XaiJu
楽井戸
楽井戸

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落ち込んでるPが黛冬優子に慰められる話

「悪いな、帰りに事務所まで付き合ってもらって。車で待っててもよかったんだぞ?」


「別に。ふゆも用事あったし」


番組収録からの帰り道。どうしても自宅で確認しておきたい資料があり事務所へ立ち寄った。

夜も遅いため、さすがに社長もはづきさんもおらず、社屋の灯りも消えている。入口の鍵を開け、防犯設備のセキュリティを解除。自分のデスクへ資料を取りに向かう。


「よし、これだ。俺のほうは大丈夫だけど……冬優子は何の用事だ?」


「……あんたに用事があんのよ」


「俺に……?」


俺を待っていたのか最初は入口の壁に背をもたれていた冬優子だったが、腕を組みながらつかつか歩きソファーに腰掛ける。


ただならぬ雰囲気に少々身構えてしまう。俺なんか怒らせるようなことしたっけ……?


「あんたも座んなさい」


「お、おう……」


L字型のソファーの冬優子と別の辺に座る。俺が腰掛けるのを確認し、彼女は一呼吸置いて口を開く。


「何悩んでんのよ、運転中ずーっと。すっごい辛気臭い顔してるわよ」


「え……そ、そうか?」


ぐらついた。

今日あった出来事が思い起こされて心を揺さぶった。


「収録後の挨拶回りから戻るなり顔に暗い陰ひっつけて帰ってきたじゃない。他の子にはどうか知らないけど、そういうの、ふゆにはばれるから」


「……っ」


……冬優子とはそういう女の子だった。

瞬時に素と仮面を使い分ける、状況判断の完璧な女の子。場を読むことに長けている彼女であれば、俺の感情の乱れを見抜くなど造作もないだろう。……いや、俺がわかりやすすぎるだけかもしれないが。


「まあ、ちょっと小言言われただけだよ……」


「……あんたは、ちょっとの小言で揺れるほどやわじゃない」


なぜか怒ったような声を出して視線を落とす冬優子。

……実際、はっきり原因を言わない俺に怒ってるのかもしれない。


「……言いたくないならいいわ。あんたの中で処理できるんならね」


「……ああ」


俺はほっとしていた。問い詰めて来なくて。

冬優子に聞かせることではない。聞かせてはいけない。


「別にあんたを心配してるわけじゃないから。ふゆが個人的にムカつくってだけ」


「本音を言わない俺に対してか」


聞かれないのはありがたいことだけど、親身になってくれた冬優子に対する後ろめたさから、そんなことを口にしてしまう。


「言いたくないこと無理やりほじくり出す趣味はないわ。ただ……」


「……ただ?」


ふーっ……とゆっくり息を吐いて呼吸を整え、彼女は言う。


「あんたをそんな状態にした奴がムカつくってだけよ」


「っ……!」


俺の今のこの感情は何か?

嬉しい、ありがたい、恥ずかしい、照れくさい、情けない……そういった気持ちが複雑に入り交じっている。


「話したくないならこれでおしまい。寝る前くらいまでは気にしてあげるけど、朝になったらあんたの悩みなんて綺麗さっぱり忘れてあげるわ」


「冬優子……」


ああもう……たまんねえな。

場を、人の心を、何もかもを慮って、最適の答えを出す。人に優しい答えをはじき出す。これが冬優子だ。


「……冬優子っていい名前だな」


「何突然?気持ち悪い」


「優しいからさ……」


「理由も単純だし……。もっとひねりあること思い付かなかったわけ?」


「まっすぐな性分だから。ひねれないらしい」


「あーそう、すっかりいつものあんたね。よかったよかった」


呆れた後、一瞬微笑んで冬優子は席を立とうとする──


「……今日、いただろ。旬の売れっ子アイドル」


背もたれに両腕を乗せて体重を預け、天井を見つめながら……今日あったことを語り出す。なぜか、冬優子の優しさに甘えたくなったのだ。


「ああ……悔しいけど今のふゆじゃ勝てないくらいの売れっ子ね」


俺が語り出すと、冬優子はスカートをおさえて再び着座する。


「ま、今日はふゆのほうが一歩くらいリードして目立ってやったけどね」


なんとなく得意気な視線をこっちに向けてくれている気はするが、天井を見ている俺と交わることはない。


「今日の番組の一番お偉いスポンサー、その売れっ子アイドルを推してんだよね」


「え……」


「CMにも彼女を起用してるし、それ以外にも色んなタイアップ企画で彼女を使っている」


「それって、ふゆが──」


声音が震えている。……だから言いたくなかったんだ。

冬優子は完璧な仕事をしたのだ。それが間違っているなんて思ってほしくない。


「冬優子は何も間違っていない。今日の仕事は100点だ。俺がそういうスポンサーがいると知っていても、冬優子に対応を変えろなんて指示を出すことはない。それに冬優子だって、指示されたところで対応は変えないだろ?」


「っ……」


「番組収録はうまくいったし、売れっ子の彼女は数ある仕事の一つの出来にそこまで拘泥したりはしない。ただ言うなれば……今日たまたま見に来てたそのお偉いさんの性格の問題だよ……」


「何よ……」


「彼女と企業のタイアップはそのお偉いさんが企画し、主導してきたんだ。プライド高いんだろうな……。その人にとって、自分が支援にしているアイドルが負けたということは、自分の商品が負けた……いや、自分自身が負けたと同じくらいに思っているんだろう」


「そんなの……身勝手すぎる……」


泣きそうな声で言わないでくれ冬優子。いつもみたいに怒ってくれよ……。


「滅多にそういう人はいないんだ。たまたまそういう人がいて、たまたま収録を見に来てたっていう……まあ、巡り合わせが悪かったんだよ」


このまま二人で暗い気分になるのは嫌で、なんとか傷の少ない落下地点まで話を持っていく。


「……それであんたは、なんて言われたのよ」


……それを聞かれたくないのだ。

冬優子がさっき言ったとおり、小言くらいだったら俺だって揺れたりはしない。


「言えない」


「……言えないようなことを言われたってことね」


「訂正、俺が言いたくないから言わないだけ」


「そうやって……優しいって言うならあんたもじゃない。ふゆを守るために口をつぐんで……」


違う。そうじゃない。冬優子がそう言ってくれるほどできた人間じゃない……。

俺はもっと醜いんだ……。


「優しくなんてない……情けないんだよ……。自分の大切なアイドルが好き勝手言われて……ただそいつが思いついたまま罵詈雑言並べ立ててるだけでなんの正当性もないのに……!俺は……!」


「プロデューサー……」


あーくそ……。震えるな声……。


「なんであんなやつに謝ってんだよ……くそっ。これじゃあ完全に負けじゃねえか……」


背もたれに乗せていた腕で目元を覆う。

ワイシャツの生地に雫が染み込む。


「ちょっと……」


冬優子の心配そうな声。逆にそれが俺を苦しめる。

「なんで言われるがままになってんのよ!」って怒鳴ってくれたほうが、よっぽど自分を奮い立たせられる。

だから、そんなに優しくしないでくれ……。


「くっ……そ……」


情けない。年下の女の子相手にこんな弱った姿を晒してしまうなんて。言わなきゃよかったのに、冬優子の優しさに縋ってしまった。


「あのさ……あんたがよかったらなんだけど」


「ん……」


何か慰める方策でも考えて──


「ふゆのおっぱい……触る?」


は?

思考が止まる。


「はい?」


とんでもない聞き間違いをしてしまったような気がして、驚きのあまり涙目のまま冬優子のほうを向く。


「なんか……女の胸を触るとストレス緩和されるって言うじゃない……」


聞き間違いではなかった。

冬優子は冬優子で自分から言い出したくせに、もじもじしている。


「いや慰めようとしてくれるのはありがたいが、自分の体を安売りするようなことは……」


「安売りしてない。売るに値する相手だから売ってんの。後はあんたの意思の問題よ」


「それは……」


「残念ながらボリュームは期待できないから、ストレス緩和効果とやらが十分に発揮されるかはわからないけどね」


いや、十分発揮されてるよ。

脳が冬優子に対するドキドキで埋め尽くされて、あの憎たらしい顔と罵声の記憶が放逐されていく……。


ああもう、冬優子のことしか考えたくないな──


「冬優子……おっぱい、触ってもいいか……?」


「ん、好きにしなさい……」


席を立った冬優子が、俺の足の間にぽすりと座る。

ちょうど俺の鼻下くらいの位置に冬優子の頭頂部が見える。息を吸い上げるとふわりと香る女の子らしいシャンプーのフレグランス。あまりの近さからか、洗髪料の香で隠された冬優子本来の匂いまで感じられ、妙にどきどきしてしまう。


「冬優子いい匂いする……」


「ちょっ、嗅いでいいなんて──んっ♡」


両手で冬優子の胸のふくらみを包み込む。

確かに正直なところサイズ感は慎ましやか。しかし、彼女にプライベートゾーンを侵すことを許されているという事実が、安心感と興奮を与えてくれる。


「冬優子、揉んでいいか……」


「揉んで楽しいサイズじゃないと思うけど、好きにしたら」


「楽しいとかじゃなくて……冬優子のだから揉みたいんだ」


「なっ……!?♡ひゃんっ!♡」


もみゅっ♡ふにゅっ♡


指を折り曲げたり手のひらで撫で回して冬優子の胸の感触を堪能する。

女の乳を好き勝手揉みくちゃにする支配感、あの強気な冬優子の淫靡な我慢声、髪から香る彼女の匂い──目の前の女の子から伝わる全ての要素が俺の興奮材料になり、同時に彼女を愛しく思う気持ちが膨らんでいく。


「冬優子……他人に胸揉ませたことあるか……?」


「あるわけないっ……♡あんたが初めてっ……♡」


「っ……!初めてにしてはずいぶん思いきったな……」


「うっさい……♡初めて触らせてもいいって思った相手だからよ……♡」


「冬優子っ……!」


「きゃっ♡ちょ、乱暴っ……だからぁっ……♡」


冬優子が19年間一度も他人に触らせたことのない胸を初めて弄んだ男が俺で、さらにその行為を許容されているという事実に猛烈に昂ってしまう。

興奮は肉体に伝染し、自然と彼女の胸をまさぐる手つきも荒々しいものになる。


「冬優子っ……!冬優子っ……!」


「名前っ……♡囁くなぁっ……♡」


俺の心はすっかり冬優子で埋め尽くされている。それどころか、暴力的なまでに彼女を欲している──


ぎゅうううううっ♡


「ちょっ♡やあっ!♡♡」


腕を交差させて冬優子の体を抱きしめ、手のひらに収めた乳房を力いっぱい握りしめる。許可も得ていないというのに、この胸は俺のものだと主張するかの如く力をこめて。


「プ、プロデューサー……?♡」


冬優子の表情を窺い知ることはできないが、おそらく突然の暴力的な愛撫に戸惑っているのだろう。


もう俺は我慢できなくなっているのだ。

冬優子を他人のものにしたくない。俺だけが独占していたい。


「冬優子のこと……俺のものにしたい」


「なぁっ──!?♡」


抱きしめた体があからさまにびくりと震える。


「冬優子とセックスしたい……」


「ちょっ……耳元で囁かないでってば……♡」


「冬優子、嫌って言ってくれ……」


「は……?」


でも俺は冬優子に逃げ道を与える。

だってこんな状態じゃ──俺が気弱に、冬優子の優しさにつけこんで関係を迫ってるみたいじゃないか。


「嫌って言ってくれたら、何もしないで帰る。それから、関係を迫ったことを謝る。もう二度と迫ったり……冬優子に甘えたりしない。だから嫌って言ってくれ……。じゃないと、我慢できない……」


静寂の空間に、僅かに揺れた冬優子の呼吸が響く。吸気に合わせて彼女の肩や横隔膜が膨らむ動きまで感じられる。


「あんた……自分が卑怯なこと言ってるって気づいてる……?」


「ああ……冬優子の意思を無視して関係を迫って、我ながら卑怯だと思うよ。好き勝手罵ってくれ……」


「違うって……」


また、呼吸に合わせて冬優子の肩と横隔膜が膨らむ。一瞬止まって、ゆっくりと吐かれた息はやはり震えている。


「『もう二度と関係を迫ったり甘えたりしない』ってとこ……」


「冬優子……?」


「あんたに甘えられるの嫌じゃないから……だから、嫌じゃない……」


ぼそっとした冬優子の呟きは一語ごとに音量が小さくなり、言葉尻のほうはほぼ消え入るような声だった。


「冬優子、それは……」


「あんたとなら……その、最後までしてもいいって言ってんの……」


たぶん、冬優子の背中にくっついた俺の胸の鼓動は彼女には筒抜けだろう。同時に、彼女の鼓動は俺の手をばくばくと跳ね上げる。


「冬優子……ご家族に連絡してくれるか、今日は帰らないって」


「誘い方が生々しいっての、ばか……♡」




おわり


(後書き:本番はないんかい!?……はい、来月やります。でも他に天啓が下りてきたら別のを書くかも。

あと来月あたりpixivのほうであまり伸びてない作品をFANBOXにお引っ越しさせる予定です。基本は全体公開の予定ですが、中には内容をエグめに改造して支援者限定公開にする作品もあるかもしれません。特殊性癖好きのみんなはそっちを楽しみにしといてくれよな!

では今月もご支援いただきありがとうございました!)


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