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無人島のフロッグマン Side Story ~ 朱音 Side ~ 【前編】

私の名前は【四ノ宮 朱音(しのみや あかね)】 ごくごく平凡な女の子である。 大学を卒業し、なんとなく就職。 そんな私のある休みの日の事であった。 私は一人で、町の小さな喫茶店に訪れていた。 取り分けやることもなく、喫茶店で一人読書でもしようかと、この店に入ったのである。 初めて訪れた店だが、雰囲気もよく落ち着いている。 昼食は終わってる時間だからか、店内には私一人しか客はいなかった。 「お客さん、初めてですかね?」 感じのいい初老のマスターが私に声を掛けてきた。 「ええ、たまたま通り掛かったのですが、雰囲気がよさそうだったので」 「そうですか、恥ずかしながら、この店はそんなに混むこともないので、ごゆっくりどうぞ…」 「すいません、ありがとうございます」 私は運ばれてきたコーヒーに軽く口をつけた。 (あっ…とってもいい香りがする…) こだわりが感じられる一杯のコーヒー。 その香りと、店の雰囲気に、私は満足感を膨らませた。 そして、持ってきた読み掛けの小説を手に取り、その続きを読み始めた。 コーヒーを片手に落ち着いて小説を読む。 なんとも至福のひと時である。 すると、暫くして突然の眠気に襲われた。 (ん…なんだろ…ね…眠い…) 普段、小説を読んでいるときに眠くなることはあまり無い。 にも関わらず、訪れる急激な眠気。 あっという間に、瞼が閉じ、開けることすら困難になり始めた。 (だ…だめ…だ…ね…眠い…) その眠気に耐えられなくなった私は、そのままテーブルに項垂れるように、眠りについてしまった。 ・・・ (ん…あれ…私…寝ちゃってた…) 再び目を覚ますと、辺りが薄暗くなっていた。 (ん?…何…この景色…) 目を覚ましてすぐは、辺りが薄暗くなっていたと感じたが、よくよく見ると、少し表現が違っていた。 確かに私の周りは暗くなっている。 しかし、私から見えるのは、目線の先にある小窓のような穴。 その穴からだけ、光が差し込んでくるのが見えるのだ。 (な…なに…??) 謎の状況に首を動かし、周りの状況を確認しようとした。 (え!?く…首が…動かない…!?) 見回そうと首を動かそうにも、少々動くものの、ほぼ体と固定されている。 (え!?わ…私…もしかして、どこかに閉じ込められてる??) 動かない首、そして限られた視界、私は狭所に閉じ込められていると感じた。 しかし、その考えは直ぐに払しょくされた。 (あ!?あれ…手足は動く…) そう閉じ込められていると思い、藻掻こうとすると手足は自由に動いたのだった。 手足が自由に動く事で、私はとにかく体を起こしてみることにした。 (よいしょっと…) 起き上がりにくいが、とにかく起き上がる事が出来た。 この感じ…恐らく私の上半身が何かにくるまれているような感覚だ…。 そう…布団のようなものでくるまれているような…。 (いったい…なんなのよ…) 「うっぅぅ…うぅううぅ…」 (え!?あれ?言葉が喋れない!?) 【いったい…なんなのよ…】と喋ろうとしたが、漏れてきたのは呻き声だけだった。 そう言われてみれば、頭全体に少し圧迫感が感じられる。 私の頭部は何かを被せられ、顎の自由すら奪われているようだった。 (なにか被せられて…!?こ…呼吸は!?) 改めて自らの呼吸を確認してみる。 すると、口元にはホースのようなものが伸びていて、そこからかろうじて呼吸が可能だ。 幸いにも、頭部に被せられたものも、鼻の部分に穴が空いているらしく、鼻からの呼吸も出来る。 (ふぅ…とにかく…呼吸は出来そう…) 命の危険はなさそうな事に、少し安堵感が広がる。 そして落ち着いて、唯一確保できている視界から、いろいろなものを確認する。 やはり上半身は何かに覆われているらしく、首だけ動かす事は出来ない。 右を見たければ、体ごと右を向くしかないのだ。 しかし、この制限された上半身の割に、足には全く抵抗感がなく、そして腕は多少動きに制限はあるが比較的自由であった。 その視界である小窓から自らの手を見つめた。 (え!?な…何…この手!?) 私の目に映りこんだ、自らの手。 それは普段、私が知っている自分の手とはかけ離れたものであった。 表面は薄い緑色、そして指と指の間には水かきのようなものが。 そして、指先は少し丸みを帯びた球状に膨らんでいたのだ。 (こ…この…形…まるで…カエル…) あくまで私のイメージの中の話ではあるが、見た感じはカエルと表現するのが正しい形状であった。 その手を握ったり開いたりしてみる。 すると、そのカエルの手は、私が意図した通りに動く。 (じゃ…じゃぁ…この手は…ホントに私の手…なんだ…) あまりにも衝撃的過ぎて、理解が追いついていかない。 (あ…足は…!?) 体を大きく前に倒し、自らの足を見てみた。 するとそこには手と同じように緑色をした足があった。 指先は手と同様に水かき、そして指先は球状となっていた。 (あ…足も…どういうことなの…??) 私は自らの手で、自分の体を包み込んでいるものをペタペタと触ってみた。 手で触った感じは、とても柔らかくプニプニとしている感触。 そして手で触り、トレースしてみた限りでは、私の体を丸く覆っているような形状であった。 手や足は、厚手のもので覆われているというより、限りなく薄いゴムのようなもので覆われている感触だ。 そして不意に私の手が、自らの陰部に触れた。 「んんぅっ!!」 (ひゃぅっ!!!) 予想もしていなかった事が起きた。 全身を何かに包まれていると思っていた。 しかし、今私のゴムのような手が、陰部に当たった感触。 陰部から感じた、その感触は、直接その手が触れた感触だったのだ。 (う…うそ…) 私はその事実を確かめるかの如く、再び陰部を触ってみた。 「んっ!!」 (あぅっ…!!) やはり、手が直接当たっている感触だった。 つまり、全身を覆われていると思っていたのだが、私の陰部だけは外に曝されているという事になる。 (いやぁぁ…は…恥ずかしい…よぉ…) そう思って、辺りを見回してみても、そこを隠すようなものは何もない。 というより、周りに人気はないので、見られる事もない。 (うぅ…恥ずかしい…けど…とりあえずは誰もいないし…) 人がいない事に頭を割り切った私は、改めて周りを確認する。 小窓ののような場所から、外の景色が見える。 何かに覆われていて、視界はその小窓しかないので、見やすいとは言えないが、その小窓から見える景色は比較的クリアーである。 辺りを見回すと、どうやら私は洞窟の中のようなところにいるようだった。 そして、自らの状況に頭を巡らす。 (え…っと…私…あの喫茶店で小説を読んでて…突然眠くなったと思ったら…う~ん…) 記憶はそこまでしかない。 だとするとこれは夢なのだろうか…。 しかし、夢にしては、はっきりしすぎている気もする。 夢でないとすれば、私は何故、こんな所にいるのだろうか…。 未だに状況を受け入れられていない。 とにかく私は立ち上がり、少し周りの状況を確認しようとした。 (よいっしょ…っと…) 足の自由は利いているが、上半身を包み込むもののせいで、立ち上がるのにも労力を使う。 そして、私はその場を散策し始めた。 洞窟内は何故かうすら明るくなっており、洞窟内の景色ははっきりと認識できる。 すると、少し離れたところに、水が溜まっている場所を発見した。 そんなに大きくはないが、湧水がたまった水溜りだろうか…二畳程の水溜りがあった。 (もしかして…) その水溜りなら、私の姿が映るかもしれないと思った私は、状況把握のため、その水溜りに近づいた。 そして、その水溜りを覗き込んだ瞬間である。 「ううぅっ!!!」 (きゃぁぁぁぁ!!) その水溜りには、カエルの化け物がいたのである。 見た感じは、人間ほどはある大きさのカエルの化け物。 本能的に、殺されるという感覚を植え付けられた。 (いやぁっ!に…逃げないと…逃げないと!!) そのカエルの化け物に驚き、腰が抜けてしまい、思うように体が動かない。 私はただでさえ動きにくい体を必死に動かし、這うように、その水溜りから逃げようとした。 (逃げないと!逃げないと!!) 必死に這いつくばりながら、前に進む。 無様な恰好ではあるが、なんとか水溜りから距離を取り、洞窟の壁まで辿り着いた。 (誰か!誰か!助けてぇぇ!!) 必死の思いで、距離を取り、水溜りのほうに振り返る。 しかし、そこにはカエルの化け物の姿はなかった。 どうやら追って来てはいないらしい。 (こ…来ないの…) 追って来ていない事に少し、ホッとしてしまう。 (よ…よかった…でも…なんなの…あのカエルの化け物……んっ!?) 先ほどのカエルの化け物の姿が頭の中を過った瞬間、あることに気が付いた。 (カ…カエル…!?) そのキーワードに、私は自らの手足の事を思い出した。 再び、自らの手に目を向けた。 するとそこには、私が表現するに【カエルのような手】が存在していた。 (ま…まさか…そ…そんな…) 再び先にある水溜りに目を向けた。 落ち着いて見ると、その水溜りは、あからさまに浅く、とてもカエルの化け物が中にいるような深さはない。 (そ…そんな…まさか…) 私はゆっくりと起き上がり、再び、その水溜りの所へと戻っていった。 そしてもう一度、水溜りをゆっくりと覗き込む。 するとそこには、私の行動と同じように、ゆっくりと水面にカエルの化け物が姿を現した。 私は自らの右手を上げ、その姿を現したカエルの化け物に手を振ってみた。 するとそのカエルの化け物は、左手を私と同じように振り始める。 (え…じゃ…じゃぁ…こ…この化け物は…私だっていうの…) そう、そこに現れたカエルの化け物は、私自身の姿が映りこんだもの。 私は今、カエルの化け物になっているという事だった。 (いやぁぁぁぁ!!なんで?なんで?こんな姿に!?) 動揺して、自らの体を触り倒す。 しかし自らの姿の変貌に動揺しつつも、すぐに、違和感に気が付く。 (え!?いや…でも…この感じ…私…何かを着ている感じ…) 何故なら、私の上半身の皮膚に感じ取れるのは、スポンジのようなものが圧迫している感覚。 そして、手で触った体の表面には感覚が無い。 そこから導き出される結論。 私の姿が化け物に変わってしまったのではなく、【着ぐるみ】を着せられているという事。 (わ…私…カエルの化け物の着ぐるみの中にいる…って事だよね…) そう思えば、この視界の小窓も納得出来る。 どうやらカエルの化け物の目の部分と、鼻に当たる器官だろうか、その小さな穴の部分から、外が見えていると考えると、しっくり来る。 (でも…なんで…私が…カエルの化け物の着ぐるみを…) 自らの状況は把握した。 カエルの着ぐるみ…いやカエルの化け物…フロッグマンとでもいうような着ぐるみを着せられている。 中では頭全体に、何かを被せられ、顎の動きを制限され、言葉は奪われている。 呼吸は、鼻からの呼吸と、口に刺さりこんだホースのようなものから。 上半身はボテッとした厚手の着ぐるみ。 しかし、腰から下は、ほぼ私の足といっても過言ではないくらい、薄い素材に包まれている。 腕も二の腕から先は足と同じ。 そして、唯一、私が外界と繋がっているのは、曝された陰部。 そして、私はそんな状況で、見た事もない洞窟の中にいるのだった。 (なんで…こんなことに…) あまりにも突拍子もない事すぎて、理解が追いついていかない。 (と…とにかく…この着ぐるみを脱がないと…) そう思った私は、なんとか自分を包み込む着ぐるみを脱ぐ糸口を探す。 比較的、体の柔らかい私は、なんとか背中に手を回すことが出来た。 着ぐるみとは大抵、背中にファスナーがあり、そこから体を入れて着るもの。 それは、テレビ等で見て知っていた。 背中に回した手で、ファスナーを探す。 (よっ…大体…真ん中だよね…よっ…んっ…) 私は自らの背中をくまなく触り続けた。 (んっ…えっ…あれっ…うそ…な…何も…無い…) どれだけ触っても、私の背中にファスナーらしき凹凸が感じられないのだ。 むしろ表面は滑らかで、引っかかるものすら無い。 (えっ…じゃあ…この着ぐるみはどうやって着たの…?) その他の体中を調べたが、繋ぎ目らしきものも、まるで無い。 自分自身がどうやって、この着ぐるみの中に閉じ込められたか、想像すら出来なかった。 そして、一応、試しに近くにある岩肌の突起した部分に、着ぐるみの表面を擦りつけてみる。 (こ…これで…破けば…) 少し擦りつけた程度ではダメだと思い、激しく体を動かし、表面を破こうとした。 (はぁ…はぁ…はぁ…だ…ダメだ…全然…破れない…) しかし、どれだけ激しく擦り付けても、着ぐるみの表面には傷一つ付きはしなかった。 激しく動いた事で、無駄に息が上がる。 (はぁ…はぁ…はぁ…ちょっと…動いただけだけど…結構…苦しいな…) 呼吸は鼻と口のホースから出来るものの、鼻の穴の呼吸は、あくまで着ぐるみ内の空気。 着ぐるみ内の空気も多少は入れ替わりはあるものの、完全に新鮮なものとも言いにくい。 新鮮な空気は口のホースから取り入れるしかない。 少し運動をするだけで、私の呼吸はだいぶ荒立つのだった。 (はぁ…はぁ…ダメだ…この着ぐるみ…自力では脱げない…) それを悟った私は、着ぐるみを脱ぐことを諦め、状況にどう対処するかに頭を回す。 呼吸を整え、再び周りを観察し始めた。 すると、少し先の壁の所に湧水が出ているのを発見した。 その湧水が出てきている先に目を伸ばすと、流れ出た湧水が、小さな洗面台のような所に溜まっているのだった。 (あの水…飲めるかも…) 私はその溜まっている水の方へと足を向けた。 (でも…どうやって飲めば…私の口は、このホースみたいなものに塞がれて…ん!?) その瞬間に気が付いた事があった。 (このホース…外の空気が据えるってことは、外に繋がってるって事だよね…) そう思った私は、自らの着ぐるみを再び触り始めた。 ホースの出口のありそうな場所を考える。 体全体はのっぺりとしていて、その雰囲気があるところはない…。 とすれば、顔付近である事が考えられる。 そして、私は先ほど見た自分の姿を思い浮かべた。 (舌か…な?) 先ほど見たカエルの化け物の顔の中で、ホースの出口になりそうなのは、鼻の穴と舌くらい。 しかし鼻の穴は、私の視界の穴となっている。 という事は可能性が高いのは舌。 私はカエルの着ぐるみの舌の付近を触ってみた。 すると、舌先に何やらそれらしき感触が感じられた。 (これかな…?) 思い切って私はその部分を、自らの手で塞いでみた。 (うっ!!あっ…口から…息が出来ない!!) 口からの呼吸が塞がれた。 つまり、私の口に差し込まれたホースは、カエルの着ぐるみ舌と繋がっているという事だ。 (って事は、ここからなら水が飲めるかも…) そう思い、私は溜まった湧水に、カエルの舌を差し込んだ。 そして、一気にホースを吸ってみた。 【ゴクッ…ゴクッ…ゴクッ…】 案の定、水が私の喉へと到達してきたのだった。 (あぁ…おいしい…) 洞窟内は気温が安定しているとはいえ、着ぐるみを着ていればじんわりと汗はかく。 喉を潤してくれる水が、とてもおいしく感じる。 何より、状況が分からない以上、最低限、水は飲まないと死んでしまう。 喉を潤すことが出来て、ひと段落下した私は、とりあえずホッとして、腰をおろした。 こんな謎な状況で安堵してはいけないのだが、最低限の事が確保され、安心してしまう。 (とにかく…水は飲めるし…あとこれからどうしよう…) 状況は理解したが、これから何をしていいかが分からない。 そんな、やや途方に暮れつつある時に、訪れるものが訪れた。 (んっ…あ…ちょっと…おしっこしたくなってきた…) 自らの状況を考えると、陰部は曝されているので、排泄は出来る。 しかし、洞窟内のそこらへんでするわけにもいかない。 (どっか…いい場所は…) 私は立ち上がり、排尿をする場所を探す。 少し奥のほうにいくと、そこに湧水が小川のように流れている場所があった。 (あ…あそこなら…流れていくかも…) 私はその小川に向かい、その上に跨った。 天然の水洗便所のようなものだった。 しかし、このトイレの様に個室で区切られている訳ではない場所…しかも大自然の中、常に陰部を曝している状態での排尿…なにやら恥ずかしさと背徳感が漂ってくる。 (うぅ…恥ずかしい…でも…ここでするしか…) ここまで解放感があるところでの排尿は、なかなかない。 (うぅ…するしかない……だ…誰も見てないし…) 【ジョロジョジョロ…】 私は大自然の中、小川に排尿をした。 カエルの着ぐるみを着たまま、この解放感の広がる場所で、排尿をしてしまった。 なにやら、背徳感がこみあげてくる。 しかし、生理現象は止められない。 なんとかして、排尿するしかないのだった。 (ふぅ…終わった…) そして普段なら、ここでトイレットペーパーで拭くのだが、そんなものは到底ない。 (ど…どうしよ…) そしてすぐ傍に、一筋のか細い滝のようなものが落ちて来ている事に気がついた。 まるで、鹿威しの竹から流れ出てくるような、か細い水流。 (あ…あれで…洗おう…) 私は、その落水の下へと向かった。 (この水で洗うとすると…えっと…こうやって…) 私はあられもない姿ではあるが、その落ちてくる水に向かって、M字開脚のような体勢を とり、少しずつ、その水に近づいていった。 (うぅ…恥ずかしい…けど…) 人生で、こんな恰好をとったことなど、そうは無い。 M字開脚の状態で、前に進んでいるのだから…。 そして、ついに水が私の陰部を捉えた。 「んうっ!!」 落ちてくる水が、私の陰部に直撃し、変な声が漏れてしまう。 激しい水流ではなく、微妙に優しいその水の流れが、私の陰部に刺激を与えるのだった。 (んあっ…ぁ…) 陰部を洗い流した私は、再び水から離れる。 (だ…ダメだ…この刺激…あまり浴びちゃ…) そう思った私は、陰部がきれいになると、再び元いた場所へと戻っていった。 飲み水は確保出来た…。 排泄も可能…。 さてこれから何をすればいいのか…それを考えるしかなかった。 どうすればいいのか分からず、ただ時間を浪費していく…。 洞窟の中は時間が分からない。 私は何故、自分がこんな状況に陥ったのか…そんな解決もしない疑問を浮かべ続けていた。 水を飲み、排泄を済ます…。 それだけの繰り返しの時間が続く。 不思議と、空腹感はやってこない…。 そのうちに眠気がやってきて、眠ってしまう。 その繰り返しをして、時間がどのくらい経っただろうか…。 何日経ったかも分からない。 しかし、当たり前の事だが、私の状況に変りはなかった。 (ダメだ…何かしなくちゃ…) そう思った私は、暫くぶりに洞窟内の散策をし始めた。 今まで行ったことのない方向に進んでみた。 すると何回か曲がった所で、久しぶりの光景を目にした。 (そ…外だ…出口がある…) そこには洞窟の出入口がぽっかりと口を開けていた。 そこから見えるのは、太陽の日差しの差し込む、緑の木々達だった。 数日ぶりに見る、太陽の光。 実際、洞窟の中にどのくらい籠っていたかは分からない。 とにかく、その光がとても久しぶりに感じた。 私はその光に誘い出されるかのように、足を前に進めた。 洞窟内部から、その出入口に向かっていくと、一気に外気温が上がっていくのが感じられた。 季節は夏、当然、外の気温は高い。 いかに、洞窟内の温度が安定して涼しかったかが分かる。 (さすがに…暑いな…) しかし、そんな暑さも関係なく、私は久しぶりの太陽光の元へと進み出た。 太陽光の元と言っても、生い茂る木々の隙間をぬって来る木漏れ日。 壮絶な直射日光とは少し違った。 けれども、その光はどうしていいか分からず足を止めていた私に元気を与えてくれた。 (うん…そうだ…このままここにいても何もならない…とにかく現状打破の糸口を探さなきゃ!) そう思った私は、洞窟から外に出て、近くの森を散策し始めた。 飲み水も確保された洞窟に戻れなくなるといけないので、出来るだけ分かりやすい道を進む。 着ぐるみの視界も決して良くはない。 その小窓から見える景色を確実に忘れないよう、振り返りは景色を覚え、目印になるものを記憶していった。 小川や大きな木など、その景色を心に焼き付けながら進む。 (はぁ…はぁ…はぁ…暑い…な…) 暫く歩いていると、着ぐるみの内部がかなり暑くなってきている事が分かった。 季節は夏…。 手足は薄い素材に包まれているが、上半身はかなり厚く覆われている。 その状態で運動をすれば、当然、体温が上昇するのは道理。 まだ耐えられないという程ではないが、体中が熱くなり始めているのが分かった。 (はぁ…はぁ…はぁ…そろそろ戻ろうかな…) そう思った時、私の目の前に小さな池が現れた。 (池…だ…) 私はその池の方へと足を進め、畔から池の中を覗き込んだ。 (あ…やっぱり…これが今の私なの…) そこに移りこむカエルの化け物。 洞窟内で見た時よりも、太陽光により、より鮮明に映し出される。 (この格好で…人に会ったら…驚かれるだろうな…!?ん!?ちょ…ちょっと待って…人に会ったら困る!?私…股を曝け出しちゃってるし…) そう思った私は、自らの下半身が移りこむように、身を乗り出した。 すると、そこには曝け出してはいるものの、うすら緑から白っぽくなっている着ぐるみと、全く同色に塗られた私の陰部が確認できた。 (ん!?でも…これだけ塗られていれば、着ぐるみの一部だと思われるかも…。気が付かれなければいける…かも…) 期待的な憶測でしかないが、私はごまかしきれると判断した。 (とにかく、このまま池に入って見よう…少しは涼しくなるかも…) そう考えた私は、ゆっくりと足場を確かめながら、その池に足から入って行った。 (ひゃぅっ!?冷たっ!!…で…でも…気持ちいい…) 予想外に冷えた池の水。 しかし、それが、着ぐるみにより温められた私の体には丁度よく伝わってくる。 (ふぅぅ…助かった…) 下半身まで水に浸けると、体温が下がっていくのが感じられる。 暫くそこで体温を落ち着かせた私は、再び先に進むことを決意した。 そして、暫く歩いた所で草原に出た。 そこで、私の目に予想を覆す光景が飛び込んできた。 (え!?あ…あれ…まさか!?) 私の視線の先…そこには私と同じような【カエルの化け物】フロッグマンが歩いていたのだった。 そう水面に映った私とほぼ同じような姿。 しかし、私と唯一違う点がそこにあった。 それは、そのフロッグマンの股…。 そこには、私にはない、男性性器がぶら下がっていたのだ。 (あ…あれ…あの人も…私と同じで着ぐるみを着せられているって事だよね…。しかも…あの性器ってことは…男性…だよね…) 相手が男性であるとしても、彼も着ぐるみを着せられて脱げなくなっている同じ境遇の人だと考えれる。 だとすれば、協力してこの状況を打破できる可能性もある。 (よし…喋れないけど…あの人と協力してなんとかしよう…) そう思った私は、茂みから身を乗り出し、前方のフロッグマンの方へと進んでいった。 「うううぅぅぅ!!!」 私は呼びかけるように、そのフロッグマンのほうに声を出した。 するとその声にすぐに気が付いたフロッグマンが、私の方に振り向き、私に向かって歩き始めた。 (あっ…分かってくれたんだ…) そして、そのフロッグマンは、私のすぐ傍までやってきた。 「ううぅぅぅ!!」 (あなたも私と同じ境遇なんだよね??) 身振り手振りで、なんとか意志を伝えようとする。 (え…っと…協力して…なんとかこの状況を…) 私が必死でジェスチャーをするも、あまり反応のない、フロッグマン。 (う~ん…やっぱり…伝わらないのかな…) そう私が考え込んだ瞬間であった。 「うぅっ!」 (えっ!?) フロッグマンは私の腕に強く掴みかかってきたのである。 (な…何!?やめてっ!!) 私は、掴まれた手を振りほどこうと、思い切り手を振った。 しかし、その掴む手の力は、まさに男性…がっちりと私の手を掴んでいた。 「うううぅぅうっ!!」 (いやっ!放して!!) その次の瞬間であった。 「うううっ!!!」 もう片方の腕も取られたかと思うと、そのまま私はその場に倒されてしまったのである。 私の体の上に覆いかぶさるように伸し掛かるフロッグマン。 その瞬間、私の頭の中に一つのフレーズが過る。 【犯される】 「うううううぅぅっ!!」 (いやぁぁぁぁぁぁぁ!!!) 私の陰部は唯一着ぐるみに包まれておらず、外部に曝されている。 つまり、同じ状況であると考えられる、この男性のフロッグマンの股に飛び出た性器は、中身の人の生のものと想像できる。 そして、今のこの状況…コミュニケーションがとれずに対面して、すぐのこの行動。 とても私を助けてくれるような行動ではない。 だとすれば、この男性がやろうとしている事は一つ…。 私の陰部に、その曝け出した性器を挿入しようとしているのだ。 「ううぅぅっ!!!うううぅっ!ううぅうっ!」 (いやぁっ!やめてぇっ!!放してぇぇぇぇ!!) 私は犯されまいと必死に抵抗する。 しかし男性の力は強く、押さえつけられた両手は振りほどくことが出来ない。 (んあっ!!いやぁぁ!当たって…当たってるぅぅ!!) 押さえつけられながら、その男性の性器が私の陰部に擦り付けられているのが感じられる。 「うううぅっ!うぅうっ!!」 (やだぁぁっ!!放してぇぇ!!) 擦り付けられる男性の性器、しかし、着ぐるみの上半身が邪魔をしているのか、なかなか私の内部まで辿り着かない。 すると、なかなかうまく挿入できない男性が片手を放し、自らの性器の方へと持って行った。 その瞬間、私の片腕が自由になった。 (今だ!!) 片腕が自由になった私は、体を斜めにし、自由になった手と全身を使い、伸し掛かっていたフロッグマンを、私の上から振り落した。 性器を挿入することに必死になっていたフロッグマンは、不意を食らったようで、簡単にバランスを崩して、転がった。 しかし、すぐに起き上がりながら、私を掴もうとした。 (いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!) 私は必死の思いで、起き上がりかけたフロッグマンを、思いっきり蹴った。 すると、フロッグマンはよろめきながら、後ろへと倒れこんだ。 【ゴロゴロゴロ…ドサッ!】 倒れこんだフロッグマンは、偶然足を踏み外し、そこにあった坂道を転がり落ちた。 そして、転がり落ちたフロッグマンは、坂下で倒れたまま動きを失った。 (は…早く…逃げないと…) そう思った私は、必死に先ほど来た道を戻り始めた。 (なんだったの…あの人…。突然…私を襲ってきた…まったく躊躇がなかった…) 転がり落ちて動かなくなったので、死んでしまっていないかという不安はあったが、とにかく、逃げることが最優先と思い、私は進み続けた。 (だめだ…あの人…きっと私と同じ境遇じゃない…協力は出来ない…) そして、とにかくあの化け物から逃げるしかないと進んでいた私の視界の遠くに、希望が映りこんだ。 (あ!?あれ…も…もしかして…!!) 私の視界に映りこんだもの…。 それは、カエルの化け物ではない、【普通の人間】だったのだ。 (あ…あれは…普通の男性…やった…助けてもらえるかも…) すると、私の視界から、その男性が消え失せた。 遠くから視認できた人影。 その人影が木々に埋もれ、見失ってしまったのだ。 (た…確か…こっちのほうに…) 私はすがる思いで、その人影があった方に歩みを進めた。 (このあたりだった気がするけど…) キョロキョロと辺りを探せども、先ほどの人影が見当たらない。 (おかしいな…) そして、その人影が見つからないまま、辺りを探していると、後ろから聞きなれた音が響いてきた。 【カシャ】 (この音!?カメラ!?) 私はその音のした方向に目線を向けた。 するとそこには、先ほどの人影らしい人物の姿があった。 (やった!!助けてもらえる!!) 私は一目散に、その人影の方へ向かって進んでいった。 すると、その人影が、私の予想していない行動に出た。 「来るなら来い!俺は簡単にはやられない!」 その男性は手に、サバイバルナイフを持って、私にその刃先を向けながら、構えて来たのだ。 (え!?なんで!?この人も…私を襲おうとするの!?) 私をナイフで殺そうとしている男性。 しかし、先ほどの男性のセリフが頭に蘇る。 【来るなら来い…】 (そ…そうか…今の私はカエルの化け物…。この人が私を襲ってくるんじゃなくて、私がこの人を襲うと思っているのか…じゃ…じゃぁ…) 「ううぅぅっ!ううぅっ!!」 私は声を出しながら、両手をパーにして手の平を見せて、少し後ずさりをした。 (やめて!攻撃はしない!お願いだから…やめて…) 「ううぅっ!うううっっ!」 そして私は、差し出した手を何回か横に振り、その場に土下座をした。 (何もしません…助けて下さい!!!!) 「はっ?なんだ?どういう事だ??」 すると、その男性は私の行動に疑問を抱いた。 そしてそのまま、土下座をした私に攻撃もせずに、観察している。 (お願い…気が付いて…私は人間…化け物ではないんです!!) 一瞬ではあるが、沈黙のような状態が続いた。 そして私は、土下座をしたたまま、ゆっくりと上半身を起こした。 すると男性は、未だナイフを私に突きつけたままの姿勢ではあるが、不思議そうな目を私に向けていた。 「なんだ…降参ということか…」 その私の行動に、男性が口を開いた。 (わ…分かってもらえた!!) 私は、男性の言う【降参】という言葉を肯定するように、体を上下に動かし、ウンウンと頷くような素振りをした。 すると、その行動を見た男性が、目を丸くして、驚きの表情を見せていた。 (お願い…分かって…) 暫く考えていた男性が、再び口を開いた。 「おい…お前…ちょっと立ち上がってみろ…」 何故、その男性がそう命令したのか分からないが、とにかく私はその指示に従い、ゆっくりとその場に立ち上がった。 すると、男性はナイフを私に向けたまま、ジロジロと観察を続けた。 (お願い…分かって…私は人間です…着ぐるみを着せられた人間なんです…) ナイフを突きつけられ、警戒された状態。 私は、抵抗をする素振りを見せないように、ひたすらジッとしていた。 暫くして、男性の表情がハッとした雰囲気を見せた。 そして、その男性は、私が待ち望んでいた言葉を発したのだ。 「まさか…お前…人間なのか?き…着ぐるみを着た人間か??」 (そう!!そうです!!伝わった!!伝わったよぉぉぉぉ!!!) 「ううぅっ!ううぅっ!!うぅっ!!」 私は今までにない大きな呻き声をあげ、体を上下に動かし、ウンウンという仕草を見せた。 「まさか、ホントに俺の考えが合ってるとは…。本当に人間なんだな?」 「うぅっ!うぅっ!」 (分かってくれた!分かってくれた!!) 「な…なんで、こんな所で着ぐるみなんて着ているんだ?」 これはすごく当たり前に出てくる質問だ。 しかし、その質問の答えは、私にも分からない。 「うぅぅぅ…」 (私にも…分からないよぉ…) 「そうか…言葉は話せないか…!?そうだ!」 すると、男性は手に持っていたナイフをしまい、ノートとペンを取り出した。 「話せなくても、文字はかけるだろ」 (そうだ!言葉は喋られないけど、それなら伝えられる!) 私は神の救いの手をとるかの如く、ノートとペンを受け取った。 上半身の着ぐるみが多少邪魔ではあるが、手の指もなんとか動かせるので、綺麗な文字ではないが、なんとか字は書けそうだった。 ・・・ そして私は男性の質問に答え、今までの経緯を説明した。 逆に私からの質問は、彼の名前と何故ここにいるのかという事くらい。 名前は【桜井 宏武(さくらい ひろむ)】。 生物学者で、調査のためにここに来ているという事だった。 あと、彼から得た情報で、ここが無人島だという事も分かった。 ・・・ 「ふ~む…その話が本当だとすると、この島には、君と俺以外にも、人間がいて、そいつらは、同じ着ぐるみを着たまま、君を襲おうとしているという事になるな」 私の話を信じてくれる桜井さん…とても頼りになる存在に映る。 「ところで、君のことは朱音と呼んでいいかい?」 (はいっ!!いいです!じゃあ私は、桜井さんで…) 私は大きく頷き、勝手に桜井さんと呼ぶことにした。 といっても言葉は喋れないのだけれど…。 「よし、じゃあ朱音。君が数日いた洞窟というのは、ここから近いのか?」 「うぅ」 私は声を上げながら、大きく頷いた。 「じゃあ、一旦、そこに案内してくれ。何か手掛かりがあるかもしれない…。それに君を襲った奴らも、まだ近くにいるかもしれないから、とにかく身を隠そう」 (分かりました!!) 私は体で頷き、記憶をたどり、帰り道を進み始めた。 (はぁ…はぁ…はぁ…あ…暑いな…) ただ歩いているだけだが、今日は洞窟の外に出てから、かなり時間も経っているし、襲われて暴れたのもあり、体の中の熱が引いていかない。 この気温で、こんな着ぐるみに体を覆われているだけでも暑いのだ。 激しく体を動かした後の、この帰り道は、かなりきつく感じる。 しかし、せっかく協力してくれる人が現れたというのに、へばっている訳にはいかない。 (はぁ…はぁ…が…頑張らなきゃ…) 私は体を包み込む熱気と戦いながら、必死に足を進めて行った。 目印を辿り、森の中を暫く進むと、洞窟の入口が見えた。 「これが、その洞窟か…」 桜井さんはそう言い、私の方に目線を向けた。 「朱音、お前…暑いのか…?」 「うぅぅ…」 (はぁ…はぁ…暑い…です…) 弱々しい呻き声が出てしまう。 「そうか…そりゃそうだよな…急いで洞窟に入ろう」 洞窟内は涼しいだろうと予想する桜井さんの優しさが感じられる。 そして、私たちは足早に洞窟の中へと入って行った。 (あぁ…やっぱり…洞窟内は涼しい…生き返る…) 着ぐるみ内がかなりの高温となっていた私にとって、このひんやりとした空気は、助けの船であった。 すると桜井さんが洞窟内の私が目覚めた付近まで来て、驚きの声をあげた。 「な…なんで…この中…こんなに明るいんだ!?」 (そ…そうか…全然、疑問に思わなかった…確かに…なんで明るいんだろう…?) 自分一人でいる時は、そんな事実に気を配る事すら出来なかった。 よくよく考えれば、洞窟の入口付近は真っ暗なのに、中がこんなに明るいのはおかしい。 謎の着ぐるみに閉じ込められ、洞窟に放置されるといった、理解不能の状況に、当たり前の事実が気付けなくされていた。 「ちょっと待ってろよ」 すると、桜井さんが壁をよじ登り始めた。 そして、光源の所まで到達した桜井さんは、何かを見つけ、再び私の所まで降りてきた。 すると何かを考えている素振りの桜井さんが質問してきた。 「ん?ところで何日か、もう過ごしていると言ってたが、水や食料はどうしてるんだ?」 (え…っと、それは…。せ…説明するよ、見てもらったほうが早いか) 私は桜井さんの手を引き、私が水のみ場にしている所へ連れて行った。 【チョロチョロチョロ…】 「この水を?どうやって?」 (え…っとそれは…この舌で…) 私は水の器に近づいて行き、カエルの口から伸び出た、舌先を水の中に入れた。 「ま…まさか、そこから水が飲めるのか??」 (そうなんです) 私は大きく頷く。 すると桜井さんが、その水を手ですくい、一口、口に含んだ。 水を口に含んだ桜井さんは、何かが分かったような表情をして、私のほうに向き直した。 「朱音…この水はカルキが入っている。つまり、君に飲ませるように用意された水だ。しかも、この洞窟の明かりは、電球によるもの。そこから考えられる事は、この洞窟は君を生存させるために、誰かが用意したものという事だ」 (そ…そうなんですか!?) 「しかも、洞窟の作り上、この照明の明かりは、外から確認できない。ということは、夜でも見つかりにくく作られている。その事実を考える限り、君をこの状況に貶めた人間の意図では、ここは君の隠れ家的な設定なんだろうな…」 (そ…それで…入口は暗くなってるんだ…) 「で?水は分かったが、食料はどうしているんだ?」 (た…食べてないです…) 私は大きく体を横に振った。 「ま…まさか…水だけで生活していたのか!?」 私は大きく頷いた。 しかし不思議と空腹感が来ないのが謎な点だ。 すると、その事実に驚きを見せた桜井さんが、少し考えた素振りをして、再び私を見つめて来た。 私の体全体を観察し始める桜井さん。 「朱音…とにかく着ぐるみを脱がしてやりたいんだが、どうやって脱がせばいいか、全く分からない」 (え!?や…やっぱり…脱げないの…) 脱げるのではないかという期待が、少しあったので、その言葉に愕然とする。 「ふぅ…そんなにはっきりとがっかりとした表情されたら、なんとかして出してやらないとって、思っちゃうよな」 (え!?そ…そんなに私の表情が出てたの!?…は…恥ずかしいぃぃぃ…) なにやら桜井さんに見透かされている感じがして、そんな自分が恥ずかしく思えた。 すると桜井さんが先ほどのサバイバルナイフを手にとった。 「落ち着いて聞いてくれ。俺はこのナイフで、君の着ぐるみを切ってみようかと思う。ただ、ナイフで君の体を傷つける訳にはいかない。だから、俺の指示に従って欲しい」 (はい…分かりました…) 「君の足の部分は、ほぼ君の足で着ぐるみの厚さはない。しかし、体はかなり厚く覆われている。そこなら、ナイフが刺さっても君に刺さる事はないと思う」 (そ…そうですね…) 「人間の骨格から考えるに、お腹の膨らんでいる部分は着ぐるみだろう…そこにナイフを入れてみる。しかし、もしもの事もあるといけないので、横向きに寝転んでもらって、お腹に切れ目を入れる。いいかい?」 (た…確かにそれなら…大丈夫だ…) 私は大きく頷き、地面に寝転がり、横向きに寝そべった。 「よし、じゃあ、ナイフを入れてみる」 桜井さんの持ったナイフが、着ぐるみのお腹部分に添えられた。 (ちょっと…ドキドキするな…) 「切るぞ」 そう言って、桜井さんはナイフの刃を横に滑らせた。 「ん!?」 しかし、ナイフの刃は確実に着ぐるみの皮の上を滑ったのに、全く切れ目はつかなかった。 「おかしいな…もう少し力が必要か…」 そして、桜井さんが再びナイフを当て、先ほどよりも強く切った。 「な…何!?き…切れてない…」 驚くことに、桜井さんがかなり力を込めて切ったのにも関わらず、全く切れ目がつかないのだ。 「そんな馬鹿な…」 (な…なんで…切れないの…!?) 桜井さんが何度か力を込めて、ナイフを当て続けた。 しかし、一向に切れ目が付く気配がない。 「よし…」 すると桜井さんがナイフの先を突き立て、切るのではなく刺そうとした。 「フンッ!!」 体重を乗せ、一気にナイフを突き刺そうとする。 「な…なんで…!?」 ところが、ナイフの刃は一向に入ることなく、軽くへこむだけで、一切傷をつける事が出来ないのだ。 (そ…そんな…) それから桜井さんは試行錯誤し、あらゆる方法で切ろうと試みた。 しかし、何をどうしても、その着ぐるみの表面を傷つける事が出来ないのだ。 「だ…ダメだ…。この素材…どういう構造をしているんだ…。傷一つ付きやしない…」 (一体…なんなの…この着ぐるみ…ここまでやって傷がつかないなんて…) 「すまない…朱音。全く歯が立たない…どうやら、俺の持っている道具で、君を着ぐるみから脱がせるのは無理なようだ…。なんとか、この島から戻り、特別な器具でやってもらうしかないな…」 (そ…そうですよね…) 「すまんな…」 私のがっかりとした姿を感じ取った桜井さんが、謝りながら肩を落とす。 (いや!ちが…違うんです!桜井さんは必死にやってくれたし、私もまだ諦めてませんから!!) 私のために謝る、桜井さんの肩を叩いた。 「ん?」 「うぅぅうう!!」 呻き声をあげながら、私はサムズアップをした。 (大丈夫!私は頑張れますから!!ありがとうございます!!) それを見た桜井さんは笑顔を取り戻し、顔をあげた。 (よかった…) 「よし、着ぐるみを脱ぐのは諦めたとして、とにかく、この島から無事脱出する方法を考えないとな」 「うぅっ!」 (はいっ!!) 「さてと…まずは、俺のキャンプ道具を取りにいかないとな…」 桜井さんはそう言いながら考え事を始めた。 するとその時である。 (あっ…ちょっと…おしっこ…行きたくなっちゃった…どうしよ…) 桜井さんに言い出すのも恥ずかしいが、生理現象は止められない。 言い出せずに、足をモジモジと動かしてしまう。 すると、その行動を桜井さんが見逃さなかった。 「ん?どうした??」 (き…気づかれちゃった…) 「うぅ…」 私は足を内またにモジモジとしながら、手のひらを広げ、両手を前に突き出した。 それを見た桜井さんは、なんとなく理解した表情を見せ言った。 「分かった、分かった、しておいで」 (あ…やっぱり…分かったのか…) 分かって欲しいのか欲しくないのか、何とも言えない所だが、とりあえず理解してもらえたので、私は奥の排泄場へと向かって行った。 排泄をするための小川に辿り着いた私は、いつものように小川に跨り、尿をたした。 【チョロチョロチョロ…】 (ふぅぅ…すっきり…) そして放尿をし終えた私は、いつもの通り落ちてくる水で陰部を洗い流す。 なんどもしているが、この体勢に恥ずかしさを感じる。 そして落ちてくる水が私の陰部を捉えた。 「うんぅっ!!」 一瞬ではあるが、喘ぎ声のような呻き声が漏れてしまう。 (ふぅ…やっぱり…この水が当たる時は…感じちゃうな…) そして洗浄を終え、体を振り動かし、濡れた体の水を切った。 (すっきり…すっきり…!?あっ!?そうだった!?) おしっこをしたことで、思い出した事があった。 (そ…そうだ…私…陰部を曝け出した状態だった…) 今まで、それどころではなくすっかり忘れていた。 しかし、それに気が付いてしまい、一気に着ぐるみの中の私の顔が真っ赤になっていく。 (は…恥ずかしいぃぃ!!恥ずかしすぎる!!さ…桜井さんに…ずっと曝け出してたんだぁぁぁぁ!!!いやぁぁぁぁ!!) もう既に起こってしまった事実に、どうしようもない羞恥心が襲ってくる。 (うぅ…!?で…でも…色が…色が塗られてるし…桜井さんの反応を見ても…まだ気が付いてないかも…。ううん!きっと気がついてない!!そのまま隠し通そう!!) 私は前向きに考え、そのまま、その体裁を通す事にした。 どちらにしても、隠す事もできないのだが…。 そして、私は気持ちを入れ替えて、再び桜井さんのもとに戻った。 「お…お帰り。なんの問題もなかったかい?」 私はそれに答えるように大きく頷く。 桜井さんの様子を見ると、特に変わった気配はない。 (大丈夫!気が付かれてない!…よしっ!!) 「さ…さてと…状況を考えると、朱音は外に出るのはいろいろな意味で危険だ。オスの化け物がいるという事、そして何より外の気温は、そんな分厚い着ぐるみに包まれた君には暑すぎる。つまり、この涼しい洞窟内にいるのが最適という事になる。幸い、この洞窟は外からは見つけにくいようになってるしな…」 (た…確かに…) 「俺の迎えの船が三日後に来る事になっている。それまで、ここで身を潜め、その日に船着き場まで移動しよう。そしてこの島を脱出する。本土に戻れば、君を着ぐるみから脱がす手段はあるだろうし」 (三日後…それまでなんとか頑張れば…) 「俺は一旦、テントに戻り、必要な道具を取ってくる。それまで、この中でおとなしく待っていて欲しい」 私はその言葉に大きく頷いた。 (さ…桜井さんがいなくなるのは不安だけど…三日を乗り切るには必要な事…) 「よし、じゃあ行ってくる」 そうして桜井さんは一旦、自らのテントに戻り、あと数日洞窟で過ごせる装備を取ってきた。

無人島のフロッグマン Side Story ~ 朱音 Side ~  【前編】

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