XaiJu
Rei
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食欲と会合

噂を聞きつけ、食欲に身を任せて某所、まんぷく通りにやってきた私春夏。初めはその異様な光景に戸惑いつつも、クッソ美味しい定食屋さんを見つけ、すっかりこの商店街に沼ってしまった。スタンプラリーなるものを埋めるため、私は翌週、またまんぷく通りの入口に立っているのであった!


私春夏はいつにも増して気合いが入っている。勝負服のロングワンピースを身にまとい、スタンプラリーを片手に初めに挑む店を探していた。


挑む、といっても完食自体は余裕だ。前のお店では3回ほどお代わりしている。


この日のために前日の夕飯と当日の朝食を抜いている。現役時代にこしらえたこの底なしの胃袋に何を詰めてやろうかと取捨選択している、と言うのが正しいかな。


「あ!この前のお嬢さんじゃないですか!」


んーラーメンか…海鮮もいいなあ…イタリアンも美味しそうだし…和食もいいなー…


「あの、お嬢さん?見えてます?」


「は!?」


「え、ええええと、あ!どうも。先日は、色々と。」


まずいまずい。夢中すぎて話しかけれたのも分からなかった!


「いえいえ。まるで獲物を見定める獣みたいな目をしてらしたので…」


「ああ…恥ずかしい…」


「スタンプラリーですよね?」


「はい。どのお店も美味しそうで、迷ってました」


「VIPERもオススメの1軒があります。あそこの中華屋さんなんですけど、なにやら、スタンプラリー巡りの登竜門だとかなんとか。」


「登竜門…分かりました。では、そこに行くことにします」


登竜門…そんなに量が多いのかな?でも、このお腹に入らない料理なんてないはず…


先程の男に別れをして店の方向へ歩き出した。確かに行列だ。出てくる客の腹も一回り大きい。…期待できそう。


行列はかなり待った。量が多いお店なので、回転も遅いのは仕方ないのだが、生憎今日は真夏日の暑さ。膨らんだお腹の事を考慮してロングワンピースにして来たが、蒸し暑くてしょうがない。特に胸の間が…おっと、これは危険な発言かな。


玄関前に来るといい匂いが漂ってきた。待たされていたのもあって食欲は最高潮。お腹も早く食わせろとゴロゴロ鳴っている。


ついに食券を買って座ることが出来た。


注文したのはスーパー油淋鶏というメニュー。


とにかく油淋鶏がデカい。私の肩幅を優 ゆうに超え、油淋鶏だけで6キロはありそうだ。定員が脇から一升分の炊飯器を置いて、どうぞご自由に召し上がりくださいと言い残して、店の脇にきて消えていった。


ふふふふふふふふふ。この店はよく分かっている。好きなだけ食べれそうだ。


ああ美味い♡食べる度に幸せが口の中に広がる…これに米をかき込んで食べるのが最高なの!


気がつけば5合が無くなり、目の前の油淋鶏は空になっていた。


「ご馳走様!ふう…中々満足…」


たった一件でお腹のサイズが相当なものになった。軽く9キロだろうか。いやー食べた。


「さて…次行こう…」


あとギリギリ2件はいけるはず…と思っていたが、自分の脇に置かれた残り5合の米とメニュー表の麻婆豆腐が気になった。


ん…私のために置いてくれたんだし、残すのも気に触るな…


折角だし今日はこの一件だけでいくことにしよう。気になっていた麻婆豆腐を頼んだ。


5キロ近い麻婆豆腐で残りの五合を食べきった。勿論麻婆豆腐も絶品で、9キロ食べてるのにも関わらずどんどん食欲が湧いてくるくらい美味しかった。


ご馳走様を改めて言った。麻婆豆腐の大皿と一升の炊飯器が卓上に置かれていた。中々この感覚は快感だ。全部空になった食器を見ると食ってやったぜ、と優越感に浸れる。


「はうぅ…お腹いっぱい…♡」


正直めちゃくちゃお腹いっぱいだ。先週の差し入れを食べた後よりもお腹は大きいし、これまでに無いほどお腹が満たされている。


ロングワンピースにして来て良かった。パンパンのお腹でくるぶしまであったワンピースがミニスカートみたいな丈になっている。


少し呼吸を楽にしようとお腹をさすった。Fカップの胸の2倍はある大きさ。ふとももの半分近くまで前にせり出している。


「食べたあ…満腹満腹~」


「お姉さん凄い…」


隣の席の制服姿の女子が話しかけてきた。多分高校生?その娘も私程ではないが、スカートのホックを外して大きなお腹を抱えている。


「何キロくらいですか?私そんなに食べれない…」


「んーっと…多分…17キロ?そんくらい…かな」


「すごーい!私12キロが限界なのに…」


「あなたも結構凄いよ?」


「お姉さんならVIPメニュー食べれそうですね」


「?なにそれ」


「え?ご存知ないんですか?スタンプラリーですよね?」


「うん…VIPがあるってのは知ってるけど」


「VIPになると各店のVIPメニューが食べられるんです」


「ふーん」


「よ、余裕そうですね…ほんとに物凄い量なんですよ」


「へえ…それは楽しみ」


「VIPメニューを1週間で全店制覇で殿堂入りです。殿堂入りすると…」


「すると…?」


「分かりません。VIPの人はいても1週間で全店制覇なんて…」


「…そう。ありがとね。私お店出るわ。」


「あ!またどこかで会ったら宜しくお願いします」


「うん。じゃあね。」


スタンプを押してもらって店を出た。この店から出てくる客の腹よりも私の腹は一回り大きかった。まんぷく通り全体でも私のお腹は大きい部類だった。…まあ、腹の出具合なんてその人の身長によるので一概に比べられないのだが。


「ふう…流石に重い…また一休みして行こうかな…」


路地裏に入り、ベンチに座って休む。


ただ、近くでとても荒い呼吸が聞こえてきたので、気になってそっちの方を見た。


私よりも大きなお腹を抱えた、私よりも歳上の女性が、さぞ苦しそうに必死に腹をさすっていた。


「だ、大丈夫です…か?」


「!!!???ングッ!ン!ン!お、オゲェェェェェェ!!!!」


!!私の声にビックリしたのか分からないが、反応して集中を切らした瞬間に吐いてしまった。


「オゲェェェェェェ!!!!…ゲホッ…ん!ゴゲェェェ…」


「う…なんかごめんなさい…」


「…はあ…はあ…はあ…」


「え、ほんとに大丈夫ですか?」


「…あんた…新参?見ない顔だけど」


「あ、そうです。先週からこの通りの事知って…今スタンプラリー巡りをしてて…」


「スタンプラリー巡り…その時が1番楽しいだろうね…」


「あ、あの!もしかしてVIPの方…?」


「うん。言っとくけど、VIPより上は目指さなくていい。私みたいになる」


その人のお腹は吐いた後で私と同じくらい。相当な量を吐き出していた。でも身長が私よりずっと高いので、私より多いだろう。


「…ッチ…吐いたやつどうすっか…この量だと処理が面倒だ…」


「ご、ごめんなさい!私が話しかけたから吐いちゃったんですよね?」


「ん?まあそうだけど…どうせ吐くのは時間の問題だったと思うし、気にしてねえよ?」


「そんな…悪いですよ」


「気にしてねえっていってんだろ?つかお前、来て2週間ってとこなのに、結構いい線食うな。なんか経験者?」


「中高運動部で、ご飯はとにかく食べまくってました。そしたら、なんかこのくらい食べれるようになっちゃって…」


「スタイルも良いし間違いなさそうだな…」


「えへ。ありがとうございます」


「えへ。じゃねえぞ?ま、笑ってここ来るのが1番だ。殿堂入りなんて考えなくていいし」


「殿堂入り…今日初めて聞いたんですけど…なにかあるんですか?」


「…黙りな。聞かない方が身のためだ。私からのせめてもの誠意」


「あんた名前は?私は凛」


「春夏です。二条春夏」


「春夏ちゃんか…ま、いつかまた機会が合ったら宜しくな?」


「あ!あの」


「ん?何だ?」


「私…ここに休みに来たんです…お腹まだ落ち着かないので…しばらく一緒に居てもらっても良いですか?」


「良いぜ。ゆうて私も暇だからなー。…つか、その程度で音あげるなよ?筋は良いんだから胆力つけろ?」


「わ、分かりました。すいません…」


"その程度"か。凄い人に会っちゃったな。


30分程2人で雑談をして、お腹が落ち着いたので帰ることにした。


「おう、元気でな?また笑顔でここ来いよ?」


「凛さんこそお元気で!今日はありがとうございます」


帰りは沢山差し入れを貰ったが、食べる余裕もないため邪魔だが抱えながら家に帰った。ドアに鍵をすると速攻でロングワンピースを脱ぎ、下着姿でパソコンをつけた。


「…まんぷく通り…殿堂入り…っと。」


殿堂入りの事がどうしても気になった。ただ、まんぷく通り自体の認知度が非常に低く、ググッても変態紳士諸君のスレやそれ関係のブログしかヒットしない。


「…仕方ないからスレ見てみるか…」


クッソ気持ち悪い書き込みの中から、殿堂入りの事について情報を集めようとした。ただ、スレ内でもまんぷく通りは殆ど都市伝説扱いされていて、逆張りニート君たちは存在を認めていないらしい。スタンプラリーは1人で完食された人にしか配っていないらしく、普通の人間はあんな量を1人で食べられるわけがないため、VIPの存在を知っているだけでスレが盛り上がっているほどだ。


…これ以上模索しても情報は得られなさそうだ。皆んなエロい食後の膨腹?を共有してシコシコしてるだけのようだ。…この程度の腹で良ければいつでも見せてあげるけど…あ、勿論食費は奢りで


どうやら世論では、ギャル○根やもえ○ずといった量の大食いですらギャーギャー言われるようで、私は高校入学位から既に彼女達の記録を超えていたので、私からすれば本当に低レベルな食事をしてるなーと思っていた。美味しそうに食べるとか、食レポとか、そういう能力は必要だろうとは思ったけど、一度に10キロも食べれない人が大食いとか名乗らないで欲しい…いや、これ以上はやめとこう。きっと世論からすれば私がおかしいんだ。


…きっと凛さんは、殿堂入りをしようと思ってVIPメニューを食べに来ていたんだと思う。1週間で20店舗全てのVIPメニューを食べれば殿堂入りになる…そのVIPメニューってのは、私が食べれるか怪しい量…今日得られた情報を元に推測するとこんな感じだろうか。


お腹をペチペチ叩きながら、らしくもなく思考に耽っていた。チラッと自分のお腹を見た。


このお腹でも自分ではかなり凄い方だと思ってたのに、あの女子高生が言うには、食べれるかも か。


…私が食べれない料理があるなんて思えないけど…そんな言い方されると危機感感じちゃうなー。もっと胃袋広げようかな?ん、でも胃袋ってどうやって広げるんだろ?


現役時代に山ほど消費していたカロリーを埋めるために食いまくっていた副産物のようなものなので、自分から意図して胃袋を広げようと思ったことは無かった。


大学からまた水泳…いや、でも高校より激しくやれる自信ないわ〜。


とにかく、胃袋広げないと…


頭を使って、気がついたら貰った差し入れを食べていた。自分でもビックリするが、私春夏はそういう生き物らしい。


「ん~!考えてもしょうがないや!寝よっと」


まだ7時なのに爆睡。疲れていたのかよく寝れた。


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