【ヒーリングアニマル】制度。 それは、政府により正式に承認された会社が運営するサービスの事。 どういった内容かというと、【アニマル】、つまり動物が家庭に派遣され、男子の相手をするというもの。 男子の相手…それは、性行為のことである。 性行為をする訳なのだから、もちろん【アニマル】と言っても、本物の動物ではない。 いわゆる【着ぐるみ】を着た女の子である。 性行為とは言うものの、本番で挿入するわけではなく、アニマルが口で、男子の性処理をするもの。 一回40分程度の滞在時間で、各家庭に訪れては帰っていく。 このサービスは、完全に国の管理下に置かれ、合法なサービスとなっている。 男子は16才から22才まで利用可能ではあるが、契約するためには、もちろんお金も必要で、審査も通らないといけない。 何故、こんな制度が国の管理下の制度なのか…。 それは、実際に、この制度が施行されてから、性犯罪が格段に減ったという統計も出ているからなのである。 私の名前は【北崎 心(きたざき こころ)】。 何を隠そう、このヒーリングアニマルの【アニマル】の中身をしている。 世間では、このアニマルの中身は囚人がやっているという噂も流れているが、その真相は私も知らない。 ただ一つ言えることは、私は囚人ではない。 普通の大学生だ。 何故、ただの大学生がこんな仕事をしているかというと、単純に収入がいいからである。 私は大学へ進んだものの、もともと裕福な家庭ではない。 自らの意思で大学へと進んだため、生活費はもちろん学費も稼がなければならないのだ。 そして、日中は本分である学生。 つまり働くのは夜しかない。 かといって、それだけの費用を稼ごうと思うと、そんじょそこらのアルバイトでは到底無理な話だ。 かといって、いわゆる風俗で体を売る訳にもいかず、この仕事についた。 あるルートから、ヒーリングアニマルを運営する会社が、私のような金銭面に困っている学生などを対象に特別募集を募る話をもらった。 私はそれに食いついた。 ヒーリングアニマル制度の事は知っている。 口で男性の性処理をしなくてはいけない事に抵抗はあったが、本番行為をする訳でもないし、着ぐるみを着る事で素性は隠せる。 そして、なにより給料がいい事。 時間の限られた私にとっては、こんなに都合よくお金を稼げる所は無かったのだ。 ヒーリングアニマルを運営する、【ミラージュ・カンパニー】が私のような、苦学生などを対象にかけた募集なので、会社からも支援金じみた額が報酬として払われるのだった。 私はこの仕事で手に入れたお金を、学費、生活費に当て、残った分は、実家に仕送りしていた。 派手な生活をしている訳ではないので、そこそこのお金を送れる。 まだ実家に残る弟と妹にもお金が掛かるだろうから、丁度良い。 母親からは、私が何故、送れるほどのお金を得ているのか不審には思われたが、友達と立ち上げたネットビジネスと伝えてある。 この仕事の契約上、誰にもアニマルの中身である事は、教えてはいけないからだ。 仮に教えて良くても、母親には言えないのだが…。 そして、私は今日もまた、【アニマル】になるのだった。 夕方、私が向かったのは、ミラージュ・カンパニーの一つの支店。 この支店の建物の入口は、数か所ある。 メインエントランスとは別に、バックヤードに入る出入口が多数あるのだ。 何故、そんなに沢山あるかというと、中身の人間のカモフラージュのためだ。 出入口は建物から少し離れた場所にあり、そこから入って歩いていくと、支店内にたどり着く。 世間で認められた制度だからこそ、興味を持つ人も多く、アニマルの中身の人間を見ようとする人もいるのだ。 そのため、建物に入るところから、ばれない様にしている。 そのせいか知らないが、私は自分以外のアニマルの中身の女の子に会った事もなかった。 果たして、他の女の子も、同じルートで入って来ているのかすら知らないくらいだ。 そして、私は支店の中のバックヤードへと入って行った。 私個人の着替える部屋は決まっており、私とスタッフの人しか出入り出来ないようになっている。 私はいつものように、自分専用の部屋へと入って行った。 【ガチャ】 「おはようざいます、心さん」 「あっ、おはようございます」 そう私に挨拶してきたのは、スタッフの【峰岸(みねぎし)さん】。 この業界のルールだろうか、夕方であっても、初めて会った人には【おはようございます】なのだ。 ちなみに、峰岸さんは、私の着替えを手伝い、お客の所まで送迎してくれるスタッフだ。 「峰岸さん、早速、着替えます」 「はい、分かりました」 もうこなれたもので、そこに他人がいるというのにも関わらず、私は着ている衣服を脱ぎ、全裸になっていく。 脱いだ衣服を畳み、私は全裸でそこに立った。 「相変わらず、いいスタイルしてますね」 峰岸さんが、すこしうっとりした目でこちらを見ている。 「やめて下さいよ…毎日見てるんですから…。改めて言われると…少し恥ずかしいです…」 そう峰岸さんは私の担当のため、私が出勤する日は必ず付いてくれる。 私が稼ぐために、週6ペースで出勤しているので、峰岸さんには少し申し訳ない気もしていた。 「フフッ…本当に思った事を言っただけです…。それではチョーカーを付けます」 「はい」 【カチッ】 そう言って峰岸さんは、私の首にチョーカーを巻きつけて、後ろでロックした。 この太いチョーカー…呼び方を変えれば、【首輪】と言ってもおかしくはない代物。 これは、私を管理するための道具だ。 どういう仕組みかは分からないが、これを付けることで声帯が管理され、私は【人間の】言葉を奪われる。 「問題はないですか?」 「にゃぁ」 (問題なし…) 私は今、峰岸さんの質問に【はい】と答えたつもりである。 しかし、実際に発せられた声は【にゃぁ】となった。 つまり、このチョーカーの声帯管理機能は正しく動いているという事だ。 このチョーカーにより、私がどんな言葉を発しようとしても、【にゃあ】という音に変わる。 つまり、私の【人間の】言葉は奪われたのだ。 更に、このチョーカーは私の心拍もモニターしている機能もある。 そして、私は経験した事はないが、お客に対し害のある行動をとろうとすると、チョーカーから電気が流れる仕組みになっているらしい。 それにより、私は完全に管理された状態となるのだ。 次に、黒い全身タイツを着ていく。 肌触りのよい全身タイツ。 背中のファスナーの開いている所から、足を滑り込ませる。 そして腰まで持ち上げ、そのまま両腕を通す。 最後に顔の部分だけ丸く穴の開いた頭部を被る。 「それでは後ろ閉めます」 「にゃぁ」 【ジーーーー】 峰岸さんが背中のファスナーを閉めてくれた。 (ぅ…ぅん…) 毎度の事ではあるが、この肌触りのいい全身タイツに、全身を包まれると、少し気持ちがいい。 全身に感じる触感もさながら、この包まれている感がいいのだ。 そして次に着用するのは頭部の着ぐるみ。 猫の着ぐるみの頭部。私の頭部を一回り大きくしたくらいの代物だ。 マスクからは首の方に布が垂れ下がっており、その部分がボディの中に入り込む様になっている。 そして、その布は背中側に来る方にファスナーがあり、そのファスナーがマスクの後頭部の下の方まで繋がっている。 ファスナーを開き、マスクを被ろうとする。 後頭部のファスナーはあまり上まで行っておらず、マスクの開口部はかなり小さい。 なので、その小さな開口部に頭を押し込む感じで被るのだ。 (ん…よい…っしょ…と…) 【ズポッ】 マスクに頭を突っ込んだ。 マスク内に余裕な空間はなく、顔にマスクが張り付いているような状態だ。 視界は目の部分から、しっかりと外が視認できる。 しかし、外からは中身の私の目は、全く見えない作りになっている。 口の部分が開いているので、呼吸も問題ない。 「閉めますね」 すると、峰岸さんがマスクのファスナーを閉めてくれた。 そして、そのファスナーを隠すように、峰岸さんがファーの布の合わせを貼り付ける。 ファスナーを隠すファーには、特殊な接着剤を仕様して、簡単に取れないように張り合わせてしまう。 これにより、お客にマスクを脱がされたりはされないようになっているのだ。 後で取るときには、峰岸さんの持つ、剥離剤を数滴垂らせば、簡単に剥がれるらしい。 そして、そのままボディを着ていく。 一体型のボディ。 足をを入れ、両腕を通して、後ろで閉めるだけの簡単な作りだ。 そのボディに両足を滑り込ませる。 そして、足を完全にいれ、股付近がしっくりくるように調整。 両腕を入れながら、自らの体が覆われるように着ていく。 その際、首から垂れた布の部分が完全にボディに納まるようにする。 あとは、背中のファスナーを閉めれば完成である。 「じゃあ、閉めますね」 (ふぅ…今日も…始まるのか…) 【ジーーーーーー】 背中のファスナーが閉められ、私は完全に着ぐるみの中に閉じ込められた。 そして、背中のファスナーも隠すようにファーを接着剤で固定される。 もう峰岸さんが、剥離剤を使わない限り、私は、この着ぐるみを脱ぐことは出来ないのである。 この瞬間から私は着ぐるみに包まれる。 そして、この着ぐるみから解放されるのは、二時間後くらい…。 ここで着ぐるみを着用して、お客の家まで移動、そして、40分の滞在の後、またここまで戻ってくる。 それまで、私は着ぐるみの中に閉じ込められっぱなしなのだ。 長い時は二時間を超えてくる事もある。 当然暑くない訳はない。 送迎の車内はエアコンが効かされているのでいいが、お客さんの家や、車外の移動はどうにもしようがない。 酷いときは、暑さにやられ、会社に戻った時にグロッキーになっていることもある。 まあ…何より、帰りの車内での状態が悪いのもあるのだが…それは、また後ほど。 とにかく、背中のファスナーを閉められた瞬間、私もそれなりの覚悟が必要なのだ。 「さあ、じゃあ行きましょうか」 「にゃあ」 そうして、私は峰岸さんが運転するワゴン車に乗せられ、お客の元へ向かって行くのだった。 一連の流れは、契約しているお客の家に行き、到着後40分間滞在。 その中で、お客さんとじゃれ合ったりして、お客の性器を口で奉仕する。 何度、抜いても構わない、それはお客次第である。 稀に、肉球のついた手で抜いて欲しいという要望もある。 それも、問題はない。 そして、基本的には、男性にはコンドームの使用をお願いしているが、アニマル側が無しでもよいと意思表示をした場合には、つけなくても良い。 私は好きでやっているわけではなく、給料のためにやっているので、好きでもない人の精子など飲みたくはない。 なので、必ずコンドームは着用してもらっているのだ。 時間が来ると、お迎えが来るので、峰岸さんに連れられて戻る。 ちなみに、この着ぐるみのマスクには超小型カメラがついており、アニマル目線での映像が撮られている。 更にはマイクも内蔵されており、音声も拾っている。 これは、プライバシーを侵害するようなものでもあるが、これにより、アニマルがお客を害する行為の予防、そして逆にお客がアニマルを害する行為の予防をしているである。 国の管理下にあるものなので、これは法的に通った撮影および録音なのだ。 これで管理されているが故、ヒーリングアニマルの制度での事件は起こっていない。 そして、今日も扉が開かれる。 【ピンポーン】 「こんばんは、ヒーリングアニマルです」 「どうぞ」 そして私はアニマルとして、お客の部屋に入って行った。 このお客は比較的、私の体を触ってくるお客。 「にゃぁ~」 私は甘えるような、弱々しい鳴き声を上げた。 「う~ん…いつも可愛いなぁ~」 そう言われ私はお客の体へと自らの体を寄せていく。 そう…ペットがご主人様に甘えるように。 「よ~し、よし…」 するとお客が私の体を撫で始めた。 頭や喉、そのあたりから始まり、次第にその手は胸へと到達する。 「んにゃぁ…」 胸を揉まれ、私は甘い声を漏らす。 実際の所、こういった行為に私の心は無い。 あくまで仕事なのだ。 決して、本当に快楽に溺れている訳ではないし、気持ちが乗っている訳でもない。 とはいえ、仕事なのだ。 そう仕事だからこそ、しっかりその勤めを果たさなければならない。 このお客は、アニマルを可愛がりたいのだ。 だとすれば、その欲望を満たさなければならない。 仕事と割り切りながら、私はお客に合わせた演技モードにスイッチを入れる。 お客の胸を揉む手が激しさをましていく。 「んにゃっ…にゃ…にゃん…にゃぁ…」 私が甘い声を漏らせば漏らすほど、お客は気持ちを高ぶらせていく。 「なんて可愛いんだ…」 そして、その手が陰部付近まで伸びてくる。 この着ぐるみは足の太さの割に、いわゆる腹の部分、陰部から胸までの辺りは薄い生地で出来ている。 なので、着ぐるみの上からでも、愛撫すれば私の体に刺激を与えられるのだ。 そのお客の手が私の陰部を捉える。 「んにゃぁっ!…ん…にゃ…んにゃあっ!!」 演技としてスイッチが入っているのだが、実際にそこを責められれば感じてしまうのも事実。 私は、喘ぎ声をあげながら、体を悶えさせた。 その様子を見てご満悦のお客。 そして、そのお客の手がじっくりと私の体を責め続けた。 「んにゃあぁぁぁぁ!!」 暫く責められた後、私はイってしまった。 半分演技、半分本当といったところだろうか。 「う~ん…ホントに…可愛いなあぁ…」 イった姿を見下ろすお客。 その表情はとても満足げな表情だった。 すると、お客はおもむろにズボンを脱ぎ始め、自らの性器を露呈させた。 そして、その性器にコンドームを装着した。 「じゃぁ…手でお願いしようかな…」 「…にゃぁ…」 そして私は、そのお客の性器を両手で挟みこみ、擦り始めた。 モコモコした着ぐるみの手のため、片手で掴み込むような繊細な事はしにくい。 なので、両手で挟みこんで、性器をしごくのだ。 着ぐるみの手についた肉球が、うまいこと凹凸し、上下させる事でいい刺激を与えられる。 「んん…あぁ…き…気持ちいい…よ…」 性器をしごかれたお客が気持ちよさそうにそう言う。 私は優しく、そして滑らかに、その性器を擦り続けた。 「うぅっ…あぁ…いい…いいよ!!」 男性の性器がギンギンにそそり立っていく。 私の手はフィニッシュに向かい、その動きを早めて行った。 「うあっ…も…もう…無理…我慢できない…!で…出る…出る…出るぅぅぅ!!」 【ドピュッ】 するとお客はコンドームの中に射精をしたのだった。 「んはぁっ…はぁ…はぁ…はぁ…」 射精をして気持ちよさそうなお客。 出し終わった後も、優しく性器を擦る。 そしてその後、まだ時間もあり、コンドームを付け替えて、今度は口で抜いて上げるのだった。 気持ちよく何度か抜いたお客は、スッキリした雰囲気で、私の体を再び撫でていた。 実際のところ、終わりの愛撫でも、私の陰部はグショグショに濡れていた。 【ピンポーン】 お迎えの時間が来た。 私は帰るため、玄関の方へと向かっていった。 玄関には峰岸さんが、もう迎えのために待ち構えていた。 「ありがとうございました。また次回のご利用も、よろしくお願いいたします」 そして、私と峰岸さんは、専用のワゴン車に向かって行った。 ワゴン車に到着した私は、ここで大きく深呼吸をした。 (さて…もうひと頑張りだ…) 何故、ここで気を入れ直したのか…? それは帰り方に、理由があった。 特別仕様のワゴン車の荷台に乗り込むと、そこには大きなビニール袋がある。 それは布団の圧縮袋のようなもので、既に大きく口を開いていた。 そして、私は専用のホースを口に差し込むと、直ぐに、そのビニール袋の中に、体育座りのような姿勢で入って行った。 すると手際よく、峰岸さんがジップロックのようになった開口部を閉めて行った。 袋の入口が完全に閉められた。 【ブウウゥゥゥン…】 すると、機械音と共に、袋の中の空気が一気に吸いだされて行くのだった。 あっという間に、袋の中の空気は吸いだされ、私は袋の中で身動きが取れなくなる。 そう…真空パックのように、圧縮された状態となったのだ。 呼吸は、先ほど咥えたホースから可能。 しかし、体は全く動くことが出来ず、全身を圧迫された状態となる。 息が出来ない訳ではないが、締め付けられる苦しさはある。 (うぅ…く…苦しい…) これは、性行為による匂いが拡散するのの防止と、帰って消毒するまでの一時的な処置らしい。 そして、私はお客のところを出て、会社に戻るまで、このまま真空パックの中で、ひたすらジッと耐えるしかないのだ。 全く身動きは取れない…。 なので、見える景色も変わりはしない。 ただひたすらに、ホースから出来る呼吸をするだけ。 その状態で揺られていく、車内の時間は恐ろしく長く感じる。 とても人間としての扱いとは言えないこの状況。 しかし、これもまた、国に正式に承認された事なのだ。 「すぅぅぅ…ふぅぅぅ…すぅぅぅ…ふぅぅぅ…」 そう、これは私の仕事の一環なのだから、受け入れて耐える他ないのだ。 寝てしまえれば楽なのだが、意外にこの状況で寝る事が出来ない。 毎晩のように私はこうして、帰り道、圧縮されて運ばれているのだった。 【ガコッ】 暫くして、車の揺れが納まり、ドアの開く音が聞こえた。 恐らく、会社に到着したのだろう。 そして、私は圧縮されたまま、台車に乗せられる。 【モノ】として扱われるように、除菌ルームへと運ばれていくのだ。 暫くすると、ようやく袋のチャックが開けられた。 (あ…ようやく…動ける…) 私は暫く動かせなかった体を、ゆっくりと動かしながら、袋の外へと這い出て行った。 「お疲れ様でした」 すると峰岸さんが、私に声を掛けてきた。 「にゃにゃにゃあにゃ」 私もお疲れ様でしたと言ったつもりだが、まだ声帯管理をされているため、にゃあとしか言えない。 そして、袋の外へと完全に出た私は、大きく伸びをした。 この着ぐるみの凄い所は、あれだけ圧縮されていたのにも関わらず、袋から出ると、直ぐに元のボリュームに戻る所だ。 もう既に、袋に入る前と同じ、雰囲気に戻っていた。 「それでは、一旦消毒をします」 そう言って、峰岸さんは部屋から出て行った。 すると、壁についたスピーカーから、峰岸さんの声が聞こえた。 「はい、消毒始めます」 【プシュー】 すると壁から、霧のようなものが噴出される。 そして、その霧のようなものは、一気に私の体を包み込んだ。 この霧が何かはよく分からないが、とりあえずこれで、外部からの菌の持ち込みはな無くなるらしい。 【ガチャ】 霧が落ち着くと、扉が開き、峰岸さんが再び戻ってきた。 「それでは、脱がしに掛かります」 そう言うと、峰岸さんは特別な剥離剤を使い、背中の布地を剝がしてくれる。 そして、そのまま着ぐるみのファスナーを降ろす。 【ジーーーーー】 背中から一気に新鮮な空気が入り込んでくる。 今日は、とても暑いという程では無かったが、それでも着ぐるみの中の温度は上がるし、空気も籠る。 なので、外気が入ってくると、とても新鮮な感覚があるのだった。 そしてそのまま、峰岸さんはマスクの接着部も外してくれて、マスクのファスナーも降ろされる。 【ジーーーーー】 頭部の圧迫が消え、顎の横から外気が入り込んでくる。 これもまた、口の所が開いていて、外とは繋がっているものの、着ぐるみのマスク内は空気が籠るので、新鮮さを感じる。 私は着ぐるみのボディを脱ぎ去る。 そして、マスクに手をかけ、一気にマスクから自らの頭部を引き抜いた。 【ズポッ】 「にゃあぁ~~~」 ようやく着ぐるみが脱げて、ホッとした一言を放ったが、それもまた猫語のまま。 そして、体を包み込んでいる全身タイツは、やはりほぼ全身が汗で濡れている。 なんだかんだで、そこそこの汗は搔いているのだ。 一部、股の部分だけは、汗だけで濡れている訳ではないのだが…。 すると、峰岸さんが全身タイツのファスナーを降ろしてくれる。 【ジーーーーー】 ファスナーを降ろすと、私のうなじから背中が露になる。 【カチッ】 首元が露になると直ぐに、峰岸さんがチョーカーを外してくれた。 「ありがとうございます」 「これで、今日の仕事は終わりです。後はいつも通りで」 チョーカーを外した事で、私は人間の言葉を取り戻す。 ようやく、【北崎 心】という人間に戻れた瞬間である。 「後は、自分でやりますので。今日もお疲れ様でした、峰岸さん」 「お疲れ様でした。それでは、私は上がりますので」 峰岸さんはペコリと頭を下げると、部屋を出て行った。 そして私は全身タイツを脱ぎ、全裸になる。 脱いだ全身タイツを所定のカゴへと入れる。 そして、全裸のまま、となりの部屋へと移動して行った。 隣に一人が入れるくらいのシャワールームがあり、そこで私は体を洗い流した。 そして更衣室に移り、着替えを済ます。 なぜかいつも、この更衣室には私の脱いだ私服が、しっかりと用意されている。 そして、私服に着替えた私は、また通路を通り、秘密の出入り口から、外へと出ていくのだった。 この一連の流れで、私は峰岸さんとしてか会った事がない。 どういう仕組みで、どういう管理をされているのか分からないが、他のアニマルの中身の子はもちろん、峰岸さんのようなスタッフにも会った事がない。 まあ、お互いのプライバシーのためにも、会わないほうがいいのだが、これだけ会わないと、アニマルが自分だけなのかと思ってしまうくらいだ。 しかし、事実、この制度を使っている人は少なくないので、他のアニマルの中身の子もいるはず。 なので、私は知らないのだ…私以外の事は…。 それでも、私はこの仕事で、かなりの給料を貰えているのだから、それでいい。 他人の事がどうかなど、どうでもいいのだった。 こうして、私は毎晩のように、ヒーリングアニマルの仕事をしていくのだった。 ・・・ そして月日は流れ、私も、もう就職が内定した。 IT企業で、かなり若い会社だが、その成長力は凄まじく、ベンチャー企業として始まったのだが、名立たる会社へと躍進を遂げた企業である。 それ故、考え方も新しく、古いこの国の企業らしさがなく、とても働きやすいらしい。 私のヒーリングアニマルとしての仕事も、残り一ヶ月となった。 気持ちの入っていない性行為とも、ついにお別れとなる。 これからは、企業で社会人としてお金を稼いでいくのだ。 スケジュールの調整で最後の一ヶ月は、だいぶ件数が減る。 そんな中、一ヶ月限定で、新規のお客が私の担当となった。 一ヶ月限定という事は、4~5回で終わりとなるのだが、なかなか珍しいお客だ。 とは言え、私も丁度、仕事を終える時期なので、丁度いいといえば丁度いい。 そして、私はその新規のお客の家へと訪れた。 【ピンポーン】 「どうぞ」 【ガチャ】 「こんばんは、【高城(たかじょう)】様のお宅で間違いございませんでしょうか?」 「はい」 そして、峰岸さんとお客の高城さんの新規契約の話が暫く交わされていた。 その間、私は少し扉から離れた所で、隠れるように待機している。 隠れる必要はないのだが、一応、こちらに気を取られて、契約内容の確認が疎かにならないための措置だ。 「それでは、また40分後に伺います」 そう言って峰岸さんが立ち位置を外した所で、私が扉の前へと現れる。 「にゃあっ!」 愛想を振りまく様に、挨拶をした。 「か…可愛い…」 すると高城さんが、そんな私を見て可愛いと言葉を漏らした。 (え!?…な…なんか照れる…) そう、最初はみんな、面食らってそういう感想を口にする人はいないのだ。 仮にそう思っていたとしても、こんなにストレートにそれを口にする男性はいない。 なにやら、意外な初めての経験に少し照れてしまった。 「どうぞ…中へ…」 そう言って高城さんは私を家の中へと招き入れてくれた。 なんとも小綺麗な、そして知的感のある部屋だった。 パソコンが数台置いてある事から、そこそこパソコンにも詳しそうな雰囲気だ。 そして、改めて高城さんの方に目を向けた。 「こんばんは。ゴメンね、俺はこういう事に疎くて、あまり上手なエスコートが出来なくて」 そう言った青年は、決して凄いイケメンという訳ではないが、整った顔立ちで、第一印象がとても優しい雰囲気を醸し出す男性だった。 「にゃ…にゃあっ!!」 私はそんな事ないよ、という意味で首を横に振った。 「そうかい?ホント…どうしていいか分からなくてさ…」 そう言いながら、頭を掻く高城さん。 (それなら…こっちがリードしないとね…) なにやら、その優しい雰囲気と誠実そうな彼に、張り切り始めた私がいた。 「にゃぁ…」 私はそっと高城さんの手を取り、ベッドの方へと引っ張って行った。 そしてスッと誘導するように、ベッドの隅に腰を降ろした。 「にゃあっ!!」 「ここに座ればいいんだね」 「にゃぁ」 そうして私は高城さんを隣に座らせた。 「えっと…君は…ん!?君の名前とかはあるのかい?」 「にゃにゃぁ…」 私はその質問に首を横に振った。 そう言われてみると、これだけ長くこの仕事をやってきたが、名前の事など考えた事も無かった。 「そっか…言葉は喋れないから…俺がつけてもいいかな?」 「にゃぁっ!!」 私は大げさに首を大きく縦に振った。 (名前か…そうか…私の名前ね…) 自らの名前【北崎 心】は人間としての名前であって、アニマルとしては認知されてはいけない存在。 つまり、アニマルとしての私の名前は、今、初めて付けられるのだ。 私は少し、期待を抱きながら、高城さんの言葉を待った。 「そうだな…君の濃い茶色の感じ…う~ん…そうだ…飲み物のココアのような色だから…【ココ】でどう??」 (えっ!?) その高城さんの言葉に私は、少しビクッと体を反応させてしまった。 それは少々の驚きでもあった。 何故なら、今、高城さんが呼んだ名前は…【ココ】。 そう【ココロ】という私の本名を呼ばれた感じがしたからである。 「どうかな?」 「にゃ…にゃあっ!!」 私は動揺を押し殺し、ウンウンと嬉しそうに大きく頷いた。 (あ~びっくりした…ホントに名前を呼ばれたかと思った…) あまりの偶然に意表を突かれ、心臓の鼓動が高まる。 (で…でも…【ココ】って…ちょっと可愛いかも…) 私は、高城さんがつけてくれた【ココ】という名前に満足感を得た。 自分に…アニマルである自分に、名前を付けてくれたという高城さんの優しさ。 そして、その付けてくれた名前が、私という【人間】のアイデンティティーとリンクしたので、その呼び名に愛着も湧いた。 決して、高城さんが私の本名を知っているはずは無い。 つまり、それは本当の偶然。 高城さんに、そこに含めた裏は無い。 今まで相手してきたお客は、あくまで私の事を【ヒーリングアニマル】として接してきた。 しかし、高城さんは、私を固有の存在として見てくれるのだ。 何かとても嬉しい気分になった。 「気に入ってもらえたようだね…。それじゃ、君はこれから【ココ】って呼ばしてもらうよ」 「にゃぁっ!!」 なんだろうか…この不思議な満足感は…。 今までに体験したことの無い、不思議な感覚 もう私のアニマルとしての仕事は終わろうとしているが、この感覚に包まれたのは初めての事である。 (さてと…【ココ】がリードしないとね♪) 自分では気が付いていなかったが、いつになくやる気の自分がいた。 「にゃあぁ…」 私は甘えるように、高城さんの体に手を回し、ゆっくりと抱きついた。 「あっ…うん…モフモフして気持ちがいいね…」 高城さんの手がゆっくりと私の背中のほうに回ってきた。 その手は優しさが伝わってくるように、私の背中を撫でる。 (あっ…うんっ…この触り方…いい…) その手の撫で方…それは、全く厭らしさを感じさせず、優しさに満ちたものだった。 「にゃぁぁ…」 なんだかポワッとした気持ちになり、つい気の抜けた声が漏れてしまう。 「ココ…ココはなんていい触り心地なんだ…」 そう言いながら、私を抱きしめてくれる高城さん。 なんだか、この人に包みこまれているような感覚になる。 今までに味わった事のない包容力。 その包容力に少し浸ってしまう自分がいる。 (んあぁ…気持ちが…いい…) 今までに抱きついて来たお客は沢山いたが、それとはまるで違う感覚だ。 すると、高城さんの手が下の方に降りていき、私のお尻に到達した。 「にゃっ!」 気持ちが高ぶりかけていた私は、少しお尻に手が触れただけで、声を出して、体をビクッとさせてしまった。 「ゴ…ゴメンッ!あまりにも触り心地がよくて、撫でてたら…偶然当たっちゃったんだ。すまない…」 すぐにお尻に当たった手を外し、真剣に私に謝ってくる高城さん。 その謝る様子から、本当に偶然当たってしまった事が見て取れる。 こういうサービスだというのに、お尻に手が当たっただけで謝って来る高城さんの真面目さが伝わってくる。 (ホ…ホントに真面目なんだな…) 顔を見上げると、高城さんは私から目線を逸らし、バツの悪そうな雰囲気を醸し出していた。 「にゃぁ…」 私は背中に回している高城さんの手を取り、その手を自らのお尻の方へと誘導していった。 「ちょ…ちょっと…そんな…それはまずいよ…」 その行為にうろたえる高城さん。 「にゃぁ」 私は高城さんを顔を見つめ、声をだしながら大きく頷いた。 「い…いいのかい…?ココと僕は、今、初めて会ったばかりだというのに…。そんな…」 高城さんは、このサービスの内容を知っていて契約したわけだ。 しかし、高城さんは私の事を、ヒーリングアニマルという【風俗の中身の女】ではなく、一人の【普通の中身の女の子】として見てくれているのだ。 こんな人は、今までに会った事はなかった。 大概の男性は、私の事を【抜いてくれる風俗の女】として接して来た。 それはそうだろう。 その目的で、このサービスを契約したのだから、それが目的なのだ。 だとすれば、着ぐるみの中の女の子を、そういう目で見る方が正しい。 高城さんのような考えの人の方が、むしろおかしいというくらいだ。 しかし、その高城さんのスタンスが、私の心に突き刺さる。 そんな目で見てくれる事が嬉しくてしょうがなく、私のテンションが上がっていった。 「にゃぁぁ…」 私は再び大きく頷き、高城さんの手を動かしながら、自らのお尻を触らせた。 「ココがいいというなら…僕はこの手触りの虜になるよ…」 すると、高城さんの手がゆっくりと私のお尻を撫で始めた。 (ぁ…うんっ…んあぁぁ…) その優しい手の動き…それは、私に快感という感覚をもたらす。 着ぐるみの上からお尻を撫でられているだけなのに、とてつもない気持ちよさが伝わってくる。快感という言葉で表現できるものではない、満足感や嬉しさもそこに重なってくるのだ。 「にゃ…にゃぁん…ぁ…にゃぁ…」 私はその快感を表現するように、体を悶えさせる。 「ココの感触…毛の気持ちよさ…ココの柔らかさも…なんていいんだ…」 (んあっ…そんな…うん…言葉にされると…あん…) 高城さんの言う、【柔らかさ】それは、中身の私のお尻の事…。 着ぐるみではなく、その中に隠された私自身の感触の事なのだ。 たったここまで触れられただけで、私の陰部はグショグショに濡れ始めていた。 初めての感覚。 こんな…少し触られただけで、私の心と体が、恐ろしい程に高ぶらされたのだ。 感情の高ぶった私は、体全体を高城さんに擦り付ける。 「にゃっ…にゃぁ…ぁん…にゃぁ…」 すると、私の胸が高城さんに押し付けられた形になる。 そして、そのまま擦り付けた事で、着ぐるみの下の私の胸と乳首が高城さんに触れ刺激される。 「ココ…ココの胸も柔らかくて…気持ちがいいよ…」 そう言われ、更に気持ちが高ぶる私。 その動きは次第に早くなって行く。 抱きつきながら、高城さんに身を擦り付け続ける。 (んあぁ…あん…ぁっ…た…高城さん…ぁんっ…気持ち…いい…) 「うん…ココも気持ちよくなってくれてるのかい?」 「にゃ…にゃあぁぁ…」 優しく言葉をかけてくれる高城さん。 (んあっ…も…もう…我慢できない…) そして、気持ちが高ぶった私は、高城さんの手を取り、自らの陰部へと誘導した。 「ココ…それはまずくないかい?」 「んにゃあっ!!」 私の陰部付近まで手が伸びた高城さんを、強く抱きしめた。 言葉の発する事の出来ない私の精一杯の行動。 【お願い…触って…】という精一杯の表現。 そして、その表現は高城さんに届いたのだった。 「分かった…ココ…気持ちよくなりたいんだね」 「んにゃぁぁ…」 そう言った高城さんの手は、またも優しく、私の陰部を擦り始めた。 「んにゃぅっ!!!」 その刺激に、体がビクンと仰け反る。 薄い生地とはいえ着ぐるみに覆われ、さらにその中には全身タイツを着ている。 にも関わらず、その高城さんの陰部を擦る感触は、私の体へと確実に伝わって来るのだ。 今までに相手をして来たお客とは、訳が違うくらいの刺激。 決して、激しく粗暴な感じはない。 本当に優しさの滲み出た、滑らかな動き。 しかし、激しく擦られた時よりも、数倍の快感を私にもたらす。 「んにゃっ!にゃ…ぁ…にゃぅっ!…にゃ…」 (んあぁぁっ!!ぁんっ…あぅっ!…ぁ…な…何…んぅ…この…この感覚ぅぅぅ!!) その手の動きに、私の体は激しく悶える。 今までの接触で既に火照りきった体を、恐ろしい快感で包み込む。 「にゃっ!にゃっ!にゃぅぅ!」 (ぁんっ!ぃ…いやっ!んぅっ!す…凄いぃぃ!ダメ…これ…ダメぇぇぇ!!) 高城さんはそれでも、激しく動かさず、ゆっくりと優しく手を動かし続けた。 優しくも確実に私のクリトリス付近を捉えるその指先。 その刺激は、私を行くところまで追い込んでいった。 「にゃっ!んにゃっ!にゃにゃ!にゃ…にゃ…にゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 (あんぅっ!ダメェッ!も…もう…ダメ…耐え…耐えられないぃぃ…イク…イク…イっちゃうぅゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!) 私は大きく体を仰け反らせ、ビクンとした動きをして、一瞬、その動きを止めた。 (…んぁ…ぁ…ぁ…) そうして、私はゆっくりと高城さんの体の上へと崩れ落ちて行った。 今までにない、壮絶な絶頂。 全く演技でもなければ、無理矢理、自らを鼓舞してそれに至った訳でもない。 本当に迎えた絶頂。 もうすぐ終わろうとしているこの仕事を始めてから、初の経験だった。 まるで体に力が入らない。 「はぁっ!はぁっ!はぁっ!」 呼吸が大きく乱れる。 着ぐるみのマスクを被っているので、そんなに自由に呼吸が出来る訳ではない。 乱れた呼吸…マスクの穴から、出来る限りの酸素を取り込もうとする。 「そうだよね…苦しいのは当たり前か…。ただでさえ呼吸がしやすい訳ではないだろうし。落ち着いて呼吸して…」 高城さんのその言葉が胸に刺さり込んでくる。 (ゆっくり…ゆっくり…ゆっくり…) 呼吸を整えるため、大きく呼吸をする。 暫くして、ようやく呼吸が落ち着き始めた。 しかし、体は未だ、うまく力が入らない。 絶頂を迎え、こんな体の状況になったのは初めてだ。 (うぅ…ぅ…凄い…こんなの…こんなの…初めて…) 動けない私を高城さんはずっと抱きしめていてくれる。 (ぁ…だめ…私が…イって…満足してちゃ…私の仕事は…高城さんを満足させる事…だから…) 力らが入らない体の尻を叩き、必死に体を起き上がらせる。 そして、私は高城さんの性器の所を手で擦りながら、ズボンを開けて欲しいというアピールをした。 「ん?性器を出せって事??」 「…にゃぁ…」 私は、まだ力のない声でその言葉を肯定する。 「うん…今日は大丈夫だよ。ココもだいぶきてるみたいだし…」 「にゃっ!にゃぁぁぁ…」 (そ…それはダメ…) 私は何とか頭を横に振り、そんな事はないという仕草をした。 「ううん…いいんだ。今日は、満足そうなココが見れたから。僕もそれで満足さ」 「にゃぁぁぁ」 それでは職務怠慢になってしまう。 満足させる為に来たアニマルが、自ら満足して終わるなどという事があってはならない。 「いや…ホントだよ。ココが感じている姿…たまらなく可愛かった。それに、かなり体きてるでしょ?」 「にゃにゃっ!!」 私がそれを否定しようとした、その時だった。 「んにゃぁっ!!」 高城さんの手が、私の胸を揉んできたのだった。 「ほら…凄い反応…」 そう言いながら、私の胸を優しく揉み続ける高城さん。 「にゃっ!にゃぁっ!んにゃぁぁぁ!!」 (あんっ!んぅ…イった…ばっかは…あんっ!た…高城さんの…意地悪ぅぅぅ!!) 「うん…やっぱりココの感じる姿…可愛いよ…」 「にゃぁぁぁ…」 完全な敗北。 結局、私はその初めての感覚に魅了され、本日の職務を果たす事が出来なかった。 そして、帰りの時間を迎えた。 「じゃあね…ココ、また来週。気にする事はないよ、来週は是非、お願いするから。それに僕は、今日もかなりの満足感を得ているからさ」 「にゃぁぁぁ…」 そして、私は高城さんの家を後にし、帰途へとついた。 …初めての出来事だった…。 私は自らが望むがまま、絶頂を迎えた…。 本当に演技でもなんでも無い…裸の心で快感を感じ、絶頂へと向かって行ったのだ。 (なんだろ…。…高城さん…なんか不思議な空気を持った人だな…) ・・・ そうして、私はまた翌週、高城さんの元へと向かうのだった。 そして、二回目にはきちんと職務を全うし、高城さんの性器を口で抜かせてもらえた。 そう…その時点で、私は自らが、高城さんの性器を咥えたいと思い始めていたのだった。 そして、高城さんと触れ合うたびに、どんどんと心が近づいて行き、私は気が付く。 高城さんに惚れていると…。 しかし、それはヒーリングアニマルとしてのご法度。 これはアニマルとしての仕事であり、相手はお客なのだ。 お客相手に恋愛感情を持ってはいけない。 これは当たり前の事実。 そして、さらに言うならば、私と高城さんの関係は、もともと数回しかない予定。 すぐに【さよなら】となってしまう。 決して抱いてはいけない気持ちなのだった。 ・・・ そして、私の最後の勤務日を迎えた。 因果なもので、最終日の相手は高城さんだったのだ。 いつも通り、高城さんと触れ合う。 私は今日で、ヒーリングアニマルの仕事を終える。 私が仕事を終えるのとは関係ないが、高城さんも短期契約なので、今日で終わりだ。 違う意味だが、お互い最後の日を迎えているのだ。 そして、私は散々可愛がられ、そして、高城さんの性器を満足させる。 時間が過ぎ、とうとう帰る時間となった。 「ココ…今日で終わりだね…」 「にゃぁ…」 (そう…終わり…高城さんとの関係もここで終わり…) 「ココには、俺の専属ペットになってもらいたいくらいだよ…」 「にゃ…にゃぁ…」 (な…なんか…プロポーズされたみたいで…照れるな…) 「な~んて…わがまま言ってもしょうがない…。契約は契約、これで終わりだ。僕も明日から気持ちを割り切って、仕事に専念するよ」 「にゃぁぁ…」 「それじゃあ…また…きっとどこかで会える…」 「にゃぁぁ!!!」 私は高城さんに飛びつき、力いっぱい抱きしめた。 「にゃぁぁぁ…」 「可愛いな…ココは…。よしよし…」 そう言って頭を撫でてくれる高城さん。 この優しさが今日で終わりと思うと、とても切ない思いが込み上げてきた。 「さて…お迎えを待たせちゃいけないから…またね…ココ」 「にゃ…にゃぁ…」 私は高城さんから身を離し、玄関の方へと向かって行った。 (さようなら…高城さん…さようなら………) 【ガチャ】 玄関の扉が閉まり、全てに終わりを告げた。 そうして、私のヒーリングアニマル生活が終焉を迎えた。 最後のお客が高城さんで良かった。 少し酷い目に合わされたお客もいた。 心のない性欲処理で、何か心が乾いていってしまっているような気がしていた。 しかし、最後のお客…高城さんの相手をする時は、心が踊っていた。 私の一方的な感情だが、確かに私は高城さんとの行為が嬉しくてしょうがなかった。 別れが訪れるのは分かっていた事だけど、それでも、たった5回の高城さんとの行為の時、私は確実に充実していた。 心も体も、何もかもが満たされていた。 これで終わりだけど、最後にこの気持ちで終われたのだから、私としては、とても気分がいい。 本当に最後の相手が、高城さんで良かった……。 ・・・ ヒーリングアニマルの仕事を終え、大学を卒業した私は、晴れて社会人として働き始めるのだった。 「さ~て!!今日から社会人!頑張ろっと!!」 私は今、入社式の最中。 緊張の面持ちで、ホールの椅子に座っていた。 「さて、それではここで、新入社員の皆様に社長から一言、挨拶がございます。社長、お願いします」 (そういえば…この会社の社長って…名前だけしか知らないな…会社案内にもHPにも載ってなかったかし…) すると、舞台袖から社長がゆっくりと登場した。 (え!?) その姿に私は驚きを隠せなかった。 その恰好はとてもラフで、スーツとかではなく普段着という装い。 しかし、驚いたのはそこではなかった。 (た…高城さん…!?) そう、目の前の壇上にいるのは、あの最後のお客、高城さん、その人だったのだ。 「え~…っと…。僕の名前は、【相葉 洋平(あいば ようへい)】です。一応、この会社の代表取締役をしていますが、見ての通り若輩者です」 (え!?あ…相葉…た…高城さんじゃないの…!?) 今、壇上の男性は、相葉と名乗った。 しかし見た目は、どこからどう見ても高城さん。 私が見間違えるはずはないと思うが、本人が公の場でそういうのだから、私が間違っているのだろう。 (に…似過ぎ…だよ…) 「こんなに若い僕が立ち上げたこの会社。だからこそ、この会社は自由そのもの。年齢も性別も関係なく、力のあるものは評価される、そんな会社です。だから、僕の事も敬ってくれなくて結構。僕なんかただの飾りで、社員、一人一人が主役としてやっていってもらえればいいです。これから…自由に…精一杯…限界を決めずに…頑張ってください。以上です」 そうして、社長の挨拶が終わり、入社式も終わりを迎えた。 社長と高城さんとの、見た目のそっくりさに驚かされた入社式となった。 (ふぅぅ…他人の空似とは…そんな事もあるんだな…) まだ、胸のドキドキ感が納まらない。 一度、終わりを迎えた高城さんの記憶が、また再び呼び起されていた。 薄れかけていた高城さんへの思い…それが、社長の風貌と雰囲気に掘り起こされる。 (ふぅ…高城さん…は…もういないんだよね…。社長は社長…変な思いは重ねちゃだめ…) そんな思いを抱きながら、ホールの外を歩いていた。 すると、後ろから突然、声を掛けられた。 「君!君~~!!」 その誰かを呼ぶ声に、辺りを見回す。 しかし、私の周りにその声に反応する人は誰もいない。 「そこの新入社員の君~~~!!」 新入社員というキーワードから、呼ばれているのが自分という選択肢が浮上する。 (え!?…わ…私!?…の事…!?) 自分が呼ばれたと思って、私は振り返り、その声がする方に視線を向けた。 (え!?) 振り向くと、そこには走って息を切らした社長の姿がそこにあった。 「はぁ…はぁ…はぁ…。ようやく止まってくれた…」 「しゃ…社長…もしかして…呼ばれたの…わ…私ですか…?」 突然の事に、私の心臓がバクバクと高鳴ってしまう。 社長に呼び止められるという事は、何か私にまずいことがあったのかもしれない。 その不安もさながら、高城さんと瓜二つな社長に声を掛けられるという、不思議な緊張もそこにあったのだ。 すると、社長は突然、私に驚きの発言をした。 「うん。き…君の名前…ココ…」 「え!?」 その瞬間、時が止まった気がした。 今、確かに社長は私の事をココと呼んだ。 それは、高城さんと私しか知らない事実。 しかも、高城さんは着ぐるみの中身である私を見た事はないはず。 だとしたら、着ぐるみを着ていない私を見て、【ココ】という認識はない。 驚きと緊張で、心臓が爆発しそうなぐらい大きく鼓動する。 「ココ…心さん…えっと…北崎心さんだよね?」 「そ…そうですが…」 あからさまな動揺を見せつつも、そう返答する。 (ふ…ふぅぅぅ…なんだ…私の早とちりだった…) 社長は、まだセリフの途中であったのだ。 それを勘違いして、独りで焦る自分。 ホッとしたのは束の間、社長がすぐに予想外の質問をしてきた。 「あのさ…北崎さんって…どっかで僕と会った事ない??」 なんとも、ピュアな眼差しで、私にそう問い掛けてくる社長。 しかし、社長は相葉さんで高城さんではない。 他人の空似なのだ。 (社長に似た人は…会った事はあるけど…社長とは初めて会った訳で…) ヒーリングアニマルの素性は、他人に話してはいけないのがルール。 だとすれば、似た人に【会った事がある】とは説明すら出来ない。 「えっ…と…それは…」 私がそれを否定しようとしたその時だった。 「ちょ…ちょっと待ってくださいよ~~~!!高城さん!!」 部下の一人と思われる人が必死に追いかけて来た。 (え!?ちょ…ちょっと…待って…い…いま…た…高城さんって…) 部下の男性は、今、確かに社長の事を【高城さん】と呼んだ。 「こらこら、お前、もともと知り合いだからって、会社では相葉ってよんでくれよな。本名の高城は仕事上は使っていないんだから…」 (え!?本名…しゃ…社長の本名は…高城さん!!!!) 「す…すいません…以後、気を付けます…」 私は再び社長の顔に視線を向けた。 (それじゃ…やっぱり…やっぱり…高城さん…なんだ…) 「あっ!ゴメン、北崎さん。質問の途中だったね。やっぱり、僕とは会った事ないかな?」 春の温かい風が吹き抜けた。 「あります…どことは言えませんが…あります…」 「やっぱりそうだよね…。僕も、覚えていないんだけど、なんかそんな気がして…。この後、時間ある?ちょっと、カフェでも行かない??」 「喜んで…」 「あっ!相葉さん、また勝手にスケジュール変えちゃって!?」 「いいの、いいの、とっても大事な事な気がするから」 その言葉を聞いた私は、俯きながら独り言を言った。 「うん…とっても大事な…」 また春の風が吹き抜けていった。 ヒーリングアニマルの事を、私から口外することは出来ない。 つまり、これはある意味、ゼロからのスタート。 ここから積み上げよう…【ココ】ではなく、【心】として…。 ---------------------------END------------------------------------------