XaiJu
イチゲン
イチゲン

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俺は悪い獣人とエッチして、そのまま好きになっていた

 異世界からの侵略者がいるらしい。  涼しいが蒸す。風が冷たくて湿気の強い深夜の住宅街をトボトボ歩いていた。  いま世間を賑わせているホットな話題で、毎日のように画面や紙面を賑わせている。  この惑星を我がものにせんと宣戦布告を仕掛けた集団がいて、それと戦う組織がいた。  まるで特撮番組みたいに決めポーズを連発する集団と、地球を助けてくれる謎の組織。 「いくら観ても現実味がわかないし、デマじゃないか?」  俺はいま熱い噂話に考えを巡らせる。眉を寄せていた。  高校生になりたてで、不慣れなネクタイを結び似合わない制服に袖を通している。  すっかり寝静まってきた夜の住宅街。これといった不審者もいない平和な近所である。  俺の足取りはフラフラとあやしいものだった。ぽつりぽつりと離れた感覚で立てられた街灯の明かりに誘われる様子は闇夜の蛾を思わせる。それもそのはず、俺は前を見ておらず右手に手汗が出るほどスマホ握りしめていた。疑り深い視線で画面を見下ろし、熱心に左指を走らせているのだ。まともに歩けるはずもない。 「だいたい異世界からの侵略者なんて漫画やゲームの世界だよな。本当に人類の味方なのか知れたもんじゃないだろ。別の侵略者じゃないって保証もない」  俺は半ば、いや、かなり決めつけにかかっていた。  だってそうじゃないか。証拠がないものは信じられない。  口だけならなんとでもいえる。よって信じたくなかった。 「そんなもんがいるんだったら、地球に対抗できる組織がいても不思議じゃないけど、普通ずっと隠れ潜むなんてことするか? 仮にいたとしても、なんか胡散臭いよな。紛争地域とか犯罪者とか取り締まってくれればいいのに、やらない理由は人類には早すぎる技術を持っているから?」  俺は突如として現れた人類を守る謎の組織のほうに注目していた。  この腐った現代社会に警鐘を鳴らすことさえせず、侵略者の対抗馬として隠れ潜んでいたのだとしたら忍耐力は大したものだ。しかし侵略者と戦う以前に人類同士の争いや何にやらを止めてくれることはできなかったのか。  ひねくれた視点を持っているのは承知している。  天敵がいなければ、侵略者のやりたい放題なんだ。  けれど安心がほしい。保証ってやつを知りたかった。  彼らの言葉が本当なのか知りたい。どうしてもだ。  近くに彼らはいないのだから、聞きようがなかった。  この願望はあきらめて手放す以外にないのだけど。  手に入らないものほど欲してしまうのが人間だ。 「人類を助けてくれるのはいいけど、もっとやりようがあっただろ? 戦争をなくすとか犯罪を減らすとか、超科学か魔法だかしらないけど、凄い技術があるなら秘匿しないで出すべきだよな」  ぶつぶつと語りながら歩く俺の姿は暗がりということもあって不審者のそれだ。  俺の両目は色が濁っていて充血もしている。ほかにも目の下に隈があり毎日を疲れ目で過ごしていて、映画の殺人鬼みたいな目つきになっていた。  もしも俺がこんなやつを夜道で見かけたら、警察を呼ぶか悩むだろう。それほど酷い顔をしている。重度の生活習慣病を患った自覚はあれど、治す方法なんてわからない。  世を賑わせている侵略者かその天敵が使っている技術で治療してもらいたかった。 「はあ、ちょっとでいいから俺に技術を使わせてくれないかな。無理だよな」  首は前かがみで背筋は曲がりかけ典型的な。いや、立派なスマホ中毒者である。  中学生の頃から歩きスマホはやめろと言われているが、道の端っこを歩いているんだから許して欲しい。いまのところ無事故だし、悪いけど悪くないだろう。  最低の言い訳を頭のなかで並べて、疲れのまざった溜め息をつく。 「はぁー。正義の味方に憧れてたの、いつまでだっけ」  勝つものは常にかっこよくおもえるものだ。  いまはどちらかといえば悪役に惹かれてしまう。  この汚い世界を木っ端微塵にしてやると叫びたい。  まあ幸せを見つけられてない俺にとっては汚くとも。  幸せを見つけられている人々にとっちゃいい世界だろう。 「幸せは歩いてこないけど、歩いても幸せになった試しがないな」  俺は歩きスマホ、ながらスマホの常習犯で夜散歩をする。  制服姿で夜遅くまでフラついているかといえば暇だからだ。  俺の両親が不仲。どちらとも家に帰ってくることは滅多にない。  適当に金を渡され、好きなだけ遊んでいい。半ば見捨てられていた。  憎しみ合った両親は、かたきと呼べる相手の血を受け継いだ俺を嫌った。  愛情を注がれていたのは小学校に入って少し経つまでだ。飽きられたペットのごとく捨てられたのが現状である。家族として認められたペットはいい。惜しみない愛情を注がれる撫でられたり散歩してもらっている様子を見て嫉妬したのは一度や二度におさまらなかった。  とにかく俺は可愛がられてないから拗ねてる。  だから両親の気配が染みついた家にいたくない。  これも一種の夜遊びみたいなものだろうと自嘲した。  友達は昔はいたんだが、俺の顔を見て去っていった。 「鏡は見たからわかってるけど辛いっつーの」  何か面白いことがないか?  せめて、自分に空いた穴埋め紛らわす何かが欲しい。  そればかり思っていた。だから、今日もスマホを片手に世界のニュースに気を配りながら落としてしまった自分自身を探して夜の街を徘徊している。お陰で体力はついているけれど、こんなんだったら素直に家でなにかしている方が楽しいのかも知れない。  次からは方法を変えてみるか、スマホで自分の変え方を検索していた。  親はもう大したアドバイスもしてくれないし相談にも乗ってくれない。  だから俺はずっとスマホの検索が相談相手になり、動画やネット記事が救いになっている。これを見ていると、なんだか安心できた。 「ずーっとそれを見下ろしてるけど面白いの? 光る小箱みたいなの」  うしろから声をかけられた。透き通った声で、声変わり前の少年をおもわせる。  こんな時間に、いや、時刻を問わず話しかけられた。ながらスマホの注意以外では久しぶりだった。 「暇つぶしに眺めてる。面白いときもあればそうじゃないときだってある」  声の主はだれかしらないうえに怪しかった。だけど自然と答えていた。独り言に飽きていたのかも知れない。 「そんなのいつまでもイジっているから暇を持て余すんじゃないのかな」  やることがあるようで、何もかもやりたくない。  だからこそ光る小箱をずーっと見つめているのに、なんて酷いことを言うんだ。  いや、相手からすれば普通なんだけど理解しながら見つめてる俺にとってはぐさっとくる言葉であって、心で言い訳を探していたら、あと数歩も進めば街灯をスポットライトよろしく浴びる瞬間だった。 「こんばんは!」  街灯の明かりを浴びるのを待ちわびていたみたいに、ひょいっと前に躍り出てきた。  そいつは、まるで猫を二足歩行にしました。といった外見をしているのだ。真っ黒い毛並みは柔らかそうで、可愛がられた家猫をおもわせた。こっちはボサボサ頭だから羨ましい。 「はじめまして、地球の学生くん」  そいつはのんびり微笑み両手をあげ振ってみせる。  あたかも御遊戯に夢中になる幼児的な無邪気さだった。  三角形の拳が入りそうな耳を立て細長い尾をもちあげる。  金色の瞳が俺をじっと見つめている。身長は同じくらいだ。  黒い鼻に黒い毛並み。全裸なのかとおもったが、首から下を真っ黒なピチピチスーツで覆っているらしい。股間の部分に盛りあがりた見てとれた。声は高いけど男で、同じ歳くらいと推測してみた。 「僕は噂の異世界人のひとりだよ」  ああ、なんてこった。  俺は現状を憂いた。 「暇なら僕と遊ぼうよ。話し相手とか、一緒に歩くとか、だめかなぁ?」  ウニャァっと猫なで声をあげ、前かがみからの上目遣い。瞳が潤みだした。  さて目の前にいるものはいったいなんだろう。きっと非現実的な存在に違いない。  俺はスマホやパソコンをいじりすぎて重度の疲れ目。もう何年も直っていなかった。  ついに幻覚を目撃しているのかも知れない。偏った栄養にストレスや孤独感のせいか幻聴までプラスされている。疲れ目から生じる頭痛もいまや親しい隣人みたいなもので苦痛はなかった。この心地よい痛みにも終わりが近づいているっぽいな。 「寝る前に目を閉じて、数え切れない映像がついたり消えたりするのは予兆だったのか」 「え? なんのはなし?」  幻覚は首を横に方向けひねり、下から俺をじーっと見上げていた。夜なのに前髪にかかる空気は生暖かい。不思議な生き物の呼吸なわけがないし、気のせいに決まってる。  自分の目の前にこんな不思議な生物があらわれるわけがない。  もっと特別なひとのところで戦闘でも繰り広げてるのが似合ってる。  だってスマホの画面の向こう側は、俺からすれば別世界なのだから。 「画面と情報の見すぎでついに頭が駄目になったか。俺の行く末は暗いな」  人間は麻薬やアルコールの助けを借りずとも狂うことは出来るらしい。  もう脳が駄目になったのだとしたら、いつ果てるとも知れない命だ。さっさと帰って寝るとしようか。 「ああ、ちょっと、幻覚じゃないよ、幻聴じゃないよ。僕はここにいるよ」  立ち去ろうとしたら前を塞ぎ、両腕をひろげ通せん坊された。  幻聴と幻覚に対する危機感が増し、踵を返して別の道にむかう。  と、ここで後ろから強く腕を引っ張られ体勢を崩し、危うく転びそうになった。 「僕の言うこと信じてよ! 信じられないなら場所を移すよ!」  俺を傾かせたのも、いま支えてくれているのも幻であるはずの異世界人だった。 「幻覚じゃなくて異世界人だって信じてくれたでしょ、質量があるよ!」 「なおさら嫌だ」俺は苦み走った顔で文句を言う。「相容れない存在だろ俺たちは」  腕を掴まれたまま、ふいに全身がムッとした湿気より開放される。ついで冷たい風がなくなり、柔らかいものに腰掛ける格好になった。どうやら軽く投げられたらしい。 「僕のプライベート空間にようこそ! 宇宙船みたいなものだよ」  夜の住宅街だった景色はガラリと変わっていた。  冷蔵庫みたいなものが壁に置かれているし天井からは薄っすらと目に優しい照明がともされている。だけど極端に狭くて一人暮らしに適したワンルームって感じがした。 「異世界と異世界を繋げる空間の境目に、いま僕たちはいるのです」  ドヤッとミコルは鼻息荒く腕を組んだ。 「つまり俺は?」 「逃げられないってことだよ」  だろうとも。  これはもう観念するしかない。  幻覚でないことに少しばかり安心した。  ソファーらしきものの隣に座り身を寄せられる。 「人間は面白い匂いがするね。どうして独りで歩き回ってたの?」  体の右側に体重を乗せられて見上げられた。  見ず知らずの相手に大胆な真似をしてくるもんだ。  同時に自分がまだ正常なら、やはり世を騒がせる侵略者は現実のもので、ここにいる俺は不運にも目をつけられた。どっちにしろ行く先が暗いことに変わらなかった。 「そうだ忘れてた。僕はミコルっていうんだよ」 「さっき聞いたとおもうけど」 「自己紹介はまだだったでしょう。耳の形が変わってるね? なんかこう、デコボコがあってフジカバムみたい。ちょっとかためなんだ」  自己紹介をされながら耳を軽くつままれる。いじられてもいた。黒いスーツの不思議な感触は生き物の肌質感と似ていた。ぬるっとした色合いなのにさらっとしていてシルクみたいだ。彼が言った単語は気にしないでおこう。謎が増えたら話が前に進まない。 「普通なら家で眠ってる時間だよね」  俺の喉仏に興味をしめしたらしく鼻をこすりあててくる。ふかふかの毛並みに濡れた鼻の感触。久しく感じる生き物の体温が、不覚にも身にしみた。 「君の年頃だとなおさらだよ。高校生はまだ独り立ちしてるひとのほうが珍しいんでしょ」  もしも両親の愛が冷めていなければ俺もそうなっていたに違いない。なんか凄い虚しくなってきた。正面の猫ことミコルは返答を待っているのか、瞬きと呼吸以外は何もしていなかった。 「家に帰りたくないんだ」  無言でいるのも面白くなかったので、気持ちを吐き出した。 「かといって一箇所に留まっているのも気が休まらないから、似たようなところを歩き回って時間を潰していた」 「じゃあちょうどよかった。僕は幸運みたいだ、僕にとって都合のいい相手を見つけられたんだから嬉しいよ」  俺はちっとも嬉しくないけど、猫がニコニコしているなら別にいいのかも知れない。笑顔に負の感情を浄化されている気持ちだった。 「ミコルはどうしてこんなところに?」  彼は待ってましたと身を離して、立ち上がって手を叩いた。 「よくぞ聞いてくれたね。君と似たようなもので、すごく暇なんだよ」  腰に手をあて、なぜか得意気に言っていた。暇であることが名誉であると語っているみたいだ。そういう文化圏なのだろうか。 「地球を侵略してるんじゃないのか?」 「してるよ。だけど僕は……別に何かに参加してるわけでもなくて、はあ、ここにいるのも無断なんだよ。どこでもすることなく暇で暇でしょうがないんだよ」  肩をがっくり落とされる。さすがに暇は名誉じゃないみたいだ。なんとなく自分と同じものを感じているので、彼が暇な理由は聞きたくなかった。 「それはまたどうして? 罰則とか処分とかありえるんじゃないのか?」 「そこは大丈夫だよ。僕は身分が高くて、こっちの世界では問題を起こさない限り自由にしていい決まりだから。おかしいよね!? 僕だって遊びたいのに不公平じゃない!?」  俺の前でふてくされた顔をして、誘拐した地球人の高校生に不満をぶちまけるのは問題にならないのだろうか。 「いわゆる……あれだよ、お忍び」  ふーんっとうなずいておいたら、彼はじーっと俺を見つめてきた。 「聞いてくれないの? 暇な理由とか、どうしてなのかとか」 「話してくれるなら、ぜひとも」 「僕の親はね。僕が生まれてからまともにかまってくれたことはないんだ。そのくせおまえは立派な血をひいているんだって、ずーっと耳が痛くなるくらい聞かされてきた。同年代の心を通わせられた相手がいなくて辛いんだよ」  急に早口にまくし立ててきた。ぷんぷんと子供が地団駄を踏むのと似ていた。 「親は昔から我が国のため地球をいつか征服してやるんだぁ! ってそればっかりで面白くないんだ。身分が高いせいで遊び相手もいないし、みんな敬語だし、じゃあ別に人間を拉致して仲良くなったっていいよね!? だって僕は身分がある、わがままは言ったことないんだから一回くらいは許してもらうからね!? 許させてみせるよ!」  よくわからないが愚痴られた。親の愚痴っていうのは子供にとっては一大事だ。何しろ家族に不満があり、それを聞き入れてもらえないからこそ出てくる文句だから。改善の見込みがあるんだったら陰口なんて叩かない。 「つまり俺は、ミコルの気持ちを満足させるために連れてこられたのか」 「うん! そういうことなんだよ」  なるほど満面の笑みで答えてくれて助かる。  俺は高い高い身分を持った侵略者にとって拾っていい野良猫らしい。 「だけど、ペットとは違うよ。しいていうならお客さま」 「そうなんだ。ところでミコルは侵略者と戦う組織と戦えるのか?」 「何回かね。勝ったこともあるんだよ。意外と強くてビックリしちゃった」  これは弱った。  なんてこともないと答えてくれるミコルだが、動画の内容はよく観ていた。  車がかんしゃく玉みたいに弾け飛び、建物の壁が老朽化したトタンみたいに砕ける。  まさに特撮ヒーローと悪役の戦闘みたいなものをして「意外と強くて」と言ってる。 「ふふん、怯えの混じった目をしているね? この世界でも強さはステイタスになるのかな? 僕ね、訓練してきたから凄い自信あるんだよ。身分が高いからこのバトルスーツだって唯一無二の特注品! 褒めてくれて、そのね、いいんだよ!」  腰に手をあてメチャクチャ胸をそらされる。  だから「おー」と拍手だけしておいた。うかつなコトを言って神経を逆なでしたくない。 「ふ、ふっふん! 凄いんだよ僕は」 「そうなんだな。俺はよくわかんないけど強いのは凄いわかった。凄い強いんだな」 「い、いつもお見事ですとか、さすがでござますって褒め方ばっかりだから、距離が近いのは凄く照れくさいよ」  身分が高いゆえに不慣れなのか。  両手をあわせ、視線をおよがせはじめた。  こういう雑談ほか親の愚痴などを語り親睦を深めていたのだけど。 「帰りたくなったら、ちゃんと家まで送ってあげるから、安心して僕と過ごしてね」  と、嘘偽りのなさそうな微笑みをかけてくれた。どっと安堵感がわきあがってきて、何かして遊ぼうという話になったときだ。 「じゃあエッチでもしようか」 「? いや、それはさすがに……」  と、俺が語ったときにはもう遅かった。  制服のブレザーを脱がされワイシャツからズボンまでを剥ぎ取り、下着までも投げ捨ててしまう。一瞬で丸裸にされた俺を見つめ、ミコルは目をしばたかせた。 「頭以外に毛がぜんぜんないよ!? これ辛くないの!?」  めっちゃ驚かれてた。こんなに無邪気だと、親の愚痴で芽生えてしまった友情のせいで俺は抵抗する気力はほとんど失われていた。不安になるどころか、いまの抜けた大声で安心のほうが大きくなっていく。これが侵略者か……普段は凄い顔したりするのかな。 「君は毛がなくて不便だったことないの?」  胸板や脇腹をさらさらの手で撫でまくられる。このぶんだと、あちらのほうに血液がむかってしまうのは時間の問題かも知れない。男を相手にたつのは、ちょっと抵抗がある。 「辛いと感じたことはないけど、ミコルは毛に不便はない?」 「ないよ。そっか、見た目は違くても僕と同じなんだ」  彼は言いながら自分の首のあたりを撫でさすると、股間部が曝け出される。 「これ僕のチンポ! 萎えてるけど……だいたい同じ大きさかな? お揃いだね」  先端と先端をあわせられて、ますますどう反応すればいいかわからなくなった。いまの「お揃い」はサイズだけでなく、両者とも包茎なのを悦んでいるみたいだ。凄い微笑んでいるので、もしかしたら皮被りは恥ずかしいものなのかも知れない。 「形もそんなに変わらないね」  仮性包茎は恥ずかしいものという認識が強い。だから俺は何も言わずにいた。  あらためてミコルの包茎を眺めると、色は全体的に黒いのだが、包皮の内側は俺と同じで肉っぽい色合いをしていた。玉袋は縮れた毛が生えているわけではないが、代わりに動物の毛皮らしきものでフサフサしていて、黒いまりもみたいだ。 「フサフサしてて面白いよ。ちょっとずつ、ムクムクしてきてる」  座ったままの俺に対し、彼は無遠慮に接近して包皮を俺の包皮にキスを連発させた。この独特な臭いは俺の汗もあるが、二人分の尿っぽさが紛れ込んでいた。余計に恥ずかしくて口をパクパクさせる。 「お、俺はエッチするのか?」  仮性包茎と仮性包茎をぶつけあう。しっとりした肉の感触が俺に伝わっているようにミコルにも伝わっているのだろうか。 「そうだよ。君は僕とエッチするの」  だんだんと固くなり、上にもちあがってきている質感さえも互いの神経を駆け巡っているのだとしたら恥ずかしすぎる。 「目だけじゃなくて頬まで赤くなってる。あ、興奮してるんだ? 僕とチンポあてながらムクムクしてるの気持ちいいよね。この調子ならすぐ勃起するよ」 「お、俺はエッチするの、やめてほしいんだが」  やっと口を開けたとおもったら、ミコルはくすっとした。咥えた獲物をはなす捕食者なんていない、とでもいっているふうだった。 「でもこれが一番きもちいいし、お互いを知れるいいものだとおもうよ」  なぜだろう、説得力を感じてうなずきかけてしまった。 「僕は慣れてるけど、君ははじめて?」 「……女ともないのに男とも、それも異世界人とは流石に一度も」 「そうなんだ。僕は同郷の相手ならいくらでも選べるし、指名できるから不便したことはないよ。だから慣れてるんだ。男同士でも、複数人でも、遊ぶときって楽しいもんね」  でも求めている関係ではないのだと、彼は目を細めることで語っている。自分たちの相性を確かめあうみたいに、頬をこすりつけてくる。マタタビを好む猫みたいな仕草になぜか心惹かれてしまう。 「俺は、その、男同士とかはそんなに……」 「もう逃げられないんだから拒否なんてさせないよ。君は僕のお客さま。歓迎の意を伝えなきゃ恥さらしだよ」  誘拐犯の台詞なのに、俺はなんだか心地よくなる。彼の声にそういう成分が含まれているんじゃないかと疑った。あるいはこのプライベート空間の空気が人間を発情させるものなのかと、疑り続けていた。 「人間のチンポって僕たちのとあんまり変わらないね。だけど、なにその、変な水草みたいな毛? これチン毛なの?」 「陰毛だから、うん、ちん、毛だ……」  こんな話をするなんてありえない。したことがないのでしどろもどろだ。  うぶな反応を面白がっているのかミコルは「ふーん」と意味ありげ。ついでに浮かんだ笑みは女優みたいに妖艶で、うっすら口を持ち上げる程度なのに情熱であふれていた。  それをむけられた対象は俺だ。石ころほどの存在感もない、雑草ほどの価値もない俺が異世界からやってきた侵略者に見初められている。これはもしかしたら、とても光栄なのかもしれない。ぜんぜん自信はないけれど。 「僕だけ裸じゃないのは恥ずかしいのかな?」  肩に両手を乗せられる。あったかくてふわりっとした。肌に触れる毛の感触に神経をくすぐられて、口を一文字にて震えてしまった。 「敏感でいいね。君は僕と相性がよさそうだよ」  ミコルの手が離れるのが名残惜しい。まさに相性がいいのかもしれないが、理性がそれを嫌がっていた。相手は侵略者で、俺は人間でしかも男なんだ。男同士のエッチに興味なんて持ったことがない。 「でも裸より、こういうほうが興奮をそそったりするんだよ。僕は君の裸に興味があるから、今日は裸の君をいただきたいんだよね」  今日はって、次もするつもりなのか。ますます気乗りしなかった。  俺は拒むあまり首を横にして、ミコルに心を侵略されまいとそっぽをむいた。  そのミコルは俺の顎下に手をそえると、ぐっと上向きにさせ閉じた口を接近させていた。  ふさっとしたものが口に触れて、濡れたものが鼻頭にぴったりと張りついてしまっている。ついで脇腹を持たれ立たされてしまった。抱きしめられて、恋人同士がするみたいなキスを強いられる。だけど、俺はこれといって反発しない。ただ不意打ちに驚いていただけだ。 「んむ」  唾液の味をイヤとおもわず更に驚いた。  互いの吐き出した息を嗅ぎ、肺に溜め込む。  ミコルは声こそ高いが臭いは男のもので、塩っぽさに甘さがある。  どきりとして、お湯でも呑んだみたいに喉から全身がカッカしていく。  心臓が早鐘を打ち、挿入された舌の柔らかさを感じた。唾液が溢れて口の端を伝った。  怖くて動けないのでない。頭の血管と竿の血管が同時にひろがり、性の緊張を味わった。  猫ながらなめらかな舌が口のなかを愛撫する。いや、歯茎から舌の根元までを撫でさすり犯しにかかっていた。 「あんっ、僕のキスどうかな? 地球人にも効果……てきめんみたいだね」  離れた口から唾液が垂れ落ちた。  真っ黒な毛。大きな金色の瞳。不敵につりあがっていながら、無邪気な少年チックな口元。お手本の三角形みたいに整った猫耳。ピチピチスーツから浮き上がった鎖骨やくびれた腰回り。  どこがと集中できないほど、すべてが魅力的だった。  俺は恋する乙女みたいに心臓を高鳴らせ、勃起してしまう。 「見てよ。またお揃いになってる」  ビンビンになっていたのはひとりだけじゃなかった。  彼のものも勃起していて、すると俺より一回り大きかった。  黒い竿に黒い玉袋。だけど亀頭は俺と同じで赤っぽい肉色だ。  勃起しても剥けてないのも揃っていた。先っぽをつままれ指に力を淹れられて、上から下に手を動かされていく。わずかながらの抵抗があったけど、俺のはミコルを受け入れ簡単に剥けてしまった。自分でするときは、ここまであっけなくいかなかった。 「ずーっと歩いてたから、こんなに汗臭い」  耳の裏に鼻を押しつけられる。他人に嗅がれるのは初めてで不思議な気持ち。イヤじゃなくて、吐息が薄皮に触れて骨ばった頭の横に何度も舌をあてられ、強く押された。  俺をテイスティングしているのは理解できた。そして満足しているのだとも。 「男のひとの臭いが僕に染みついてる。地球人はマーキングの習慣がないって聞いてたのに、僕を自分のものにしちゃうつもりかな」  俺の頬を舐めながら、臭いでもつけるみたいに抱きしめてくる。勃起した竿と竿がふれあい。いつの間にかミコルも包皮を剥いたらしくて、裏筋と裏筋のぷっくりした箇所があたって、勃起の痙攣にあわせぺちぺちとぶつかりあっていた。興奮した股間の熱が下腹部をあたため、より深い性欲を引き立ててくるようだ。へそのうらが煮え滾りそうになる。 「うれしいよ、目をつけた地球人が僕に興奮してるだけじゃなくて、僕をこんなに興奮させてくれて愉快な気持ち」  亀頭をさらっとした手で撫でられる。固くなり敏感になったところは裏筋やカリ首を握られるだけでも身がよじれるほどに心地よかった。   「なんだか血管がこんなに浮いていると痛そうだよ」  ちょいっと完全に勃起した俺のものを、ミコルは指でつついていた。  言われてみれば太い血管がいっぱいあるし、勃起によって膨張している。  もしも彼の爪がかすめれば、多量の出血が起きてもなんら不思議でない。 「でも僕はエッチのとき誰も傷つけたことないのが自慢なんだよ。これからも自慢に思いたいからね。証明してあげるよ。また座って」  ミコルは俺を不安にさせまいとしているのか、最初にあいさつをしたみたいに無邪気で元気いっぱいの表情になっていた。いや、単純に面白がっているのかも知れないが、とにかくありがたかった。 「足をひらいててね? 閉じたら嫌だよ」  膝を握られ、演技指導でもするコーチみたいに指示される。 「このチンポをね。僕がフェラチオしてあげるよ」  何をするのかを伝えた上で、口周りをべろりと舐めあげていた。  あの舌で。口を犯されたときの情熱を持って股間を可愛がられる?  ごくっと喉を鳴らした。  俺の期待を聞き届けたとミコルはしてやったりと言う。 「雰囲気がよくなったところで、気持ちよくしてあげるよ」  玉袋を片手で下から上にもちあげ、握ってコリコリ揉まれる。ビクッと竿がふるえ先走りが滲んだのを見届けるなり、つけ根を持って頬張られた。舐めるのかとおもっていたのに、亀頭全体がじわっと温められる。どろり濡らされてしまった。 「ぁん」  出てきたのは恐怖の悲鳴でも嫌悪の呻きでもない。間の抜けた喘ぎ。  ミコルは鼻息を下腹部にふりかけ、金色の瞳で見上げながらしゃぶり続ける。 「んっちゅう! ふちゅ! ふちゅうぅぅ!」  鼻息を出しながら、ずじゅるっと唾液をすすりあげながらのフェラチオ。  首を動かさず固定させ息遣い舌の動きだけを使っていたシンプルな責め方。  まだ性経験もない俺にとって、これは 「むふちゅ! むちゅふっ、む、ちゅうぅぅ!」    両玉に片手の指が二本づつあてがわれ、もちあげられる。次に転がすみたいに円をかきはじめた。気持ちよくはない。だけど、なぜか下半身の全体が滾ってくる。 「じゅる! んむっふ……じゅるむぅぅ…………じゅゆうううう」  指で触れるのも躊躇うデリケートな亀頭を余すところなく舌が這う。じっくり丹念に味わいながらも、感覚を味あわせることになれた舌使い。歩き疲れた汗っぽい体がじわっと濡れだしている。温かく濡れた亀頭を中心に神経過敏におちいっていた。だんだんと発汗して、サウナにでも入っている気分だ。 「んむぅ! んむっふじゅるるうう!」  俺は声もなく、ただ喘いでいた。  耳に入ってくる自分の出した動物的な喘ぎがした。  俺を見つめるミコルの視線は「いいでしょ?」と語っていた。  やりたいことを存分に愉しむ少年の笑みで、淫猥に俺の先端を可愛がっている。 「んっ、かなり感じてくれてるみたいだね」  フェラチオから開放されたチンポが面白いくらい跳ねていた。  泡立った唾液が滴り、ミコルの口や鼻にまで飛び散っていて玉をいじっていたほうの手で拭う仕草に生唾を飲む。彼はいま確信していた。犯されている俺がどんなに期待しているのかを、思い過ごしでなく相性が抜群だと悦んだ目をしている。  どうして出会ったばかりの相手で、顔も人間と違うのに。  ミコルのことを感じているのか、自分でもよくわからない。 「僕はなれてるけど初めてのひとのペースでしてあげなきゃ悪いし、手早く済ませて、のんびりしようか」    ミコルは言い終えると「床に四つん這いになって」と指示。いやお願いしてきた。  だれがそんな真似をするか。頭で思っているのに自然と両膝を床にあて両手もそれにならっていた。羞恥とそれに勝る興奮で朱にそまった自分が、彼に身を差し出していた。  いいこだねぇ、と肩を撫でられる。なぜか嬉しくなるし満更でもなかった。 「うん、いい形をしたお尻だよ。まん丸で団子みたい。でも人間って尻尾がないんだ」  ふっと尻に息をふきかけられた。指が直に神経へ触れたみたいに身を強張らせた。排便でもするように尻を閉ざし、そこに両手の親指をそっとあてがわれ開かれてしまった。 「肛門はキレイな色で、硬くてしまってる。小さいほうだね。気持ちよさそうで、僕の好みだよ」  だれにも見られたことのない場所を、そう評価された。  ミコルが好きというのなら、きっといいものなのだろうと信じられた。 「嬉しいでしょ? 相性がいいひとに褒められるのってね。すごくいいんだよ」  何度もうなずいた。恥ずかしいだけじゃない。大きい大きい不安もあった。  自分では用を足したとき、風呂で洗うときにしか触れた経験はない。それを他人に四つん這いで見せているばかりか、吐息を吹きかけられながら査定を受けているんだ。 「君のお尻は味わうまでもなく満点だよ。ううん、その二倍でも十倍でもあげたい」  結果は百点満点で花丸の上をいったらしい。なぜか嬉しくなっていた。だれかに褒められるのは幸せで、あったばかりのアブノーマルな猫人間が相手でも無関係だ。本当に相性がいいのだろうか、俺は彼に対する抵抗というものが思いつかなくなっている。四つん這いになったのも自分の意思だった。期待があるからこそ彼に尻を捧げているんだ。  尻にぺたりと冷たいものが触れた。  入り口が痛いと感じたのは一瞬だけ。  すぐに妙な感覚がこみ上げてきて下半身をよじる。  肛門に濡れた細いものを挿入されて股間をぴくぴくよがらせていた。 「僕の指と、潤滑油だよ」  ミコルが俺の中にいる。だめだ、嬉しくなる。  ひやりとしたヌルヌルがまとわりついた彼の指。  なんとも言えない独特な感触がするだけじゃない。  あのさらさらのピチピチスーツの一部が、いま俺の中にある。  チンポは大きくなったままで、肉色が先走りで濡れてもいた。  ぴゅるっと唾液と先走りを垂らしながら、指を締めつけている。 「変な薬とかはいってないやつ?」  気をごまかすための抵抗だったのかもしれない。  侵略者を相手に喜ぶなんておかしい。相手は男で、俺もそうだし。  いろいろな気持ちを煮立たせて、ついに吐き出していたのかも知れない。 「ないない。そんなの使ってたら上達しないもの」  俺の中にある指が、ぐるっと反転する。  背中のほうにむかった指の腹が曲がると、小刻みに前後した。  排泄の我慢でもするみたいに震え、チンポがビーンと伸び腹を打つ。  床に爪を立てて唇をかたくとざしていた。だけど、尻が気持ちいい。 「僕はかなりの男をイかせてるから期待していいよ?」   ぐるっと指が反転し、今度は腹の方を同じようにやった。  体中に電撃でも食らったみたいに、俺は跳ね上がっていて、チンポのつけ根に体液が溜まっているのがわかってしまう。 「んつ」  内壁をいじっていた指を引き抜かれるやいなや、チンポがビクンビクンと大げさに上下する。へその手前がもぞもぞする。自慰を終えた後みたいな息遣いをして、穴が緩んでいた。犯される準備は万端になっていて意識しただけで頭が沸騰する。 「ん、いまにも射精しそうだから、犯すよ」 「あぁ……」  ぴったりと穴にあてがわれたものが腰の動きと一緒に奥をついてくる。  痛みはない。ミコルのチンポは熱くて太くて、そのせいか息苦しくなった。  ピチピチとしたスーツが俺の背にふれる、脇腹をしっかりと握りながら後頭部を嗅がれていた。動物のメスがそうされるみたいに伸し掛かられている。  ミコルのものにされている実感が血の巡りを加速させた。  後頭部や耳の裏側。うなじにまでふりかかるミコルの発情した息遣い。 「いま君のなかに、僕がいるよ」  半分までの挿入が終わり、ついに密着する。  哀しいくらい切なくなって、恥ずかしさで血管という血管がうねり、神経の隅々までがショートする。 「うあぁぁ……」  間の抜けた吐息をあげながら、首をさげるとミコルが首を舐める。ぞくっとした瞬間を見計らい腰を引き、穴の奥までつらぬきにかかった。 「あっ!」  つきたてられた瞬間に頭の中が真っ白になった。目の前は暗転し、何も見えなくなる  でも背に感じる重みが、後頭部にふりかけられる息遣いが俺を現実に引き止めてくれていた。肛門をひろげ、奥まで挿入されるチンポがへその裏側までをゴリゴリさせた。  俺のチンポはドクドク脈打ち、ジンジンと肛門から全身が熱されていく。  体のなかにミコルがいて、勃起したチンポでつらぬかれている。  腰使いは最初から速度のあるもので、彼も我慢の限界だったみたいだ。  ふーふーと熱い食べ物をさますみたいな息遣いは、余裕が失せている。  俺に夢中になりながら腰を振ってくれている。報われた気持ちになった。 「んぐぁ」  奥をつきたてられて自然と声が出た。まるで苦しいと主張するそれは、実のところ快楽に緩んでいた。粘膜を竿と亀頭でガツガツ掘られて、行儀悪く潤滑油を床に散らせミコルの下半身も汚している。 「だめ、僕は君をはなしたくない」  ただ快感によがっただけだった。逃すまいと嫌がられ、より体重を乗せられた。  お腹のなかがいっぱいになり、胸のなかまでいっぱいになり、心のなかまでじんわり暖かくなった。 「あっ……うんっ」  俺は彼の言葉に同調するみたいな呻きをあげ、彼は顎を首裏にあててきた。何度もノックしているから、うなずいているみたいだ。  体中が熱い。指先から内蔵のすべてにいたるまで。  ミコルは無言で、俺はつかれるたびに喘ぎを漏らす。  唾液までもこぼしながら、目をとろっと閉じかける。  チンポを振るい震わせながら彼のなすがまになっていた。  男同士で、こんなことをしているのにたまらない心地よさ。  入ってきて、出ていって、それを繰り返されると満たされる。  玉袋の奥が疼くばかりか前立腺を押されたんか、根本が辛い。  だけど、初めてのせいで射精には至らないもどかしさが続いた。  それを察したのだろう。ミコルは竿を握ってくれた。  手を添える程度のちからなのに、もう射精がこみあげてくる。   「だすよ。君に、僕のものを、出すよ」  ところどころを強調しながら肩を噛まれる。皮膚にちょっとした刻印を残す程度のちから加減で、あま噛みというやつだ。 「むぅ」  彼が俺のなかで爆発する。  ドクンドクンと、ズクズクと、血を脈打たせながら白い濁りを俺の内側に。  初めて肛門で感じる精液はおもいのほか温かい。お湯をかけるみたいだった。  射精されながら、床に真っ白い濁りをぶちまけてしまう。男の臭いがしてくる。  ふたりで洗い呼吸をあげながら、身を寄せ合う。繋がったまま余韻に浸った。  夢でも見ているみたいだった。  こんな状況になりながら、ミコルがのしかかりながら俺を愛撫しているのが気持ちよくなる。 「だれかといるの、こんなにいいんだな」  俺は無意識で言った。だれでもいいってわけでもないのに、照れ隠しだったのかも知れない。気を悪くされていないか心配した。すでに出してしまった言葉はもう飲み込めないが。 「うん。君といっしょにいるの、僕の想像をあっさり上回ってる」  ミコルは俺の両手のうえに、自分の両手を重ねて首に頬ずりする。毛並みが気持ちがよくて、ピチピチスーツの内側はもっといいのかもしれない。そんな想像を巡らせていた。 「君を僕の家につれて帰りたくなった。一緒に来るよね?」  そんな誘惑をされて、俺は、拒むこともできず彼の右手を握り返した。  つらぬかれた穴がどくんっと蠢き、手を握っただけで、ミコルが興奮したのだとわかり何だか面白くなった。 「あ、わらったでしょ?」  ミコルは言って、ニコニコと微笑んでいるらしい。態度でわかる。 「初めての笑顔が後ろ向きで残念だけど、あとで見せてよ」  いまやっと気がついた。  俺は、まだ笑顔が残っていたんだと、それをミコルに引き出してもらった。  だめだ、俺はすっかり、この侵略者に頭と心の領域に旗を刺されてしまっていた。     

Comments

ありがとうございます! いっぱい楽しんで、寂しさを埋めあうのでしょうねぇ

イチゲン

めっちゃ好きです!!!されるがまま気持ちよさに体を任せちゃうのとてもいい…💕 今度はおうちでより濃密な時間を過ごすのでしょうね…(*´﹃`*)

竜胆


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