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"冒涜の淫魔"


『いい眺めね。今すぐにでも貪り尽くしてやりたいくらいだわ』

「……っ」

嘲る声。息を呑む音。整えられたベッドの上、両手を拘束された天使が淫臭の染み付いたシーツの海へと横たえられていた。

甘酸っぱさの混じった瑞々しい匂い。熟した女体の芳しいフェロモン。魔力に満ちたミルクの甘く柔らかな香気。泡立ち濁るまでかき混ぜられた愛液の、情欲を誘う濃密で淫らな芳香――。幾人もの天使をここで貪り尽くしてきたであろうその部屋は、数多の恥香が幾重にも折り重なりブレンドされた、”そういった”部屋特有の拭いきれない牝の匂いで満ちていた。

その源泉である、どこを切り取っても淫らな記憶が落とし込まれた肌触りのよい白い布地。顔を背けようが向きを変えようが関係なく、官能への期待と淫欲を引き出す妖しい匂いに全身を包まれる。匂いを嗅がずとも、シーツに肌を擦れさせずとも、肌に感じる淫らな気配に蝕まれた体がじわりと火照らされていってしまう。

『人の営みを踏襲して辱めるのが一番そそる』――淫魔の嗜好により設えられたひどく人間的な閨、その中央で発情させられてしまっている。言葉に表しがたい屈辱と羞恥で胸を満たしながら、ルミアは戒められた両手を両脚で挟み込み、汗ばんだ内腿をもどかしげにすり合わせる。



人間からの信仰の対象である天使。その中でも高位に位置するルミアが、人の営みの中で辱められる――そういった冒涜を模した淫戯。

天使を高位の存在であると認めながら、それゆえの屈辱を与える無礼で不敬な扱い。シスター服のごとき黒と白を基調に、目線を下ろせば情欲をそそる肉付きの肢体をいやらしく飾り立てるばかりの衣装を纏った、”冒涜”の高位淫魔・プロフェニィ。高位淫魔がしばしば持つそのグルメさ、もとい高位淫魔プロフェニィの”歪んだ性的嗜好”にとって、立ち向かう魔族のことごとくを討ち滅ぼしてきた「強く気高い天使」の象徴であるルミアは最高の獲物だった。

清ければ清いほど、気高ければ気高いほど、寄せられる信仰が篤ければ篤いほど、その美しい存在を涜す愉しみは大きく美味なものとなる。人間界で活動する中でも最高位といえる天使を眼下に、プロフェニィは目を細めて薄ら笑いを浮かべた。


『人間も乙なことを考えるわよね。快適な寝床で”する”のがいいだなんて、贅沢な趣味もあったものだわ。だって――』


こうして美しい天使様を抱くのに申し分ないもの――唾液のしたたる舌を見せつけて、柔らかな豊乳を押し付けながら淫魔が天使へと覆い被さる。妖しく蠢く舌先から、銀色の糸が垂れ落ちた。



――ぬろろぉぉ……っ♥ ぐぽ、ぐぢゅ、にろぉぉ……♥ にゅる、にゅぢ、に゛ゅるるぅぅ……ぅ♥ くぷぷっ、ぐちゅ、るろ、ちゅぐ、ちゅぐっ……に゛ゅ、ぐぷぷっ――ちゅぽっ♥


「は、ぁ、ぅ、んんっ――ぅ、ぅぁ、あぁ……~~~~っっ!!」

『んちゅ、れろぇろぉ……ふふ♥ 前戯は大切ですものね、天使様?』


舌先が蠢き、耳穴の奥深くまで入り込み、音の通り道を塞いで妖しい水音で聴覚を支配、緩慢にうねり震えて刺激を加えてくる。敏感すぎるほどに開発済みの耳の穴を、たっぷりと唾液を乗せた軟体のごとき舌先に、穿ち、舐め、擦り、埋め、こそぎ上げてゆっくりとピストンし、膣口を焦らし弄ぶがごとく辱められる。

愛撫、言葉、水音、声そのものさえも性感として感じ入ってしまうよう作り替えられてしまった、ルミアの持つ天使にあるまじき恥ずかしい淫耳。淫魔の技巧の粋を尽くした淫虐が、生娘の舌遣いでさえも容易く蕩け声を引き出せてしまうほど敏感な弱点を、容赦も慈悲も出し惜しみもなく嬲り抜く。

脳髄まで突き抜ける官能が、首筋を支配するぬるついた恍惚が、腰の奥まで響く甘く心地よい痺れが。緩慢で念入りな耳舐めによりもたらされる粘着質な快感に、濡れた着衣のように意識へと纏わりつき絡みつく快楽に、昂奮と性感をゆっくりと高められていく。

聴覚を、触覚を、意識を。僅かに許された思考という自由が、淫らに波打つ舌に支配される。甘い声が、快感が、被虐の欲求が、容赦のない耳穴凌辱で引き出されていく……。



「んく、ん、ちゅ、れろ……んむぅ、ぅぁ、ぁぁ……ぅ……んん、ふ、ぁ、っ」

『んむ、くちゅ、ちゅる……じゅるるっ♥ くちゅ、ぇろ……ふふ、ふ……っ♥』


耳穴責めで緩んだ口元へと這わされる舌。容易く割り広げられた唇の内側へと淫魔の舌が入り込み、天使の舌へと巻き付き絡め捕って引きずり寄せた。触れあっては水音を立て、覆い被さって包み込み、蛞蝓の交尾が如く絡み合って吐息と唾液を交換する。

舌のどこを舐めれば心地いいのか。口腔のどこを刺激すれば快感が得られるのか。どのような舌遣いが情欲を煽るのか、淫魔が、天使が、互いにどれほど昂っているのか。舌の蠢きとともにルミアの弱いところを暴かれ、プロフェニィの好みを優しく教えられ、互いに昇り詰める術を探り合う――まるで恋人同士の睦み合いのような、堕落をもたらす悪魔の誘いのような、濃厚で濃密で、巧みで妖艶な、粘膜よりも深くを淫欲で繋ぎ合う口付け。


――この淫魔、どこまでも、私のことを……っ!


愛情の交わしあいを装った、淫欲で心を蝕むための行為。舌を絡め合うたび、唾液を飲まされるたび、甘い疼きが理性を揺さぶる。閉じようと抗う唇も、険しく細められた瞳も、口付けの快楽で緩み、絆され、弱々しく力を失っていく。

弄ばれているという屈辱に震えながら、それでいて快楽に絡め捕られて抗えない無力感。かは、と苦し気な吐息を漏らしたルミアの姿に、淫魔は愉悦の表情を浮かべ――



『ちゅ、ちゅる、るるっ――じゅるるるるるるっ♥ ぷは、あむ、れろろっ――ふーっ、ふぅーっ♥ じゅぱ、じゅる、じゅぅぅぅっ♥♥』

「んむっ、んんぅ、んぅぁぁっ――ぅぁ、れろ、ちゅ、んっ、はあ、はぁ、あ、は、ああ、ああああぁぁ……っ!!」


――強烈な吸引とともに、天使の魔力を吸い上げはじめた。

これまでのキスとはまるで異なる、激しく、情熱的で、一方的に相手を絶頂へと追い立てる凌辱キス。舌を根本から引き出され、官能に震えるそれを唇と舌で器用に絡め捕ってシゴき上げられ、劣情に湿り切った吐息を浴びせかけられながら舌と口内の性感帯を犯し抜かれる。

心身を官能で支配される。舌愛撫で乱されていた魔力の流れが掌握される。キスとドレインの被虐快楽で抵抗力が失われていく。舌の動きにあわせて青白い魔力の輝きがプロフェニィへと取り込まれてゆき、その度にルミアは全身をビクンビクンと跳ねさせてドレインキスへの屈服を示してしまう。

これまでの舌責めなど、あくまで天使を弄ぶための余興でしかなかったのだと思い知らされる。耳舐めも、優しくリードするようなキスも、今与えられているこの暴力的な快感と比べればままごとに等しいのだと理解させられる。これはあくまで彼女の欲望を満たすための戯れであり、囚われの天使をどうするかなど淫魔の気まぐれひとつで決められるのだと。

唾液を吸い上げ、魔力を貪り、官能を流し込んで法悦の彼方で抱きしめる。魔力も尊厳も余裕も思考力も、天使の抗う術をことごとく奪い尽くす淫魔のキスに、ルミアは甘い声を上げて快楽に打ち震えることしかできない……。



「――はぁ、はぁっ、ぁ、ぅ、ぁぁ……、――っ……」

『ああ、なんと甘美な魔力。わたくしのような淫魔にもお慈悲をくださるなんて、さすがは寛大な天使様ですわ♥』


力なく瞳を閉じ、上気した肌に幾筋もの汗を浮かべて、たっぷりと水分を含み濡れ光るスーツに牝の匂いを籠らせて。弱々しく胸を上下させるばかりの姿を、ルミアは淫魔の眼前にさらしていた。

ベッドの上で淫欲に翻弄され、全身を火照らせて余韻に浸る高位天使。プロフェニィの注文通りの、あるいは期待を超えて官能的な、あまりにも嗜虐心をそそる無防備な姿。触れれば全身を跳ねさせ、囁けば羞恥に息を呑み、眺めれば屈辱に身を震わせる――淫魔の恍惚とした声に、全身にいまだ燻り続ける官能の悦びに、貪り喰われた魔力の喪失感に、ルミアの心は敗北感で満たされている。

この空間に満ちる劣情の匂いが、シーツから立ち昇るものなのか、自らが放っているものなのか、もはや区別できそうにもない。汗と愛液が混ざりあい、スーツの股間部を濡らして溢れているのがわかる。

ベッドの上で愛された果てに甘い声を抑えることもできないほどに発情してしまった姿は、信仰対象と呼ぶにはあまりにも俗な欲望の対象でしかない。高潔な天使を冒涜し、貶め、恥辱と背徳で絡め捕る――冒涜の淫魔の思い通りに弄ばれ、ルミアの天使としてのプライドはどうしようもなく傷つけられていく……。



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〇”冒涜の淫魔”プロフェニィ

「あえて人間の信仰文化を踏襲・冒涜して淫蕩に耽る」という倒錯性癖持ちの高位淫魔。

非常に強力な力を持ち、対策なしで戦うのは高位天使であっても無謀ともいえる。

人間の文化への強い興味・関心を示しており、特に信仰やその対象を劣情のはけ口として堕落させようとする性質がある。それゆえ、修道服に色合いを寄せた、それでいて極めて煽情的な衣装を纏っている。


『……ふふ♥ こんなにもいやらしく腰をくねらせて、甘く啼いて淫魔に媚びる姿――神もきっとご覧になっているでしょうね。あなたのことも神はお救いくださるかしら?』

『”慈悲をください”――ええ、よろしいですよ。淫らなあなたはどのような”慈悲”をお求めですか?』

『ええ、ええ、救って差し上げますとも――どこまでも心地のよい天国へとお連れしますわ♥』


劣情を引き出す手管とともに甘い言葉で信仰心を絡め捕るような誘惑を好む。

心の弱い者は誘惑されるうちに「彼女こそが神の御使いだ」と錯覚してみるみるうちに堕ちてゆき、信心の硬く強固に抵抗する者も”冒涜されていることに対する反応”そのものが彼女のことを悦ばせるばかりで壊れるまで弄ばれてしまう、といった報告がわずかばかり上がっている。


地上での最強戦力に等しいルミアのことは人間の間でも魔族の間でも高名であり、人々の信頼も広く集めているため、プロフェニィの劣情が強く向けられていた。

天使を喰らう際も冒涜し性欲を満たすことが主目的であるため、他の淫魔などとは異なって身体的な調教は求めず、気に入った個体に対しては「以降も気高く立ち向かってきてほしい」と逃走を許す余裕すら見せる――という高位淫魔にしばしば見られる特徴をプロフェニィも持っているが、現時点で確認されているのはルミアを含めたほんの数名のみ。

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