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土装番
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機械の侵食 6話 世界へ広がる機械だけの幸せ 1/?

 スカイパルの協力の元、機械化した人々が世界中へと水面下で拡散され始めた。  同様にペリメイズ人も、自分達の装備や不夜道具を携えて動くが、表立って大々的に動くことはなく、基本は地球人達に殆どの行動を任せていた。  人間達に未だバレることなく、地球上のそれを遥かに超えたテクノロジーで侵食していく機械化人達。  それは間もなく、世界中を巻き込み、地球人類を大きく改竄しようとしていた。  そしてこれは、そのうちの話の一つであり、ある大国にて起きた、二人の女性から始まる侵食の話である。      * * *  とある巨大な大陸の大部分を占める超大国、アリメア。  農業、兵器、テクノロジーと、ありとあらゆる分野で世界一の地位をモノにしているこの国の、シンベア州、P.D.タウンという場所がある。  そこは町全体が整備され環境が整えられてはいるものの、どこか全体的な空気にはどんよりと暗いものがあった。  それもそのはず。P.D.タウンは、かつては工業地帯として栄えていたが、現在で歯町の大部分がスラムと化しており、大抵の者が目立たないように生活をしていた。  強盗や窃盗、車上荒らしや違法薬物、人身売買が跋扈しており、警察がいくら摘発、逮捕しても追いつかない程の、実質的な無法地帯となっていた。  そんな、一般人は誰も近づかず、恐れられる場所になったこの町にて、一人の女性がいた。  「あぁ…………もう切れちゃった……」  彼女の名前はエミリー=ジョンソン。P.D.タウンの暮らしている住人の一人である  彼女は元々モデルとして、華々しい姿を人々に披露していた。  シャープで整った彫刻のような美しい顔立ちに、努力と研磨を重ねて整えられた綺麗な体型、程よく大きな胸。真珠のような美肌に、サラサラとした煌めくライトブラウンのミディアムヘアー。  その美貌や体型は彼女の誇りであり、自慢でもあった。己の信念に向かって歩み突き進んでいこう、そう思っていた。  だがある日、彼女は妬みを持つ人物によってハメられ、大スキャンダルが報じられてしまう。  庇うものは誰もおらず、どれだけ否定しても信用してくれる者もいない。同時にネット上でも異常なまでのバッシングに晒された結果、モデルとしての地位と職を一気に奪われることになってしまった。  それから彼女は、いつしかP.D.タウンに流れ着き、かつての面影もないくらいにやつれて擦れてしまっていた。  髪もぼさぼさで、表情に気力は無く、目も死んでいる。痩せてはいるものの、それは鍛え絞ったが故の細さというよりはやつれた細さをしている。  各部には注射跡もあり、もはや自暴自棄になってしまった後だった。 「買いに行かなきゃ……買いに……買いに…………」  今のどうしようもなく辛い時間をはっきりと感じてしまう。それが辛くて今日も新たに求めてしまう。  そんな時に、遅れて彼女の脳裏には、過去の輝いていた日々や、それに連なる覚えのないバッシングや攻撃がフラッシュバックする。 「うう……ぅ……どうして…………こんな…………」  意図せず、望まずふと我に帰り、修繕もされていない壁を背もたれにして、膝を抱えて震えだす。  食事も満足に楽しめず、ただ一日が過ぎていく。そんな日常に、彼女は終わることのない地獄を感じていた。  しかし、そんな彼女にふと、奇妙な出会いが生まれる。  ようやく少し落ち着いたところで顔を上げると、彼女の視界に、この場所においては異様なある人物が現れた。 「…………なによ、あれ」  そこにいたのは、胸元を広げて谷間を強調したボディラインの出る薄着と、脚線美をはっきりさせるよつなレギンスを着こなした、明らかにこの場には似つかわしくない格好をした女性だった。  一歩歩く度にその艶めきが分かるようなセミロングの黒髪に、可愛らしさの基盤に美しさが乗っかったような、シャープで非常に整った顔立ち。  とても目を引く、形よく突き出した大きな乳房に、どこに出しても芸術品と言われるであろうくびれと、そこから生まれるボディライン。  身長も高く、彼女の歩きには気品と自信が満ち溢れているようだった。  まるで、かつて自分がいた世界の住人を見ているようだった。  エミリーにはわかる。彼女はとても美しい。自分が現役だった頃でも、確実に視線が移っていただろうと。 「……異常な世間知らずなのかしら。それとも……配信でもしてるの」  だが、脳内でそんな分析が出来ていても、口から出た言葉は、目の前にある現実と場所のことだった。  見るからにこの町の住民ではなく、そもそも同じ国の者かも怪しい。海外の無謀な観光客だろうか。  あんなにも自分は恵まれていますと言わんばかりの姿で、しかも見るからに無防備な状態を曝け出していては、いかにも犯して殺してくださいと言っているかのようなもの。  目を奪われるような美人で非常に勿体ないが、彼女には美貌に対して常識的な知性が備わっていなかったのだろうと、エミリーは彼女の人生をすぐに諦めた。  それから姿が見えなくなり、しばらく経ったところで、それ程遠くない場所から銃声が聞こえてきた。  これまでの経験からだいたい察せられる。あの女性が殺された音だろう。 「…………そりゃそうよね。自分からやってくださいって言ってるようなものだもの」  無警戒にも程がある姿は、ある意味自業自得と言う他ない。普通ならばそんな行いをしたほうが当然悪なのだが、そんな倫理はここでは通用しない。  勿体ない……と思いながらも、エミリーは訪れた静寂の中で、じっと何もせずに時間を過ごしていた。  銃声から十数分経った頃、ふと、彼女の様子が気になり始めてしまった。  結果はわかりきっているのに、何を見ることがあるのだろうか。美しい彼女を見て、かつての気持ちが少しだけ蘇り、もったいないとでも思ってしまったのだろうか。  とにかく、彼女の様子が気になる。心配の気持ちも多少はあるが、それ以外に自分でも言いようのない不思議な気持ちが湧いていた。 「馬鹿ねあたしったら。別になんにも変わんないのに」  口ではそう言いながらも、エミリーはふらふらと立ち上がり、上手く動かせない震える足をゆっくりと動かし、銃声のした方へと向かっていった。  道中には、自分と同じような者たちが座ったりぼーっと立ったり、転がったり壁に寄りかかったりしている。  おそらく、彼女を襲ったような者達はもういないのだろう。  そんなことを考えながら、エミリーはだいたいこの辺りだろうと見当をつけた、大量のゴミ袋が積み上がる暗がりの行き止まりに着いた。 「確か、このあたりに……」  大抵ああいうのは、こんな誰も自分から近寄ろうともせず、すぐに離れるような場所に棄てられる。  そう思いつつ、エミリーはギャングのような人物が隠れていないことを確認しながら、少しずつ前に進んでいく。  すると、暗がりのゴミ溜めの上に、一人の女性の姿を発見した。 「ああ……やっぱり…………」  そこにいたのは間違いなく、先程見かけた美しい外様の女性だった。  首が歪み程の力で横へ折れ曲げられ、頬や額には殴られたような跡がある。  髪は酷く乱れており、周囲には無理やり千切られたであろう毛髪がいくつか散乱していた。  薄着の服は当然脱がされ、両乳房には激しく扱われたことを示す手垢が付着し、胸元や腹部には、聞こえた銃声の結果と推測される弾痕がいくつもあった。  彼女の女性器にはビールのビンが詰められ、隙間から精液が漏れ出している。  逃げられないようにする為なのか、足首や関節部には激しい打撲痕が見られ、皮膚が不自然なたわみ方をしていた。 「…………酷いわね、さすがに」  たとえ、慣れた、見慣れたものだとしても、やはりこういうのは気分のいいものではない。  彼女の虚無のような表情からも、それを感じてくる。  どうか安らかに、と思いながらその場を去ろうとしたその時、ガサッ、とゴミ袋が擦れる音が聞こえた。 「えっ?」  エミリーは驚きと共に振り返るが、当然そこには自体があるだけ。誰かがそれを餌にして隠れているなら、もっと激しい音が鳴るはず。  死体の自重で少しずれただけかと思いながら、再度その場を去ろうとした。  だが、その後の音はさらに大きく、明らかに動いているとしか思えないようなものとなった。  エミリーが再び振り返ると、想像を超えた光景が視界に入った。 「嘘……! 現実なのこれは……!?」  生存の目など明らかに見えない死体が、彼女の目の前でカタカタと震えだしていた。  消えていた表情は、うっすらと頬を染めて口角が上がり、なんだか喜んでいるように見える。  捻じれ折られた首が、まるで曲がった鉄パイプを力技で直すかのように、少しずつ元の方向へと戻り、金属的な異音を鳴らしていた。  腹部や胸に空いた穴からは、何か金属がひしゃげるような音が、とても小さく鳴っている。  両足の皮膚のたわみも少しずつ戻り、本来の形状へとちょっとずつ直されていっていた。 「ア……あ……っ…………もウ……折るこ……とな、んて……ない……のにぃ…………あたしの首……取れる……んだカら…………これじゃ……接続部……あっ…………」  スピーカーのノイズが混ざったような、他国の言語で喋る声が、その女性の口から出てきた。  生きているのがありえないはずなのに、女性の身体は徐々に元の体を戻しつつある。  こともあろうか、彼女は右手を動かし、ビールのビンを一度奥まで突っ込んだ後、何事もなかったかのように抜き取った。 「あっ……ん……本当二……コういうこ……とするのね……ん……きモち……よかっタけど……」 「っっ……!」  エミリーは動けなかった。そこにいたのは、女性の形をした得体のしれない何かとしか思えなかったからだ。  酷くボロボロなのに、感じているような声を出しているのが、より理解のできなさを増大させている。  女性は両手をこめかみに当て、強引に直りの遅い首を元の位置に戻した。  よく見れば、いくつも弾痕があるのに、血の一滴す流れている様子がない。  たじろぎ、恐怖に身体をすくませていると、女性の眼がエミリーを捉えた。 「あっ……見られちゃってる……予定よりは早いけど、まあいっか……」  女性は、いきなり上半身が引っ張られるような動き方で起き上がり、あとから据わっていない首をぐらりと揺らして起き上がった。  数々の不自然な挙動や言動に、エミリーは恐怖のあまり、その場にへたり込んでしまった。   「い、いや……来ないで……化物……!」 「もう、酷いじゃ、あっ……もう、酷いじゃない……人を化物だなんて」  女性の言語が、海外の言葉から自分の良く知っている言語へと一瞬で切り替わる。  片言やつたないそれではなく、非常に流暢でネイティブなそれであり、言っていることも全て伝わっているのだと確信できた。  両足が歪んだまま、逆関節のような状態でゆっくりと近づいてくる女性に、エミリーはどうすることもできなかった。 「こ、殺さないで……来ないで……」 「大丈夫よ……すぐに気にならなくなるから……私と同じように機械になれば……?」  すぐ目の前まで女性が顔を近づけ、今にもキスをしそうな程の距離まで近づいたその時、女性の動きが突然止まった。  それから、まるで彼女の顔を凝視するように、瞳の奥の絞りを何度も拡縮させながら、視線を下、上、下、上へと繰り返し往復した。  その様子はまるで、球体状の監視カメラのようだった。  この瞬間、エミリーは初めて気が付き、確信した。目の前の女性は人間ではなく機械人形、アンドロイドなのだと。  しばらくの凝視が終わった直後、女性はまるで、夢を叶えたようなキラキラした瞳で、エミリーのことを見つめた。  そして、ぐっとさらに身体の距離を縮めた。 「…………もシかして、エミリー=ジョンソンさんですカ?」 「えっ、あたしを……知ってるの?」 「モちろんでス! 私、ずっとエミリー=ジョンソンさんに憧れてイまシたから!」 「なんであたしだってわかるのよ。あの頃からこんなに…………変わり果ててるのに」 「顔情報を分析したんです。私、いっぱいエミリーさんの姿を色んな動画や画像や写真で見てましたから!」  次第に、どこかノイズがかった声は元に戻り、女性の声は本来の人間らしさを取り戻した。  だが、そうなったとしても、エミリーには彼女がもう人間には見えなかった。 「…………貴女、アンドロイドじゃないの?」 「私は、今は全身機械ですけど、元は人間でした。完全機械化をしたことで私は生まれ変わったんです」  すると、女性はその場で突如下腹部に指を置き、自ら皮膚に穴を開け、ブチブチと左右に引き裂き始めた。  一瞬目を覆いたくなったが、その先には、人間の膣部と子宮を模したような樹脂製の物体に、金属の骨格や無数の部品類が組み合わさった光景があった。  エミリーは、信じられないものをみたという気持ちが抑えられず、目を丸くした何度も瞬きした。 「完全機械化って、そんなの聞いたことも……」 「ないですよね。なぜなら、これは私達の技術じゃなく、外星からもたらされたものなんですから」  女性が見せた生殖器官は、まるでエミリーに出会えたことを歓喜しているかのように、携帯端末のバイブのような音を出しながら震えていた。  彼女の割れ目からは、愛液と精液の混ざった蜜が、とろんと地面へ垂れていった。 「初めまして、エミリーさん。私の名前は酒井聡美って言います。まさか、こんなところでエミリーさんに出会えるなんて……とても光栄です!」  聡美は、裏のない心の底からの笑みを、エミリーへとぶつけた。  だがエミリーは、濁流のように押し寄せる情報量に、目が点になってしまい、自分の手を何度も見返していた。 「まだ幻覚をみてるわけじゃないわよね……遅れて症状が出てきたのかしら……」 「待ってくださいエミリーさん。これは紛れもない現実ですよ。私はちゃんとここにいますから」  「そんな事言ったって……外星からもたらされた技術とか、アンドロイドがあたしに憧れてたとか、あんまりにも現実的じゃなさすぎるわ!」  彼女の言い分は至極当然だった。聡美の言っていることや目の前の出来事と、非現実的なことがあまりに多すぎる。  それなら、いっそこれは夢や幻覚だと思ったほうがまだ納得できるだろう。 「なら、いっそ幻覚だと思ったほうが……うっ……」  声を荒げながら、得体の知れない人物に警戒心を剥き出しにするが、弱った身体に無理がたたり、その場で崩れ落ちながら力のない声を上げた。 「エミリーさん! 無理をしないでください!」 「うう…………こんなくらい……もう慣れてるわ……あれからあたしが、どれくらいここにいると思って……うっ……」  聡美の、憧れの人に出会えた喜びの顔は、一気に曇り始めた。  現在彼女には、マスターから与えられた最優先命令がある。だが、それとは別に目的を達成する為の用件として登録すれば、意識を目の前のエミリーに大きく傾けられるかもしれない。  聡美は、苦しみ踞るエミリーと視線を合わせ、女性器ユニットの隠れた部分を露出したまま、真剣な眼差しで、提案をぶつけた。 「…………エミリーさん、私と同じように、機械化しませんか?」


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