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はだ◯んぼう船長~青山勘太郎の受難①

・・・・・・・・ 「裸ん坊船長~青山勘太郎の受難」① ・・・・・・・・ ≪―――青山勘太郎、船長―――≫ 俺は小型貨物船・大砲丸の船長としてとある途上国までの航海の指揮をとっていた。副船長の赤木と俺を除けば乗組員は男女8人――みな国際支援団体の職員で、寄付金で購入した支援物資を途上国へ送り届ける作業を任されていた。 「船長、こちらはオールグリーンです」 赤木は操縦室のモニターを念入りにチェックしてから報告をした。 「こちらもオーケー、問題ないな」 俺はしばらく剃るのをサボっていた無精ひげをさすりながら返事をした。ブリッジから見渡す大海原は夕日のオレンジから夜の暗黒へと色を変えつつあった。 「もうオレ一人で大丈夫ですから、船長は皆さんと一緒に晩飯にしてください」 「お前、さっき腹減ってるって言ってなかったか?俺は後で大丈夫だから――」 俺が言いかけると、急に操縦室の戸がガコンと開いた。 「青山さーん!赤木さーん!今夜は私たち特製のカレーですよ!一緒に食べましょ!」 「失敗しないように練習してきたんで、絶対においしいですから!早く早くー!」 若い女性二人が戸口からはしゃぎ気味にまくしたてた。赤木は「どうぞどうぞ」と言わんばかりに俺にニカっと笑って見せた。ほぼ同じメンバーでの航海も今回で三度目――オレたち船員と支援団体の職員たちはとうに打ち解けており、ちょっとした仲間意識があった。特に、何故かはよく分らないが、女性職員に懐かれている雰囲気は感じていた。俺みたいなチビなオッサン予備軍より若くてイケメンの赤木の方がカッコイイだろうに……。 「あぁ、今行くよ。わざわざ呼びに来てくれてありがとうな。じゃあ赤木、悪ぃな、ここは任せた」 「はい、たくさん食ってきてください。あっ、でもオレの分は残しておいてくださいよ」 目的地到達は明後日の早朝。祖国からの長旅にも関わらず海は荒れず、船のコンディションも問題なし。事故や故障などのアクシデントもなければ、乗組員の健康状態も良好ときて、全てがうまくいっていた。 否、全てがうまくいきすぎている――俺は静かすぎる海にむしろ胸騒ぎがしていた。それは全く根拠のないうつろな感覚で、わざわざ仲間たちに話すほどの事でもなく、オレはその不安をそっと振り払った。 (きっと俺の考えすぎに違いない……問題なく航海できればそれに越したことはないのだから……) しかし翌日、その堪が当たっていたことをオレは痛く思い知らされるのだった。 ~ ≪―――赤木海彦、副船長―――≫ その朝、オレはデッキから悲鳴を上げる女性の声に起こされた。オレは訳も分からずとりあえず寝巻のスウェットのまま寝室を飛び出した。 「どうしました?!」 デッキに出ると、乗組員たちは銃を持った男らに囲まれていた。薄汚れた服装で現地語を喋る彼らが海賊だとすぐに分かった。 (そうだ、フレアガンで非常時警報を!いや、操縦室に戻って通報装置を作動させるか?でも、船員たちの安全が――) 「動くな!逃げようとしたら、撃つ」 咄嗟の思案も虚しく、オレはあっけなく海賊の一人に見つかってしまった。己に銃口が向けられ、オレはその場でゆっくりと両手を上げた。人生で初めて見る本物の銃はオレの戦意を完全に喪失させた。 「こっちにこい!もたもたすんじゃねぇ!」 言われた通りにオレはデッキに座らされた仲間たちの元へ歩み寄った。 「大丈夫だ、大丈夫」 すでに捕まっていた青山船長は怯える仲間たちに声をかけていたが、自分たちが危機的状況にあるのを彼が一番理解しているに違いなかった。せめて見つかる前にオレが何らかの警報信号を発動させていられれば……だが、後悔しても時すでに遅し。 「そいつで最後か?」 「あぁ、操縦室、食堂、宿舎、全部確かめた。これで全員だ」 「おらっ!お前ら、あやしいマネをしたらすぐに撃ち〇す!分かったか?!」 この海域は安全だったはずなのに、なぜこんな奴らが……銃さえ持っていなければ船長と一緒になんとかできるかもしれないのに……いや、さすがに人数が多すぎるか……。オレは辺りを見回しながら頭をフル回転させたが、下手に動くことはできなかった。 「船長、これって……」 青山さんは一見落ち着いた面持ちだったが、隠すことのできない焦りがにじみ出ていた。 「とりあえずはおとなしく従うしかない……乗組員の安全が第一だ」 「……はい…」 自身の船が海賊に襲撃されるのは初めての経験だったが、彼らが手慣れていることはなんとなく分かった。 「ボス!どうぞ!」 突如やたらと背の高い男が大砲丸の側面からデッキに上がってきた。明らかに他の海賊たちとは威圧感が違うその大男を見て、オレは本能的に恐怖を感じた。その男の目には、一片の光も宿っていなかった。 ~ 【登場人物補足】 ――青山勘太郎(アオヤマカンタロウ) (年齢:42歳、身長:165㎝、体重:65㎏) 小型貨物船・大砲丸の船長。妻と小学生の一人息子がいる。責任感が強く、船長としていつも安全な航海を心がけている。背が低いことがコンプレックスで、それを補うためにトレーニングを欠かさない。屈強なガタイとは裏腹に思慮深く、慎重な性格。頼れるアニキ肌のため周り、特に女性からの評判はいいが、本人はいたって無頓着。一番大事なものは祖国で帰りを待ってくれている家族。 ――赤木海彦(アカギウミヒコ) (年齢:34歳、身長:178㎝、体重:58㎏) 小型貨物船・大砲丸の副船長。現在は彼女募集中。顔がいい割に恋愛経験は少なめ、長年付き合った彼女と一年前に別れてから夜の方はご無沙汰(長らく右手が慰め役)。普段は軽い性格だが、根は真面目で地頭がいい。たまに勢い任せに行動してしまうが、船長の青山からの信頼は厚い。彼も青山を尊敬しており、長く青山と共に働きたいと思っている。学生の頃は陸上部に所属しており、細身の割に体力はある。 ~ ≪―――赤木海彦、副船長―――≫ 「船長はどいつだ?名乗り出ろ」 ボスらしき巨漢は一か所に集められた乗組員たちに言い放った。他の海賊たちも口を噤み、空気はヒリつくほどに張り詰めていた。 「俺が船長だ!」 青山さんは海賊の威圧に負けない大きな声を上げた。 「なんだ、お前みたいなチビに船長が務まるのか?まぁいい、前へ出ろ」 体に響くボスの低い声はいたって落ち着いており、興味なさげでさえあった。青山さんは命令通り立ち上がり、海賊たちの前に立ち尽くした。 「お前たちの目的はなんだ?金や物資なら全て渡すから、仲間たちには危害を加えないでくれ。お願いだ――」 ボスは青山さんをジットリと見つめ、ため息をついた。 「お前は俺たちに質問をする立場にない。キャンキャン吠えるようなら命の保証はしねぇ、分かったか?」 青山さんはそれ以上喋らず、ただゆっくりと頷いた。彼の表情は見えなかったが、さすがの船長も海賊の脅しに怯んでいる様子だった。 「今この瞬間から船長はこの俺だ。分かったか?船長は俺だ」 青山さんは躊躇いつつも、再び頷いた。 「お前はこれから俺のペットだ。俺の命令を聞いて、言うとおりにしろ。それができるならお前にもお前の仲間にも手荒な真似はしないでおいてやる。じゃあ早速最初の命令だ――ペットに服なんていらねぇ、今すぐここで裸になれ」 突拍子もないボスの命令にオレは耳を疑った。今すぐ、ここで、ハダカ……? 「なっ!なぜそんなこと――何が欲しいんだ?!言ってくれればすぐに――」 「なぁ?!」 ボスはこれまでで一番大きな声を出した。 「さっき言ったよな、質問するなって?まだ自分の立場を理解していないようだな」 そう言うと、ボスは背中に掛けていたライフル銃を引き寄せ、膝に立てた。女性職員の一人が恐怖に怯えた悲鳴を上げた。 「仲間の命が惜しければ、つべこべ言ってねぇで俺に従え。さもなくば……」 「分かった!分かったから!」 船長に選択肢はなかった。青山さんは慌ててトレーナーとTシャツを脱いで上半身を露にした。ゴツゴツした逞しい身体は日に焼けていたが、緊張のせいで鳥肌が立っていた。鍛えられた広い背中は巨漢の海賊の前では幾分小さく見えた。 「そうだ、続けろ」 青山さんは靴と靴下を脱ぐと、今度はグレーのスウェットパンツを足元まで下ろしてそばに投げ捨てた。濃く生い茂ったすね毛が爽快な朝の風になびき、その小柄ながらも男らしい身体が徐々に全貌を見せつつあった。下着一枚にされた青山さんはよれよれのトランクスのゴムに指をかけたが、さすがに躊躇した。 「どうした?最後の一枚だ、早くしろ」 つかの間の抵抗が無意味なことを、きっとその場の誰もが気づいていた。 〆 バレンタインに合わせて復帰(?)投稿です!次回は来月の頭に投稿予定です。楽しんでいただけたなら幸いです! ちなみに、最近休んでいて直近の投稿がほとんどないため、¥300のSプランでも過去3ヵ月よりも前の投稿を見れます(去年10月の投稿まで)。支援をご検討いただける方は予めその点も確かめていただけると助かります!ではでは。


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