4【津崎亮】
(んん......ここは?)
俺の身体が運び込まれたのは、山下の部屋の中だった。山下は、人形となった俺の身体を棚の上に置き、向く方向を調整していた。何してやがる、早く元に戻してくれ! 山下はそんな俺の感情なんてお構いなしに、薄気味悪くニヤニヤ笑ってやがる。ああ、こんなことになるなんて、コイツはどういう神経してるんだ?
棚の上には俺以外にもう一体の人形が置かれていた。山下はその人形と、俺の身体を意図的に向かい合わせるように配置する。俺はその人形が、アイツであることにすぐ気が付いた。
(おい......どういうことだよ!?)
一重の瞼にハッキリとした太い眉。しっかり張り出した顎のラインに、太めの首、厳つめのガタイ。野球部の白い上下ユニフォーム。......おい、どうしてお前もここに居るんだ? 間違いねえ。そのユニフォームには「登」の名前の刺繍がある。クラスの中で一番仲良い後藤登だ。今日も教室で一緒に弁当食ったりして、いつも通り絡んだじゃねえか......?
そんな俺の心を読み取ったように、山下はこう言った。
「驚いたかな? 僕のお気に入り、“後藤登”くんだよ。日常生活を送る登には、ダミー人形を送り込んでるんだ」
そう言って山下は口角を上げた。
「津崎も、何事もなかったように、ダミー人形にいつもの高校生活を過ごしてもらうから安心してくれよ.....。あ、性的対象は男に設定しておくけどね」
山下は俺の身体に手を伸ばしてあちらこちらを触り始めた。胸、上腕、腹筋、ケツ......ああッん!? 頼むから、股間だけはヤメてくれ......!
5【山下進】
試しに僕は人形化した津崎亮と後藤登を向かい合わせにセッティングした。そのとき二人とも少し驚いた表情を浮かべた気がするけれど、無感情の人形だからきっと気のせいだろう。まあ、たとえ感情があったとしても、きっと津崎は久しぶりに"本物"の親友とご対面できて、嬉しくて仕方ないだろう。
僕は野球ユニフォーム姿の後藤登の尻をゆっくり撫で回した。人形でありながら、まるで本物の人間のようなハリと弾力感がある。今度はユニフォームパンツを少しだけ脱がせてみると、鍛え上げられた登のプリケツが顕れた。
ああ、相変わらず良い僕のコレクションだな。僕は登を人形化したときのことを思い返した。学ラン姿だったからユニフォームも小型化して着替えさせてやったのだ。学ランからYシャツ、ズボン、ボクサーパンツ......と、一枚一枚脱がせてやってね。
「そうだ、良いことを思い付いたぞ!」
僕は重たいタンスの引き出しをうんとこじ開けた。その中には大量の人形が乱雑にしまい込まれている。精悍な顔つきの警察官。ジャージ姿の体育教師。体格の良いスーツ姿のリーマン……。さまざまなユニフォームや仕事服を着た人形が30体ほど詰め込まれている。
僕はこのライトを手に入れてから、街中や電車、学校の中で気になる男を見つけては人形コレクションを増やしていたのだ。僕はその中でも2体のお気に入りの人形を取り出した。1体目はジャージ姿の体育教師『村田先生』の人形。顎のラインに雄臭い髭を生やしている。うちの高校の担任で、妻も娘もいる。放課後に先生の後を付けて、後ろからライトを当ててやったんだ。そして2体目は『ラガーマン』の人形だ。ボーダー柄のユニフォームを着て、ムッチリとしたイカにもラガーマン体型。近所の体育大学に忍び込んで、練習中に一人になったところを狙って人形化を試みたのだ。目は細く芋臭い見た目をしていて、これまでラグビー一筋、きっと童貞なのだろうとうかがえる。
「さあ、どんな風にパーツを組み換えようかな〜?」
僕はそれらの人形のパーツを一つずつ取り外し、それぞれ『組み換え』を行っていった。今よりももっと素敵な、僕だけのとっておきの人形を作るために。
<続>