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隣人は虎おっさん!#04『温泉に行こうや!』文字のみ



「初めてのひとり暮らしはどう?」


妹からの普通の疑問にギクリとしたのは、やましいことがある訳では無い。決して。


「え、あ、うん…。たのしいよ」

「良いな〜!早く私も一人暮らししたーい!」

「生実(いくみ)も来年にはできるでしょ」

「そうだけど〜」


連休の4日目。

今年は6連休なのであと2日休みを残したこの日、おれは家族で温泉旅行に来ていた。

っていうか6連休ってことは1日学校に行けばまた週末休みなんだし休み繋げてくれても良いのに。と思いつつ、おれは意外と高級だったりする旅館の備え付けの緑茶をすする。


旅行と行っても大した遠出でもない。

北関東なのでむしろ家族がこっち側に来たというくらいの距離だ。

ここで一泊してから、おれ以外の家族は東京のホテルに移動して都会見物する予定にしているらしい。う〜んパワフルだ。


「元気そうで安心したよ!命!」

「うん。みたまさんも相変わらずパワフルだね」

「あはは!元気が一番だからね!」


おれにとって母方の祖母にあたるこの女性。

若くしておれの母を産み、母も若くしておれを産んでいるので年齢的にはまだ50代前半。

とにかくパワフルで今回の旅行もこの祖母主導でスマホを駆使して計画したらしい。

おばあちゃんと呼ばれるのを嫌がって名前で呼ばせてるくらいだものな。実際見た目も若々しい。


「お父さんも来られれば良かったんだけどね」


と、母。

今回、父は仕事で来られないらしく女3人旅だそうで。

祖母の一文字みたま、母のたまお、妹の生実、ここにいない父の令慈(れいじ)、そしておれ命(みこと)の5人家族だ。ちなみに父は婿養子である。


つい数ヶ月前まで同じ屋根の下で暮らしてたので顔を合わせること自体は久しぶりということもないが、家族旅行なんて小さい時以来かもしれない。まあ1人いないけども。


女3人旅……実にかしましい。


旅館は、THE・温泉旅館といったゆったりした和室に年季を感じさせるものの、清掃が行き届いており不潔さは全く感じない。開いた窓から見える中庭にはこれまた手入れがしっかりされた立派な庭樹が植っており、その合間に鎮座する池の水音が涼しさを感じさせる。さっき見た時立派な鯉が悠々と気持ちよさそうに泳いでいた。


ところで、いわゆる旅館の”あのスペース”広縁(ひろえん)って言うんですって。

あとでそこで本でも読もう。


「ねねね。お兄ちゃん。東京で恋人できた?」

「ゴフッ…な、なに言ってんだよ。おれにそんなのできる訳ないだろ…」

「あらぁ謙遜しちゃって。孫だからって贔屓目抜きにしても大丈夫だよ」

「そうそう。身だしなみさえちゃんとしておけばそれなりに見えるものよ」


『恋人』……という言葉に一瞬よぎる、あの馴れ馴れし……もとい、人懐っこいあのしましまの顔。

お茶を噴き出してしまったのは、その顔を思い浮かべてしまったせいだ。

いやいやいや!違う違う!宇津木さんはそういうのじゃあ……!


いや、そりゃ宇津木さんみたいな人が恋人になってくれたらきっと毎日楽しいだろうな。なんて考えるくらいには意識してることは認めざるを得ないんだけど……。


「もう。まだ大学始まって1ヶ月ちょいだからね。そんなことより日々色々大変だよ。課題とか家事とか」

「なーんだつまんない」

「来年同じ質問してやろうか」

「やーだーごめんなさーい」


全く心の籠っていない妹の謝罪にやれやれとため息を漏らした。


時刻は午後5時。

まだ夕飯の時間には少し早い。積もる話も一通りは終わり、温泉もさっき一度目は入ったし特にやることも無い。


立派な温泉旅館だし、少し旅館内を散策しようかな。

何か面白いものがあるかもしれないし。


「ちょっと旅館の中見てくるよ」

「はーい行ってらっしゃい」


おれはふかふかの座布団から立ち上がり、浴衣の上から羽織りに袖を通し、前室から踏込を経て廊下へと出る。


廊下へ出た。

出たところだった。


おれは自分の目を疑った。


全く同じタイミングで隣の部屋から出てきた旅行客と目が合う。

見覚えがあるどころの話ではない。

ここ最近おれの心臓に負担をかけてくる、見慣れた縞模様。


「あれえ???」


宇津木マタタビさんがそこにいた。


👦🏻🐯


「まっさか旅館でもお隣さんなんてなあ!」


ガッハッハと豪快に笑う人懐っこい虎の顔に目尻を下げるおれの家族3人。

あ、知ってる。これ知ってるぞ。でっかいネコチャンを見る目だこれ。

思わぬアニマルセラピーに、どうしてこうなった……とぐったりしているのはおれだけのようで。


ええ、ええ。デッカイネコチャン、テンション上がりますよね。わかりますとも。

宇津木さんを見た瞬間の家族の目の輝き、はわわ…!感と言ったらもう。


たまたま同じ日程でたまたま同じ旅館のこれまたたまたま隣同士で旅行に来ていたことがついさっき判明し、『折角だからご家族にご挨拶を!』なんて宇津木さんが言うもんだから引き合わせてみたら、デッカイネコチャンにすっかりテンションの上がった猫好きの家族3人が『良かったらこのあと一緒に食事でも!』なんて言い出して、旅館の人にわざわざこちらの部屋に料理を持ってきてもらい、おれの家族と宇津木さんとで夕食を食べるという、訳のわからない展開になってしまった。


ほんとにどうしてこうなった……。


「うちの孫がひとり暮らしなんてちょっと不安でしたけど、宇津木さんみたいな親切なお隣さんがいて安心しました」

「うちの息子が大変お世話になってるみたいで」

「はわわ……に、肉球触ってもいいですか…?」


こらこら失礼でしょ!

なーんて言う気力も無いわ……。


もうね、料理に集中しましょうそうしましょう。

あーさすが高級旅館!お料理も結構なお手前で!川魚が美味しいですねえ!


「命くんにお世話になってるのはむしろボクの方ですわ。こないだもカレー作ってもらったり、サンドイッチ作ってもらったりしたんですよ」


なーにが命くんじゃ。

いつもボクちゃんボクちゃん呼んでくるくせに。


「あらまあ!命に料理仕込んでおいて良かったねえ」

「いいなあ!あたしも宇津木さんにサンドイッチ食べてもらいたい!」


それ餌付けのつもりでしょ!?やめなさい!


も、完全にでっかいネコチャン扱いの家族。

急にモテモテチヤホヤになった宇津木さんも満更でもないというか嬉しそうな顔をして。

別にそういうのじゃないんだろうけどちょっとモヤる!

なんて言うかこの人根本的に人間が好きなんだろうな……。そう考えるとおれへの人懐っこいあの態度も納得ができる。


「今日も一人で旅行に来てみたものの、今回は現地での人との関わり持てなくて時間持て余してたんで、命くんがいてくれて嬉しいですわ。こんな偶然あるもんなんですねえ」



誰?



文字で見るとお嬢様言葉にも見えるというネット上で語り種な関西弁ってこれかー!という発見はあったものの普段そんな喋り方しないじゃん!

関西人ってみんなこうなのかな?よそ様にはちょっと丁寧っていうか。


っていうかこんな高級旅館に一人旅ってあなた本当に何の仕事しているの。


「宇津木さんは温泉入りました〜?」

「旅館の温泉は着いてすぐ入りましたよ。命くんとは入れ違いだったんですかね」

「旅館以外にも温泉ってあるんですか?」

「このあたりちょこちょこ外湯があって、ここの旅館のアプリをスマホに入れておけば大体のところはアプリ見せれば入れますよ」

「あら便利!さっそく入れちゃおう!」

「宇津木さんはここ初めてではないんですか?」

「4回目ですかね。いわゆる穴場の外湯もあったりするんで、そういうとこ探すのも楽しくて来てまうんですわ」


ここまでずーっと家族と宇津木さんの会話。


「命もこんなしっかりしたお隣さんがいるなんて一言も言わないで…」


わざわざお隣さんの情報なんて言うかそんなもん!


「あとで一緒に温泉いこな❤️」


と、おれに言う宇津木さん。

はい。もうなんでもいいです……。


家族に友人(?)を引き合わせるのってなんでこんなに精神的に疲れるんだろうね!



🐯❤️👦🏻



食後、しばらく食休みしたあとでおれと宇津木さんは浴衣姿で旅館の外へと出た。

タオルと替えの下着と軽いお風呂セットを持って、街灯少ない田舎道を歩く。


「ほんまびっくりしたわ。ボクちゃんがまさか旅館でもお隣さんやなんて。これってもしかして運命?❤️なんてな!」


ガハハと大口を開け笑う宇津木さん。あ、ボクちゃん呼びに戻ってる。


「うちの家族、失礼じゃなかったですか?」

「ぜーんぜん!ボクちゃんの家族に会えて嬉しかったよー」


ニコニコしている。本当に嬉しかったんだろうなぁ。


カラコロと二人の下駄が地面とぶつかり合う。

夜に宇津木さんと会うのも、こうして2人で夜道を歩くのも初めてでちょっとドキドキしてしまう。

おまけにどこもかしこもぶっとい図体を一枚の反物で包んだような風体の浴衣は、宇津木さんによく似合っていた。

少し緩めの胸元、広い袖口からちらり見える腕、歩くたびにヒラヒラと翻る裾。

見慣れない隣人の姿にさらにドキドキしてくる。


そんなおれの気持ちをよそに、宇津木さんは迷う素振りもなくどんどんひと気の無い方向へ歩いてゆく。

温泉地とは言っても観光ナイズされすぎていないせいですれ違う人も全然いない。


「ボクちゃん」

「はい?」

「お手々繋ごっか❤️」

「………迷子になんてなりませんよ」


そういう意図じゃないのは解ってるが、宇津木さんのこのノリにも多少慣れたせいもあって上手い返しができた気がする。


「あはは!わかってるよ」


なんてね!慣れてない!

心臓バックバク言ってますね!


「オッチャンと手繋ぐの嫌か?」

「……嫌じゃないです」


むうっと若干膨んだ顔がかわいい。ずるい。


「ほな。失礼しますー」


空いた方の右手と宇津木さんの左手がぎゅっと繋がった。

誰かと手を繋ぐのなんて小さい頃以来じゃないかなあ。


まだ初夏の柔らかい風と気が早い虫の鳴き声。

そして宇津木さんの大きくてゴツゴツした手は暖かかった。

手汗かいてなきゃいいけど……。


「へへへ。仲良しさん❤️」


宇津木さんを独り占めにしたい。なんて大それたことは思わないけれど、自分にとって宇津木さんとのこの時間が一秒毎に特別なものになっていくのが解る。宇津木さんにどうしようもないくらい惹かれている。

正直に言うとキュンキュンして心臓が落ち着かない。

逆にどういう意図でおれとこんな手を繋いだりしてくれてるのかな。

……親戚の子供くらいの感じ?ありえそう〜……。


「なんかどんどん人里離れてますけど、本当に大丈夫ですか?この道」

「大丈夫大丈夫。アプリにも表示が無い超秘湯、特別に教えたるわ。まあ野湯に近いけどな!」


大丈夫かそれ。猿が入ってるとか無いか?

いやこれから虎と温泉に入るのに猿もなにも無いが。


「とは言え灯りとかはちゃんとあるから大丈夫やで」

「じゃあ良いですけど……」

「洗いっこしよなあ❤️」


洗いっこ!?待ってそれやばいんじゃ

やべ。勃起しそう。落ち着け。こういう時はお経を唱えるに限る。

般若〜心〜経〜〜〜〜


🐯👦🏻♨️


ずんずんと田舎道を突き進み、おれと宇津木さんは一つの湯場に辿り着いた。

カウンターは無人になっており入り口前の木箱に料金を入れるシステムになっている。

なるほどここは穴場だ。


「ここ、もはやアプリとか関係なくないですか?」

「せやな!でも二人っきりになれたやん?」


ええ〜……それどういう意味?

確かにアプリ使わない湯もあるなんて言ってないから、間違っても家族はこっちに来ないだろうけどさぁ。


木箱に二人分料金を入れ、少しほつれたオーソドックスな温泉らしい柄の暖簾をくぐると男湯と女湯で左右に分かれていた。

野湯に近いとは宇津木さんは言っていたが、自治体が管理している物件なのだろうか?朽ち果てているわけでは決してない。


屋根と壁はあるが、外気が頭上から入り込むような例えて言うなら東家に近い簡易的な脱衣所には、盗難なんて想定されていないのだろうが鍵などなく、脱衣カゴが木製の棚にマス目に並んでいる。なるほど。さっき持っていくお金はちょっとだけって言われたのはこれか。誰の服も置かれてないのでいまは誰も入っていないらしい。


脱衣所まで来た時点でようやく気付いた。一緒に温泉ってことは、お互いに裸になるってことで……。

いや、数日前宇津木さんの裸は存分に拝ませてもらったが、あの時は車の中だったし、自分は服着てましたし……。


ヤバいなんかまたドキドキしてきた。

落ち着け落ち着け深呼吸……

すぅー…は


「ボクちゃん何ボーッとしてんの?」

「うわぁっ!」


深呼吸の途中で急に話しかけられたもんだから驚いてしまい、驚いたおれはバランスを崩す。

勘のいい方ならもうお解りですね!お約束です!


ドッシーン!


「あたたた……」

「………」


倒れた先が何やら柔らかい感触のクッションがあり助かってしまった。

これもお約束ですね……。


「ボクちゃん大丈夫かあ?]

「ええなんとかもごご……」


いやあ、心なしかいいニオイがしますねえ。

あろうことかまたしても宇津木さんの股間クッションの上に顔面ダイブしていた。

しかも今回は……


「ボクちゃん、わざとやってない?オレは大歓迎やけど❤️」

「ぶはっっ!ま、まさか!そんな訳ないです!え!ふんどし!?」

「え、そうそう。浴衣やしさ」


顔面ダイブinふんどしモッコリ!

もうちょっと感触楽しんでおけばよかったか……?


「ふ、ふんどしなんてどこで買うんですか」

「え?ネットとかでも普通に売ってるけど、これは旅館近くの呉服屋やね」

「へえ〜!」


股間ダイブも2回目ともなると多少は慣れが発生したのか、すぐに立ち直るおれ。


「それよりボクちゃん、先行ってるで」

「あ、はい!すいませんすぐ行きます!」


ふんどしをするすると解き、全裸になる宇津木さん。

なんとなく視線を逸らしてしまった。

いくら誰もいないとは言え裸で並ぶのはちょっと恥ずかしいし先に行っててくれてよかった。


おれは浴衣を脱ぎ、なるだけ綺麗に折り畳んで脱衣カゴへ放り込み脱衣所から宇津木さんが歩いた後を追う。


脱衣所の奥側。これまた少しほつれた暖簾をくぐるとすぐに下りの階段があり、その先のたくさんの木々に囲まれた風情ある温泉が出迎えてくれた。


なるほどこれは秘湯だ。


秘湯と言っても決して狭くも汚くもなく、照明も清掃もきちんと保全されている。

こんな素敵な場所を二人で貸し切りとかなんて贅沢なんだろう。


「ボクちゃんはよおいでー気持ちええで〜」

「はいっ」


階段下の温泉に一足先に浸かった宇津木さんがこっちに手を降る。なんかのゲームのアバターみたいでちょっとかわいい。


「立派な温泉ですねえ」


おれは少し湿った階段を今度こそ転ばぬよう一歩ずつ踏みしめるように踏み締め降りていく。


「せやろ。やけど、もっと豪勢な温泉施設がこの先と、来た逆側にちょうどあるからみんなそっち行くねんな〜」

「なるほ……ど!?」

「危ないっ!」


一歩一歩足場を踏み締めていたが、話しながら最後の最後でまたもバランスを崩してしまう。

おれは体勢を立て直す努力をしたが、そのまま逆に前につんのめってしまい温泉の方向へと転がりかかってしまう。

その先には宇津木さん。


バッシャーン!


かかり湯をする余裕も無く、温泉に派手にダイブするおれ。


「いまのは危なかったな〜!大丈夫か?」

「は、はい……」


宇津木さんが受け止めてくれたお陰で特に大きい怪我は無かったものの、全裸の男2人が抱き合うこの体勢。

かなりアブない。


「すいません。さっきからおれ宇津木さんに助けてもらってばっか……で……」


抱き合ったまま顔を上げると眼前に宇津木さんのケモノ顔があった。

温泉の少ない照明に照らされコントラストが深くなった宇津木さんはいつもより精悍にも見える。

後ろからちょっと押されればキスできそうなくらいの至近距離におれの心臓が早くここから逃げろと言わんばかりにバクンバクンと脈打ち訴えかけてくる。



「あっ、す、すいません……」

「い。いや大丈夫大丈夫。頑丈にできてるから!気にすんなや!はっはっはー!!」


あれ?なんかちょっと気まずい空気が流れた気がする。

もしかしてちょっと照れてますか?まさかね?


「派手にダイブしたし、もうかかり湯なんて意味ないな!ちゃんと肩まで浸かりや〜」

「は、はい…!」


おれと宇津木さんは湯にしっかり身を沈める。


「「はぁ〜」」


ため息がハモってしまった。

なんで温泉って浸かるとはぁ〜って言いたくなるんだろうね!

ひと息ついたおれ達は取り止めなく会話を楽しむ。


「宇津木さん、こんな場所知ってるなんて旅慣れてるんですね」

「まーね」

「……エッチな旅行なんでしょ」

「ぶふっ!なに言うてんの!」

「あ。図星ですね」

「んふ❤️どうやろな?ボクちゃんやきもち妬いてくれてんの?」

「ぶっ!なに言ってんですか!」

「かーわいい❤️」

「もう!」


実際、宇津木さんが他の男……いや女かもしれないけど、とにかく他の相手とエッチなことしてるの想像したらちょっと嫌かもな〜と思わなくもない。


「実は大阪ってあんまり温泉が無いんよ。だから温泉好きでな」

「へぇ!そうなんですか?有馬温泉でしたっけ?有名じゃないんですか?」

「有馬は兵庫やね。まあ兵庫や和歌山行けば温泉そらあるけどね。大阪もゼロってわけやないし。まあとにかくそういうわけでコッチで温泉巡りが趣味になってるって訳。同時に運転もできるしなー」

「なるほど。大阪っていうか関西は行ったことないです」

「今度一緒にいく?言うて別になんもないけど」

「え!行きたいです!たこ焼き!」

「おうおうベタやな〜。まあでもええで。たこ焼き食べよな!」

「はい!」


なんて軽く口約束してしまったが、宇津木さんと一緒に旅行か……。

たまたま現地で会うのとは訳が違うし、心臓今度こそ止まるかも。


「宇津木さんと仲良くなってまだ数日しか経ってないなんて信じられないです」

「そうなあ。オレもそう思うわ」

「最初はでっかいし、ひっついてくるし、なんか距離感近くて困惑してましたけど……」

「ありゃりゃ……」


苦笑いの宇津木さん。


「でも今は宇津木さんといて楽しいです」

「ほーか。そらよかった。オレもボクちゃんの料理美味しいし……ちゃうな。ボクちゃんと食べる料理美味しいし、こんなお隣さん来てくれて嬉しいな〜おもてるよ」

「こんなおれでも、宇津木さんの役に立ててるなら嬉しいです」

「役に……ねえ。そういうことじゃないけど、まあええか」

「?」


「ところでボクちゃん」

「は、はい?」


湯の中でグイっと距離を詰めてくる宇津木さん。

ち、近い近い。首筋に鼻息がかかる。


「こないだの、どうやった?」

「こないだ……?あっ」


一瞬なんのことかと思ったが、あのときと同じ宇津木さんの好色な表情でピンと来た。


「ちんちん勃った?❤️」

「は、はい……」

「思い出してオナニーしてくれた?❤️」



しました。

だっておれだって健全な男子だよ!?あんなエッチなの見せつけられたらそりゃするでしょ!

なんなら例の動画も合わせて見てオナニーしましたとも!

おれが言葉に詰まっていると。


「したんや?❤️」

「は、はい……」

「あはは!ボクちゃんのえっち❤️」


くぅ……!なんか悔しい!


「いまも勃ってたりして?」

「あ!ちょ!」


虎のデカい掌で、大事な部分をむんずと掴まれる。

はいはいそうです勃起していましたあ!


「元気やなあ❤️」

「………」


もう恥ずかしくて言葉も出ない。

おれがそうして黙っていると、親指でぐりっと先端を撫でてくる。


「っ……!宇津木さん…だめです……!」

「ええ?ボクちゃんのびんびんのちんちん触ってたら、オッチャンも興奮してきたわ。ほら見てや❤️」


ザバッとお湯から立ち上がり、そそり勃った股間の逸物を自慢げに見せつけてくる。

血管が浮き出た歪なそれがどくんどくんと脈打ち、まるで別の生き物の様に動いている。

前回の車の中とまた違って外で見るそれはさながら特大サイズの食べ物にも似て、今にも頬張ってくれと言わんばかりに主張していた。


「へへへ……。なあボクちゃん、ここで一発出してまえへん?❤️」

「えっ、でも人が来たら…」

「誰も来んよ。もし来たら、見せつけたったらええやん❤️」

「えっ……」

「大丈夫やって。もし見られても、ボクちゃんはちんぽ好きの変態の虎にしゃぶらせて性処理してただけってことにすればええねんから❤️」


今からやるのはそっちなんですね!?

いや、それ自体は大歓迎ですけどお!


「ほらほら、そこ座って」

「は、はい」


宇津木さんに圧倒されるように、温泉の淵の岩場に座らされる。


「へへ。ボクちゃんのちんちん❤️」


宇津木さんはちんぽのことを基本的にちんちんと呼ぶが、イントネーションが関西弁のそれでどうにも下品でエロい。

おれの股座の間に入り、これから起こることへの期待でぱんぱんに膨れた“ちんちん”を目の前にして目尻を垂れ下げる宇津木さん。本当にちんぽが好きなんだな……


「ヒトちんちん、ええにおいするぅ……❤️」


食前のいただきますの挨拶かのように、まずすんすんとちんぽのにおいを嗅ぐ宇津木さん。

いや、清潔にしてるからクサいとかそういうことじゃないはず!だが!?

きっと虎獣人ならではの鋭い嗅覚で嗅ぎ分けているんだ。そうに違いない。


ともかく、ヒトちんぽのにおいにうっとりとした表情を見せる。

普段からキリっとしてるわけでもないけれど、こんな弛緩しきった顔を見せてくれるなんて。かわいい。


すんすんと嗅いだかと思うと鼻腔いっぱいに吸い込むみたく深呼吸を始める。


「うう……たまらん❤️あ、あのな。ボクちゃん」

「はい?」


少し言いづらそうに、しかし意を決した様に宇津木さんが二の句を告げた。


「命令してほしねん。しゃぶれって……」


どういうこと?


「えーと、どういうことですか?説明してくれないとわかんないです」

「は、はひ……❤️」


あ、そういうつもりじゃなかったんだけど、思わぬクリティカルを出してしまったらしい。


「あの……命令されると、興奮して……もっと気持ちよくなれるから……ちんちんぎゅんってなるから、しゃぶれって言ってほしい……」


か、かわいい……。少し恥ずかしがりながらも、快感を追いかけるために訴えかけるようも説明する宇津木さんの目は心なしか潤んでいる。もちろんしゃがみこんだ奥に見える股間の逸物は膨れ上がっている。

温泉の湯が少し浅くなっている部分でしゃがんでいるので勃起は丸見えになっている。


なるほどそういうことか。


「おい変態虎」

「は、はひ!❤️」

「しゃぶれ」

「はひ……❤️」


我ながら少しわざとらしいかとも思ったが宇津木さんが喜んでくれるならそれでいい。

まず最初の契約を交わすかの様に亀頭に口付ける宇津木さん。


普段快活なあの宇津木さんがこんなドMなんて、おれのすけべ心を絵に描いたような存在におれの興奮も増してゆく。


「ちんちん……❤️ボクちゃんのちんちん…❤️」


じゅぼっずぞぞっじゅるるっ


わざとらしく音を立て、ちんぽをすする宇津木さん。

目の中にハートマークが写っているみたいに、頭の中はちんぽのことでいっぱいという顔をしている。

その証拠に口の端からは涎が滴り鼻からはわずかだが鼻水が流れ、きったない顔をしている。

そのきったない顔をかわいいと思ってしまうおれも相当変態だが。


「んぐ…❤️っんうう…❤️」


喉元までちんぽを咥え込むとおれの陰毛と宇津木さんのマズルの先が触れ合う。

毛が密集している箇所はよりにおいが深いのか、その状態のまま鼻から酸素をフンスフンスと必死で吸い込んでいる。

どんだけちんぽ好きなんだよ。情けない顔してさ。


「宇津木さん、ちんぽそんなに好きなんですね」

「っ❤️っん❤️❤️」


その状態では言葉は発せないだろうが、必死で頷くさまがまたかわいい。

ふと気付くと、宇津木さんは両手を使い自分の左右の胸の突起をぐにぐにと摘んでいる。

そういえば乳首感じるんだったな。

おれは手を伸ばし、その手を跳ね除けさせ、性感に使用しているその二つの突起をちょっと強めに摘んでやった。


「〜〜〜〜〜っっ!!!❤️❤️❤️ぶはっ!」


声にならない声を上げ、思わず口からちんぽを離してしまう宇津木さん。

目尻からは涙を流し、鼻水に涎にと顔中いろんな汁まみれになっている。


「乳首、気持ちいいんですよね」

「きもちいいっ❤️❤️あふっ❤️ちくびっ❤️あんっ❤️❤️」


アヘアヘとだらしなくベロを出し、快感に悶えている。

こんな乳首をぷっくりさせて。どれだけいじったらこんなに大きくなるのやら。


「宇津木さんって、本当〜に変態なんですね」

「うんっ!❤️おれっ❤️へんたいっ❤️年下のボクちゃんにちくびいじられてっ❤️感じてるぅっ❤️」

「おい。命令してほしいって言ったのはそっちだろ。勝手にしゃぶんのやめんなよ」

「ごめんなしゃいっ❤️ごめんなしゃい❤️ちんちんしゃぶらせてください……!❤️」

「早くしろ」

「はひ❤️」


しゃぶりながら乳首を弄られて、さっきよりも難易度の上がった状態だが宇津木さんは悦んでくれるだろう。

なんせ変態なんだから。


いやらしい宇津木さんを見ていてふと思いついたことがあった。


「宇津木さんっておっぱいも大きいですよね。もしかしてパイズリとかできるんじゃないですか?」

「ボクちゃんが喜んでくれるならやるよ❤️」


宇津木さんは自身の両手で胸を寄せ、おれのちんぽを胸板の間に挟む。


「おお……!すごい!」


まさか男の胸板でもパイズリできるなんて……!

いや、宇津木さんのは胸板というにはたわわに膨らんでおり弾力もあるのでおっぱいと呼ぶに相応しいため正しくパイズリだが……!

二つの膨らみを覆う毛皮におれのちんぽが上下するごとに、その谷間をヒトちんぽ汁で汚してゆく。

気持ちいい……!おれの性感はどんどん高まってゆく。


「あ……❤️やばいっこれ……!ボクちゃんに胸犯されてるみたいや……!❤️」


気持ちいいのはこっちだが、宇津木さんも幸せそうな顔をしている。


「んへへ❤️ちんぽきもちいい?❤️」

「はいっ!宇津木さんの胸マンコすげえ気持ちいいです」

「胸マンコっ❤️オレの胸っ❤️オメコなってもうた❤️おれのオメコはちんちん気持ちよくするためのもんやから❤️もっと気持ち良くなってほしいっ❤️❤️」


卑猥な言葉をわざと使ってどんどん盛り上がっていく宇津木さん。


「ちんちんっ❤️ちんちんすき❤️❤️」


おれのちんぽを胸で挟みつつ口を尖らせながら先端を舐めたり汁をすすったりする宇津木さんの顔、なんとも情けない表情だ。でもそんなところもかわいいのだ。


「ほら。好きなやつ根本までしゃぶれ」

「はいぃ…❤️んぐ❤️❤️」


待ってましたと言わんばかりに即喉元まで咥え込む。

そのまま腰を動かし、胸マンコの次は喉マンコを犯してやる。


「フーーッ❤️フーーッ❤️」


責め苦どころか幸せそうでもあるが、宇津木さんは必死に鼻で呼吸し肩を上下させている。

ちんぽを咥えながらも口内では器用に舌を動かしおれの性感を盛り上げようと必死なのか、それともただちんぽが好きなだけで味わい尽くしているだけなのか。恐らく両方だろう。


じゅぽじゅぽとちんぽを味わいながらも時折いったん口を離し、根本の方や金玉をザラザラしたその舌で舐めたりしつつ、男性器全体をその口で楽しんでいるのがわかった。


だらだらと宇津木さん自身の先端からも半透明の粘度を含んだ汁が溢れ、糸を引いていた。

車の時はケツまでイジってたのでわからなくもないが、今回はまだケツはイジっておらず精々乳首しか自身の性感はないはず。にも関わらず乳首だけで、ちんぽをしゃぶっているだけで、先端から我慢汁を溢れさせるなんて、躾のなってないちんぽなんですね。


「宇津木さん。自分のちんぽ、見てみてください」

「んっ……!?」

「いやらしいですね」

「っ……❤️」

「まあでも恥ずかしくはないんですよね。宇津木さん見てもらうの好きみたいだし」


股を閉じるほどでもないが、少しもじもじしている。


「変態の股間、よく見せてくださいよ」

「っっ❤️❤️❤️」


興奮にもう声も出ないようで、ただただ『ボクは興奮しています』という潤んだ瞳だけで伝えながらも、しゃがみこんだ股を開く宇津木さん。


「うわーすごいですね。乳首いじってちんぽしゃぶるだけでそんなに興奮するもんですか?」

「いじわる……❤️」

「え?やめます?」

「いやや❤️やめへん❤️ボクちゃんの精子飲ませてほしい」

「じゃあもっと頑張ってくださいよ。宇津木さん全然本気出してないですよね?いくらちんぽが好きでなるべく長く味わってたいからって。変態なのはよくわかりましたけど」

「んん……❤️」

「ちんぽが好きな宇津木さん、かわいいですよ」


おれは片手で宇津木さんの頭を撫でて耳の根本をカリカリしてやると、もっとしてくれとうっとりした表情でこちらを見てくる。


「ほら。しゃぶって」

「はい……❤️」


おれのちんぽをしゃぶりながら、片手は乳首、もう片手は自分のちんぽを扱き、さらに尻尾で金玉を擦っている。

宇津木さんほんと尻尾で金玉擦るの好きだよなあ。

頭を抑えられながらしゃぶるのが興奮するのかさっきより鼻息が荒くなる。


おれの快感も徐々に高まってゆき、金玉から精子が上がってくる予兆を感じつつあった。


「はっ…ふぅ…!宇津木さん、気持ちいいです」

「っ…!❤️❤️」

「もうちょっとでイキそうです…!良いんですかクチの中に出して…!」


コクコクと頷く宇津木さん。


「あっ、で、出ます!宇津木さんっ……!」


どぷっ!!!


派手に射精の音が聞こえた気がした。

ほぼ同時に宇津木さんも果てたのだった。

驚くのはその飛距離だが、しゃがみこんだ股間からおれの顔面にまで飛んできた。


「わっ…!」

「ご、ごめっ…!❤️あっ、と、止まら…っ❤️」


びゅるっびゅくっ


思わず口を離してしまった為におれの第二射、第三射が宇津木さんの顔面を汚していく。

同時におれの顔面も宇津木さんの長距離顔射に汚されてしまう。


「すげぇ飛びましたね……」

「ボクちゃん、え、エロい……!❤️」

「むぐっ…!っ…!はぁっ…❤️」


思わず飛び込んできた宇津木さんに仰け反りかけたが、頭をがっちりホールドされて逃げられない。

そのまま口と口でお互いのザーメンを混ざり合わせる。ぴちゃぴちゃという粘度を感じさせるいやらしい音が、誰もいない野外に響き渡る。

エロい。思いもよらないところで宇津木さんとキスしてしまった。

ザーメンキスだが。


「んむっ❤️んっ…❤️」

「宇津木さんっ…❤️」


ずぞっじゅるっ


顔中ペロペロ舐められて結局ほとんどの精子は宇津木さんの胃の中へと消えたわけだが、自分の精子まで構わず飲むなんて、いや変態すぎる。


「ボクちゃんの精子美味しかった…❤️」

「半分は宇津木さん自身のですよ」

「んへ❤️気持ちよかった?」

「はい…とても」

「よかった!オッチャンもめっちゃきもちよかったわ。またしゃぶらせてな!」

「そんな気軽に……あ」

「ん?」


ふと今の流れを思い出すとあることに気が付いた。


「おれ、いまのがファーストキスです」

「にゃっ!?うせやん!?」

「ほんとですよ。あはは!ザーメンキスが初めてになっちゃった!」


相手が宇津木さんだったから、まあいいや!という気持ちだったが、当の宇津木さんは意外と重く捉えたようで。


「んじゃ、もっかいちゃんとしたキスしよっか」

「え?」

「オッチャンで良ければやけど……」


嫌なわけないよ。

だって……。


「キスしたいです。宇津木さんと」

「うん!」


ニカッと満面の笑みで応える虎。

温泉の湯の中で身を寄せ合い、いつも以上に距離を近付ける。

宇津木さんからだけでなく、おれからも。


真剣な眼差しの宇津木さん。

ああ、こんな土壇場でも見たことない表情を見せてくれるんですね。

思わずおれも真剣な表情になってしまう。


いつものように相手から一方的でなく、お互いに許し合った距離感。

照れ臭いが、同時に嬉しさもある。


さっきの激しいキスとは違う。思いやるような優しいキス。

さっきの激しい脈動とは違う。甘さを含んだ心臓の鼓動。


とくん、とくん。


ああ、おれ、宇津木さんが好きだ。


エッチなことをしたからじゃない。

出会って数日だが、確実に惹かれているんだ。


「へへ……。恥ずかし」

「あんなスケベな姿より、ちゃんとしたキスのが恥ずかしいもんなんですか?」

「アホ。大人には色々あんねん」

「何言ってんですか」

「思い出に残るキスになった?」

「はい!」

「ほな良かったわ」




この後布団の中でこの時のことを思い出しては悶えてしまうまで、あと数時間。



ーつづくー


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本当は温泉卓球なんかも入れたかったんですが長くなりすぎてしまうため泣く泣くカットしました😭


隣人は虎おっさん!#04『温泉に行こうや!』文字のみ 隣人は虎おっさん!#04『温泉に行こうや!』文字のみ

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