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異世界風俗店【ファンタジア】 Side Story 3 エルフSide ~前編~

※本作品はPixivに投稿した《異世界風俗店【ファンタジア】》のサイドストーリーとなります。 本編の方を読んでいただいた事を前提で書いてありますので、説明が省かれている部分がありますのでご了承ください。 ・・・ ここは、異世界風俗店【ファンタジア】 風俗店といっても、この店は一風変わっている。 何が違うかというと、ここで働くキャストは皆、異世界ファンタジーに登場するようなそのキャラクター、つまり普通の人間の女の子ではないのだ。 とは言っても、もちろん実際にそんなものが存在するわけでない。 キャストは、キャラクターの着ぐるみを着ているのだ。 全身をタイツで覆い、マスクを被り、中身の人間を覆い隠す。 そして、そのキャラクターを演じ、成りきる。 【ピロン】 部屋で待つ私の端末に表示が出た。 「お客さんね…。えっと…【登録ID:akisuke】…ん…初めての人か…。で…っと…設定は年下のエルフね…」 私は【森埼 皐月(もりさき さつき)】。 この異世界風俗店【ファンタジア】で、エルフのキャラクター【メイ】を演じている。 エルフは比較的、お客さんのニーズの幅が広い。 サキュバスなどは、大体が女王様キャラを要求されるが、エルフに関しては様々な設定がマッチする。 ひ弱なキャラであったり、色っぽい水商売キャラ、高潔でプライドが高いキャラと、全く性質の違うものが多い。 そのキャラ設定が多様なため、お客さんにある程度選んでもらって演じ分ける。 今日のキャラは【年下のエルフ】、おおよそのカテゴリデーいうと、ひ弱系のかわいいキャラだといえる。 「うん…おっけー…。年下エルフ…年下エルフ……よしっ!!」 こうして、私はお客さんが部屋に入ってくる前に、自らのスイッチを切り替え、その役に成りきるのだった。 自らの服装もチェックする。 全身を包む肌タイツ、その上の衣装。 短いスカートと、胸を隠すビキニのようなトップス、そして、その上から半袖のレースのような短い上着を羽織る。 お腹と腰は曝け出しているが、まあ肌タイツに包まれているから、露出してるわけでもない。 そして、肘から先にはサテン地の手袋。 これは、このお店の仕事ならではの装備で、お客の性器を手で抜くため、そこだけ替えられるようになっているのだ。 準備万端、私はお客さんを部屋へと迎え入れた。 (初めての人って、色々と読めないんだよね…どんな人だろ…) そんなことを考えていると部屋の扉が空き、お客さんが入って来た。 【ガチャ】 お客様の要望を考え、可愛い系のキャラでお客様を出迎える。 「初めまして…今日は来てくれてありがと…!?うっ!!」 いつも通り、成りきったキャラで、挨拶をしようとした私だったが、言葉に詰まってしまった。 言葉に詰まった理由…。 それは、入ってきたお客にあったのだ。 (うっ…嘘!?あ…【秋斗(あきと)】さんじゃん!?) 私の部屋に現れたお客。 その人は、私のとても良く知っている人だった。 秋斗さん…彼は、私の親友である【美園(みその)】のお兄さんなのだ。 美園の家にも、よく遊びに行くので、お兄さんの秋斗さんにもよく合う。 そして、この秋斗さん、ルックスもなかなか、かっこいい上、妹の友人の私にまで、とても優しくしてくれる。 そんな親友のお兄さんが、今、私のお客として目の前に現れたのだった。 「こちらこそ、初めまして。ゴメンね、こういうとこ慣れてないから、俺もどうしていいか分からないんだよね」 動揺している私をよそに、爽やかにそう言い切る秋斗さん。 打って変わって、私の頭の中は、動揺に動揺を重ねていた。 知り合いがお客として来る事自体、初めてだというのに、それが親友のお兄さんで、しかも、私ともかなりの面識がある人間。 どう接していいか分からず、混乱を来す。 (うそ…どうしよ…秋斗さんが…私の…お客…?…) 「え…っと…そっちに座ってもいいのかな??」 狼狽える私が言葉を発せずにいると、秋斗さんがそう質問してきた。 その瞬間、私は我に帰った。 (そ…そうだ…私はファンタジアのキャスト…。顔もバレているわけじゃないし…いつも通りやらなきゃ…) そう考え、少し落ち着きを取り戻した私は、秋斗さんの質問に答える。 「いいですよ、こっち来て…私の隣に座って!」 そう言いながら、自らの席の隣をポンポンと手で叩いた。 「うん、それじゃ遠慮なく」 すると秋斗さんは、私の隣に来て腰をおろした。 (う…なんだろ…初めての感覚だよぉ…なんか…変に緊張する…) やる事は同じなのだが、やはり知っている人というだけで、いつもとは感覚が違い、胸がドキドキしてしまう。 しかし、私もプロなのだから、割り切って対応するしかない。 「えっ…と…【アキスケ】さんでいいですか??私はエルフの【メイ】、よろしくお願いします」 「うん、アキスケでいいよ。メイちゃんっていうんだ…可愛らしい名前だね」 「あ…ありがと…なんか照れるな…」 メイというキャラクター名、私の名前、皐月にもじってつけた名前だ。 顔も何も全て隠れているのだから、バレるはずは無いのだが、情報がリンクしている部分があるので、少しドキドキしてしまう。 「ゴメンね。さっきも言ったんだけど、俺、こういうお店、全然経験なくて。今日も、友達がどうしてもっていうから着いてきたんだけど、ホントに勝手が分からないんだ」 なんとなくピュアな感じのする秋斗さんが好印象に映る。 (そっか…秋斗さん…こういう店は知らないんだ…。じゃあ…年下キャラ設定だけど、私が引っ張らなきゃ…) 「気楽にして下さい!えっ…と…まずはお話でもしましょうか??」 「そうだね」 そうして、私は秋斗さんと色々なお話をした。 楽しそうな表情を浮かべる秋斗さん。 会話の雰囲気もよく、満足してもらっている感がある。 もちろん、生身の状態、つまり皐月と、美園のお兄さんである秋斗さんという状態での会話は、美園の家ではよくしている。 しかし、今の会話は違う。 あくまで、エルフの【メイ】とお客の【アキスケ】さんとの会話なのである。 あまりにも会話が弾みすぎると、素が出てしまい、バレる可能性もある。 最初のうちは、そんな事に気を付けながら会話をしていた。 しかし、会話が進むにつれて、どこか気を許してしまった私は、それ程、その事を気にしないようになっていった。 バレるような事は言っていないが、次第に警戒心は薄れてしまって行った。 (あ…なんだか…秋斗さんとおしゃべりするの…楽しいな…) この、私を包み込んでしまう空気を作るのが、秋斗さんのうまさというか魅力なのかもしれない。 私は会話に夢中になり、本当の仕事を忘れてしまいそうになっていた。 暫くして時計を確認した。 (あっ…やばい!時間が…。とにかく一回抜かないと…) ここはそういうお店。 お客を抜かずに帰らせる訳にはいかない。 「あ…アキスケさん…ゴメンなさい。私、つい会話に夢中になってしまって、時間が少なくなってしまいました…。ズ…ズボンを脱がさせてもらっていいですか??」 (あ…い…言っちゃった…なんか…恥ずかしい…) なんだろうか…?普段から行っている行為だし、当たり前のように、男性のズボンを脱がしているというのに、この恥ずかしさは…一体。 「そ…そうだよね…。ここは…そういうお店だったんだよね。俺も、メイちゃんとの会話が楽しくて、うっかり忘れてたよ…」 そう言いながらはにかむ秋斗さん。 その仕草に、少し胸がドキッとしてしまう。 「俺としては、メイちゃんとの会話だけでも満足なんだけどな…」 「そ…そう言う訳にはいきません!わ…私の…仕事ですから…」 「そ…そっか…」 そして、私は秋斗さんのズボンに手を掛けた。 ベルトを外しズボンを降ろす。 パンツ一枚になった秋斗さんの下半身。 そのパンツを降ろせば、秋斗さんの性器が露出する。 【ゴクッ…】 何かいつもと違う緊張感が私を包む。 そして、私はそのパンツを降ろし、秋斗さんの性器を露出させた。 「な…なんか…恥ずかしいな…」 そう言いながら照れる秋斗さん。 「それでは、アキスケさん…擦らせてもらいます…」 そして、私はサテン地の手袋で、秋斗さんの性器を擦った。 暫くして、頂点を迎えた秋斗さんは私の手袋の中へと射精したのだった。 一通りの処理が完了し、終わりの時間を迎えた。 「メイちゃん、今日は楽しかったよ。また遊びに来てもいいかな?」 「えっ!?も…もちろんです。今日は、お話が多くなちゃって…ごめんなさい。次は…次はもっと…」 「いいよ!俺、メイちゃんと話すの、かなり楽しかったから、また俺とおしゃべりしてよ」 私の言葉に被せ気味に秋斗さんが言った。 「す…すいません…ありがとうございます…」 本当にそう思ったのか、それとも私に対する気遣いなのか、なんにしても秋斗さんの優しさがそこに感じられた。 「それじゃ、また今度ね」 「はい…お待ちしてます…」 そうして、親友の美園のお兄ちゃんである秋斗さんは、部屋から出て行った。 (ふぅぅ…なんか…な…) 初めての感じに困惑したが、一通りの仕事はやり切った。 そして、改めて、自らの手袋に目を向けた。 そこには、秋斗さんから放出された精液がついている。 (ぁ…そうか…私…美園のお兄ちゃんに…手コキをしちゃったんだ…) 改めてそう思うと、なにやら罪悪感のようなものが込み上げてくる。 (も…もちろん美園には内緒だな…。バレたら私も共犯者だしな…) 秋斗さんが、こういう店に来た事もバレる訳にもいかないし、私の仕事の件もバレる訳にはいかない。 こんな驚くような偶然があったのだが、それは私の胸の内に仕舞っておくことである。 なにせ、知っているのは私だけ…。 秋斗さんは、まさかここにいるのが、自分の妹の親友だとは思わないだろう。 つまり、私だけが知る真実なのだ。 そして、秋斗さんが来た翌日も、私は親友である美園と遊んでいた。 もちろん、衝撃の事実は隠したまま。 「皐月、ちょっとうちに寄ってかない??お母さんがケーキ買ってくれてあるっていってたから、食べてきなよ」 「え!?いいの??ケーキ!?やった…!!ん??っと…あ…秋斗さんって、家にいる??」 一瞬、ケーキの誘惑に飛びつきそうになったが、とんでもない事実を思い出した。 「ん??どうだろ??いつもだったら、まだ帰ってきてないと思うけど」 「そ…そっか…じゃあ…いいか…」 この流れで、突然、秋斗さんがいるのか聞くこと自体不自然だ。 「ん??どうしたの??うちのお兄ちゃんに、何か問題でも??」 「い…え…っと…別に…何でもないんだけど…。あっ…その…もし寛いでたら、私とかがお邪魔すると、うるさいかな??と思って」 「はぁ??何言ってるの??今更って感じでしょ。皐月が来た所で、うちのお兄ちゃんは何も気にしないよ」 「そ…そっかな…。じゃあ、ケーキ…頂こうかな??」 「オッケー!じゃあ、寄ってってよ」 「う…うん…」 (まあ…いないなら…大丈夫だよね…) そうして私は美園の家へとお邪魔する事にになった。 「ただいま~~!!」 「お邪魔しま~す!!」 普段から遊びに来慣れている美園の家。 いつもどおりの雰囲気で、家に上がって行った。 【ガチャ】 リビングへと繋がる扉を開けた。 「ん?美園、おかえり。今日は早いじゃないか??」 リビングのソファーに座っているのは美園のお兄ちゃんである秋斗さんだった。 (あ…秋斗さん!?) いないと思っていたので、少し意表を突かれ、驚きが隠せない。 「おっ!皐月ちゃんもいっしょか?こんにちは、皐月ちゃん」 「こ…こんにちは…」 普段ならなんの抵抗もなく、普通に挨拶する間柄ではあるが、昨日の事が頭を過り、少し動揺してしまう。 「お兄ちゃんこそ、なんでこんな時間に家にいるのよ」 「ああ…今日は仕事が早く終わったからね」 「ふ~ん。まあいいや…。お母さんがケーキ買ってあるっていってたから皐月と…」 美園と秋斗さんの何気ない兄弟の会話が繰り広げられる。 しかし、動揺してしまっている私には、その内容が頭に入ってこない。 つい、自分の手に視線を向けてしまう。 その手は、昨晩、秋斗さんの性器を擦り、射精をさせた手…。 その事実が再び頭を過り、顔が赤くなってしまう。 昨日は、私は仮面を被り、自らを覆い隠した状態で会ったのだが、今は違う。 素顔を曝け出した、普通の女の子…皐月として、ここにいるのだ。 何か、今までにない恥ずかしさが込み上げて来た。 「皐月!皐月ってば!!」 気が付くと美園が私の名前を呼んでいた。 「え!?ゴ…ゴメン!ボーっとしてた…」 「皐月!ケーキ食べよっか」 「うん」 そう言うと美園がケーキを用意し、リビングのテーブルの上に持ってきた。 そして、リビングのソファーに座る三人。 美園、秋斗さん、そして私。 こんな光景、今までも何度も有った事だが、今日は凄い居づらさを感じてしまう。 目の前に、昨日、射精させた男性がいるのだ。 なんともいえない感覚が襲ってくる。 (でも…あれは…私しか知らない事…秋斗さんは私だって事は知らない訳だし…) そう、秋斗さんにとっては、昨日の出来事は、エルフの【メイ】との出来事。 目の前のい女の子など関係のない出来事なのだ。 そして、私は心臓をドキドキさせながら、出されたケーキをほうばっていった。 当たり前の事だが、秋斗さんがその件に触れる事はない。 親友、そして親友の兄、私の三人、たわいもない会話が繰り広げられていくのだった。 そして、次第に私の心も落ち着きを取り戻し、【普段】の私たちに戻っていった。 (ふぅ…気にしない…気にしない…) そう、普段の私たちは、こうやって和気あいあいとする仲なのだ。 会話も進み、時間が経つにつれて、私も昨日の事実が頭の中から薄くなり、いつものこの感覚に染まっていく。 そして、いつもの感じで寛ぎ、私は、美園の家を後にするのだった。 何の事件も起きず、いつも通りの空間として終わって行った。 ・・・ そして、数日が過ぎ、私がファンタジアで働いていると、お客さんの表示IDに【akisuke】さんの表示が出た。 (え!?akisuke!?…って秋斗さんだよね!?) 再び現れた秋斗さんに私は動揺が隠せない。 前回は、友達に無理矢理、連れて来られた感じがあったので、再び来店するとは想像すらしていなかった。 しかも、秋斗さんは再び、エルフのメイを選んだという事。 (う…嘘でしょ…) この前、抜いた後も美園の家で、何度か会っている。 もうあまり意識もしないようにしているうちに、少し忘れかけていた事だった。 しかし、こうして秋斗さんが再び来店した。 その事実が、一気に私に現実としてのしかかってきた。 【ガチャ】 しかし、私はファンタジアで働くエルフのメイ。 こんなことで、動揺している場合じゃない。 すると、扉が開き、秋斗さんが中へと入ってきた。 「いらっしゃいませ。また来てもっらって、ありがとうございます」 そう言いながら、私は頭を下げた。 「こんばんは、メイちゃん」 「アキスケさん、それではこっちへ来て下さい…」 そうして、私は秋斗さんを横に座るように促した。 すると、秋斗さんがゆっくりと私の方へやって来て、隣に腰を降ろした。 (ふぅ…もう…このことは忘れようと思ってたのに…どうしよ…) 「また来ちゃったよ」 「な…なんで…また私の所に??」 本来、普通のお客なら、自分の所にリピーターとして来てくれる事は有難い事。 しかし、お客がお客なだけに、ついそう質問してしまった。 「ん…っと……メイちゃんと話すのが楽しかった…からかな??」 「お…お話するのが…??」 「うん」 あまりにも想像してい無かった答え。 そして、その返答をする秋斗さんの表情に、偽りは感じられない。 本当にそう思って言っているのだと感じられる。 「そ…そうなんですか…。私…特に話が上手い訳でもないんですけど…」 「うん…なんていうかな??話すのが上手いとか、そう言うのじゃなくて、メイちゃんと話をしていると落ち着くっていうか、しっくりくるというか…そんな感じ??」 「そ…そう…ですか…」 秋斗さんのその言葉、少し褒められている感じがして嬉しい。 そして、私はそのまま、秋斗さんとお喋りを続けた。 時間が過ぎ、そろそろ抜かないと時間が終わってしまう。 「ゴメンなさい…。またおしゃべりに夢中になってって…時間が無くなってしまって…。そろそろ、させてもらってもよいですか…??」 役作りでもなく、素で少し照れながら、私はそう言った。 「それなんだけど、ちょっと提案というか相談」 「相談??」 「うん。抜かなくていいからさ…メイちゃんを抱きしめさせて貰えないかな??」 「え!?」 その相談を聞いて困惑してしまう。 基本的に、このお店はお触りは厳禁だ。 だとすると、抱きしめるという行為は、NG行為に当たってしまう。 しかし、本当の目的である【抜く】という行為をせずに、【抱きしめる】だけとすると、お客にとってはマイナスな感じもする。 どう捉えていいのだろう…。 秋斗さんはそれで、満足してもらえるのだろうか…。 (う~ん…。まあ…お客さん的にはマイナスな所もあるし、私が良ければそれでも…かな??後で、オーナーと相談しておこう…。とりあえず今回はオッケー…) 「え…っと…アキスケさんは、それでいいんですか??抜かないのはもったいないんじゃ…」 「オッケーなら、俺はその方が満足かな?…どう??」 「そ…それなら…今回はいいですけど…。また…お店には確認します」 「じゃあ、今日はオッケーってことね」 「は…はい…」 すると、秋斗さんは私の前に向かい合い、私の肩を両手で掴んだ。 「メイちゃん…」 【ギュッ】 私の名前を呼んだ秋斗さんは、私の体をギュッと強く抱きしめた。 (んあっ…) 抱きしめられ、ちょっと気持ちが高揚してしまった。 自然と私の手も、秋斗さんの腰へと回り込んでいった。 暫く、そのまま秋斗さんに抱きしめられたまま居た。 体から伝わる温かさ…。 全身を包み込むような包容力…。 胸がドキドキとしてしまう…。 初恋のような胸の高ぶりが、私を包み込んでいった。 (うぅ…こんなの…こんなの…されちゃったら…) そして、暫くして、秋斗さんが私を体から引き離した。 (ぁっ…) 「メイちゃん…今日もありがとう…。また来てもいいかな?」 「は…はい…」 そうして、秋斗さんは抜かないままに、私のもとを去って行った。 着ぐるみのマスクで隠れているものの、その下にある私の顔は惚けた表情をしていたかもしれない。 その状況で満足していたのは、秋斗さんではなく、私の方だったかもしれない…。 そんな気すらしてしまった。 ・・・ そして、その後も何度か秋斗さんは来店するようになり、毎度の如くおしゃべりをして、抱きしてめて帰るというスタンスだった。 店の許可も降り、そのスタンスも特例として許された。 秋斗さんが来店するたびに、私の心は秋斗さんに奪われていった。 しかし、あくまでそれは、お客さんである【アキスケ】さんとエルフの【メイ】との関係。 美園のお兄ちゃんである秋斗さんと、皐月の関係では無いのだ。 だが、それはそれで、私はこの関係だからこそ成り立つ【二人の空間】だという事も理解し、そこに満足感を得ているのだった。 そんなある日、秋斗さんがお店に来ている時だった。 「ところでさ、メイちゃんって彼氏とかいるの??」 「えっ!?」 プライベートの事を聞くのはご法度な気もするが、相変わらず秋斗さんの言葉は純粋で、そこに嫌味がない。 そのストレートな質問に私は動揺してしまう。 「い…いますよ!エ…エルフのイケメン彼氏が…」 私は右の耳に掛かる髪をかき上げながら、そう言った。 もちろん、本当の皐月には彼氏などいない。 勢いでそう言ったに過ぎない。 すると、秋斗さんが軽く笑いながら言った。 「フフッ…そうか…。メイちゃんは彼氏、いないんだね…」 「え!?」 私が言った事の正反対の内容で返して来た秋斗さん。 「自分では気が付いて無いと思うけど、メイちゃんは嘘を付くとき、右の髪をかき上げる癖があるんだよ」 「え!?そ…そうなんですか??」 全く知らなかった自分の癖。 しかし、確かに今、嘘を言った事を、秋斗さんに見抜かれた。 つまり、秋斗さんがいう事は本当の事の様だった。 「だから、さっきの言葉は嘘かな??」 「ふぅ…アキスケさんは凄いですね…敵わないや…。いませんよ…」 あっさりと嘘を見抜かれ、正直に返答する。 「…って…そういうアキスケさんはどうなんですか??彼女さんとかいるんですか??」 勢いで秋斗さんに逆質問をした。 すると、相変わらずの優しい表情で秋斗さんが答える。 「いないよ」 「え!?アキスケさん、そんなイケメンなのに??」 「照れるな…そんな事言われると。そうおだてられても、別にイケメンじゃないし、もてもしないよ」 「そうなんですか??もてそうだけどな…」 容姿も悪くない、性格もよし、もてる要素は持ち合わせていると思うのだが…。 実際、私は心を惹かれている訳だし。 「じゃじゃ…、彼女じゃなくても、好きな人とかはいるんですか??」 思い切って、突っ込んだ質問をしてみる。 「ん??好きな人か…。可愛いと思うタイプの子はいるよ。まあ…関係性的に付き合うとかはないけどね」 「へぇ…。可愛いと思ってるのに、付き合えない関係なんですか?」 親とか仕事の絡みだろうか…。 心で思っていても、何かそれができない障害があるということだろう。 「うん…そうだね。ぶっちゃけて言っちゃうと、俺の妹の友達の子なんだよね」 (え!???) 秋斗さんが放ったその一言が私に衝撃を走らせる。 (秋斗さんの妹の友達…) その一言に私は体を固まらせてしまう。 「よく家に遊びに来る子なんだけど、この子がまた可愛くてね。俺の理想に近い子なんだけど、さすがに自分の妹の友達だからね…。その関係で恋愛感情を抱いたらまずいでしょ」 (よく…遊びに…来る…。わ…私の…事…だよ…ね…) 秋斗さんの言葉から推測するに、その相手の女の子は間違いなく私の事だ。 あまりにも予想外の事実に、私はそれが呑み込めずにいた。 (私の…私の…私の事…秋斗さんが…私の事を…可愛いって…嘘…嘘でしょ…) 「ん??メイちゃん??やっぱ…引いちゃった??」 すると、その事実を知り完全に固まったままの私を見た秋斗さんがそう言った。 「え!?…いや…そ…そんな事ないです…」 秋斗さんに質問され、一瞬で現実に戻る。 しかし、頭の中は、衝撃の事実でいっぱいになっている。 驚きを見せていない雰囲気を醸し出しているが、内心では飛び上がりそうな程に胸が躍っていた。 「妹の友達だしな…さすがにまずいでしょ…」 そう言いながら照れる秋斗さん。 「そ…そんな事ないと思います…。わ…私も…友達のお兄さんに心を惹かれていますから…」 「そうなの??しかも、現在進行形??」 (!?…しまった!!うっかり…そう言っちゃった!!) 着ぐるみを着ている暑さの汗ではない、不思議な汗が体から溢れ出して来る。 内容的にリンクしすぎていて、身バレに繋がる可能性がある。 「って事は、俺たち似た者同士ってことか…。どうりで気が合う訳だ…ハハッ…」 笑いながら秋斗さんはそういい放った。 その様子から、私が皐月で、秋斗さんの事を思っているという事はバレている訳ではなさそうだ。 そうして、変なドキドキ感と共にその日は終わって行った。 (秋斗さんが…私の事を可愛いって…。んうぅぅぅ!!!なんか…すっごい…嬉しい!!) その夜、メイから皐月に戻った私は、家に帰りその事で頭をいっぱいにしながら眠りにつくのだった。 ・・・ そんな事実を知って数日後の事。 私は、また美園に呼ばれ、美園の家に遊びに来ていた。 もちろんそこには秋斗さんも一緒にいる。 いつも通り、和やかな雰囲気の三人の空間が繰り広げられる。 しかし、そのいつも通りは、見た目の話。 実際には、私を秋斗さんが意識しているという事実を、こっそり知っている私がいる。 そう…私だけが、いつもとは違うのだった。 その事実が頭を離れず、微妙に秋斗さんに対して躊躇いが出てしまう。 (うぅ…やっぱり…ちょっと…意識しちゃうな…) いつも通り振舞っているつもりだが、心のどこかでやはり違和感を感じてしまう。 しかし、その事実はメイしか知らない事実。 皐月である私が知っていてはいけない事実なのだ。 あの【メイ】と【アキスケ】さんの中だけの事実であり、私はその中だけ、秋斗さんと密接な関係にあっていいのだ。 今の私は、皐月でありメイではない。 つまり、私は、単なる美園の友達であり続けるしかないのだった。 大して内容のない、穏やかな雰囲気の会話。 いつも通りの私たちの会話が繰り広げられ、いつも通りに時間が過ぎて行った。 そして、秋斗さんがくだらない冗談を言った時だった。 「もう!お兄ちゃんたらっ!!そのボケ面白くないよ!!」 「そうか??会心のボケだと思ったんだけどな…。皐月ちゃん、どう思う?」 そう秋斗さんが私に質問をして来た。 その瞬間、私の心に油断が生じてしまった。 「【アキスケ】さん、今のは滑ったんじゃないですか??」 私がそう言った瞬間、秋斗さんが私の方を凝視して固まった。 何か珍しいものでも見つけたかのような驚きの表情を浮かべたまま、こちらを見ている。 (ん??何??) すると、美園が言った。 「なにそれ??皐月??【アキスケ】って。あ~~そう言う事か、【秋斗】と【馬鹿スケ】を足して、【アキスケ】って事。ハハッ!!よっぽど、お兄ちゃんのボケより、皐月のほうが面白いじゃん!!」 (え!?…うそ…わ…私…今…秋斗さんの事…アキスケって…いっちゃった…の…??) 美園の言葉を聞き、私は体が硬直してしまった。 無意識だった。 自分がそう言った事すら気が付いていないくらい、自然にその名前を発してしまった。 その名前は、エルフのメイしか知らない名前。 皐月が知っていてはいけない名前。 (うそ…やばい…ど…どうしよう…) 秋斗さんの視線は私に釘付けになっている。 変な汗が体中から噴き出して来た。 すると美園がスッと立ち上がった。 「ちょっとトイレ行ってくる」 そう言って美園はリビングから出て行った。 とんでもないタイミングで二人きりにさせられた。 未だ、秋斗さんの目は、私を凝視したままだ。 あまりの出来事に、私は発する言葉を失ってしまった。 (うぅ…どうしよ…どうしよ…) すると、秋斗さんがその固まった空気を壊し言葉を口にした。 「皐月ちゃん…さっき…俺の事…アキスケって言ったよね??」 「え!?そ…そんな事…言ってません…よ…」 私がそう答えると、再び沈黙が訪れる。 心臓が爆発するのではないかと思うくらい、激しく脈打つ。 (やばい…やばい…やばい…) そしてその沈黙を破るように秋斗さん一言、口にした。 「も…もしかして…メイ…ちゃん…」 ついに秋斗さんが、その名前を口にした。 私たちだけしか知らない事実である、お互いの名前。 確信を突く一言だ。 それを認めれば、全てが明るみになる。 しかし、秋斗さんはメイのマスクの下の顔を見た事はない。 先程言った、アキスケという名前の件も、偶然の間違いと押し通せばいい。 「メイ??な…なんの名前ですか??」 そして、私は右の髪をかき上げながらそう言った。 「そ…その仕草…。う…嘘をついてるよね…」 (え!?) 私は自らの右手が、右耳の付近にある事に気が付いた。 そう、それは私が嘘を付くときしてしまう癖。 しかも、アキスケさんに見抜かれた癖なのだ。 「やっぱり…メイ…」 「あっ!!すいません!!私、用事があるので帰ります!!お邪魔しました!!」 気が動転した私は、秋斗さんの言葉にかぶせる様にそう言い、勢いよく立ち上がった。 「さ…皐月ちゃん!!」 「さようなら!!」 そして、私は逃げるように美園の家を後にした。 皐月の家を出て私は、無我夢中で自分の家へと帰って行った。 (やばい…バレた…完全に…バレた…どうしよう…) そして、家に帰った私は、ベッドに転がり込み、訳も分からず泣いた。 何がどう、まずいのか…。 何がどう、悲しいのか…。 何がどう、私の心を締め付けるのか…。 とにかく、何も考える事が出来ず、抑えられない感情だけが込み上げて来て、涙が溢れ出た。 →後編へ続く・・・

異世界風俗店【ファンタジア】 Side Story 3  エルフSide ~前編~

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