6【後藤登】
驚いた。親友である津崎亮が、「人形」になって俺の目の前に現れたのだ。津崎と向かい合わせになった時、津崎はかすかに驚いたような表情を浮かべていた。きっと俺と同じように“人格”が残っているんだな? 俺は集中力を研ぎ澄まして、津崎の脳内に語り掛けてみた。俺の精神がこの人形に馴染んできたおかげで、次第に人形同士であれば簡単なコミュニケーションが取れるようになっていたのだ。
(津崎、頼む、気付いてくれ……!)
すると、津崎の頬が一瞬ピクッと動くのを俺は見逃さなかった。津崎は、日頃のバスケの練習で精神が研ぎ澄まされ、人形化された身体に早くも順応することができているんだ。
(津崎、おい津崎……!)
(……登!? これはどういう……?)
津崎は目を丸くした。
(山下が他の人形に気を取られている。今のうちに、二人でここから逃げよう。なぁ、少し身体を動かせるか?)
俺が片脚を軽く動かしてみせると、津崎も同じように片脚を前へ動かして見せた。へへ、流石は俺の相棒だ。山下が他の人形に気を取られている今のうちに、何とかここから脱出しよう。そう思っていた矢先、
「準備完了! さあ、組み換えはじめようか」
山下がこちらにじろりと視線を向けた。その瞬間、背筋がぞっと凍り付くのを感じた。
「あれ? 登と津崎の位置が移動してないか?」
山下が俺らの身体を上から覗き込んだ。額から冷や汗が出るような気持ちになる。しばらく沈黙が続くと、
「ま、気のせいか。ただの“人形”なんだし、動くはずないよなあ」
そう言って、山下は俺と津崎の身体をガチャッと雑に持ち上げた。身体の節々を“品定め”するように触ったり臭いを嗅いだりしながら何かを確かめている。
「うんうん、イメージできてきたぞ。僕だけのオリジナル人形、早速つくってみよっと♪」
山下は、津崎の人形を持ち上げた。そしてその身体を横向きにして、左手では上半身を、右手では津崎の下半身を握る。そうして微笑みながら、津崎の下半身を躊躇なく引き抜いたのだ。
(なッ……!?)
一瞬、津崎は声を上げるが、電波がぷつりと途切れるように、津崎から何も応答が得られなくなってしまった。津崎の「人形」は、まるで意思を持つことを放棄したように無の表情になってしまった。山下は、そんな津崎の上半身だけを持ち上げて、下半身を床の上に雑に転がした。
次に山下は、見知らぬラガーマンの人形の下半身も同じように引き抜くと、今度はそれを津崎の下半身に装着させた。ラガーマンの下半身は、カチャッという無機的な音とともに、あまりにもスムーズに津崎の上半身に入り込んでしまった。
「うん、いいフィット感! ニュー津崎の完成だ。上半身はスリム系筋肉なのに、下半身はラグビーで鍛えられたガッチリむちむちボディ。この不釣り合いな感じ、あぁ堪らんな♪」
山下が言うように、津崎の姿はあまりにもアンバランスだった。室内競技で色白である津崎のバスケ部姿の上半身に対して、下半身はむっちりラガーマンとなりしっかり日焼けもしている。これだけ違う体格をしているのに、彼らの上半身と下半身のパーツはあまりにもスムーズに交換されてしまい、フィット感も完璧なのである。
山下は、津崎とラガーマンの人形を横並びひ置くと、二人のパンツを人差し指でゆっくりめくって彼らの股間を晒してみせた。
「うんうん、チンポもちゃんと入れ替わってるね。津崎、これで童貞に逆戻りだなあ」
山下はほくそ笑んだ。巨根で有名であった津崎のチンポは、童貞感まる出しの皮の被った真性包茎に。反対に、ラガーマンにはこれまで何人もの女とヤッてきたのだとひと目で分かる、巨大なズル剥けチンポになっていた。
俺はその光景を見ていられなかった。これでは仮に元の姿に戻れたとしても、元々の俺らの姿ではなく、身体のパーツを交換された“誰でもない”姿になってしまうではないか? 一体どうやって、元の姿を取り戻すことができるんだ?
すると山下は、ぎらりとその眼差しを俺に向けた。
「さて、次は登くんかな?」
山下は俺の身体を持ち上げて、視姦するように一つひとつ点検しながら「うんうん、なるほど」と独り言を続けていた。
<続>