🔵scene1
山本さんは、変な子だと思う。
地味で理屈っぽくて、感情の起伏が薄くて。
でも、言うことは妙に的確で、時々びっくりするくらいストレートだ。
たとえば俺が何か言い淀んでると、平気な顔で核心を突いてくる。
それが恥ずかしいことでもお構いなしだ。
むしろなんでそんなことで照れてるの?って目で見てくる。
そのくせ自分のことはあまり話さない。
「好き」とか「寂しい」とか、そういう感情の単語はまるで意味が曖昧すぎて信用してないかのように。
……でも俺には見える。
ほんの一瞬だけ揺れる睫毛とか、
話し終わったあとにそっと視線をそらす癖とか、
たぶん本人も気づいてない間の揺れとか。
山本さんは自分のことをよく観察してるけど、
きっとそれ以上に誰かに観察されたい子なんじゃないかって思うときがある。
なのに、そう言うと怒られそうだから黙ってる。
俺がどこまで彼氏なのか、よくわからないままだけど、
手を繋ぐときもキスをするときも、
その時だけはちゃんとこっちを見てくれる。
……それで、嬉しくなる。
けど――
最近ちょっとだけ思うことがあるんだ。
俺たち本当に進んでるのかな?
もしかして同じところをぐるぐる回ってるだけなんじゃないかって。
山本さんはいつも正しくていつも冷静でいつでも許してくれる。
だからこそちょっと怖い。
俺がいなくても、きっとこの子は平気なんじゃないかって。
……いや、考えすぎだ。たぶん。
図書室で二人テスト勉強の最中
高橋「……あのさ、ちょっと聞いてもいい?」
山本:「どうぞ」
高橋:「その…山本さんってなんで…俺とそういうことするの?」
ペンを止めるほどの質問ではない
山本さんは数秒だけ黙って少し口を開いた。
山本:「それ今さら聞く?」
高橋:「うん、なんか…最近ふと気になって。俺は…好きだからっていうのが理由なんだけど山本さんって…なんか、違う気がして」
山本:「違う、とは?」
高橋:「いや…別にイヤそうじゃないしむしろ自分から言い出すこともあるけどなんか……好きだからって感じじゃないっていうか……」
山本さんはふと立ち止まり、振り返った。
夕日が彼女の顔に横から影を落とす。
山本「……それ、あなたなりにすごく真剣に考えた質問よね?」
高橋:「……たぶん」
彼女はほんの少し口角を上げて、言った。
山本「じゃあ私も真剣に答える……私はあなたにそう求められるのが、嫌じゃないからやってるの」
高橋は、少しだけ目を伏せた。
高橋:「……それって好きだからじゃないってこと?」
山本「好きってね人によって定義が違うのよ。私は、あなたに触れられても平気だし、嫌悪感もないしむしろ少し安心する時もある。……でも、それを好きって言うのかはちょっとわからない」
彼は小さく息を吸ってふとつぶやく。
高橋:「……俺ばっかり好きって思ってるのかな」
その言葉に、山本さんは静かに目を細めた。
山本:「それ、悪いことじゃないわ。私があなたを好きになりきれないこととあなたが私をちゃんと好きでいてくれるとは両立してもいいと思う」
高橋:「……うん。でも時々ちょっとだけ寂しくなるよ」
高橋「……あのさ、山本さんってたまにすごい単語使うよね」
山本:「何の話?」
高橋:「いや……この前、ほら、アレの時にさ。なんかこう説明が容赦ないっていうか変に専門的っていうか……」
山本はノートの端に何かを書きながら、平然と答える。
山本:「だって正しい言葉を使った方が齟齬がないでしょ」
高橋「いや、正しいんだけどさ……なんでそんな冷静に言えるの? なんか…恥ずかしくない?」
山本:「何が? ただの生理現象じゃない。それに曖昧な言葉を使って雰囲気で済ます方がよっぽど恥ずかしいと思うけど」
高橋:「う、うん……まあ、そうなんだけど……でもさあのタイミングで“挿入”とか言われたら……さすがにビビるというか……」
山本ペンを止めてこちらを見て、薄く笑う。
山本「じゃあ何て言えば良かったの?入れる?入っちゃった?それって主語がふわふわしてて逆に気持ち悪くない?」
高橋:「ちょっとやめて、図書室でそれ言うのやめて」
山本:「あなたが話題振ったんでしょう」
「…………」
彼は顔を伏せて、黙って参考書を開いた。
ページの文字がぜんぶ飛びそうだった。
山本さんは、そんな彼の反応を見て満足げに目を細める。
山本:「……でも、かわいいね、そういう反応」
高橋「やめて、そういうこと言う方が恥ずかしいから……」
🔵scene2
暗い部屋。
カーテン越しに彼女のシルエットが夕暮れに逆光している
聞こえるのは、時計の針の音と、浅い呼吸のリズム。
ベッドが軋む音
山本さんの髪が肩越しにさらりと落ちて視界をかすめる。
その向こうで彼女はいつものように淡々と何かを測るような目をしていた。
山本:「……ねえ高橋君」
不意に名前を呼ばれて高橋くんはびくっと肩を震わせる。
高橋:「……な、なに?」
山本:「今日、なんか……いつもより集中できてない?」
高橋:「えっ……そうかな……?」
山本:「そう。惰性って言えばわかる?悪くないけど良くもない感じ」
高橋:「う……いや、その……」
言葉が詰まる。
彼は反論できず、ただ曖昧に笑った。
山本さんは彼の頬に手を添えたまま、まばたき一つせずに見つめてくる。
山本:「……回数増えたよね。最近。でも熱は減った気がするの。あなたは?」
高橋「……う、うーん……そうなのかな……たしかにちょっと慣れたっていうか……」
山本「慣れはね便利だけど危険よ、予測できることばかりしてると刺激が鈍るの」
高橋:「……なんか実験みたいに言うね」
山本:「事実でしょ。体も心も、全部システムで動いてるんだから」
彼女の声は笑っているのか突き放しているのか判別できない温度で響く。
沈黙が、少し長く落ちる。
時計の針が三つ進む間に彼の頭に浮かんだのは初めての日のことだった。
あのときの山本さんは今よりずっと――。
高橋:「……じゃあ、どうしたらいいのかな」
かすれた声で問うと彼女は軽く肩をすくめた。
山本:「考えてみたら?私ばっかりリードしてたらほんとに退屈するよ」
その言葉に、胸の奥が小さく軋む。
高橋:「……わかった。考えるよ」
山本「そう、じゃあ――少し間を空けましょう」
高橋:「……え?」
山本:「テスト前だしちょうどいいでしょ。一週間。禁欲期間、設けます」
高橋「…………え、今決まったの?」
山本「今決めたの。合理的でしょ」
彼女は、するりと立ち上がり、下着を履いた。
背中越しに淡々とした声が落ちてくる。
山本「あなたにとっても悪い話じゃない。
……その間に飽きさせない工夫ちゃんと考えておいてね」
ベッドに取り残された高橋くんは呆然と天井を見上げた。
「……飽きさせない工夫……?」
言葉の意味を反芻するうちに、
なぜかその音がやけに重く響いた。
高橋「あの…僕まだ…」
山本:「悪いけど自分で出しといて」

(部屋で会話する二人) 高橋「……なあ、今って付き合ってるって言っていいんだよな?」 山本「言いたいなら言えば? 私は別に言わないけど。」 高橋「そういうの、ちょっとくらいはっきりしてくれてもよくない?」 山本「高橋くん、はっきりした関係ってそんなに重要?」 高橋「うーん……いや、大事っていうか……俺は山本...

高橋:「……ほんとにやるの?」 山本:「やらないって言ったっけ?」 高橋:「いや、言ってないけど……なんか、淡々としてるからさ」 山本:「……何か問題ある?高橋くんが言い出したんでしょ」 高橋:「いや、その……俺がお願いした、けど……」 山本:「うん、知ってる。だから、今こうしてるわけだし」 (少し沈黙) 高橋:...
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2025-07-31 23:00:13 +0000 UTCMisternpc
2025-07-31 08:30:09 +0000 UTCセージ
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