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わたしにとってそれは
呼吸に等しい行為でした。
それ故、どんなに禁じられようとも
わたしは 人知れずこっそり抜け出して
鱗みたいに美しい瓦屋根の街並みや
何でもない路地を歩くたびに
あぁ こんな世界でもやっぱり
嫌いになれないな、
なんて 思ったりして。
見つかればどうなるなんて噂もあったけれど、天秤にかけるまでもなく ドアノブに手をかけてしまうのでした。
人が居ない街だって良かった。
無人の道は平やかで広々と、
空は紅茶に落とされたシロップのように流れていました。
雑然と鬱屈を纏った都市は静まり返っていて、宛ら異世界のようでした。
山道の物見櫓で鉄琴を弾き、廃校になる校舎を見届け、それから
それから…
果てに帰って
チョコレートケーキを食しました。
これは定期通信で知ったことなのですが、わたしの愛したランドマークは取り壊されて無くなったようです。
村は閉鎖されていて最期を見ることは叶わなかったけれど、もし許されたとてあれが無ければきっともう、
誰も あの村には辿り着けないことでしょう。
その夜、わたしは
人類が滅亡した世界で
自分だけが存在しなかったことを知ったのでした。
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