XaiJu
ドーン
ドーン

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用務員の野望・前編



 唐突だが、俺は女子高で用務員をしている。

 羨ましく思う奴がいるかもしれないが、容姿が劣る俺みたいな人種にとっては、牢獄で働いているに近かった。

 朝早くから結構な量の仕事を黙々とこなしているのに、返ってくるのは、汚いモノを見るかのような女どもの視線だけ。よくて無視だ。


 そんな俺の密かな愉しみは、校内のレズカップルを眺めることだ。

 仕事上、人が余り近づかない場所を行き来するせいか、隠れて情事にふける女子たちの姿を目にする。

 それは容姿の優れた少女同士の組み合わせが多く、正に眼福だ。

 美少女たちの柔らかそうな手足が触れ合っているのを見るだけで興奮する。


 やがて、目に焼き付けた光景の中で、その片方に自分を置き換えることを想像するようになった。

 柔らかい肉を持つ女子になって、別の女子と触れ合いたいのだ。

 だが現実は残酷で、そんなことはありえない。

 だからせめてそんなシチュエーションの憑依レズモノをネットで読み漁ることで、己の欲望を少しでも満たそうと試みる日々が続いていたのだった。



――――――



「ふわぁ~」


 昼休み、荷物を運んでいると、ベンチに座って大きなアクビをしている女の姿が目に入った。


「……お疲れ様です、柊木先生」


「あっ!お疲れ様です、用務員さん……恥ずかしいところをお見せしました……」


 俺が本性を隠し、表の顔で声を掛けると、その女はわずかに頬を赤くして返事を返してくる。

 この女の名前は、柊木 友梨佳(ひいらぎ ゆりか)。

 今年1年目の新任の教師で、この学校で唯一、俺とまともに会話してくれる女である。

 ナチュラルウェーブロングの黒髪に若々しく明るい美貌の持ち主な上、紺のスーツに包まれたカラダのラインも綺麗で、文句なしの美人だ。

 どこぞのお嬢様なのか、いつもニコニコと愛想を振り撒き、物腰も柔らかく丁寧だ。

 面倒見も良いようで、女子生徒たちの話題にイイ意味で頻繁にのぼる。

 この学校に男子が居れば、野郎どもの想像の世界で毎晩、この女の分身が大活躍することになるだろう。


「いえいえ、教師というお仕事が大変なことは、分かってますから」


「え?あっ、これは違うんです!昨日、夜更かししてしまって……気分転換に外の空気を吸ったので、もう大丈夫です!今日は早く寝付けそうですけど……」


「そうですか。それでは残りのお仕事も頑張ってください」


「はい、失礼します!」


 俺みたいな奴にも差別せずに接することができる、本当に性格の良い女だ。

 女子どもに人気なのも納得できる。

 だが俺は遠ざかる女教師の背中を見つめながら別のことを考えていた。


(……あの女なら……たまんねぇな!ぐふふ……)


 この学校にいない男子たちの代わりに、俺は想像の世界で、純真な女教師をオモチャにして愉しむのだった。



――――――



 放課後になり、一息つこうと用務員室に戻った時だった。


「あ~ん?なんだこりゃ?」


 テーブルの上に置かれた液体の入ったビンと、何やら書き込まれている紙きれを見つけて、俺は声を挙げる。

 どちらも見覚えが無かった。

 不審に思いながらも、ビンを手に取り、紙切れの文字に目を通す。


 内容を要約するとこんな感じだ。


・この液体を飲むと、自分の意思で自由に【幽体離脱】し、【霊体】で行動できるようになる。


・【霊体】になれば、【憑依】が出来るようになる。

 ただし、意識が無い相手にしか乗り移れない。

 離脱は自由にできる。


・【霊体】で触れた相手の思考に干渉することが出来る。

 相手の思考を促すことで、こちらの望む方向に思考を誘導できるが、嫌がることを無理矢理やらせるような事は出来ない。



 そして最後にはこう記されていた。


『自分の欲望の赴くまま行動すればよい。我々はそれを観察させてもらう。期待しているぞ』



「………」


 最後まで目を通して、俺はしばし無言になる。

 普通なら誰かのイタズラ、もしくは何かの冗談だと考えるだろう。

 しかし誰にも明かした事の無い心の奥底を見透かしたような内容に、俺は奮えた。


 俺は覚悟を決めてビンの蓋を取ると、一気に飲み干す。

 次の瞬間、強い酒を飲んだ時のような酩酊感に襲われた。

 続いて、自分の意識がふわふわと浮いているような高揚を感じる。

 どうやら、肉体と魂の繋がりが緩んだようだ。

 俺は床に仰向けに寝転がり目を閉じると、そのまま意識だけ浮かび上がる。

 

(おおっ!)


 体は寝たままなのに、視点は高くなっている。


(凄い!本当に幽体離脱してるぞ!)


 そして自分の意思で移動できることを確認すると、俺は霊体のまま外へ出た。


(神か悪魔か?それとも宇宙人か?誰だか分からないが粋なことをしてくれるぜ!よし!期待に応えてやろうじゃないか!)


 俺は己の欲望に従い、女たちの待つ校舎に向かって移動を開始したのだった。



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