【有料限定公開】甘美な媚毒に侵されて 後編 anotherストーリー
Added 2022-08-31 15:00:40 +0000 UTC「……時間通り、ね」 ギィ……と古びた音を立てて鉄の扉を開き、ゆっくりと部屋に入って来たユキに、部屋の中にいたサソリのような見た目の女怪人──スコルピオーネは、ニヤリと冷たい笑みを浮かべて言う。 くすんだ窓ガラスから差し込む月光に淡く照らされた室内で、壁際に置かれた古いソファに腰掛けるその姿にユキは息を呑むが……奴の足元で、両手を縛られて口には布で猿轡をされたサクラが力無く項垂れた状態で座っているのを見て、その目を大きく見開いた。 明らかに平常ではないその姿に内心で激しく動揺しながらも、彼女は何とか平静を取り繕いつつ口を開いた。 「うん。言われた通りに、一人で来たよ。だから、今すぐサクラさんを解放してッ!」 「えぇ。良いわよ」 無理だと分かっていながらもダメ元で投げかけたユキの言葉に、スコルピオーネはあっさりと了承の意を示し、床に座らせていたサクラの腕を引っ張る形で強引に立たせた。 猿轡をされたサクラはくぐもった声を漏らすが、スコルピオーネはそれを意に介さず、未だに扉の方に立ち尽くすユキの方へと突き飛ばした。 両腕を縛られたまま突き飛ばされて体勢を崩すサクラに、ユキは「サクラさんッ!」と声を上げながら駆け寄り、転倒しそうになった彼女の体を抱き留める。 何とかサクラをその場に立たせると、彼女の口に噛ませられた布を外した。 「サクラさん、大丈夫? 怪我は無い?」 華奢で小柄なユキは、自分より背が高いサクラの顔を覗き込むようにして問い掛ける。 彼女の言葉に、猿轡を外されたサクラは浅い呼吸を何度か繰り返し、覇気の無い表情でユキの顔を見た。 「ユキちゃん……? どうしてここに……」 「説明は後。とりあえずこの拘束を外すから、ジッとしていてね」 掠れた声で聞き返すサクラに、ユキは静かな声でそう答えながら彼女の両手を縛っている紐を解く。 現状、スコルピオーネがサクラを攫いユキを呼び出した理由も、呆気なくサクラを返してきた理由も分からない。 しかし、ひとまずサクラの安否は確認し、罠の可能性があるとは言え保護することも出来た。 目立った怪我も無さそうだし、今はとにかく早急にこの場を離れて体勢を整えるべきだ。 「よし……! それじゃあ、今すぐこの場を離れて屋敷に戻ろう? 義兄さん達も心配してるよ」 サクラの両手を縛っていた紐を解いたユキは、そう声を掛けながら彼女の手を取る。 その言葉に、サクラは柔和な笑みを浮かべて自分より小さな手を握り返し── 「えっ?」 ──握った手を引っ張る形でユキの体を引き寄せ、その勢いを利用して床に組み伏せた。 背中の後ろで両腕を組んだ状態で拘束され、僅かに埃を被ったコンクリートの固い肌触りを頬に感じるユキは、愕然としたような表情で硬直していた。 ──……今……何が、起こったの……? ──どうして、サクラさんが……? 「作戦通り。よくやったわね、サクラ。偉いじゃない」 「そんな……♡ 私には勿体ないお言葉です、ご主人様♡」 現状を理解出来ず混乱するユキに対し、スコルピオーネはサクラに称賛の言葉を投げ掛け、サクラは嬉々とした様子の甘い声でそれに応える。 二人のやり取りを聞いて、サクラに拘束されているという状況をようやく理解出来たユキは、すぐにその場で藻掻きながら口を開いた。 「さ、サクラさんッ! こんな時に何やってッ……は、離して……ッ!」 何とかサクラの拘束から抜け出そうと藻掻くが、非戦闘員で頭脳労働を得意とするユキと、戦王の力を受け継ぎウォーリアーズとして戦うサクラではその力の差は一目瞭然で、無駄な抵抗だと言わざるを得なかった。 その様子を見たスコルピオーネは馬鹿にするように笑い、すぐに口を開いた。 「そんなこと言っても無駄無駄。今のこの子には、貴方の声なんて届きやしないわよ」 「なッ、何言って……ッ!」 「サクラ。この紐でその子の腕を縛って、その辺に座らせておきなさい」 「かしこまりましたっ、ご主人様♡」 嘲るような言葉に思わず反論するユキだったが、スコルピオーネは彼女の言葉を無視して床に転がっていた紐を拾い、サクラに手渡した。 サクラは明るい声で答えながら受け取ると、床に組み伏せたままのユキの両腕を素早く縛って拘束し、その場に座らせた。 最初は必死に呼び掛けていたユキだったが、スコルピオーネの命令に従って手際良く作業を行うサクラの姿を見て無駄だと察したのか、悔し気に唇を噛みしめながら身を委ねた。 「ご苦労様。もう下がって良いわよ」 「はい、ご主人様」 静かな声で続けるスコルピオーネの言葉に、サクラは嬉々とした様子ながらも恭しく頭を下げてそう答えると、奴の後方に下がって気を付けの姿勢を取った。 その途端、まるで今までの姿が全て嘘だったのように、感情の失せた虚ろな表情へと変貌する。 敵組織の幹部であるスコルピオーネの命令に従い、まるで人形のように侍るその姿は明らかに普通では無く、この状況を生み出した元凶がスコルピオーネであることは言うまでもなかった。 ガリッと音を立ててユキの唇から一筋の赤い雫が伝うが、彼女はそれを気にも留めず、目の前に立つ女怪人を睨んで口を開いた。 「……貴様ッ……サクラさんに、何をしたッ!」 「あらあら、そんな怖い顔して……美人が台無しよ?」 「とぼけるなッ!」 唾液と血液が混じった赤い雫を飛ばしながら吠えるように言うユキの言葉に、スコルピオーネは呆れたように肩を竦めると、自身の尻尾をよく見えるように動かした。 「ねぇ、覚えてる? 昨日のウォーリアーズとの戦闘で、私がこの子に毒を注入したこと」 奴はそう言いながら、侍るように傍にいたサクラの肩を優しく抱いた。 突然体に触れられたサクラは、一瞬ピクッと微かに肩を震わせると、人形のような無表情を僅かに法悦で蕩けさせながらスコルピオーネの手に身を委ねる。 ユキはそれを見て咄嗟に「サクラさんに触るなッ!」と吠えるが、スコルピオーネはそれを気にすることなく続けた。 「私は自分の体内で色々な毒を生成して、尻尾の針で対象の体に注入することが出来るの。昨日この子に注入した毒の効果は、対象の思考や感情を奪って操るという物だったわ」 「ッ……じゃあ、その毒の効果でサクラさんをここまで呼び出して、召使みたいに操ってるってこと……?」 「うーん……まぁ、大体そんな所ね」 込み上げる怒りを押し殺しながら問い掛けるユキの言葉に、スコルピオーネは何でも無いことのように答えながら、黒い殻を纏った手でサクラの頭を愛でるように撫でた。 ──洗脳。 奴の説明を受けて怒りに染まったユキの脳裏に、その二文字が過ぎる。 人としての尊厳を踏みにじるような非人道的な手段を用いた事実に、グツグツと燃え滾るような怒りが腹の底から込み上げる。 もし拘束されていなければ、力量差など一切無視して今すぐにでも奴を殴り飛ばしていただろう。 しかし、他でも無いサクラに両手を縛られて拘束されている為に、動くことすら出来ない。 結果として、ユキは拳を強く握りしめながら、目の前にいる女怪人を睨みつけることしか出来なかった。 「それにしても、ここまでしても誰も来ないなんて……本当に一人で来たのね」 それに対し、スコルピオーネは相変わらずサクラの肩を抱いたまま、唐突にそんなことを呟いた。 奴の言葉にユキは訝しむように眉を顰め、口を開いた。 「だって、そっちが手紙で、誰にも言わずに一人で来いって言ったんじゃない」 「それもそうだけど……その言い方、もしかしてあの手紙のこと、他の誰にも教えずにここに来たの?」 「……何が言いたいの?」 一人で来たことについてやけに言及してくるスコルピオーネに、奴の本意が読めなかったユキは、思わず冷ややかな声で聞き返した。 彼女の言葉に、スコルピオーネはクスリと小さく笑って「だって……ねぇ?」と言いながら、肩を抱いたままのサクラに視線を向けた。 「確かに、一人で来なかったらこの子の命は無いって言ったのは私だけど……あんな見るからに怪しい文章、余程の馬鹿でも無い限り、素直に従う筈無いと思わない?」 「何を……」 「でも、貴方がそうじゃないことは明白。だから……よっぽどこの子のことが大切なんだなぁ、と思って♪」 どこか楽しむような口調で言いながら、奴はサクラの頬を黒い指で撫でる。 その言葉にユキは僅かに肩を硬直させたが、すぐにソッと目を伏せながら口を開いた。 「そ、そんなの、当たり前じゃない。だって、サクラさんは……わ、私達ウォーリアーズの、かけがえのない、大切な仲間、なんだから……」 「あら? てっきり、この子のことが好きなんだと思ってたんだけど」 ドクンッ! と。 突拍子の無いその言葉に、ユキの心臓は激しい音を立てて脈を打ち、一瞬全身が硬直して動きを止める。 「な……何を、急に……訳の分からない、ことを……」 「そう? 好きな人の命が懸かっているとなれば、どんなに頭の良い人間でも理性的に動けなくなるものだし、貴方があの手紙の指示に従ったのも納得だと思ったんだけど……」 筋は通っていると思わない? と。 軽く小首を傾げながら問い掛けてくるスコルピオーネの言葉に、ユキは答えられない。 先程から激しく脈を打つ心臓の音が頭の中で響き渡り、体の芯が冷たくなっていくような感覚がする。 ツゥ……と、頬を伝った冷たい汗が鎖骨の辺りに落ちるが、今の彼女が気にすることは無い。 激しい動揺を露わにしないよう黙り込むユキに対し、スコルピオーネは「でも」と続けながら、サクラの肩を抱く力を僅かに強めた。 「貴方がこの子に恋愛感情を向けている訳じゃないのなら……私とこういうことをしていても、問題無いのよね?」 スコルピオーネはそう言いながらサクラの体を抱き寄せ、互いの唇を重ね合うように顔を近付ける。 奴の言葉に顔を上げたユキは、その様子を見て両目を大きく見開いた。 「やめろッ!」 その声は、ほぼ反射的に出たものだった。 静まり返った廃ビルの室内にその声はよく響き渡り、反響した声が僅かなエコーとなって余韻を残す。 元々あまり声を荒げる部類では無いユキは、前のめりになった姿勢のまま、荒い呼吸を繰り返している。 彼女の声に動きを止めたスコルピオーネは、サクラからゆっくりと顔を離して、ユキの方に視線を向けた。 「何だ。やっぱり貴方、サクラのことが好きなのね」 驚嘆というよりは、どちらかと言うと納得したように呟く奴の言葉に、カァッ……とユキの顔が赤く染まる。 そう。ユキは、ずっと前から……サクラのことが好きだった。 元々、ユキは内気で引っ込み思案な性格で、人とコミュニケーションを取るのがあまり得意な部類では無かった。 幼少期の頃から親しい友人もあまりおらず、義兄であるヒロとも打ち解けるのにはかなりの時間を要した。 それでも、戦王の力を受け継ぎウォーリアーズとして戦うヒロや仲間達の姿を見た時、少しでも彼等の役に立ちたいという想いから彼女は協力を申し出た。 ただでさえ人見知りな上に、知らない男性が多い不安な環境の中で彼女を支えてくれたのが、サクラだった。 男ばかりだから女の子が来てくれて嬉しいと、ウォーリアーズへの支援を申し出たユキを真っ先に歓迎し、余裕がある時はユキの行っている作業を手伝ったりもしていた。 誰とでも分け隔てなく接することの出来るサクラは、人見知りで中々上手く話せないユキのペースに合わせてコミュニケーションを取り、彼女が他のメンバーと打ち解けられるようアシストしたりもしていた。 そんな彼女の優しさに惹かれ、いつしか恋愛感情を抱くようになるのに、あまり時間は掛からなかった。 サクラがスコルピオーネの毒を受けて見守りをすることになった時は、自分なんかが良いのかと驚くのと同時に、不謹慎ながらも嬉しいと思ってしまった。 当然だ。過程はどうあれ、好きな人と寝食を共にすることになって、嬉しくない人間などいる筈が無いのだから。 だからこそ、朝起きて彼女が失踪した時には動揺し、止めることが出来なかった自分を責めた。 そして、自分の不注意のせいで大切な人が危険な目に遭っているかもしれない状況に不安感を募らせ、どうか無事であって欲しいと強く願っていた。 しかし、サクラに強く惹かれるのと同時に……同じ戦隊のメンバーである緑川シュンが、サクラに同様の感情を向けていることにも、気付いていた。 気弱で引っ込み思案でサクラに支えて貰ってばかりの自分と、高校生ながらウォーリアーズとして懸命に戦うシュン。 どちらがサクラに相応しいかなど、考えるまでも無かった。 だから、ユキは……この想いを、胸の中にしまっておくことにした。 好きな人の負担になりたくないから。 自分よりも彼女のことを幸せに出来る人がいるから。 せめて、この戦いが終わるまでは……大切な人の傍にいて、少しでも手助けになりたいから。 そのような理由から、今まで誰にも知られずにひた隠してきた感情を暴かれたユキは、狼狽しながらも咄嗟にサクラの表情を窺った。 スコルピオーネに肩を抱かれて直立している彼女は、先程微かに見えていた法悦の色はすっかり失せて無表情へと戻り、そのまま呆然とどこか虚空を見つめている。 何かしらの反応があれば、まだ誤魔化しようもあったと言うのに……一切の反応を見せないその様子に、ユキは何と言えば良いのか分からず、震える唇をパクパクと開閉させることしか出来ない。 そんな彼女を見て、スコルピオーネは甲高い高笑いを上げた。 「安心しなさい? この子には私の命令以外は聴こえないから、貴女の感情も知らないわよ」 「ッ……」 自分の動揺を見透かされ、その上でサクラが洗脳されている事実を改めて突き付けられたことに、ユキはギリッと歯ぎしりをして目を伏せた。 スコルピオーネはそれに冷たい笑みを浮かべると、ゆっくりとユキに向かって歩みを進めた。 「さて……それじゃあ、そろそろ本題に入ろうかしら?」 「……本題……?」 どこか楽しむような口調で言うスコルピオーネに、ユキはピクリと肩を震わせて聞き返す。 奴はそれに一つ頷くと、黒光りする固い外殻が溶けるように変化し、サソリのような見た目から人間の女性へと姿を変える。 黒く艶やかな長髪に紫の瞳と唇を持ち、薄手の黒いノースリーブワンピースから白い肌を惜しげも無く晒す美しい女性の姿に、ユキは思わず息を呑んだ。 「なっ……なに、を……」 「あぁ、そういえば……貴方にこの姿を見せるのは、初めてだったわね」 驚いて言葉を失うユキに対し、スコルピオーネは悠然とした態度を崩さないまま、ゆっくりと歩き出す。 自分の方へと近づいてくる奴の様子を見て、ユキは咄嗟にコンクリートの床を蹴って後ずさろうとするが、いつの間にか背後に立っていたサクラの足にぶつかってしまう。 それにユキは思わず「サクラさん!?」と声を上げたが、サクラはユキの両肩を掴んで逃げないよう拘束した。 「嫌ッ、サクラさッ……! 離して……!」 「良い子ね、サクラ。さて……それじゃあ、私の能力について説明しましょうか」 スコルピオーネは余裕の笑みを崩さぬままそう言うとしゃがみ込み、床に座るユキと視線を合わせる。 毒々しい紫の瞳に見つめられたユキは思わず声に詰まるが、ゴクリと音を立てて生唾を飲み込むと、すぐに口を開いた。 「能力、って……体内で毒を生成して、尻尾の針から注射することだって……さっき、自分で説明したじゃない」 恐る恐ると言った様子で聞き返すユキに、スコルピオーネは一瞬僅かに目を丸くしたが、すぐにクスリと小さく笑みを浮かべた。 「えぇ、そうね。でも、それは……怪人の姿をしてる時の話よ」 「……何……?」 平然と続けられたその言葉に、ユキはピクリと眉を顰めながら聞き返す。 それにスコルピオーネは冷たい笑みを浮かべると、紫の瞳を怪しく光らせた。 刹那、奴の尾骨の辺りが膨隆し、怪人の時のようなサソリの尻尾が生える。 ゴルフボールくらいの大きさの黒光りする球体が連なったような見た目をし、先端に鋭い針を持つソレを目前に掲げられ、ユキはその顔を青ざめさせて言葉を失う。 それにスコルピオーネは楽しそうに笑い、彼女の目の前で細い尻尾を揺らしながら続けた。 「人間の姿になった時も、こんな風に体の一部を変化させて、怪人の時の尻尾を再現することも出来るってワケ」 「ッ……まさかその尻尾で、私にも、サクラさんと同じ毒を……ッ!?」 「えぇ。貴方もサクラと同じように、私の手駒にする為に……ね?」 スコルピオーネはどこか含みのある口調で言いながら顔を上げ、ユキを捕獲しているサクラに視線を向ける。 その言葉と主からの視線を受けたサクラは、奴の意図をいち早く察知し、「あぁ……♡」と甘い声を漏らしながらその顔を柔らかく蕩けさせた。 「なるほど……♡ かしこまりました、ご主人様。すぐに準備致します♡」 「えっ、サクラさん、何をッ……きゃッ!?」 嬉々とした様子で返すサクラに聞き返すユキの言葉は、突然体を前のめりに倒されて組み伏せられたことで遮られる。 頬に感じる固い感触に顔を顰めるが、サクラの手が自身のズボンを掴んでいることに気付き、すぐにその目を大きく見開いた。 「なッ、ちょっと待って、サクラさ──ッ!?」 咄嗟に止めようと声を上げたユキだったが、主の命令に従うことを最優先事項として刻み込まれたサクラが気に留めることは無く、ユキの履いているズボンとショーツを勢いよく引き下ろした。 他でも無い最愛の人の手で下半身を露わにされた状況に、ユキは羞恥心から顔を真っ赤に染め上げ、唇を強く噛みしめながら額を床に押し付ける。 その間にスコルピオーネはユキの背後へと周り、口を開いた。 「ご苦労様、サクラ。ただ……この状態だと、少しやりにくいわね。もう少し何とかならないかしら?」 「かしこまりました。では……このようにするのはどうでしょうか?」 うつ伏せの状態になったユキを見て不満を漏らしたスコルピオーネの言葉に、サクラは了承の意を示すと、ユキの腰を両手で持ち上げる。 抵抗したくとも、両腕を背中の後ろで縛られて拘束されている状態では、体に力を込めることすら難しい状態だった。 結局ユキはサクラの手に逆らうことも出来ないまま、上半身を床に伏せた状態でズボンとショーツを下ろして、露わになった尻を見せつけるように高く上げた下品な姿勢を取らされる。 最愛の人と敵幹部の前で、まるで発情期の雌犬のような卑しい姿を取らされ、ユキは屈辱のあまり目に涙を浮かべて唇を噛みしめた。 「えぇ、良い感じね。あとは……挿入しやすいように、お尻の穴を広げてくれる?」 しかし、スコルピオーネはそれだけでは満足せず、更に恥辱的な命令をサクラに下す。 それにユキは目を見開き、思わず顔を上げた。 「いやッ、ダメ、サクラさんッ、やめてッ……!」 「はいっ。かしこまりました、ご主人様♡」 無駄だと分かっていても咄嗟に助けを求める声はあっさりと無視され、命令通りに両手の指でグイッと肛門の穴を横に押し広げられる。 普段は主に排泄を目的として使い、決して人に見せたくない部分を露わにされたことで、ユキのプライドや人としての尊厳がミシミシと音を立ててひび割れていき──「……いぎぃッ!?」──スコルピオーネの細い尻尾が、押し広げられた尻の穴へと挿入された。 「あぐぁあッ!? なにッ、をごぉぉぉおおッ!?」 「あら、いきなり乱暴にし過ぎちゃったかしら?」 喉から振り絞ったような声を上げるユキに対し、スコルピオーネはどこか他人事のように呟きながら、細い尻尾をグリグリと容赦なく掘り進めていく。 今まで出すことにしか使ったことが無かった部位に初めて挿入され、ユキは細く華奢な体をビクンビクンと激しく痙攣させながら、まるで獣のような咆哮を上げる。 それを見たスコルピオーネは考えるような間を置いた後、彼女を拘束しているサクラに視線を向けて口を開いた。 「サクラ。この子、少し苦しそうにしてるから、和らぐように声を掛けてあげて?」 「はい。かしこまりました、ご主人様」 「ひぃぎッ!? あぁがッ!? うぅぐぁぁああああッ!?」 淡々とした口調でサクラに告げられたスコルピオーネの命令を聞いて、ユキは相変わらずしゃがれた咆哮を上げながら、その目を大きく見開く。 怪人の尻尾で恥部を好き勝手に穿られ、痛みと快楽と屈辱感で思考をグチャグチャに掻き混ぜられながらも、彼女はまだ辛うじて正気を保っていた。 どれだけ辱めを受けて、どんなに人としての尊厳を完膚なきまでに踏みにじられようと……最愛の人をこの地獄から救い出すまで諦める訳にはいかないと、今にも切れてしまいそうな細く拙い一本の糸を、必死に力強く握りしめているような状態だった。 だと言うのに、他でも無いサクラの手がこれ以上加わればどうなるか……思考すらままならないこの状況では想像も出来ず、だからこそ自分に何が起こるか分からない未知の可能性が、ただただ純粋な恐怖心となって彼女を襲う。 そんなユキの様子に、サクラは口元を僅かに綻ばせるようにして微笑を浮かべると、彼女の頭に手を伸ばし── 「安心して。ユキちゃん」 ──優しく語り掛けながら、頭の上に掌を乗せた。 汗でぐっしょりと湿り、ボサボサに乱れた髪を整えるように優しく撫でながら、彼女は続ける。 「今は苦しいかもしれないけど、すぐに何も分からなくなるからねぇ」 「ッづぁッ……ざぐらざッ……!? ま゛ッ、まっでッ……いぎぁッ!?」 「これを乗り越えたら、ご主人様の素晴らしさに気付くことが出来るから……もう少しの辛抱だよ」 「やめでぇッ! ざぐらざん゛ッ! も゛ぉ゛や゛め゛て゛ぇ゛ッ!」 まるで子供をあやすような口調で語り掛けながら優しく頭を撫で続けるサクラに、ユキは汗や涎でグチャグチャになった顔を振り乱しながら、必死に制止の声を上げる。 同時に、まるでもうすぐ訪れる自身の終わりを予知したかの如く、今までの人生の記憶が走馬灯のように蘇る。 『私、桃井サクラ! この戦隊って男ばっかりだったから、女の子が入ってきてくれてすっごく嬉しい! よろしくね、ユキちゃん!』 『わっ、これ全部一人でやるの大変でしょ? 手伝うよ!』 『ん? そんな、気にしなくても良いよ。仲間が困ってたら助け合うのは当然じゃん?』 『ちょっとカイト~。そんなぶっきらぼうにしてたら、ユキちゃん怖がっちゃうでしょ。笑顔笑顔! ……あははっ。コイツ、こう見えて根はめっちゃ良い奴なんだよ。だから、あんま怯えないであげて?』 『えぇ~? 別に気にしなくても良いと思うよ? ユキちゃんの話し方、優しくて……私は好きだな』 幼少の頃から内気な性格で友人も中々作れず、そんな自分を変えたいと思っていた。 そんな中で人々の為に悪と戦う義兄や仲間達の姿に心を打たれ、少しでも力になりたいという思いから、必死に勇気を振り絞って立ち上がった。 皆に迷惑を掛けたくないからと、不安な気持ちを必死に押し殺して協力を志願したユキに真っ先に手を差し伸べてくれたのが……サクラだった。 戦王の力が無い中で、悪と戦うウォーリアーズを支える為に奔走する日々は、決して楽な物では無かった。 どんなに辛く苦しい場面に遭った時も、自分を支えてくれるサクラの為ならばと、必死に歯を食いしばって立ち上がってきた。 今回のことだってそうだ。 サクラが洗脳されて自身も追い詰められている絶望的な状況だとしても、サクラを救う為ならばと、その目にまだ闘志の炎を宿し続けていた。 それなのに、他でも無いサクラの手と声で、もう頑張らなくても良いと……一緒に堕ちてしまおうと言われてしまったら、何とか持ち堪えている理性すらも打ち崩されてしまう。 普段あまり大きな声を出す方では無いユキの喉は、散々咆哮のような嬌声を上げ続けていた為に嗄れてしまい、これ以上どれだけ声を出そうとしてもゼーゼーと荒い呼吸を発することしか出来ない。 完全に満身創痍となり、最早抵抗する術など残っていない中で、彼女は顔を上げて縋るようにサクラに視線を向けた。 涙で霞んだ視界に彼女の姿を捉えた時、不意に、記憶の中のとある光景がフラッシュバックした。 あれは、ユキがウォーリアーズへの協力を志願してからしばらく経った頃。 サクラの協力もあってウォーリアーズのメンバー達と何とか打ち解けることもでき、後方支援の作業に慣れてきた時のこと。 一人で外出していた際に、デモーニオンの襲撃に巻き込まれたことがあった。 彼女は近くにいた人々に避難を促していたが、怪我をして逃げ遅れた子供を助けようとして怪人の攻撃を受け、危機的な状況へと追い詰められた。 自分にも戦王の力があれば、と無力感に苛まれて涙を流した時に、サクラを始めとしたウォーリアーズのメンバーが助けに駆け付けたのだ。 サクラは涙を流すユキの顔を覗き込むと、いつものように明るく優しい笑みを投げ掛けたのだ。 今思えば、サクラに恋心を抱くようになったキッカケは、あの出来事だったように思える。 あの出来事があったから、恩返しに少しでもサクラの力になりたいと、決意を固めることが出来たのだ。 涙で霞んだ視界の中で、サクラはあの時と同じ笑みを浮かべて、ゆっくりと口を開いた。 「『大丈夫だよ。ユキちゃん』」 そして、あの時と同じように……──言葉を紡ぐ。 「『何があっても絶対に、私が貴女を守るから』」 どんなに辛く苦しい時でも、ずっとユキの心を支え続けていた……──かけがえのない、大切な言葉を。 「だから安心して……私と一緒に、ご主人様にお仕えしよう?」 「……ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ!」 ギリギリのところで持ち堪えていたユキの理性は、直腸内に毒針を刺されるのと同時に、決壊する。 大粒の涙を流し、喉が張り裂けんばかりの絶叫を上げながら、彼女は自身の身体を侵す甘美な媚毒を受け入れた。 霞む視界に、何よりも大切な最愛の人の姿を収めながら。 *** 「さて……それじゃあ、ユキちゃんだったかしら? 改めて、自分が何者なのか教えてくれる?」 古びたソファに腰を下ろし、ゆっくりと足を組んだスコルピオーネの言葉に、ユキは慌てた様子で服を正しながら「はいッ!」と答える。 彼女はまだガクガクと震える膝で必死に立ち上がると、その場で敬礼をして口を開いた。 「私、赤城ユキは、主であるスコルピオーネ様に身も心も捧げ、スコルピオーネ様の命令には絶対服従の傀儡です。貴方様の手足となりお役に立つことだけが、道具である私の生きがいであり幸福です。どのような命令でも必ず遂行してみせますので、何なりとご命令ください」 喉が潰れて若干しゃがれた声ではあったが、彼女はハキハキとした口調で宣言をする。 それを見て、サクラは暗く濁った瞳を嬉しそうに緩ませて口を開いた。 「ユキちゃんもご主人様の素晴らしさに気付いて、私と同じ道具になってくれるなんて、凄く嬉しい♡ これからはご主人様の為に、一緒に頑張ろうね♡」 「うん♡ 私も、サクラさんと一緒にご主人様に仕えることが出来て、本当に嬉しい……♡」 虚ろな視線を交えながら、二人は恍惚とした表情で語り合う。 その様子を見たスコルピオーネは愉悦の笑みを浮かべると、紫のルージュが引かれた唇を開いた。 「サクラも、ユキを堕とすのに協力してくれてありがとうね。二人共、これからの活躍に期待しているわよ」 「っ……♡ はいっ♡ ご主人様♡」 「不束者の私ですが、ご主人様のお役に立てるよう、尽力致します♡」 スコルピオーネが投げかけた言葉に、サクラとユキはその顔を淫靡に蕩けさせながらも、甘い声でそう答えた。