機械の侵食 4.5話 2/2
Added 2022-12-06 03:00:00 +0000 UTC千鶴がラクーンへの調査に向かった次の日。 彼女は何事もなかったかのように警視庁に出向き、これまでと変わらず事件を追っていた。 「千鶴、昨日ラクーンに向かったらしいな」 「…………はい」 そこに、篤紀が真剣な目で彼女に話しかける。 「……結局、何か進展はあったか」 「…………いいえ」 「まあ、だろうなあ。そんな簡単に見つかりゃあこんなに頭悩ませる必要もねえ。だがよ、危険な目にあってなくてよかったよ。こういう事件は、大抵犯人がとてつもなく運が良いか、真実がなんでもないことか…………裏にとんでもないのがいるかだ。探るなと脅しを入れるようなのもいる。俺はその辺り怪しいと思ってるが……まあ、なんともねえならよかったよ」 篤紀は篤紀なりに、熱くなり正義感に燃える彼女のことを心配していた。 何かあれば、若い芽を詰んでしまうことになる。刑事という仕事の性質上、どうしても危険と隣り合わせだが、それでもやはり若い者がくたばるのは堪えるものがある。 だからこそ、今は待てという言葉を彼女に残すようにした。 「……はい、迷惑かけてすみませんでした、篤紀さん」 「けど、仮に進展があったなら、その時は必ず犯人を追い詰めような」 「は……はいっ!」 千鶴は、元気な返事を返して心の底から同意した。 目の前の偉大な先輩の言葉には、いつも学ばさられる。そこには必ず意味があるのだ。 その時その時で出来ることをやる。それを胸に刻みながら、千鶴はPCを起動して警視庁内のデータベースに接続し、他の各種事件の手がかりになりそうな情報を色々と閲覧し始めた。 話題に一区切りがつき、各々の作業に戻っていく。その中で千鶴は演算していた。今の自分がなんなのか感づかれている可能性を。 幸いにも、現時点では其れは無く、自分の身体が全身機械という素晴らしい身体に生まれ変わったのは、決して同僚達に知らせることはなかった。 と同時に、PCから情報確認し始めたのには、ある理由があった。 「…………これが、他の電子機器と繋がる感覚なんだ」 千鶴は、画面上のデータベースを閲覧しているフリをして、実際はカバーのように指を開き、そこから露出した接続端子をPCに繋いでいた。 それによりPCと接続し、そこからネットワークに侵入。様々な情報を電子頭脳内から確認していた。 ペリメイズの技術によって機械化された者達は、現在の地球上に存在するあらゆるコンピューター機器よりも圧倒的にスペックが高く、どのようなセキュリティを築いていても突破するのは容易い。 スタンドアローンでもなければ、それを遮る障壁は無いも同然だろう。 かつては自身が頼っていた機械。今はそれを大幅に能力で上回る機械となり、繋がる感覚に、得も言われぬ密かな気持ちよさを覚える千鶴。 だが、彼女が欲しかったものはこれではない。走った快感はあくまで副次的なもの。 千鶴は、機械化して以降に抱いたあることをしたいが為に、刑事という立場を利用してデータを探していた。 そして、それは容易く見つけられた。 「…………ふふっ」 千鶴は思わず笑みを浮かべた。 誰もまだ、自分が機械化したなどと気づいていないし、そのような発送すら浮かばないだろう。 求めていたものが手に入ると、すぐに切断して元の指に戻し、いつも通りの仕事に入った。 そんな彼女に対して、京太郎だけが、少しだけ変化に気づいていた。 「なんか、千鶴ちゃん、前より美人になってる気がするな」 * * * 同日の深夜11時頃。人々の姿は殆ど収まり、常に人でごった返すような中心都市でも、人の存在がまばらになる程の時間帯。 街が暗闇に覆われるようになると、そこには一般市民よりも、悪性の牙を持つ者が蔓延るようになる。 そんな頃の、巨大なスクランブル交差点とそこを中心に雑多かつ多様な姿が広がる渋山区。そこに建つとあるビルの地下事務所にて、ある暴力団の頭もまじえた幹部集会が行われていた。 「集まったなお前ら。ちゃんと一人残らず」 「ヘイ……お頭が呼んでるとあらば、すぐに駆けつける次第です」 「良い心がけだ。んじゃあ早速始めようか……俺達、龍山組の幹部集会を」 渋山区を拠点に活動する暴力団、龍山会。 主に薬物系の密売を生業としており、さらに暴力団の中でも特に気性が荒く、脅迫や暴力沙汰の絶えない組だった。 そんな組の幹部八人と頭が、ここしばらく起き始めているある問題について会議を始めた。 「俺がお前らを集めた理由は……わかってるな」 「ヘイ……最近妙に、ヤクの売れ行きが悪い……というか、悪すぎるって内容ですよね」 「分ってんならいい話が早い。お前ら、原因を知ってるか」 それは、彼らがシノギにしている薬物売買の調子が非常に悪いということ。 薬物の魔の手は、どこからともなく突然やってきて、相手が完全に擦り切れるまでしゃぶり尽くしていく。 それを主導するのが反社会組織であり、その一つがヤクザ。彼らもその中のカテゴリに入る。 求めるのは常に一定層、どんな時代にも存在するが、それが最近異様に悪くなり始めたということだった。 「それが……全くわからねえんです。俺らが使ってるのは中毒性の特に強いタイプなはずなのに……」 「そういや、また買いに来るのは男ばかりになったな。女は殆ど来ねえ。来たとしても、男に比べて1/10とかそんなレベルだ」 「わしんとこもだ! わしらだけかと思うたが、どこもだったか……」 なんでも、女性のリピーターが限りなく少なくなったという。 それについての原因は全く見当がつかず、全く対処しようがない。 全員が全員、頭を悩ませているところだった。 「一体何がどうなって……」 手詰まりとしか言いようのない自分達の状況。どう解決策を見出そうかと各々に考えていたその時、外で何かが倒れる音がした。 「少し黙れお前ら。外で何か聞こえないか」 頭の言葉に耳を傾け、一斉に黙りこくって音に神経を集中させる。 この会議室の周囲には、腕っ節の立つ団員を護衛として配置しているが、それらが膝をついているような、床に倒れていくような音が聞こえていた。 「お前ら、銃を持て。何かが来る」 その音は、少しずつ、少しずつ会議室の入り口へ近づいてくる。 それに伴い、同時に耳に入る、護衛達の叫びにすらいたらない悲鳴。 ようやく銃声が聞こえるも、それも無意味だとばかりに全ての声が止んだ。 そして、会議室の入り口が開く。 「女ひとり……?」 そこに現れたのは、血塗れな薄着姿の女性が一人。千鶴だった。 「皆さん思ったより弱いですね。私に誰もまともに勝てないんですから」 そこにいる全員が怯んだ。こんな小娘一人がカチコミに来たというのか。部下は全員やられたというのか。そもそもなんの目的で。 混沌とした一秒が流れた直後、背後からドスを持った男が、千鶴の背中に不意の突きを叩き込んだ。 「あっ…………やっと大きいのが来た……みんな拳銃ばかりで、あっ……物足りなかったんです……」 衝撃に、千鶴の身体が前に揺れる。 だが、刺した男を筆頭に、強烈な違和感が室内を包んだ。 心臓をも貫くような柄モノで刺したのに、血の一滴も流れてこない。それどころか、彼女が発したのは苦しみの声ではなく、明らかな嬌声であり、喋りにも悦びの声色が含まれていた。 千鶴は倒れる様子も一切見せることなく、背後にいる男の顎下に人差し指を置くと、一発の銃声が鳴った。 男は悲鳴すら上げる隙も与えられないまま、脳天から血を吹き出し、その場に倒れ込んだ。 「なんだテメエは一体!! どこの組のモンだ!?」 「別に……あっ……私はどこの組にいるとか…がは……あっ……そういうのじゃありませんよ……」 千鶴は頬を赤らめ、快感を覚えているような声と表情で、ゆっくりと幹部達に近づいていく。 色気に満ちた姿と、背中を刺されたままで血塗れの姿が同居している、非現実的で非人間的な姿に、幹部達は今までにない、得体の知れない何かを見ているような恐怖を覚えた。 「私は、過激派に近い龍山組なら銃撃されても、おかしくないって……」 向けられた無数の銃口にも怯まず、一歩一歩進む姿に耐えきれなかった幹部の一人が、一発の弾丸を放ち、豊かな右胸に穴を空けた。 「ああっ! これ……これが破損による快感……エラーが生じて、きもちいい……やっぱり、見当つけて正か」 「う、撃て!! 撃ちまくれ!! 蜂の巣にしろォ!!」 怖気づいた声で命令する頭。それに連なり、無数の弾丸が千鶴の身体に撃ち込まれた。 肩、腕、乳房、鳩尾、下腹部、額、首、太もも、ふくらはぎ。至る所に弾丸が撃ち込まれ、命中する度に身体が揺れる。 傷つく度に生じるエラー。人工皮膚や内部機構が破損する度に、それらが快楽信号へと変換され、人格データに人間では得られない幸福を与える。 血が全く流れず、無色透明の液体が、女体に無数の空いた穴からこぼれ落ちる。 しかしそれでも、千鶴は全く倒れることはなかった。 それどころか、微笑みを絶やさず、じっと彼らの姿を見つめ続けていた。 「こいつ……まだ俺達を見て……!」 直後、千鶴は両手を前にかざして手のひらを大きく開いて真正面に晒す。すると、指や人工皮膚が開放されるように開き、金属の内面を晒す。 その中から現れたのは、二つの銃口だった。 「なっ……!」 そして、千鶴はマシンガンのように弾丸を連射し、龍山会の幹部達の心臓や頭部を、自身の体内で製造した弾丸によって蜂の巣にしてしまった。 わずかな時間で広がっていく血の海。千鶴の人工皮膚の背中にたった今造られた穴から、薬莢がポロポロとこぼれ落ちていく。 弾丸を放つ度に感じる衝撃と熱が、新たな性感の種となり、彼女の股間を濡らし始めていた。 そうして、立っているものがいなくなると、銃撃をやめて銃口を引っ込め、生まれた傷を除いて人間らしい姿に戻った。 だが、彼女の行動は終わらない。 「こういう場所なら、銃器や凶器で好きに自壊が出来る……ああ、私、警察官で良かったぁ……あんっ! あ、あああぁぁ……きもちいい……」 千鶴は、死体だらけの床を避けるようにテーブルの上で座ると、身につけた薄着を全て脱いで全裸になり、背中に刺さったナイフを抜き取り、その瞬間にも小さな快楽信号を感じつつ右手に握った。 そして、下腹部に突き立てて人工皮膚に切れ目を入れ、さくさくと切り始めた。 その奥から現れたのは、彼女の女性器ユニットの奥に着けられている子宮ユニットだった。 千鶴はそれを握ると、その場でぐにぐにと揉み込みながら背中を仰け反らせた。 「あんっ! あっ、ぁぁぁ……私の身体……ぁぇ……こんなに作り変えられて……あんっ! 良かった……こういう場所に来れば……いつでも壊れて気持ちよくなれる……あああっ!!」 千鶴が警視庁にて探していた資料。それは、暴力団の本拠地及び、これまで重ねられた調査による行動パターンだった。 彼女は、真奈美に機械化させられた後、その場で軽く、破損することによるエラーと、それを快楽信号に変換されることの抗いがたい悦びと気持ちよさを知った。 機械化することで組み込まれた本能である、快楽信号を得ること。それをどうしたら達成できるかどうかを演算した時、その結果として導き出されたのは、非合法的かつ反社会的勢力であるヤクザの存在だった。 メンツを大事にする彼らならば、直接出向けば返り討ちにしてくれる。特に、やり口が荒く薬物と銃刀で稼いでいる龍山組ならば、必ず攻撃するだろうと、壊れる為の道具も数え切れないくらいにあるだろうと予測した。 結果、千鶴は調べた場所、時間に、ボスと幹部集団が集まるタイミングを狙って突っ込み、邪魔な木っ端を丁寧に蹴散らしつつ自身の新たに身につけた反撃能力を確認しながら、最後に弾丸の雨を浴びることに成功したのだった。 「こんな……肉体的な快感も……あんっ! 壊れる快感も……両方味わえるなんて……はあんっ!」 夢中になって左手で肉筒と子宮ユニットを、爪を立てつつ弄り倒す千鶴。 一方で右手は、死んだ幹部の手にある拳銃へと伸び、装填し直されたばかりなのを確認すると、その銃口を右耳に当てる。 人工愛液の水溜りを作りながら、千鶴は迷いも恐怖もなく、自らの意思で二度引き金を引いた。 「ぎっ!? 集音ゆゆゆyyyユニットがtttt頭部ゆにユニットが損傷ししししましましま、これがこれが破損して破損がエラー、動作制御が動作正常正常にににに、あははは、きききもちきもちちちちちち……」 右側の集音ユニットが破壊され、そのまま電子頭脳まで到達する弾丸。 制御中枢が損傷し、千鶴の手から銃がこぼれ落ち、ガタガタと振るように暴れ始めた。 頬が緩み、恍惚に染まった笑みを浮かべながら、テーブルの上で魚のように全身が暴れだす。 ただでさえナイフで刺された時や、銃撃の雨を浴びた時に未知なる快感を全身に感じたのに、電子頭脳が損傷すると、人間だった頃には絶対に感じられなかったであろう爆発的な性感が全身に駆け巡った。 死体が転がり血だらけの室内で、机の上で各部から液を噴き出しながら乱れ暴れる姿は、まさしく狂った機械人形。 おかしくなった音声を天井に放ち、しばらく痙攣を起こし続けると、千鶴はようやく少しずつ静かになった。 その頃になると、銃撃された箇所が徐々に修復され始め、元に戻りつつあった。 「あ、あ、あ、あ、あ、あ…………ととてても、きもちいいい……真奈美ささ、様は、これを知ったから、ラクーンから脱出しした、したしました、したんですね……」 機体内に埋まった弾丸を素材に、自動的に変換が行われ、壊れた箇所の修復剤へと転化されていく。 穴だらけの身体も、背中の深々としたナイフの傷も徐々に塞がり始めるが、少々破損規模の大きい電子頭脳と、自ら修復を後回しにしている下腹部は、その直りが遅かった。 震える左手を、肉筒と子宮に当て、擦っては握ってインスタントに快楽信号を得ながら、千鶴はフラフラと立ち上がった。 「あら、監視カカカカメラがが、確認されました、ありますね確認です。ここれ、これは、削除しなな、しない、ととと、タスクに登録されました。今からしししし、しないと」 眼球の動作がバラバラで、それぞれ反対方向を向くときもあれば、片側だけ硬直して一方がぐりぐりと目まぐるしく動く時もある。 千鶴は足元の死体も気にせず歩くが、その間、快楽信号を処理し続けているからか、人工愛液をほぼ垂れ流しにしていた。 そんな破損状態でも、千鶴はこの先起きるであろう展開をよく理解していた。しばらくすれば、外に出向いていた構成員がやってきて、隠し切ることもできず警察にバレる。それから自分の仲間である警官や鑑識達がやってきて現場検証に入るだろう。 その際に、自分の姿が映し出されている代物が存在してはいけない。千鶴は、会議室内にある監視カメラに愛液で濡れた手で直接触れ、そこからネットワークに侵入。 映像データの管理場所を突き止め、ゆっくりと手を離した。 「私が、私がががが快楽信号を処理できるまままで、我慢できな我慢できな、早くデータを削除ししししま、しますしまして、逃げなななないと」 ヤクザ達の死体など微塵も興味ないとばかりに、千鶴は会議室を出ていった。 こうして、異星の技術の連鎖によって機械化した女性警官の、一時の快楽消費の為に、龍山会は壊滅したのだった。 それから間もなく、真っ暗な建物の隙間を縫うようにして、壁を走る人型の姿があった。 ブリッジの体勢になり、変形した千鶴である。 彼女を改造した真奈美や、真奈美を作り変えたメリンのように、手足の指を開放し、蜘蛛のように這っては暗闇となる場所へ伝っていき、地上にいる人間の位置や数を確認しながらひと目につかないように去っていく。 その挙動には、人間らしさはどこにも見当たらない。人間の形をしただけの兵器のような姿がそこにはあった。 だが、こんなときでも千鶴は、人工皮膚が夜風に触れることで生じる刺激や、慣れてないが故に体表面や手のひらが傷つく度に性感を覚えていた。 姿勢の関係上、胸や股間を強調することになるため、夜風がダイレクトに性感帯へと伝わってくる。 「あっ……ん…………とっても気持ちよかった……またああいうことしたいけど、何回もはできないですよね……そんなに壊滅させたら絶対に怪しまれるし、しばらくは自家発電で我慢しないと……あんっ……」 機械化したことで、人格が大きく変質した千鶴。 既に銃撃や刺突による傷は修復されており、現在の動作や挙動を除けばただの美女にしか見えない。 まるで台風のように襲いかかり去っていった千鶴は、このまま自宅へと戻り、元の人間としての生活へ戻っていくのであった。 * * * それから少しの時間が経ち、龍山会が何者かに襲撃されたという一報が入る。 会議室や通路に散らばる構成員や幹部、頭の死体。 だが、その現場の異様さに、操作は困難を極めていた。 「指紋すら出ねえっていったいどういうことだこりゃあ」 「弾痕やあっても武器は特定できず。現場には謎の粘液や折れたナイフ。監視カメラは途中の映像がなぜか削除済み。無茶苦茶ですね」 「こんな派手にやらかしといて、冷静に監視カメラの記録映像にも手を出せるってことは、集団犯とも考えられるが……にしては暴れた後が少なすぎる……ダメだ、犯人が皆目見当つかねえ」 ヤクザ同士または身内の内紛にしては、不自然な点が多すぎる。そもそも殺人事件としても奇妙な点がいくつも存在しており、捜査班全体が大きな壁にぶつかっていた。 「篤紀さん! 何か出ましたか?」 そこに、千鶴が何食わぬ顔でやってくる。 自身も警官として捜査に参加し、捜査中だけ当日の関連する記憶データを参照できないように設定し、きちんと警官らしく聞き込みや調査を遂行していた。 「いいや、さっぱりだ。跡は盛り沢山なのに、本丸に辿り着ける物証が出てこねえ。こりゃ相当長引きそうだぞ」 「そうですか……でも、私は絶対に犯人を探し出してみせます。たとえ被害者が暴力団であったとしても、このようなことは見過ごせません」 「その志は立派だが、背負いすぎるなよ。人の身体は一つで、やれることは限られてるんだからな」 篤紀は、彼女の正義感での負担を心配しながら、再び作業へ戻っていった。 この現場にいる誰一人として、千鶴が犯人であると疑う様子はない。 自分自身も、この場にいて刑事として動いている間は犯人だと思っていない。 人間時代の真っ当な正義を貫いていた女性刑事から、人格を変質させられ快楽に溺れる機械人形へと変わった千鶴は、これからも人間と機械の二重生活に明け暮れるようになったのであった。 そんな中、警視庁の科学捜査班が、ラクーンの事件で発見された液体の中に含まれる金属について調べ続けるうちに、ある驚愕の事実にたどり着いた。 「やはり間違いないのか?」 「ああ……これは、地球上には存在しない物体だ」 * * * ある日の渋山区の中心部である渋山駅。 大部分の最先端な流行といくつかのノスタルジーが入り交じるスクランブル交差点周辺から、少し離れた少々荒れ気味の裏路地。 そこで、龍山会の構成員の男が、二人のとても可愛い女子大学生に、シノギである薬物を渡していた。 「二人共マジでやばいくらい可愛いよね。これ、使うとマジでもっとやばいくらい可愛くなれるぜ。気持ちよくなりながらさ、肌艶も良くなるし、毎日がサイコーの気分だぜ?」 「えーほんと? じゃあもらおっかな」 「いいよいいよ! 是非ともこの凄さ体験してもらいたいからさ、これは試供品ってことで! ありがとーう!」 二人はそれをあっさりと無警戒に受け取ると、笑顔で手を振り去っていった。 彼女達の背中を見て、男は見下しバカにした目でほくそ笑んだ。 「へっ、ああいう頭の軽いカモはノルマの足しにしやすいから助かるわ。一発でハマるだろうなありゃ。けどマジで可愛かったな……あいつらがハマったら、ドロドロにヤりまくって……へへへ」 下衆な妄想を余所に、受け取った二人は、ひと目のないところで薬物を取り出し、何の躊躇もなく使用した。 「フンフン、やっぱこれ間違いなく薬物だよね。典型的な成分が検出されてるもん。メリン様がインストールしてくれた成分表の大部分と一致してるし」 「でも結構やばい成分多いよね……こんなの人間だったらすぐにぶっ壊れちゃうじゃん。私達、機械化してるから全然効かないけど」 「まあね。あたしら機械化したからあんなの受け取ったけど、人間だった時でも受け取るかっつーの。あんなの全部、この世から消えりゃいいのよ」 彼女達は既に、ペリメイズ人の手によって機械へと作り変えられていた。 人体に最悪の影響を与える代物をあえて受け取ったのも、それを解析して機械としての遊びに耽っていただけであり、売人たちに取り入ったりお世話になる気はさらさらなかったのだ。 「それに、私達にはこれがあるし」 だがその直後、手もちの鞄から金属の棒を取り出し、それぞれの耳の奥まで挿し込んだ。 ずぶずぶという音が聞こえそうな程に、全身を震わせながら棒の半分まで挿入した後、二人はぐっと摘んでいる指に力を入れた。 すると、棒に電流が流れ始め、電子頭脳に直接刺激が与えられ始めた。 「あ、あ、あ、ああぁあ゛あががが……」 「きききききもちいきもちいいいいい…………」 インスタントなエラーによる快楽信号への変換。人間よりも簡単に手に入る最高の快感を、彼女達は知っていた。 機械の侵食は、少しずつ、着実に進行している。それに人間社会が気づく気配は、まだまだどこにもなかった。
Comments
ありがとうございます! 現代兵装が効かずにスペックも人間を大きく超えているとなれば、たとえ暴力集団でもただのエサでしかないですからね…… 千鶴は今後いつ出るかはまだわからないですが、暴力と対峙する別の機械化女性はまた書く予定にはなっていますね。
土装番
2022-12-08 07:06:08 +0000 UTC併せて、今後どうかこのような無慈悲な戦闘セクサロイド関連の話も別に一編ほど書いていただきたいと思います。
Y.Ginko
2022-12-06 12:29:14 +0000 UTCこれから宇宙大量破壊戦闘セクサロイド婦警千鶴の活躍をもっと見守りたいです! もっと書いてください!
Y.Ginko
2022-12-06 12:27:44 +0000 UTCああ、最高です! 巨大組織暴力集団さえも自分の職業特性を十分活用して快楽の提供源にしてしまい、その一方で優越な宇宙ロボ娘の能力としてその集団を抹殺してしまう宇宙戦闘セクサロイドは本当に恐ろしく最高です...
Y.Ginko
2022-12-06 12:25:53 +0000 UTC