【あらすじ】
消防士の井上大輝には他人の身体の一部を複製(コピー)できる特殊能力を持っていた。ある日、彼は憧れの存在である先輩・加藤祐二の身体を段階的に部分コピーし始めるが……。
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勤務交代の時間を迎えた消防署。紺色のツナギを身にまとった消防士たちが集まる更衣室で、井上大輝(24)は先輩である加藤祐二(32)に声を掛けた。
「祐二さん、お疲れ様でしたッ!」
「おう、お疲れ。......なんかお前、身体でかくなってねえか?」
「そうっすか? 前からこんな感じじゃないすか?」
「そうだったっけか? すげぇな、腕とかめっちゃ太いし男らしいよ。俺も負けねえように筋トレ頑張ろうっと!」
裕二は羨ましそうな表情と大輝を見つめる。大輝はニヤニヤと笑みを浮かべながら足早に更衣室を後にして、心の中でこう呟いた。
(……本当はこの身体、祐二さんのモノだなんて、言えないな〜ッ!)
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さかのぼること、一ヶ月前。大輝はマッチョで色気あふれる祐二の身体を『コピー』することに成功した。
大輝には生まれた時から特殊な能力が備わっていた。先天的コピー症候群。つまり、彼は他人の服やズボンを着用すると、身体の一部がその所有者と同化してしまうという、極めて類い稀な体質の持ち主だった。一方、コピーされた相手の身体は、大輝の身体と入れ替わってしまう。そして一度身体が入れ替わると、大輝がもう一度自分の服を着用しない限り、身体を元に戻すことはできないのだ。
彼はその能力をなるべく周りの人にバレないように用心深く過ごしてきた(時折、意図せずに他人の服を着てしまいコピー能力を発揮してしまうこともあったが)。しかし、今年からこの署の配属となり、先輩である祐二の男臭い姿をひと目みた時から、こんな感情が芽生えるようになっていた。
(祐二さん、すげえ男前だし、めちゃくちゃ憧れる。祐二さんみたいな身体になりたい。祐二さんの全てを手に入れたい......!)
元々、大輝の身体は消防士にしては細身で、彼はそのことをコンプレックスに思っていた。祐二への想いが募りに募ったある日、大輝は祐二のツナギを更衣室から盗み出すことに成功した。
「......んほッ! 祐二さんのツナギ、やっぱイイ臭い......」
家に帰って早速そのツナギを鞄から取り出し、鼻に押し当ててみた。ムワッと感じられる、ツナギに染み付いた祐二の酸っぱそうな汗の臭い。早く身体中を祐二の匂いで埋め尽くしたい、という思いが押し寄せてくる。早速袖を通してみると、祐二のツナギは予想以上に大きく、大輝のものよりもワンサイズ以上大きかった。当然サイズが合うはずがないのだが、大輝は気に留める様子もなかった。
「うほッ......! きたきたッ、この感覚......!」
ツナギを身にまとった瞬間、大輝の身体は劇的に変化を遂げた。ミシミシと身体の骨が軋むような音がする。割と小柄だった身長がいっきに伸びて、視線はいつもよりもグンと高くなった。大輝のスリムな筋肉は、新しい骨格に合わせて膨張し、逞しい筋肉になる。やがてぶかぶかだったツナギは、恐ろしいほど身体にフィットするものになっていた。
「すげェ......これが、祐二さんの身体……」
大輝は鏡の前に立ち、ツナギを上半身だけ脱いでみた。褐色に焼けた肌、シックスパックに割れた腹筋、逞しく太い上腕筋、プリッと引き締まったプリケツ。脇の臭いを嗅いでみると、裕二と全く同じ中年男性特有の臭いがツンと鼻腔を刺激した。
「あぁ、凄えな、裕二さんの身体……」
「この筋肉質な胸筋の張りとかエロッ!」
大輝の身体は祐二のものに変化したが、ヘルメットや帽子は被っていないため、首から上は童顔である大輝の顔だった。童顔な見た目とは似つかない、バキバキに鍛え上がった身体つき。そのアンバランスさが大輝の興奮をさらにそそり、いつの間にか彼の股間はさらに熱く、そしてはち切れんばかりにパンパンに膨れ上がっていた。
*
一週間後。勤務を終えた男たちの匂いがぷんぷんと立ち込める更衣室で、祐二は大輝のバキバキに鍛え上がった肉体をじっと見つめながら、訝しげな表情を浮かべていた。
「お疲れ様でした、祐二さん! さっきからどうしたんすか?」
「いや……なんか、お前の身体に見覚えあるような……。俺の身体もちょっと違和感あるっていうか......別に、なんも変わったところねえよな?」
「そうなんすか? おかしい話っすね。僕は僕ですし、祐二さんは祐二さんじゃないっすか!」
大輝は凛々しい表情でそう答えた。大輝の顔は、もうかつての人懐っこく芋っぽい童顔ではなくなっていた。彫りが深くて男臭い顔──祐二と全く同じ顔だった。大輝は祐二のヘルメットや私物も盗み出し、最終的に頭の先から爪の先まで、祐二の身体をコピーすることに成功したのだ。一方で、祐二の全身は大輝のものに変わっていた。
(すげぇな。完全に入れ替わってるのに、本人は気づかないものなんだなぁ)
大輝は、普段祐二が決して見せないような不敵な笑みを浮かべた。
*
「ああ、すげぇイケメンだし色気ムンムンの顔だな……この顔見てるだけで、もうビンビンに勃ってきた」
家に帰った大輝は、鏡に映る自分の姿を見るだけで息が荒くなった。祐二の声で深くてイヤらしい溜息をつき、裕二の真っ黒な巨根を扱いて、祐二のイカ臭い雄汁をじっくり嗜む。それはまるで、本物の祐二が目の前で卑猥な姿を見せ付けるような光景であり、自分自身に陶酔しているような様子でもあった。
こんな日々が愛おしくて堪らない。もっと本物の裕二を近くで感じたい。コピーだけじゃなく、本物を手に入れたい。そう考えた大輝は、ある作戦を決行することにした。
*
「よう、宅飲みに誘ってくれるなんて珍しいじゃねえか」
祐二が大輝の部屋にやって来た。祐二は、かつて大輝がコンプレックスだった細身の姿をしているが、自分の容姿が奪われてしまったことに何も違和感を覚えていない様子だ。しかし、中身は頼もしいリーダー気質の祐二の精神ということもあり、やはり内から込み上げる自信や男らしさが溢れ出ていた。
大輝は、自分の姿をした祐二に向かって口を開いた。
「祐二さん、俺、実は祐二さんのことが好きで……」
突然の大輝の告白に、裕二は言葉に詰まった。
「お、おう……俺も好きだよ、お前のこと。でもそれは、後輩としてっていう意味なんだが……」
「分かってます。だから、俺、裕二さんになりたくて、祐二さんになっちゃいました」
「……は? 何言って……ん?」
大輝のその言葉を聞いた途端、祐二は脳内に衝撃を覚えた。大輝のその言葉がトリガーとなって、祐二はこれまで違和感を覚えなかった、入れ替わったという事実を突然認知することになった。
「んッ!? ってかお前、俺になってねえか!?」
「はい。祐二さんも、僕になってますよ。ほら?」
大輝はそう言って、祐二の顔の前に手鏡を差し出した。目の前に映るのは、職場の先輩後輩関係である祐二と大輝。自らの容姿が完全に奪われてしまったことを祐二はようやく自覚した。
「これって……おい、どういうことだよ」
「だから言ったじゃないっすか。俺、祐二さんにずっと憧れてて、祐二さんみたいになりたくて......だから俺、祐二さんみたいになっちゃいました。というか、加藤祐二になっちゃいました」
大輝はそう言って、祐二の身体を押さえ付けて、ポケットに隠していたクスリを祐二の口の中に押し当て、それを無理矢理飲み込ませた。祐二は必死に抵抗しようとしたが、お互いの腕力も入れ替わっている以上、彼は大輝を抑えることができなかった。
「......んはっ! 何するんだ、お前……ん……」
祐二はそのまま深い眠りについてしまった。
*
「お、大輝? やっと目覚めたか?」
「......ん!? なんだ、祐二さん......いや、俺が祐二……? あれ、でも目の前にいるのは祐二……さん?」
祐二が目を覚ますと、目の前で大輝が男臭い顔を覗かせていた。目を覚ましたばかりなのか、祐二は大輝が何を言っているのか理解できない。すると大輝は祐二を姿見の前に立たせて、耳元でこう囁いた。
「何寝ぼけたこと言ってんだ? ほら、よく見てみろ。お前が大輝で、俺が祐二だ。だろ?」
「いや、俺は……ん? 確かに、僕が……大輝、っすよね……」
祐二は否定しようとしたが、目の前に映る二人の姿が動かしようもない証拠だった。目をぱちくりとさせて、大輝の言葉を受け入れようとする祐二。そんな彼の股間に向かって大輝はそっと厳つい手を伸ばした。
「ん!? 祐二さん、何をす……!?」
「いいじゃねえか、誰も見てねえんだし……俺、お前のことずっと好きだったんだよな……もちろん、男としてな」
「え……!?」
祐二の深層意識は完全に大輝のものへと置き換えられていた。祐二は大輝の顔で赤面した。
「祐二さん......マジっすか?」
「なあ、俺たち付き合おうぜ……イイだろ?」
「え、あ……」
「なあ、いいだろ?」
大輝は分厚い体躯で、祐二の引き締まった細身の身体を押し倒した。祐二はそっと大輝を受け入れ、大輝の腰に手を回す。
二人の長い夜はまだ始まったばかりだった。
(完)
フカヒロ
2021-11-28 04:20:29 +0000 UTC