年末間近の幻想郷。
人里の中心にある寺子屋に、雑巾を片手に立つ妹紅の姿があった。机や椅子を脇に寄せ、埃を払い、黙々と片付けを進める。年越し前の大掃除を手伝ってほしいと慧音に頼まれたのだ。
慧音は新しい机や備品を買いに商店まで出かけており、妹紅が留守番と掃除を任されていた。
「まぁ、慧音には普段から世話になってるしな……。これくらい手伝うのは、当然っちゃ当然なんだけどさ」
ため息交じりに呟き、肩をぐるっと回して伸びをする。元々妹紅は物を貯めこまない性格であり掃除をすることが滅多にない。たまに出る可燃ごみはお得意の炎で一瞬で灰にして終わりだ。なのでこういった細々と丁寧に掃除をするのは久しぶりのことだった。正直嫌じゃないのだが、かといって積極的にやりたいわけでもない、今はそんな微妙な気分だった。
と、その時だ——。
どたどたどたッ!
外の廊下からけたたましい足音が近づいてきた。妹紅が振り向く間もなく、教室の戸がガラッと勢いよく開かれる。
「妹紅ねーちゃあああんッ!!」
「ぐえぇっ!?」
すさまじい勢いで突進してきた小柄な影が、妹紅の胸元に勢いよく飛びついた。その衝撃で、妹紅はよろけて壁に背を打ちつける。
「またかよお前……」
「えへへ~♡」
眉をひそめ、ため息を深く吐きながらも、飛びついてきた相手。寺子屋の生徒である少年をじろりと見下ろした。
こいつとは、もうずっとこんな感じだった。
かつて別の用件で寺子屋を訪れた際、この少年は妹紅を見て即座に一目惚れしてしまった。それ以来、毎回のように告白され続けている。
「ねーちゃん、大好きだよ!」
「あー、もういいって……毎回同じこと言いやがって」
妹紅は少年の頭を軽く押し返し、腰を落として目線を合わせる。
「なぁ、真面目に聞け。お前、このままだとホントにまずいからな?」
「えー、なんで? ボク、ねーちゃんに会いたいだけだよ?」
「だからそれが問題なんだよ」
妹紅は真剣な口調になり、少年の目をじっと見る。
この少年、余程妹紅の事が好きなのか最近では妹紅に会いたさに「迷いの森」にまで入り込んでしまう有様だ。そんなことが続けば、さすがに妹紅も放っておけない。
「お前には何度か話したと思うけど……私は不老不死なんだよ。普通の人間とは違うんだ。だからさ、お前の気持ちに応えてやることはできないんだよ」
妹紅は落ち着いた声で語り、なんとか少年を説得しようと試みる。しかし、少年はきょとんとした顔で妹紅を見つめ、にっこり笑った。
「うん、わかった!」
「…本当か?」
「妹紅おねーちゃんは年取らないからずっと綺麗ってことでしょ?最高じゃん!」
「全然わかってないな、おまえ…」
妹紅はがくっと肩を落とした。
真剣に話している自分が馬鹿みたいだ――と脱力している妹紅に、少年は再びぐいっと迫った。
「ねぇ、いいでしょう妹紅ねーちゃん~、 ボクと結婚しようよ~」
「あーもう、お前さ……」
妹紅は頭を掻き、呆れながら問いかけた。
「そもそも、私のどこがそんなにいいんだよ?」
「エロいから!」
「はあ!?」
少年は満面の笑みで答え、妹紅は素っ頓狂な声を上げる。
「だって妹紅ねーちゃん、おっぱい大きいし、お尻だってムチムチしてるし、それに近くにいるとすごくいい匂いするんだもん!」
目をキラキラさせながら熱弁する少年を見て、妹紅は顔を引きつらせる。
(……こいつ、完全に身体目当てじゃねぇか……)
妹紅は目元を押さえ、深くため息をついた。
「そんな理由だったら慧音でよくないか? 私なんかよりよっぽどスタイルいいし、美人だろ?」
妹紅が慧音に擦り付けようとすると、少年はぶんぶんと激しく首を振った。
「全然だめだよ! けーね先生すぐ怒るし、宿題忘れたら頭突きしてくるから怖いもん! それにおっぱいがデカすぎ!」
「…さっきデカいのが好きって言ってなかったか?」
「おっきければ良いってわけじゃないんだよ!」
「あー、そうかよ…」
妹紅は頭を抱えた。どうやらこの少年の好みというのは妹紅には理解不能の領域らしい。
そんな妹紅の困惑もどこ吹く風で、少年はさらにグイグイと妹紅に迫ってきた。
「ねぇ、いいでしょう妹紅ねーちゃん?ボクと結婚してさ、毎日いっぱいえっちしようよ~!」
「だめだこりゃ…」
妹紅はため息を吐きながら自身のこめかみをぐりぐりと押さえた。
前を見れば、無邪気すぎるほど一直線な笑顔がこちらを照らしてくる。下心は全開だが、隠すつもりすらない。ある意味清々しいといえる。
(……まぁ、ある意味助かったか。しつこく告白してきてるのも単純にエロいことがしたいだけだろうし、 スッキリすりゃあ冷静になって、こんな変な熱もすぐ冷めるだろ)
妹紅は再び生徒の正面に向き直った。
「要はおまえ、私とエロい事がしたいんだよな?」
「うん!!」
「元気よく返事すんな。ちょっとは恥じろ…はぁ」
妹紅はひとつ、深い呼吸をした。
それからゆっくりと立ち上がり、雑巾をポン、と机の上に置いた。
「仕方ない…じゃあ、やるか」
「え?結婚してくれるの!?」
「するかよバカ。抜いてやるって言ってんだ。一回だけな」
今度は生徒がぽかんとする番だった。
「え、ほんとに!? ほんとにいいの!?」
「……それでおまえのバカみたいな熱が冷めるんなら、安いもんだよ(どうせ一回抜いたら満足して、すぐ忘れるだろ)」
「妹紅ねーちゃん……!」
「……ったく、どんな状況だよ」
妹紅は軽く自嘲気味に笑い、服の襟元に手をかけ、胸元を緩めた。
一方の少年はといえば、これ以上ないほどの満面の笑みで、妹紅を見つめている。
まるで大好物を前にした子供のような目つきで。
この時、妹紅はまだ知らなかったのだ。
少年がただの「エロガキ」ではなく、愛の深さがそのまま精力に変わる能力を持っているという恐るべき事実を——。
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2025-05-20 22:30:35 +0000 UTCぷらのと
2025-05-20 18:28:21 +0000 UTCバレットマンスナイパー
2025-05-20 03:21:52 +0000 UTCぷらのと
2025-05-19 22:05:12 +0000 UTCバレットマンスナイパー
2025-05-19 21:49:49 +0000 UTC