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反抗期の生徒

関東地方の某県では数年前に当選した金田知事によって県内すべての公立小中高校で教育改革が行われた。

金田の肝いりで県の教育長となった安田の「歴史を知らない民族に未来はない」という持論により、県内の公立小中高校では歴史の授業で現代史に割かれる時間が多く取られるようになっていた。


「はあ、まただわ・・・」

中学校の職員室。女教師の藤井理恵は採点している答案用紙を見てため息を吐いた。


問:戦前日帝が朝鮮半島で行った犯罪的な政策を4つ挙げなさい


藤井が担当する歴史教科のテストの問題である。

正答率がほぼ9割で間違う生徒も4つ目が出てこなかったというパターンが一般的なこの問題。

しかしこの答案用紙には

「日本は混迷する朝鮮半島に法の秩序を与えて感謝されるべきで、犯罪的な事はしていません。朝鮮による反日プロパガンダには洗脳されません」

とデカデカと記入され以降の問題は白紙回答となっていた。

「おや?藤井先生どうしたんですか?」

そんな答案を見て頭を抱える理恵に後ろから体育教師である木下が心配そうに声をかけた。

「あ、木下先生・・・。実は・・・」


「なるほどまた彼ですか。藤井先生も大変ですねぇ。」

理恵の説明を聞いて同情するように木下は反応した。

答案の主、石川綾人は教師の間では知らない者がいない問題児だった。

「他の教科では真面目で優秀な生徒なのになんで私の教科でだけこうなるんでしょう、はぁ・・・。」

「若いのに嫌韓のネトウヨ思想に嵌ってしまうなんて将来が思いやられますね。おっとそれじゃ私は授業の準備があるので失礼します。」

木下との雑談を切り上げ再び理恵は答案用紙と対峙する。

「どうしたもんかしらね・・・。」


翌日の放課後、理恵は進路指導室に綾人を呼び出していた。

「石川君あなたまたテストをボイコットして、これじゃ進路に響くわよ。他の科目はまともなのにどうして歴史だけこんな事するの。」

答案用紙をコツコツと指で叩きながら問い詰める理恵。

それは彼の進路を心配しての言葉というよりも怒りの感情がこもっていたものだったが、対する綾人は平然としていた。

「まともじゃないのは僕じゃなくてこんな反日教育をしている先生たちの方です。朝鮮人たちに洗脳されて日本叩きをするなんて同じ日本人として恥ずかしいです。」

教師相手に一歩も引かず持論をまくし立てる綾人。

「それに僕は高校は誠心館高校に進学するからこんな反日教育でテストの点数が悪くたって気にしませんから。それじゃ失礼します。」

そう言うと一方的に言い放ち進路指導室を出て行った。

誠心館高校は藩校時代から続く私学の名門で、県の推進する教育に反抗し愛国的教育を校是として掲げており、それをよく思わない勢力からは右翼思想を子供に植え付ける学校だと言われている。

「誠心館に行きたいだなんてこの歳で呆れた右翼思想ね・・・。嫌韓思想に凝り固まって碌なチョッパリになれないわよ。」

残された理恵は一人呆れていた。


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