感想的なことを書くつもりですが、ネタバレもあるかもしれないし、少々重い話も書くかもです。大丈夫な方は読んでやってください。
いや〜、久々に名作が来ましたね。タイトルが平家物語だし、悲しい話になることが決まってる、それが最初からわかっている状態で、話を見ていくことになります。女性の監督で、目撃者 兼 語り部が「びわ」なので、どちらかというと女性的目線、当事者というより、一歩引いた場所から、フィルターを一枚隔てたような、オブラートに包んではいるけど、起こったことに何かを足したり引いたりすることなく、フラットに、でも丁寧に描いてある。そんな画を延々と見せられることになります。アニメーションのクオリティ・演出ともに秀逸で、この気むずかし屋のオマンが和んでいる。ずっと延々と見ていられる気持ちいい画とアニメーションの連続です。話は悲しいですが、マイルドに入ってくるのは、やはり脚本の御大がいらっしゃるからでしょうか。テンポがよく、見てる僕らには他人事として、リアルだけど対岸の出来事としてポンポンと入ってくる。
戦の描写は女性の監督には難しいと勝手に思ってたんですが、女性の目線で描き切ってる感じです。コンバットシーンになにかとツッコミを入れたがる僕が、グウの音も出ない。女性からはそう見えますかって感じ。変なところは全く無い。
強く印象に残ったのは、やはり敦盛の最後の戦いと、壇ノ浦の戦い。最後に安徳帝が入水するときに、女房たちもなんの躊躇もなく続いて次々に入水していったシーン。戦いはほとんどが男の世界だけど、女房たちも平家一門の女として一緒に戦っていたのだなとそこで強く感じさせられた。斬ったり射たりではないけど一緒に戦っていたんだなって。
それぞれの物語がぶつかったり重なったりして、それぞれの終着点があって。各々なりの選択、決定があって。それを良いとか悪いとかいうのではなく、ただ見つめる感じ。直観っていうんですか? 詳しくないのでよくわからんですが。
監督は画で空気感を描ける天才で、どっちかというと京アニでわちゃわちゃした、ほんわかとしたアニメを作ってたイメージですが、映画で『聲の形』を撮ってかなり評価されたらしいですね、僕はまだ見てないですが。今回、平家物語を見て、監督の作品は今後も安心して見れるなと思いました。
空気感というか、雰囲気というのか、あれはどうやって出すんですかね? わかりません。方法論的なことはあるんだろうけど、どっちにしても監督にしかできないことでしょう。かけがえのない才能というか天才というのか、そんな人たちがたくさんいて、ほかの何物にも変えられない作品を我々に見せてくれました。
これについて話すことはもう避けられないと思って書くのですが、そんな方々が忌まわしい事件によって、早すぎる退場を余儀なくされました。世界一といってもいい、ほかの何にも変えられない才能で、他の誰もできない表現で、我々を沸かせ続けてくれた方々が犠牲になり、ある人は犯人に対して怒り、責めて、ある人は途方にくれて口をつぐんだ。でもみんな悲しんでいたと思います。僕なんかは身の縮こまるような感じがして、何も言葉が出なかった。京アニの作品も事件後何年かは見れなかった。ただ近年、事件のことに関係なく、京アニの素晴らしいアニメを、事件とか関係なく楽しんだほうがいいと考えるようになり、見るようになりました。きっとそのほうがいいのだと思って。楽しく見てますよ。
京アニは、僕は正直、昔のような楽しい気持ちで、昔のような面白い作品を作るのは無理だと勝手に考えてました。それについては勝手に謝らなくてはなりません。メイドラゴンSもめちゃ良かったし。OPでトールとエルマが踊ってるのは、僕にはツインターボ師匠みたいにもちょっと見えるんですよね。トウカイテイオーに見せつけたときの。ほんとにスゴいなあと思いました。僕はどっちかというとすぐにあきらめたり逃げたりするほうなので。蹴ったり殴ったりじゃなくて、こういう戦い方もあるのかと、こんな強さもあるんだなと感銘を受けました。
監督の話でした。事件の直接の被害は受けなかったとのことですが、部外者の我々でさえ言葉を失って呆然となったり怒り狂ったりしてたのに、監督のご心痛は想像もできません。ただ、これは僕の勝手な想像なんですが、それから逃げることも忘れることもされなくて、向き合った上での、今回の作品がもしかしてあるのかなと思っています。素晴らしい名作だと思います。
びわは、異能の眼でもって、この世ならざるものを見ますが、自分は見えるだけで何もできないと、劇中で繰り返し叫びます。これは監督自身の心の叫びでもあるのではと邪推しています。無関係と考えるほうが難しいでしょう。見届けるしかない、伝えるしかないというびわの有りようは、そのまま監督の強いメッセージそのものだと思えてならない。監督が失ってしまったもの全てに対する、力強いメッセージです。
見終わった感じは、『火の鳥』の渺茫とした茫洋とした読後感に少し似てると思いました。「荒涼」っていうのが一番近い感じですかね。仏教の無常観ってやつなんでしょうか。詳しくないのでよくわからんですが。見終わったあと虚無になりましたよ。シン・エヴァは背中を上にボーンと押し上げてくれたのに(笑)こっちは放り出された感じです。しばらく虚無になりましたよ。
見逃したら損をしていた、と思わせられる作品でした。あの事件で一つの文化が亡くなったと思っていたのが、実は受け継がれていたという意味でも、胸が熱くなるような感じもありますね、悲しい話なのに。OPもエモすぎるんです。監督やスタッフの今後の活躍が非常に楽しみですよ。
あ、僕の解釈が間違ってたりおかしい部分があったらぜひコメ欄などでお教えください。ここまで駄文におつきあいくださり、ありがとうございました! おれも見たよ!って方も、もしよければご感想・ご考察など、ぜひコメ欄にお寄せください!