「集中できない」
ページをめくる音ばかりが部屋に落ちている。
文字はきちんと並んでいるのに、意味が脳に入ってこない。
禁欲期間を決めたのは私だ。
その方が合理的だと思った。
このままじゃお互いに退屈して関係が崩れる――そう計算した結果。
……だったはずなのに。
ペンを持つ手が止まるたび、
ノートじゃなくあの時の光景がふっと浮かぶ。
彼の顔。息の速さ。
「……どうして今そんなことを」
自分に問いかけても答えは出ない。
勉強に集中したい。
でも頭のどこかでずっと別の音が鳴ってる。
あの日のことを思い出してる自分が、嫌になる。
もうあんなふうにはならないって決めたのに。
決めたのに――。
理性を守るための禁欲が、
逆に理性を揺らしてるなんて皮肉すぎる。
ページの端を指でなぞっていた。
細い線が何本も引かれたノート。
その文字列のどれもが今は意味を持たない。
ペンを置いた瞬間胸の奥で何かが外れる音がした気がした。
視線が紙から離れ部屋の隅にぼやけた影を見ている。
……影じゃない。
頭の中に浮かんでいるのは彼の輪郭。
「……やだな」
声に出すとほんの少しだけ楽になるかと思った。
でも逆だった。
耳に残ったその声がかえって火をつける。
その瞬間、ノートに戻れなくなった。
手が股間の上で止まる。
動かす理由なんて本当はない。
けれど止めている理由ももうなかった。
一度、深呼吸をする。
止められる最後のチャンスを自分で潰した。
「……ちょっとだけ、ね」
部屋は静かだった。
なのに空気がやけに騒がしい。
カーテンの隙間から入る光が机の端で揺れるたび、
視界の奥が滲む。
「……ふぅ……」
呼吸が浅い。
さっきまでノートを見ていたときとはまるで違う速さで。
体温が上がっていくのが自分でもはっきりわかる。
耳の奥で、自分の鼓動が不自然なくらい響いている。
ページをめくる音よりも大きくて早い。
目を閉じると映像が勝手に流れ始めた。
あの日の記憶。
彼の声視線名前を呼ばれた瞬間――
全部排除したはずのものが、
一気に頭の奥に流れ込んでくる。
「……だめ集中するって決めたのに……」
声が震えて自分でも驚いた。
なのにその震えが逆に意識をそらせない。
どうしようもなく求めてしまう感覚が、
もう止まらないと悟った。
しばらくして、
机の上に置いたスマホが、ぼやけて見えた。
画面に映る時刻は数分しか経っていないのに、
やけに長く感じた。
「……最悪」
吐き出した言葉は短かったけれど、
その奥にある感情は、言葉にしきれないくらい重かった。
罪悪感というより――
『また負けた』という事実が胸を締めつける。
それでも、スマホを手に取ってしまう。
無意識に裏アカを開いて投稿フォームに指を走らせていた。
SNS投稿
理性ってどこまで信用できるんだろう。
勉強に集中できなかった。
結局いちばん弱いのは、私自身
送信ボタンを押す指先が震えたのは、
まだ体温が下がりきっていなかったせいかもしれない。

(部屋で会話する二人) 高橋「……なあ、今って付き合ってるって言っていいんだよな?」 山本「言いたいなら言えば? 私は別に言わないけど。」 高橋「そういうの、ちょっとくらいはっきりしてくれてもよくない?」 山本「高橋くん、はっきりした関係ってそんなに重要?」 高橋「うーん……いや、大事っていうか……俺は山本...

🔵scene1 山本さんは、変な子だと思う。 地味で理屈っぽくて、感情の起伏が薄くて。 でも、言うことは妙に的確で、時々びっくりするくらいストレートだ。 たとえば俺が何か言い淀んでると、平気な顔で核心を突いてくる。 それが恥ずかしいことでもお構いなしだ。 むしろなんでそんなことで照れてるの?って目で見てくる...

山本さんの独白:性に目覚めた時 最初は、ただの生物学的な話だと思っていた。 学校で習った、人間の仕組みのひとつ。 誰にでもあるもので、特別な意味なんてないって。 恋愛と結びつけるのも、感情と結びつけるのも、私にはどこか…嘘くさく感じていた。 でも、ある日。 偶然見てしまった投稿だった。 匿名の誰かが自分...
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2025-09-18 21:27:01 +0000 UTCMisternpc
2025-09-17 16:19:12 +0000 UTCsecret dmain
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