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アイドル水瀬伊織の移籍その1

「もう!どうして私がレギュラー降ろされなきゃいけないわけ!」

番組収録終了後、控室でアイドル水瀬伊織はマネージャーに怒鳴っていた。

「すまん伊織、俺も今日初めて話を聞いてなにがなんだか・・・」

伊織の後任レギュラーとなったのは韓国系事務所であるウィングプロダクションのアイドルだった。

「言い訳はいらないわよ!もう降板させられたのも腹立つけど後任があの韓国女達ってのが余計に腹が立つわね!」

韓国風のメイク、ファッションで見た目は韓国人のようだが実際は皆日本人のアイドルである。

「汚い手を使って韓流ごり押し、ほんとイライラしてしょうがないわよ!あんたも私のマネージャーなんだからしっかりしなさいよね!」

伊織の怒りを収めようと必死に謝るマネージャー。

最近は伊織だけでなく他のアイドル達もレギュラー卒業や降板でウィングプロダクションのアイドルと交代することが日常茶飯事で伊織が韓流ごり押しというのも無理はない事だった。

マネージャーに怒鳴り散らしようやく怒りが収まったのか、二人は控室を出てスタジオを後にしようとすると、

「あ、どうも765プロさん!」

ウィングプロダクションのマネージャーと廊下ですれ違う。

「初めましてウィングプロのマネージャーのキムと申します。」

2人に挨拶をするとキムはマネージャーだけでなく伊織にも名刺を手渡した。

「あ、ありがとうございます・・・!」

アンタのとこにレギュラー盗られたんだけど!と内心イラつきながらも伊織は営業スマイルで応対する。

その後マネージャー同士の雑談に花が咲くが伊織はその様子を内心苦々しく見つめていた。

(仕事敵なのに何仲良くおしゃべりしてんのよこいつは~!!)


プルルルルッ

マネージャーの形態の着信音が鳴る。

「あ、すみませんちょっと失礼します」

会話を一時中断し電話応対の為その場を離れるマネージャー。

その場にはキムと伊織の二人が取り残された。

「水瀬伊織ちゃん、君には才能がある。アイドルの仕事を失くしてしまう無能マネージャーの下にいるのは勿体ない。ウチに移籍しないか?」

「ふん!韓流のごり押しで仕事盗んでるあんたたちがよくそんな事言えるわね。この伊織ちゃんが韓国女たちの事務所に移籍する?死んでもごめんよ!」

つっけんどんな態度をとるものの信頼はしているパートナーであるマネージャーを馬鹿にされ堪忍袋の緒が切れる伊織。

まるで犬が噛みつかんとしているような気迫でキムを睨み付ける。

両者の間に険悪な空気が流れるが電話を終えマネージャーが戻ってくると伊織もなんとか気を静めた。

「すみませんお話の途中で。そろそろ次の仕事の時間なのでこれで失礼します。行こう、伊織。」

マネージャーの後に伊織が付いて行く。

すれ違いざまにキムが語りかけた。

「気持ちが変わったら名刺の番号に電話しな。いつでも話は聞いてやる。」

(誰がするもんか!)

去り行くキムの背中に向けて心のなかでべーっ!っと舌を出し悪態をつく伊織。

しかしマネージャーの手前受け取った名刺は捨てることも出来ず、名刺はポシェットの奥にぐしゃっと詰め込まれるのだった。


「なあ伊織、俺が電話してる間キムさんとなに話してたんだ?」

車で移動中マネージャーは訊ねた。

バックミラー越しの伊織は気だるげに車窓を眺めている。

「ウチの事務所に移籍しないか?って誘われたわ」

「えっ!?」

伊織の口から出た言葉に驚きマネージャーのハンドル捌きが乱れ車は一瞬左右に大きくぶれた。

ドンッ!

「痛っ!?ちょっと伊織ちゃんのおでこに傷がついたらどうしてくれんのよ!気をつけて運転しなさいよ!」

「悪い、でもいきなりそんな事言うから驚くだろ!も、もちろん断ったんだよな・・・?」

「当り前じゃない。この伊織ちゃんがあんなキムチ臭い事務所に移籍?死んでもごめんだわ。だからアンタもあたしの事、しっかりマネジメントしなさいよ!」

いつも通りの気の強い伊織の言葉にほっとひとまず安心するマネージャーだった。


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