジモジしながら、顔を真っ赤にしている。 美瑠玖からすれば、久々の優太との顔合わせ。 思い返すと、自分は……この小さな男の、こういう甘えん坊なところが好きだったのだ。 美瑠玖は、おもむろに立ち上がり……優太の手を握って、ソファーへと誘導した。 そのまま、美瑠玖に流れを任せていると……。 胸の谷間に、顔を埋めさせるような形で、抱き締められてしまった。 「えぁっ、み、美瑠玖っ……!?♡」 「ゆうたんが、悪いんだよ?♡ こんなに、可愛いから……♡」 「あぅ……♡ あっ、ひぃ……♡」 風呂に入らず、しっかりと熟成した、甘ったるい匂いが……ポワポワ漏れてくる谷間に、顔を埋めさせられて、体の力が抜けてしまう。 むにゅぅ……♡ っと包み込んでくれる柔肌と、深みにいけばいくほど蒸れ感の増すフェロモン乳渓谷……♡ さらに、頭まで撫でられて……。もう、少しも動けなくなってしまった。 目の前にいる、フェロモンぽわぽわ高身長むちむち幼馴染を、むぎゅ~♡ っと抱きしめることしか、できなくなるのだ。 「う~♡ 美瑠玖ぅ~♡ うっ、あぅ~♡」 「ちょっと……♡ 赤ちゃんじゃないんだから♡ ……臭くない? おっぱい、汗でベタベタでしょ?」 「それが良いんだよぉ……♡ うぅ~♡ 好きぃ♡ これ、しゅきぃ♡」 「もぉ……♡」 夢中で甘える優太が愛しくて、美瑠玖は母性を感じ始めていた。 自分は、身長がかなり伸びたのだが、優太の方はあまり変わらないようである。 この身長差のせいで、より一層、優太が可愛く見えてしまうのかもしれない……。 乳汗しっとりへばりつき谷間に、優太の顔を埋めさせながら、愛情を感じていると……。……段々、エッチなことを言いたくなってくる。 「……ゆうたん、私の体、洗いたいの?」 「うん……♡ 洗わせてっ……♡」 「トイレも、一緒に入りたい……?♡」 「入りたい……♡」 「えぇ~?♡ 私……酷い時は、お母さんに……。……お、おまんこ、拭いてもらってたよ?♡」 「えぇっ!?」 「ゆうたん……拭けるぅ?♡ 私のおまんこ……♡ おしっこしぃしぃする穴、どこについてるか、わかってるのぉ?♡」 むぎゅぎゅっ……♡ 発情して、抱き締める力が強くなる美瑠玖。 顔はさらに奥へ沈んでいき……。谷間熟成しっとりフェロモンが、ベタベタに付着した、夢のような谷底に到達するっ――♡♡♡ 「げぁっ――♡ あ、甘ぁ゛♡ あぅ♡ これぇ♡ これすごっ♡ ほぉんっ♡」 「どうしたのゆうたん♡ 私のおっぱい、やっぱり臭いの?♡」 「臭くないっ♡ 逆ぅ♡ 良い匂いすぎるぅ♡」 「……やっぱり、そうなんだ。私……だいぶエッチになっちゃってたんだね?♡」 美瑠玖は――察していた。 自分のフェロモンは、甘いのだと。 特に、運動しなくなって、少し肉が増えてからは、蜂蜜のような、まろやかでとろみのある匂いがするようになっていた。 そこへさらに、本来の、生まれ持った奇跡の甘々ミルク体臭が混ざり合って、最強の睾丸ムカつかせフェロモンに仕上がっているのである。 「ゆうたん、私のこと、好きぃ?♡」 「好きぃ……♡ 美瑠玖のことぉ♡ 大好きぃ♡」 「やった~♡ ……ねぇゆうたん。私のお世話、してくれるんだよね?♡」 「うんっ♡ するっ♡ なんでもするぅ♡」 「じゃあ……。……おまんこ、痒いから、掃除してっ……?♡」 「へぇあ……っ! お、おまんこぉ!?♡」 「うん♡ 三日も洗ってなくて……。女の子の悪いところ、少しも隠せなくなった、フェロモンくっさいおまんこ……だよ?♡」 美瑠玖は、一旦優太を横に座らせて……。短パンを脱ぎ始めた。