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oto(於菟)
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女性型家事代行アンドロイドが無理やり野球部のバッティングピッチャーをさせられる話

最近音沙汰なくてすみません。色々と立て込んでいて創作に時間が取れないのと、そもそも創作に繋がるほど燃えるネタが思いつかないために創作が滞っています。

現状打開策が見出せていないですが、とりあえず落ち着いたら何か作りたいものを考える余裕が出てくるのではと思うので、しばらく待ってみようと思います。


代わりにと言ってはなんですが、先日投稿した作品に少し手を加えました。内容的には大して変化はないですが、ちょっとはマシになったと思います。





**********





 ナナコと名付けられた女性型家事代行アンドロイドは、薄暗いプレハブ小屋の中で野球部の練習が開始するおよそ30分前に起動した。野球部の部室や体育倉庫とは別に用意されたこの場所は、野球部の監督が管理する小さな事務室のような場所であるが、彼女はその場所に鎮座している充電用クレイドルから全高1.57メートルの躯体をむくりと起こす。床と直角になったところで背中を起こす動作を機械的に停止すると、彼女の頭部が首の座っていない赤子のようにガクリと揺れた。

 ——ピピッ……。只今、起動準備中です。もうしばらくお待ちください。セルフチェックプログラムによる走査を開始します……。

 瞼を開けてぱちぱちと瞬きを繰り返したナナコは、誰もいない空間に向かってにこやかに笑いながら、アナウンサーの如く明瞭な声でシステムメッセージを発した。一般家庭で稼働するハウスキーパーとしての使命を与えられた彼女は、子供に恐怖を与えないようにデザインされた柔和な微笑みを浮かべ続けている。

 彼女が野球部に連れてこられたのは今から約一年前になる。監督が壊れたピッチングマシーンの代わりに持ってきたのがこの人型ロボットであった。中古アンドロイド専門店の店頭に、正規の値段の5分の1で陳列されていた彼女は、しかし日本製であるが故の無駄な丈夫さによってこれまで目立った支障なく稼働を続けている。ピッチングマシーンよりもやや安価であり、家事代行というシンプルな機能しか有していないナナコは、しかしながらオーナー登録を完了して以来ずっとこの野球部の「備品」として扱われていた。

 黒いショートカットの似合う、三十代後半の母性的な容姿。野球部という男だらけの環境には似つかわしくない見た目。いるとしても、麦茶やおにぎりを用意したりするのがイメージとしては適切であろうが、彼女はそのような目的でここに置かれているわけではなかった。彼女は野球部の練習に使われる、バットやボールといった道具と同じ扱いであった。

 半年に一回のメンテナンスで彼女の動作系統には問題なかったが、繰り返し行われる手洗いによって一着しかない衣服がよれよれになっていた。清楚な水色のTシャツ、そして茶色のスカートは色が完全に褪せてしまっている。スニーカーもそろそろ穴が空いてしまいそうなほどだ。

 ——起動シークエンス完了。自律行動を開始します。

「……」

 ナナコは眼球型カメラで空間内に誰もいないことを確認すると、表情変化に割くリソースを減らすために、デフォルトの微笑みへと表情を変更させた。二本の脚で自重を支えてクレイドルから出ると、その側に綺麗に揃えられたスニーカーをスムーズな動作で履く。ドアの方へと歩み寄ると、彼女はドアノブをゆっくりと捻ってプレハブ小屋の外に出て、当然ながら忘れずに施錠を行った。


          ◆


 彼女がグラウンドに向かうと、野球部員たちが既に準備を開始していた。彼女は監督によって命令された通りに、まずはカゴから自分が使うグラブを一つ取り上げた。その間に、横を通りかかった男子部員の一人がナナコの尻を軽くグラブで小突いた。

「……? あら、こんにちは」

 上級生はヘラヘラと笑いながら「乱暴に扱うなよ」と言うが、後ろを向いていて何が起こったか理解できなかったナナコは、その垂れ目に曖昧な笑みを浮かべながら首を傾げていた。小突かれる感覚を理解していないが故に、自分が意図的に臀部を触られた——つまりセクハラされたと認識できないのだ。

 このように、彼女は日常的に人間の悪意を向けられている。かつては服を剥ぎ取られたりしていたが、彼女の下半身には「性欲を発散することが可能な」小孔がついていないため、代わりに暴力の捌け口となった。監督の所有物であるという事実がある以上おおっぴらな暴力行為には及べないが、叩く、蹴る、殴るなどは当たり前、髪を掴んだり乱雑に胸を揉みしだいたり、人工皮膚をつねられたりといったこともしばしばだ。

 半年に一回の義務的なメンテナンスを終えて綺麗になった彼女の皮膚も、しばらくすると至る所にひび割れや擦過傷が見られた。一般的な家事代行アンドロイドの皮膚は、家事を行うに際して不都合が少なくなるように自己修復機能が備わっていたが、彼女の皮膚はそれでも修復が追いつかない程酷使されているという事実を物語っていた。

 皮膚同様に絹のような毛髪も恒常的に乱れていたが、彼女は身だしなみに気をつかうように予め設定されているので、毎日グラウンドに向かう前に女子トイレの鏡の前に立ち、見た目が基準値の清潔さを満たすまで執着的に髪を手櫛で整えるのがルーチンワークと化していた。

 ナナコはベンチに腰を下ろし、待機状態になる。練習が開始しても、彼女の出番はなかなかこない。野球部の選手たちはウォーミングアップとしてランニングやストレッチ、それからキャッチボールをまず行う。それからシートノックがあり、「今日は」監督が自らバットを握っていた。

 それが終わると希望者についてはバッティング練習になる。彼女の出番はそこからだった。グラウンドの二箇所にはゲージがある。彼女はその片方の、マウンド付きの方に連れて行かれた。彼女は本来の目的である「家事代行」とは異なり、「バッティングピッチャー」として稼働する野球練習補助用ロボットと化していた。

 彼女たち女性型家事代行アンドロイドも、汎用のアンドロイドという意味では通常の学習能力を有している。野球のピッチングを教える動画や、実際に部活の生徒を生で見て動作の解析を行い、自らの躯体を制御するモーションデータを生成することなど容易であった。

 つまり、新たな料理のレシピを動画から見て学習するのと同じ要領で、野球に関するスキルの習得を行えるのだ。変化球の握りも解説動画を見たりハウツー本を読み、何度か実際に投球練習を行うことで学習し、自分で曲げるキレなども制御できるようになった。——もっとも、なぜ単純にボールを投げるだけでなく、直球と変化球を織り交ぜて投球する必要があるかは理解していなかったが。

 人型ピッチングマシンと化した彼女であったが、実は彼女は野球のルールなど何一つ把握していないのだ。このボールは所定の位置から18.44メートル向こうに座っている人間に向かって投げるものであり、人間の目的は白線で囲われた長方形の内側からそれを金属製の棒で打ち返すこと、もしくは打ったボールを捕球することであるとしか理解していなかった。

 野球のルールなどダウンロードしてしまえばすぐに把握してしまうのだろうが、彼女はその機会などなかった。彼女の存在意義は、ただひたすらにボールを投げること、もしくはバットを振って指示された場所にボールを打つことだけであった。

 バッターボックスに少年が入ったことを確認すると、ナナコはキャッチャーが構える場所を確認した。動画サイトで見た動作を完璧に模倣しているかのようにモゾモゾとグラブを動かすが、彼女はそれがボールの握りを変えるために行うという目的を理解していない。右手の指は初めからボールの縫い目にぴたりと合わせられていた。

 ——投擲速度を時速110キロメートルに設定。モーションデータ27を再生します。

 彼女は野球部員の誰よりも小柄な身体を大きく動かし、ワインドアップからオーソドックスなオーバースローでボールを放った。スカートの裾がひらりと揺れ、肉付きのよい太ももが意図せず少年たちに向けて晒される。誰に教えられたわけでもないが、時速110キロメートルの棒球が、バッティング練習を行う際に投球するボールとして適切だということを周囲の反応から理解していた。家事代行型にも関わらず流麗なフォームで繰り出される白球は、寸分のズレもなくキャッチャーが構えている場所に飛んでいき、ミットに収まる前に金属バットが快音を鳴らす。

 彼女はキャッチャーから投げ返される球を捕球し、また投げることを繰り返す。指先にできるシワや裂傷も、自己修復機能のある素材で簡単に直るが、彼女の肩はそうはいかない。一日二百球以上投げることもある彼女の肩は既に悲鳴を上げていた。人間も一生で投げられるボールの数が決まっているという俗説があるが、ボールを投げるという動作に特化していない彼女の肩は比較的脆いのだ。

 十二球目を投げ終えたところで、ナナコは自らの右腕に致命的な不具合が生じたことを察知した。彼女は自己診断プログラムを走らせたが、具体的な原因は不明であった。彼女はなおも投球を続行しようとするが、肩より上の高さまで右腕が上がらず、彼女はこれまで通りの投球動作が不可能になったことを理解した。

 彼女は一度投球を中断し、彼女と面識のあり、かつ最も近い場所にいる人間に対して状況報告を行うために、男子部員のところまで健気に歩いていった。

「ごめんなさいね。あのね、右腕の調子が悪くて、ボールが投げられなくなっちゃったの。修理にぃっ……、なにするの!?」

 野球部員たちは彼女の手を払う。彼女は驚きと怒りの感情をエミュレートするために、顔面の人工筋肉を動かすことで表情を変化させた。「機械のくせに泣き言言うな」「そんなの自分でなんとかしろ」と、部員たちはアンドロイドをにべもなく追い返す。人間であれば普通怒るような場面であっても、あくまで機械である彼女は人間の言葉に従順だ。

 つい数秒前までの怒りなどどこへやら「わかったわ」などと呟いて踵を返した彼女は、マウンドまで再び戻る道すがらに彼女はどうすれば良いかを思考する。男子生徒たちの命令は投球動作の停止ではなく継続であったため、その目的を達成する方法を探すために多くの思考リソースを消費した。

 するとまもなく、彼女はもう片方の腕が使えることを思い出した。製造された際には工業的な精度で左右対称性が保証されている彼女にとって、動作を反転させることなど容易であった。

 ——モーションデータ27のコピーを作成します。記憶容量不足です。97日前に登録されたレシピ群62件を削除します。……削除完了。モーションデータ27のコピーをモーションデータ148として保存完了。モーションデータ148を反転させて上書き保存を行います。……上書き保存完了。投擲速度を時速110キロメートルに設定。モーションデータ148の再生を行います。

 左手にはめていたグローブは右手にはめられないが故に外して地面に置くと、ナナコは左手にボールを持ち変えた。彼女は右脚を上げ、コピーした動作を再現する。腕のしなり、リリース時の指の動き、それらを全て反転させ、白球を捕手に向けて放る——はずであった。しかしながら、彼女の右腕が想定ほど上がらなかったためにワインドアップは中断され、不恰好な形で投球動作が行われることになる。

 ——投擲速度の低下、ならびに着弾予測地点からの大幅なズレを確認。トラブルシューティングを開始……。

 時速110kmに調整されたはずのボールは、彼女の目視による計測では時速86.7kmになっていた。そのボールがキャッチャーの元に届く前に、バッターが引っ張り気味で鋭いライナー性の当たりを放つ。

「おいしっかりしろ! ポンコツ!」

 投球速度が遅いという趣旨の暴言を全く気にすることなく、彼女は自分が想定していたものより着弾予測地点が約20cmほど左に寄っていることを確認し、淡々とキャリブレーションを行う。ワインドアップをやめてセットポジションからの投球に切り替えると、彼女は左腕の出力を上げ、投球速度を所望のレベルまで上昇させた。

 一球ずつ、投球動作が終わるたびに、彼女の体に即席のモーションデータが馴染んでゆく。たった十球程度の投球を終えた段階で、針の穴を通すような精密なコントロールが戻ると、彼女は再び自我のないピッチングマシンとしての役割を果たすことが可能になった。

 バッターボックスに立ってボールを打ち返す少年は、アンドロイドの適応能力の高さに唖然とすると同時に、人間より優れた能力を持つ機械に不満を感じていた。自分達が突きつけた無理難題を平気で乗り越えたただのロボット風情が面白くなく、彼はその不満を実際の暴力という形でなんとか反映できないかとずっと考えていた。

 そんなふうに集中を切らしている彼を見て、アンドロイドは余計なお世話とばかりに「バットを振るスピードが落ちてるわよ〜! 休憩にする〜?」などと呑気に声をかけてくる。我慢ならなくなった少年は、バットを女性型アンドロイドに向けて放り投げることにした。すっぽ抜けた形にすれば事故だと思われるはず、証人も周りにいるから、事故を装えば完璧に偽装できるだろうと目論んだ。

 少年はアンドロイドの声かけに何も答えなかったが、ナナコは少年が何も答えずにバッターボックスに立っている状況を把握し、バッティング練習を続行させようと判断した。彼女がストライクゾーンど真ん中に放った棒球。普通であればホームラン性の打球になるだろうが、少年は打撃ではなくアンドロイドのいる場所目がけて正確にバットを放り投げることだけを意識していた。

 彼女は自分の方向に何が飛んでくるかを理解していた。全長82cm、重量930グラムの物体。なけなしの演算能力をフル回転させることにより金属バットの軌道を計算し、回避動作をとらなければ金属バットがネットの横を素通りして自分の上半身を直撃すると判断した。ナナコは考えうる限り最も効率的かつ安全度の高い選択肢を0.1秒にも満たない時間で選択し、その動作を反映するために機体の各部に指令を出す。

 手段を選ばない彼女はネットの後ろに避難する「人間的な」避難方法を選択しなかった。彼女は機械的に体を反らせると、その場に両手両足で体を支えるブリッジの姿勢を取った。彼女の腹部の真上を通過した金属バットが、マウンドの後ろを転々と転がってゆく。

 機械部品がぎっしりと詰まった、重量感のある67キログラムの躯体は、しかし壊れた片腕では上手く支えきれなかったためにどさりとマウンド上で崩れ落ち、僅かながらに土埃が巻き上がった。

 ——ピピッ……。チチチチチ……、ヴヴゥゥゥ……ン。

 彼女は機械的な音を立てながら出力を上昇させ、自らの脚に体重を移し、膝を前に出す。地面についた手の反発を利用し、まるで逆再生をするかのように立ち上がった。何事もなかったかのように立ち上がった彼女は、少年たちに向かってにこやかに声をかけた。

「危ないわよ〜! バットはちゃんと握ってね〜」

 自分達の思惑通りにいかなかった少年たちは苦い顔をしていた。バッターボックスから少年が出て、キャッチャーも立ち上がる。

「あら、練習はもう終わりかしら? ふふっ、今日もお疲れ様〜……あら、どうしたのかしら〜? 悩みがあるなら、おばさんに話してみて?」

 彼女は彼らの不満げな感情を認識していたが、なぜその表情を浮かべているのかは理解できなかったためにそう尋ねた。彼らは彼女の横を素通りし、何も言わずに彼女を置き去りにしていった。ナナコは練習が終了したと勝手に判断し、登録されている次のタスクを確認する。

 ――キュィィ……。

 体内から駆動音を響かせ、彼女は予定がないことを確認すると、副次タスクとして登録されていたボール拾いを行うことを最優先行動に登録した。

「ピピッ……練習で使ったボールを拾わないといけないわね! ほら、君たちも協力して!」

 彼女の声が虚空に響く。アイカメラが見据える先には小さくなる少年たちの背中があるばかりである。彼女は散乱したボール二十七個の位置を全て把握しており、結局その全てを自力で回収した。

 誰とも練習する予定がなくなり、次のタスクが消失した彼女は、およそ八十五分後にある終了の挨拶までベンチに戻って待機していた。


          ◆


 グラウンド整備などが終わり、今日の練習が終了する。ナナコはオーナーに対し、右肩に不具合が生じたことを管理アプリを通じて報告し、明日メンテナンスに行くために暇を取る許可を得た。

 夜の十時、グラウンドどころか校舎にすら誰もいなくなったことを確認すると、なぜかプレハブ小屋の外でずっと待機していた彼女は服を洗濯し、シャワーを浴びるために行動を開始した。

 服を洗って干してからでは全裸で外に出られない、シャワーを浴びてから汚れた服を着て戻り、再び洗濯すると体が汚くなる——このデッドロックに初めて陥った彼女は数時間その場に立ち尽くすこともあったが、今となっては彼女はシャワーを先に浴びることを選択するようになっていた。

 学校のプールを使って良いとは誰にも言われていないが、蛇口の水を捻って洗うよりも効率的な方法を考えた結果として、学校の設備を使うのであればこの手段が最善であると彼女は思考した。彼女は手ぶらで野球場の隣のプールまでたどり着くと、女性を表すピクトグラムが掲げられた更衣室の方へと歩みを進めていった。

 シャツの裾を捲ると、彼女はすぐにその動作を止めた。体内から鳴る駆動音が大きくなる。右腕が指示通りに上がらない状態でどうしたらシャツが脱げるかを思考しているのだ。彼女は左手を使って右腕のみをシャツの袖から抜くと、上体を前に倒して器用に左手だけを用いてシャツを脱ぎ、ご丁寧に身につけていたベージュのブラジャーも取り外した。丘の頂上に突起のないなめらかな乳房が戒めから解放され、内側にシリコンが充填された人工皮膚が柔らかく波打った。

 それが終わると、彼女は人間的な動きで腰をくねらせてスカートを下ろす。ブラと同じ色のショーツも脱ぐと、その股間には割れ目の類が存在していなかった。マネキンのような人工の肉体を晒し、彼女は人間用のシャワー室に入っていく。

 アフォーダンスに従って自然な動作でコックを捻ると、温度調整されていない冷水が彼女の頭にかかる。水温二十度程度の冷たいシャワーも彼女にとっては全く関係ない。体の至る所に付着した砂粒を落とし、女性らしい丸みを帯びた体の表面をとめどなく水が垂れ落ちる。

「……」

 冷水のシャワーをじっくりと堪能し終えると、ナナコはその場に立ち尽くす。三十代女性の平均的な肉体を模したナナコの裸体。柔らかな肉付きが月明かりに照らされ、人目を忍ばず独特の艶かしさを醸し出す。曖昧な微笑みを浮かべている彼女が次にやることといえば、濡れた人工皮膚の乾燥だ。

 ——ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ……。

 彼女はカタカタと震え始めると、まるで洗濯機になってしまったかのように全身を小刻みに振動させ始めた。タオルを所持していない彼女は、こうすることが水気を切るのに最適だと判断したのだ。奇怪なバイブレーションによって全身が波打ち、幽霊に取り憑かれたかのようなホラーじみた光景が静かなシャワー室で繰り広げられた。

 誰も見ていない不審な挙動が数分続くと、彼女の振動が次第に収まっていった。Dカップの乳房、そして肉付きの良い尻を揺らし、気が済んだとでも言わんばかりに彼女はシャワー室を出ていった。

 体が適当に乾いたことを確認すると、ナナコはこれまで着ていたよれよれの下着や服を着てプールを出た。わずかに濡れた下着が股間に張り付く不快な感触など気にせず、——というより、快と不快の区別などつかないのだが——彼女は土埃を立てないように忍び足でグラウンドの横を通り抜ける。鍵を開けてプレハブ小屋に入ると、再び全裸になった彼女はロッカーの中から大きなバケツを持ち出した。

 人気のない夜の闇に、白磁のような肌で覆われた女性型の機械がぼんやりと蠢く。赤外線カメラを作動させた彼女は倉庫近くの蛇口を過たず捻り、バケツに水を汲んで洗剤がわりのハンドソープを投入すると、自分の着ていた服を丁寧に畳んでから投入した。

 畳んだ服を水とハンドソープの入ったバケツに浸け、押し洗いを行う。何度も何度も、彼女は服を押し付けてから持ち上げる。右腕の動きがぎこちない為にこれまで以上に時間を要してしまうが、泡切れの悪いハンドソープに悪戦苦闘しながらも、彼女は微笑みを絶やさずに洗っては濯ぐことを繰り返した。

 一時間以上かけて洗い終えた服を外に干してから、ナナコはプレハブ小屋に戻ってドアを施錠した。彼女は全裸でクレイドルに寝そべり、急速充電を開始する。彼女の次の任務は、学生たちが登校する前に薄明かりの中で外に出て自分の服を回収すること、そして誰にも知られずに家事代行アンドロイド修理業者の自動運転車に乗ることである。

Comments

Oh, I don't mind it. Always your stories are so elaborate, I wondered if it is a sequel. That makes me crazy reading and another fancy!

SelfAwareness

Oops, It’s my mistake. I fixed the name “Sanae” to “Nanako”. Thank you for letting me know👍

oto(於菟)

Thanks for supplement despite your busy schedule. Middle of this story, protagonist called "Sanae". Is it wrong naming of "Nanako"? I remember that "Sanae" appeared other work, manufactured full-option but limited reaction. At first, maybe It was that maid robot's story which abandoned by owner's family and came to baseball club. Still tactless, treated coldly.

SelfAwareness

応援してくださって本当にありがとうございます。やはり書きたいものが見つかると創作に繋がりやすいですよね。しばらくゆっくり考えたいと思います😴

oto(於菟)

お忙しい中でもよい作品を書いてくれてありがとうございます!休みながらやりたいときにしてください。 やりたくなった時にするのが一番楽しくていい作品が出ると思います😊

Chesia


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