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女性にモテない僕は犬おじさんにモテてしまった

こんにちはこんばんは、ぱぱを🐼🐾です。まずはお知らせが〜〜。


◆お知らせ

BOOTHで新たなアイテムが販売開始されました。去年の5月にあったけもケット13にて頒布した小説「春来たる」のPDF版です!よろしければ是非是非〜〜。表紙裏表紙データは印刷所の方に作ってもらって手元にない為(解像度の低い画像はあるけど)、本文のみとなっております。

(frame embed)


甘くて雄臭い、不思議な本🌸表紙デザインめっちゃ好きです。いつも印刷所の人がいい感じに仕上げてくださってる〜〜ありがてぇ〜〜。



以上、お知らせでした。


そして今回支援者にお届けするオカズは「犬おっさんにナンパされてしまったノンケ人間くん」のお話です。久しぶりに人間書いた気がする。犬ばっかり書いてたからな……。犬おっさんが久しぶりに書きたくなってしまいました。そう考えたら自分、熊も好きだし犬も好きなんですね……ははぁ……。今はワンコをわしゃわしゃしたい気持ちです。イヤがられるかもしれないけど😇そのエネルギーを使って書いてみましたので、甘くてスケベな話に仕上がりました。仕事が疲れていると、こういう甘いものが書きたくなるんですよね。あなた本当に甘い話が書けるんですか?? と思われがちですが、たま〜〜に書けます。この話の続きも考えていて、来月アップするかも……?? 続きは500円プラン寄りの雄臭めな仕上がりになるかもですが!!



そしてこの前の新春けもケットで頒布した熊出没注意ですが、無事に通販分も完売しました! 関西けもケットで頒布する為の数冊がまだ手元にあります故、紙媒体版で欲しい人はそれが最後のチャンスになると思います。本当に分厚くて、しかも初めての挿絵入り小説本で、色々トラブルもあったりしましたがたくさんの人が手に取ってくださってとても嬉しいです。特にヤバい話もたくさん収録されているので、皆様の性癖事情が非常に心配になりますが……。このFANBOXをご支援してくださっている人はたぶん、だいじょうぶ。たぶん。


これからも欲望のままに書いていきます🐻最近熊おっさんが熱すぎるので、熊ばかり書いてます。書けば書くほど好きになる。熊〜〜〜〜〜〜〜〜。みんなも熊を作ろう🐻🐻🐻🐻🐻‍❄️



次は500円プランの更新でお会いしましょう!ではでは👋。


※以下、本編。

****


 景色が暗く見えるのは、きっと気のせいではないだろう。天気予報は雲ひとつない快晴、それなのに僕の目の前で広がる光景は全てが曇って見える不思議。それもそうだ、あれだけイヤな出来事が一昨日ぐらいにあったばかりなのだからな。


 それは一通のメールから起きた出来事だった。こんな大事なこと、メールじゃなくて口頭で言えよって話なんだけど。女性猫獣人の同級生から来たというその文章は素っ気なさすぎて、今まで顔文字を多用しながらビックリマークもたくさん付けては感情の起伏を表現していた彼女と同一人物とは思えない。


 ……まぁ、その。最近ちょっと連絡を取り合わなかっただけで、振られた。……振られたんだよな、嘘、じゃないよな。未だにちょっと信じられないし、何なら彼女の一時的な気の迷いみたいなものだと思っていたのだけれど。昨日、目撃してしまったんだ。……そう、ついこの間まで僕の彼女だった三毛猫のアイツは、僕じゃ敵わないほどデカくてゴツすぎる熊のお兄さんと仲良く手を繋ぎながら街を出歩いていた。一瞬人違い、いや獣人違いかと思ったが……あれは間違いない。特徴的な後頭部の模様があって、それが彼女のものと一致したから。あの瞬間はもう、酒で酔ってもいないのに道端で吐きそうになったものだ。


 僕という彼氏を作っておきながら、別れてすぐに別の男へと乗り換える。あれを目撃した時はそれこそ怒りが爆発して頭がどうにかなってしまいそうだったけれど、将来的に浮気をされるという破滅が確約された未来があったのだったらまだある意味助かったのだとも言える……かな。いや、でも……。正直、ものすごく未練がある。はぁ……やっぱ人間の男ってモテねぇんかなぁ……。熊のようにデカくてゴツい獣人の方が、世間一般では男らしくてカッコいいとされている。何とも人間は生きづらい世の中になったものだ。



 そんなことを某都内にあるカフェのテラス席でコーヒー片手に考えていたのだが、周りがアホほどカップルだらけでうんざりする。僕、場違いだったかな。ブラックコーヒーをよく好むので、気晴らしにちょっといい店に入った途端にこれだ。ううむ、こんなに運が悪いのは厄年なのに厄祓いしに行かなかったのが原因、だったりして。あまりそういう類の話は信じたくはないんだがなぁ……。



「あー、ちょっと、そこのキミ」


「……はい?」


「そこ、空いてっか? 他に席、空いてなくてさぁ。たははは……」


「…………空いて、ますけど。え、座るつもりですか?」


「ダメか?」


「え…………あの、えと……いやその……」


 何の準備、というか誰かに話しかけられるという体勢なんか取っちゃいなかった僕は、テキトーに目の前の――犬獣人のおじさんに返事をする。アロハシャツの、しかもサングラスまでかけていて……何というか異質すぎるだろ。怪しい、ものすごく変な人。それでいてかなり図々しいおじさんだな……他に席が空いてなかったら家に帰って飲めばいいだろうに。こんな独り身の人間男に、結構歳くってそうな犬男が相席を持ち掛けてくるなんてあるか? 僕に何か詐欺の話でも持ちかけてきそうな雰囲気も少々ある。やだなぁ……なんでこんな厄介な人に絡まれなきゃいけないんだか。


「……わり、そうだな。正直に言うわ。ちょっとオレと、茶でも飲んで話そうぜ」


「…………えっ、僕?」


「そう、お前以外にいねぇよ。ずーっとなんかしんどそうな顔してる坊主、オレはお前に用があんだ。……暇、してんだろ?」


「う……」


 何も考えずに、おいしいコーヒーを飲みながらちょっと外の景色を眺めていただけ。そう、まさに暇。図星だったのを悟られてしまい、犬のおじさんはニシシシと笑いながら僕の前へ堂々と座り始める。……ヤベーのに絡まれたかな。こりゃ早いとこ退散した方が……。


「なーんでそんな顔してんだよ。今日は休日だろ? 最高の日じゃねぇか。明日も世間一般では休みだしな」


「……まぁ、そうですね」


「……こんなおっちゃんで良ければ話し相手になってやるよ。どうだ、坊主。お前よりは人生経験あるから、何か力になれると思うぜ」


 よくもまぁこんな名前も顔も知らない初対面の人間に対して話しかけられるなと感心する。僕だったらまず相席いいすか? なんて言わないよ。心の壁というヤツを平気で簡単にぶち壊してくるこの趣味の悪い犬おじさんに、どうしてか僕は自分の悩みを話してしまいそうになった。なんだろう、ちゃんと聞いてくれるかはわからないけど……僕が話してくれるのを楽しみに待っているような、そんな顔をしていたから。ほんのり尻尾がゆらゆら揺れているのは、きっと気分がいいからなのだろう。犬ってそういう生き物、だったよな確か。


「……実は、まぁ、振られたんすよね。彼女に」


「あ〜、そうかそうか。そのぐらいの歳ならよくあるこったなぁ、まぁ諦めるんだな」


「え゛っ、なんか慰めの言葉とかないんですか!」


「人も、獣人も、この世には星の数ほどいるんだからよ。別に一人ぐらい振られたっていいんじゃねーの」


「はぁ」


 すごくオトナな考え方ができる人だな。……そりゃあそうだ、僕より二回りぐらい長く生きてるみたいだし。もうちょっと僕も歳を取ればこんな風に視野を広げられるだろうか。


「……ま、オレにとっても丁度……いやなんでもねぇ。やっぱそうか、オンナに振られたか。災難だったなぁ」


「……ニコニコしてるところアレなんですけど、今の話に面白いところなんか一つもないですよ?」


「ニシシシ……いんや、オレにとっちゃ嬉しい知らせだ。ありがとよ、話してくれて。そりゃあ残念だったろう。じゃあよ……」


 何を勿体ぶっているのだろう。さっきから喜んだり、ニヤついたり、ちょっとキリッとしたキメ顔になったり、表情の変化が激しい。そんなスロットみたいに目まぐるしく変わる彼の表情は、最後少し真面目な顔になって――。




「オレとデートしようぜ」


「……はぁあああっ⁉︎」


「そんなに大きな声出すなよ。他の客に迷惑かかるだろ」


「いやっ、えっ、あの、僕、男‼︎」


「オレぁ男の方が好みだからな。なんも問題ねぇやい」


 その顔は、自信に満ち溢れたいい顔だったと思う。……多分。男好きのホモな犬獣人おじさんが僕をナンパしているという事実に耐えきれそうにもなく、一瞬視界がグラつくほど強いショックを受けた。……こんなおじさんと、僕が、デート? いやいやいやいや有り得ない、絶対にない。でも最近、よく世間でも話題に挙がるよな。男同士、女同士、同じ性別同士の結婚を認めろとか何とか。差別がなくなる日は僕が生きている間には絶対に無理だとわかっているけど、でもそういうちょっと異質な人たちを傷つける権利は僕にも他の誰にもない。……ちょっと驚いてしまったけれど、ここは丁重にお断りして……。


「ああ、ノンケなのは知ってるぜ。今聞いたからな」


「ノンケ?」


「あー、まぁ、普通にオンナが好きな男のことだ。……でも男の味もまだ知らねぇんだろ?」


「男の味って……うわ……生々しい……僕そういうのには興味ないんで」


「別にどっかホテル連れ込んで一発ヤろうって言ってるわけじゃねぇよ。デートだデート。なぁ、頼むよ。オレも今、彼氏募集中で飢えてっからさぁ」


「はぁ……」



 断っても断っても、この犬のおじさんは何度も両手を合わせてお願いしますと言わんばかりに僕へと頼み込んでくる。いやぁ……無理でしょ。どう考えても。だって僕、犬のおじさんを見ても全然興奮しないし……。逆におじさんは僕のことを見て興奮できるのだろうか? うーむ……わからんなぁ……男好きな男の気持ちなんて、一生わかる気がしない。


 でも僕より背丈もあって、力も強そうで、なのに自分から下手に出て人間の僕に頼み込むその姿に心を打たれないわけでもない。……ちょっと、まぁ賭けてみるか。別に無理矢理何か変なことをしようとは思ってないみたいだし、熊とか牛みたいな大型獣人じゃないからいざとなれば振り切って逃げればいいし……。


「…………じゃあちょっとだけ」


「うおっマジか、釣れた! やった!」


「なに? 釣れた?」


「いっいや、今のは口が滑った。なんでもねぇ。……別にからかってるつもりはねぇんだぞ? オレはいつでも本気、だかんなぁ。……ししし、そうと決まれば早ぇとこ店出ようぜ。ほれ、まだ飲み物残ってんぞ〜」


「は⁉︎ そっそんなに急がなくてもいっ」


「時間は待っちゃくれねぇんだ、ほれ早く早く!」



 たった一日、休日が潰れるだけ。貴重な休みをこの見ず知らずの犬おじさんに取られるのは決していい気なんてしない。でも僕は、このおじさんとデートするという選択肢を敢えて取ってみた。味気ない普段の生活からちょっと気分転換、というヤツだ。まぁ人助けみたいなものでもあるし、それでおじさんが喜んでくれるのなら。……僕、やっぱ年寄りにはちょっと弱いのかもなぁ。親戚のおじいちゃんとかに頼まれたらちょっと頑張りたくなっちゃう、あの気持ちが湧き上がって止まらない。


 店を出る頃に、おじさんはもう準備万端と言わんばかりに僕の周りをぐるぐる走り回っていた。昔飼っていた犬みたいにはしゃぐなぁ……いや、犬か。犬じゃん、おじさん。


「……うわっ‼︎」


「デートはなぁ、こうやって手ぇ繋いで歩くんだぜ。知ってっか?」


「しっ知ってますよ! 一応彼女いたんですから‼︎ いや男同士で手なんてっ!」


「そーかそーか。じゃあ逆にエスコートしてもらうとすっかねぇ」



 男とデートするなんて奇妙な機会、もう二度と来ないと思う。じゃあこれが最初で最後の……そう思いながら、僕は突発で発生してしまったおじさんとの不思議なデートを楽しむことにしたんだ。




 いきなりデートしようと言われた時、行く場所がすぐにでも思いつくのであれば今ごろモテモテだったろうに。そんなことを考えながら、僕らは子供も伸び伸びと遊べる芝生が豊かな広々とした公園へとたどり着く。休日って本当にどこもかしこも二人組だらけだな。ベンチに座りながら肩に腕を回して抱き合っているカップルなんかもいて……まったく、困っちまうぜ……爆発しろ。いや……僕らも二人、か。一応。男同士だけどな。


「へへへへ……」


 何もしていないのに、隣で一緒に歩く犬のおじさんはさっきからずっとニコニコしっぱなしだった。ただ歩いてるだけ、それでこんなに喜べる男が世にいたとは。お気楽なヤツだと思う。


「オレ、散歩好きだからよ。いいじゃねぇか、散歩デート」


「…………」


 正直自分が立てたレベルの低いデートプランに少しだけ嫌気がさしていたのだが、おじさんは一切不機嫌になることはなくむしろ上機嫌そうに僕の手を握る。……すごい、肉球のところがゴツゴツして岩のようだ。何か肉体労働系の仕事をやっていたのだろうか。


「何なら走り込みでもやっか?」


「はぁ……元気ですね。そんな、ここ最近走りたいなとか思ったことないですよ。仕事で疲れちゃうんで」


「ならものは試しだ。あそこのでっけー木のところへ先に着いた方が勝ちな。勝ったら負けた方の言うこと、なんでも一つ聞くってことで。よーいどんっ!」


「えっ、えっ、あ? なんですかそれっ、あのっ‼︎」


 軽いフライングスタートをキめて全力ダッシュをかます犬獣人に、僕は泥棒を追いかけるようなスピードで脚に力を込める。咄嗟のことで体が動かないかと思ったが、まだ案外イけるらしい。全速力で駆けていく犬のおじさん、お世辞にも早いとは言えずにすぐに追いついてしまって――。



「ぜぇっ……ぜぇっ……はー……」


「ははは、いやぁ早ぇ早ぇ。坊主、やっぱ若ぇな! おっちゃん、もう汗だくで、ぜぇっ……だ〜めだこりゃ、はぁっ……」


 

 結果は僕の圧勝。だけど勝ったということは、さっき言われていた権利を僕が有したということで……。


「さぁさぁ、何でも言ってみろ! 言っとくが金くれとか臓器提供しろとかはナシだかんな」


「んー…………」


 おじさんは僕にしてほしいことがきっといっぱいあるに違いない。だが僕はどうだ、おじさんにやって欲しいこと? ……ない、な。そりゃあそうだ、まだ会って間もないのだから彼のこと、何も知らない。……そうか、知らないのなら……。


「じゃあおじさんの話、聞かせてくださいよ」


「……オレ?」


「僕ばっかり身の上話をさせられてるんですから、おじさんこそ僕にそういう話して欲しいかなって……」


「…………身の上話、ねぇ。別に大したモンは何もねぇよ。ただ……ずっと男追いかけ回して、遊んでるだけの世間一般で見たらヤベーヤツってなだけで」


 話を聞いてみると……なんと彼は僕よりもたくさん恋愛して、振られて、そんな毎日を繰り返していたらしい。長く生きているから当然っちゃ当然なのだけど、その試行回数は尊敬に値する。フラれるって結構辛いことなのに、それをもろともせずに何度もいろんな人にアタックして……。なんだろう、めっちゃカッコいいじゃん。僕なんて一度の失恋でもう恋なんてしたくねぇと思ったぐらいなのに。


「まぁやっぱ、大型の獣人の方が人気やな。オレみてぇな犬、それも若くねぇ老けた犬はお呼びじゃねぇらしい」


「そう、なんですかね。男好き同士の界隈でも大型が人気なんすか」


「おう。マッチョな牛とか、バカでけぇ熊とかな。あとやっぱ清潔感ってのがねぇとよぉ。オレが汗かいてビショビショになってんのと、若ぇ兄ちゃんが仕事で汗だくになってんのとではわけが違ぇやい」


 予め持参したであろう白タオルでガシガシとマズルを拭き上げると、ほんのり雄の汗の香りが周囲へと撒き散らされる。大木に背中を預けながら胸元や背中の汗まで拭き回すと、彼は尻尾をブンブン振りながらまた話の続きをしてくれた。


「……ま、その。オレはな、多少雄クセェ方が好……」


「へ?」


「なっ、冗談だよ冗談。なんでもねぇ」


 なんか今臭いとか言っただろうか。さっき準備運動もなしに全力疾走したせいで僕も少し汗ばむ程度に体を汚しているから、そのニオイが気になったのかな? 獣人はニオイに敏感だからなぁ、なるほど……それで前の彼女も僕の体臭が気になったりしたのかな……いやあの子と会ってた時は別に走ったりしてないし汗もかいてないはずなのだけど。


「……坊主は男から告白されたことねぇのか?」


「告白⁉︎ いやいやまさか。人間って獣人より需要ないですし。そもそも男からなんてあるわけないじゃないですか、ははは」


 同級生たちの中に、男色の気がありそうな人がそもそも思い当たらない。テレビではよくそういった人たちが映る印象だけど、身近には誰もいないのだ。……いない、と思い込んでいるだけなのかな。おじさんも、正直パッと見では男が好きそうには見えなかったし。むしろ若い姉ちゃんの尻を揉みながらゲヘヘヘ〜って笑ってそうなタイプだ。獣人は見かけによらないってこういう事を言うのかな。


「オレぁ兄ちゃんに一目惚れしちまってんだけどなぁ」


「…………えっ」


「じゃなきゃ声なんかかけねぇよ」


「……でも普段は片っ端から男に声かけてるんですよね」


「ん。まぁ、でも多少はオレも人を選ぶぜ? 全然興味ねータイプのヤツは流石に声なんかかけねぇよ。あとイケメンすぎるのもナシ」


 ……ん? 今ちょっと僕のことバカにしてなかった? イケメンすぎるのもなしって……じゃあ僕はイケメンじゃないフツメンってこと? ……あー、まぁテレビのアイドルユニット向きの顔じゃあないわな。


「成功率もひっくいしなぁ。先月もようやく人間の子と付き合えたかと思えばすぐに音信不通になりやがるし。はぁ〜……」


「……それでも、ナンパは続けるんですか」


「おう。オレの将来の伴侶が決まるまで、一生やってやらぁ。最期の時まで独り身なんてごめんだぜ。オレもそう若くはねぇからよ、そろそろちゃんとした人を見つけてぇんだ」


 チャラいおじさんかと思えば意外としっかり考えていらっしゃる。話を聞けば聞くほど、僕はおじさんのことをもっと知りたくなった。だから次から次に質問をぶつけてやる。どうせこのだだっ広い公園だ、僕らの会話なんか誰も聞いちゃいない。


 そんなこんなで、彼の職業や年齢、趣味とかを聞きつつ僕の情報も順次公開していく。意外なモノが好きだと知ったり、こんなものが嫌いなのかと驚いたり、会話は徐々に弾んでいって終わりが見えなくなっていった。


 久しぶりにこんな、笑った気がする。彼女と過ごしている時はずっと緊張しっぱなしだったし、気を遣いすぎて具合も悪くなったし。なのにおじさんと一緒にいると、そんな感情はむしろどこにもなかった。男友達と駄弁っている時のような、アレに近い感覚。やっぱり同性だと変な気遣いとかなくていいよな。歳が離れてる割にはおじさんが僕の方に話題を合わせてくれるおかげで、とても喋りやすい。


「……おっと、もう結構時間経ってら」


「へ? ……あ、そう、ですね。そろそろ暗くなってくる時間まで……えっ、なんでこんなに僕ら喋って……」


「兄ちゃんと喋ってっと時間忘れちまうなぁ。ははは。お喋り上手なヤツは好かれやすいからよ、坊主の長所ってヤツだな」


「いやいや、おじさんが聞き上手なんですよ」


 芝生の上で二人、いい歳したおじさんと僕みたいな若者が横並びになっていると親子だと勘違いされるだろうか。種族、全然違うけど。寝転がりながら隣をふと見ると、おじさんは少しだけバツが悪そうにマズルの上辺りをぼりぼり指で掻いていた。


「……あ、あのよ。だっ、ダメもとで言うんだが……」


「え……そんなに言いづらいことなんですか」


「そりゃそうだろ! だってお前、ノンケだし。……ノンケのヤツにこんなこと言うとぜってー引かれちまう……」


「はぁ〜……。もう今更じゃないですか。最初っからオレは男好きだって宣言しながら近寄ってきたわけですし。本当にイヤならもうとっくに帰ってますってば」


「…………へへっ、そうかよ。…………じゃあさ」


 再び沈黙。僕はおじさんの言葉を待ちながら遠くの方でカラスが鳴く声と、それから子供たちがはしゃいでいる音を聞いてリラックスする。ざああっ……と芝生を撫でるような風。それからはぁ……とため息のようなものを吐きながら、おじさんは横向きになって僕の顔をジッと見つめていた。



「……本番はその、ナシでいいから。ちょっと体の親睦ってヤツをさ、深め合わねぇか」


「…………」


「……」


「………………ぶふっ」


「……おい、今笑ったか。おい、こっちを見ろ。坊主、おっちゃんをからかってんじゃねぇだろうな。……こら逃げるな、おいって‼︎」



 真面目な顔してどんなセリフが飛び出してくるのかワクワクしていたら、まさかのエッチなお誘いだった。ちょっとあまりにもど直球すぎるし、何なら体の親睦って……ククッ……。すごく大事なシーンだったと思うのだけど、僕はもう耐えきれずにおじさんへ背を向けて口を押さえてしまった。当然、全ておじさんに見られてめっちゃ怒られたけど。


 男から体を求められるのはこう、当然のごとく抵抗感はあるけれど……。おじさんのこと、まだまだ知りたくなっちゃったし。それに人肌……いや犬肌が恋しくなったから、まぁ気分転換にはいいかなって。無理矢理ヤられそうになったらどうしようかとか、そんな考えはこの時まったく頭の中には思い浮かばなかった。だって今日のデート中、何か力技で解決してきそうな出来事は一度もなかったし。あとは……人柄、だよな。



 このあとどんなことが僕を待ち受けているのか、そして男同士で体の親睦を深めあう行為が一体どのようなことを意味しているのか。期待と不安の両方を感じながら、僕はおじさんの手を握って歩き出す。少しだけ沈みかけた夕陽は、なぜかいつも以上に眩しさを感じた。溜まっていたのか、ちょっとイヤらしい想像をしただけで僕の股間が盛り上がる。男相手に興奮するわけないと思っているのだが、果たして……。なんか肌を寄せられるとこう、人肌というかケモノ肌の温もりを感じて……刺激が……その……股間に……。




 シャワーを浴びる音が、今日はいつになく大きく聞こえる。テレビの画面はあるものの、いつも茶の間でみるような番組は何一つとして見ることはできない。メニューから選べるのはどれもこれもが男同士モノばかりのエロビデオ。正直それを見る気にはなれず、テキトーにスマホをいじりながら僕はベッドの上で仰向けになっていた。……まだ、今なら引き返せると思う。でも……僕は自分の意思でここに来た。そう、無理矢理連れてこられたのではない。自分が何に興味を持ったのかはわからないが、この犬のおじさんと別れるのには少々惜しいと感じたのだろうか。


「ふいぃ〜サッパリしたぁ。ふ〜!」


 ぶるんぶるん体を震わせながら、おじさんは肩にタオルを引っ掛けて堂々と寝室へと入り込む。生乾きの体が少々気になるが、それよりも……股に携えたブツの立派さに驚きを隠せない。すごく、その、立派だった。人間でも決してあり得ないサイズではないが、これほど雄々しい肉竿をぶら下げた人間はそういないだろう。


「……どこ見てんだよ。恥ずかしいだろ。エッチ」


 少し恥じらう姿を見せながらも、おじさんはどこか嬉しそうで。むしろもっと見てくれと言いたげに鼻をヒクヒクさせながらニヤついている。男の汚いモノは別に興味はないけれど、あんなものがオンナの膣に入ったら大事では済まないだろう。


「……じゃ、じゃあ」


「おう。オレがお前に男同士のヤり方ってモンを一から百まで教えこんでやるからな。ニシシシ! クセになっちまっても知らねぇかんなぁ〜」


「……そんなことは、ないです。たぶん。おそらく。きっと……」


「また随分と歯切れの悪ぃ返事だな。ガッハッハッハ! ま、最後まで同じことが言えるかどうか。オレがしっかり見定めてやるよ。楽しみだな」


 なんでも雄同士でヤる交尾というものは、オンナを使ったヤツとはまた違ってすごく気持ち良いんだとか。だから性欲の強めな獣人の間ではむしろこれが普通ってぐらいに流行っている。人間はそうもいかないよなぁ、だってケツの貸し借りとかそんな、聞いたことないし……。獣人は性欲が強まると暴力的になったり集中力が散漫になったりとあまり良いことはないから、とにかく発散ができる環境というものが大事だと彼は言っていた。


「……え、ちょ、やらしい‼︎」


「ん。若ぇ兄ちゃんのケツなんざ久しぶりだな。ええ? もっちもちでやわっけ〜。おっぱいみてぇだ。……あ、硬くなりやがったぞ。力抜けよ」


「あひっ、そんなとこっ、あっ、てか僕がケツを差し出すんですか⁉︎」


「ったりめぇだろ、なに自分がタチしようとしてんだ。百年早ぇんだよ百年! ……おら、トイレにウォシュレットあっから洗ってこい! ほぐすのは……それが終わってからだ」


 ケツを触られただけで、なんだか体にアルコールが入ったみたくカァッと熱くなる。自分で自分の尻をいくら触ろうが何の感情も湧き上がらないが、他人に触られる尻はこう……ゾクゾクくる。すごくイヤらしくてエッチが大好きそうな犬のおじさんに豆だらけの手で触られたあの瞬間、僕は少しだけオンナの顔になっていたかもしれない。この顔がどんどん本物のオンナに近づいていって、最後は……どうなってしまうだろうか。まだ未知の領域である雄交尾にドキドキしながらも、僕はラブホテルに備わった勢いの強いウォシュレットでケツの中を洗浄する。正直、洗えているのかよくわからない。だけど結構長い時間やっておかないと、後で大惨事になりそうだと直感で思った。


 透明な水がそのまま出てくるぐらい何遍もヤり終えたあとで寝室へと戻ると、犬のおじさんは何かを手に取りながら仰向けでシコシコと男の自慰なる行為に手を染めていた。


「……ちょっ、おじさんっ‼︎ それ‼︎」


「あ〜〜……わり、つい。雄の脱ぎたてパンツなんざご馳走、そんなもんここに脱ぎ捨ててんじゃねぇよ……は〜〜……スゥウッ……」


 僕の、ちょっと汗が染みついたパンツ。それを愛おしそうにフガフガと嗅ぎながら、おじさんは汁まみれの肉竿をニチャニチャ扱いて気持ちよくなっている。まだ精子は出ていないようだが、彼の行動によって男性に対して性的興奮を覚えるという性癖は本当だったのだと確信した。


「……いいニオイじゃねぇか。へっ、んじゃあホンモノの味見、させてもらおうかね」


「うわっ、わっ‼︎」


 ガバッと覆い被さり、ケダモノのようにハッハッ……と荒く息をしながら僕の体を執拗に嗅ぎ回す。僕だけ湯浴みさせてもらっていないせいで、汗臭い部分を嗅がれたらたまらなく恥ずかしい気持ちになった。腋にマズルを埋められた時なんか本当にどうしようかと……。困り果てていた僕を見ても、おじさんは嗅ぐのをやめちゃくれなかった。


「……ちゅーさせてくれたら嗅ぐのやめてやるよ」


「いっ……いやそれは……」


「……そうか、残念だな。じゃ、遠慮なく」


「ぎゃっ、あっ、そこはっ、どこ嗅いでっ‼︎」


「は〜〜〜……玉の裏、キまるぜぇ……」


 自由に全身を嗅ぎ回す犬のおじさんは、ホンモノのど変態だった。男同士の接吻なんて絶対に無理だったから、その無理を逆手にとってこんなところまで嗅ぎやがって……。一番蒸れてそうなところを執拗に鼻でグイグイ押し当てて、そこを掃除機のようにスウウウッ……と吸い込まれる。恥ずかしさのゲージが最高レベルにまで達すると、なぜだか僕の肉竿は少しだけ硬くなっていった。


「おう。お前も興奮してんのか」


「ばかっ、違うっ‼︎」


「ははは、照れんなよ。嗅がれて嬉しいんだろ?」


「んなわけあるか!」


「……オレは好きな相手に自分の体臭とか嗅いでもらうと嬉しいぜ。こういうのは獣人特有なんかねぇ」


「……」


 股の間から顔を引き抜くと、今度は僕の足首を無理矢理掴んで斜め上まで引っ張り上げられる。その足の先にはおじさんのデカい顔が近づいてきて、やがて鼻をヒクつかせながら足の指に鼻先を突っ込み始めた。


「……ん゛おっ、人間の饐えたニオイだ……ふーっ……ふぅっ……」


「ぎゃっくすぐった! あっ、うわっ‼︎」


 運動靴に押し込めていた生足はそこそこ汗の香りを放っているだろう。そんなものを愛おしそうに嗅ぎながらヌヘヘと笑う犬に、僕はもう直視できなくなっていった。目が蕩け、薬でもキめてるみたいにヨダレが垂れそうになりながら、おじさんはハスハスと僕の蒸れた部分を嗅ぎ回す。その時間はまさに痛みこそ発しなかったものの、拷問に近い時間と言える。くすぐったくて、恥ずかしくて、僕はどうにかなってしまいそうだった。


「……ふー……キめた、キまったぜぇ坊主。最っ高のキめもん、ありがとよ」


「…………すごい、ですね。その、すごかった」


「へっ、オレが男好きなおっちゃんだってわかってくれたか?」


「……男好きの変態だってことがよくわかりました」


「……ま、褒め言葉として受け取っておくぜぇ」


 当然、今ので疑う人は誰もいないだろう。僕は静かにおじさんが股座に近づいてやらしく舌なめずりする姿を見つめていた。その舌はやがて僕の股間に触れ、ネッチョリとした唾液が少しずつ塗りたくられていく。


「……あひゃっ、ひっ、こしょばっ、ゆっ‼︎」


「ケツほぐすにはなぁ、こうやって同時に気持ちよくしてやるといいんだぜ。へっ、精々頑張ってくれよ? オレのフェラ、すっげ〜気持ちいいからよ。……んぐ」


「はっ、あはっ、はっ、あああっ……んおおおっ……」


 最初は根元から先っちょまでベロンと舐められ、それから僕の肉竿はすっぽりと犬のマズル内へと埋め込まれる。股座を乗っ取られたみたいだ。ケツの穴にまであのぶっとい指を一本ねじ込まれ、僕は生まれて初めての体験に腰をガクガクさせてしまう。……僕、その、童貞、なんだよな。だからしゃぶられた経験もこれが初めてで……。絶対にこのおじさんには言わないでおこうと心に決めたのだが、とにかく初めての感覚に僕は狂わされっぱなしだった。


「……おう、しょっぺぇ汁が出てきやがった。気持ちいーか? んん? もっと指、増やすぞ〜〜」


「え゛っ、もっと、あっ、太いっああっあっ‼︎」


「力抜けよ。……いいか、力抜けってのはケツふんばって排便するみたいに緩めろってこった。逆だよ逆、本当に力抜いてんじゃねぇぞ〜」


 事細かに説明してくれるのはありがたいのだが、内臓を圧迫するようなこのケツの感覚はどうにも慣れやしない。排泄にしか使ったことのない穴、そこを何遍も異物が通って僕の体を改造していく。やがて指が変なところに当たった際に、僕の体がビクンと跳ね上がってしまうのがわかった。そこは、男でも気持ちよくなれる魔法のポイントだとか何とかおじさんが言い始めて……。


「へへ、いいだろココ。ちょっと擦っただけでよぉ……」


「んああああっ、あっ、すごいっ、なにっ⁉︎」


「こんなに汁を漏らしやがる。体が悦んでヨダレ出しやがったな。……ぐひひひ、後でもっとすげぇ事してやるよ。だから我慢しとけよぉ」


「……はひっ」


「いい子だ。……じゃ、ケツもほぐれたところで、まずは一発上澄み抜いちゃろう。好きなだけ出してくれていいからな」


「……え゛っ、ん゛ほぉっ、お゛っ‼︎ なにっ、あっ‼︎」


 さっきまでの口淫が序の口だと思えるほどの吸引力が強いフェラチオ。僕の陰毛におじさんの鼻が押し当たると、スウウッ……と大きく息を吸う音が。こんな激しく僕の肉竿を舐め回してしゃぶっている時でも、体臭を嗅ぐことはやめられないらしい。重度の体臭中毒者とも呼べる犬を見ていると、なぜだか僕も興奮するようになってきた。彼女のニオイをハスハスするが如く、おじさんも僕のニオイをハスハスして……。あっ、やばい、これは、もうダメだ――。


「ああああっ、あっ‼︎ あっ……あ〜っ……あぁ…………」


 男の口でイった経験、それも初めて。一生自分の中に残り続けるであろう口内射精の感覚は、きっと僕をまた狂わせてくるに違いない。……めっちゃくちゃ気持ちよかった。男の口なのに、なんでこんなに……。しかも射精中ずっとペロペロ肉竿を舐め回してくるので、またすぐに硬くなって汁が出てきて……。


「……ん、ごちそっさん」


「あっ……あの……苦く……な……」


「ん? あ〜、まぁ喉がイガイガするやな。最初は慣れなかったけどよ。好きなヤツがぶっ放した体液はなぁ、なぜかすげぇうまく感じやがる。不思議なもんだ。へへへ……」


 我慢汁とヨダレまみれになった口を拭うと、おじさんはその自慢の肉竿を片手で持ちながら僕の体へと覆い被さった。……デカい。自分より一回り大きい全てのモノ。特にちんちんは赤黒く使い込まれていて、なんともグロテスクな感じだ。それをケツの穴に押し当てながら、なぜかお預けを食らった犬みたいに静止して僕の様子を眺めている。それがなんだか本当の飼い犬みたいで、ちょっとだけ笑いそうになったのは内緒だ。


「……許可、してくれ」


「えっ、あ……許可」


「無理矢理はしねぇってポリシーがあんだよ。お前がヤってくれって言わねぇと、コイツは挿れらんねぇなぁ」


 本当に挿れる直前、そこにマラソンのスタートラインが引かれているかのようにおじさんは腰を前に突き出す事なく止まっている。今ならまだ間に合うと、そう言いたいのだろうか。……生憎もう、断るような理由は何一つない。失恋して心にポッカリ穴の開いた僕、そして男の味を少しだけ知ってしまったこの僕が、断れるはずもなかった。


「…………優しく、お願いしますね」


「おう。ヤラしくヤってやろうじゃねぇか」


「やさしく、ですってば! もう……」


「へへへ……じゃあお前の初釜、もらっちまうかんなぁ。……痛かったらオレの腕握れよ。血は出ねぇようにほぐしてあっから、コツさえ掴めば気持ちよくヨがれるはずだぜ」


 大胆な行動をとってくる犬だなぁと最初は思ったけど、いざ行為に入るとこうも紳士的な何かを感じるのは何故なのか。僕にはない、オトナの余裕というものがそこにはある。相手を配慮し、相手を気遣い、そしてたまに自分の欲求を満たすような交尾。僕はこれからどんな恐ろしい腰振りをされるのか、少しだけワクワクしながら彼の侵入を待ち続けた。……すっげぇ、腹ん中に熱くて太い鉄の杭を打ち付けられたみたいな。でも体が一つになることで、お互いの熱をこれでもかというほど肌で感じることができる。僕はゆっくりと肉竿を侵入させながら近づいてくるおじさんに、気づけば自分から抱きしめていた。それも、両脚をクロスして体にしがみつくよう絡ませながら。


 自分でヤると決めたというのに、今も尚こんなことをしていていいのかという後悔がある。だけどそんな負の感情も、おじさんの熱を感じれば全てがどうでもよくなっていった。ギュッとハグしながら挿入を待ち続けるこの時間は、たまらなく緊張する。きっと僕にとって忘れられない時間となるだろう。



「……おいおい、いきなしそれは反則だぜ坊主。そんな、オレに抱いてくれって言ってるようなモンじゃねぇか」


「…………つい、その。勝手に体が……」


「それなら次の段階、進むかぁ。……よっ、ほっ」


「んおっ、お゛っ‼︎」


 ピストン運動が始まると、僕はもうおじさんの姿どころか天井すらも見れずに目をギュウウッと瞑ってしまった。何かその、怖かったんだ。初めての体験は、どうしても不安というものが自分の中に渦巻いていく。その中で少しずつ湧き上がっていく、快感という二文字。ケツがあの敏感な部分に到達すると、僕は自分でオンナみたいな声を上げながら悦んでいた。本来僕が女性に対してヤるような腰振りを、見ず知らずの犬おじさんにヤられている。男同士の交尾、これが、ホンモノの……。


「あひっ、ひぅっ、やだっ、ああっ‼︎」


「イヤか? ふぅん、こんなに汁漏らして言うセリフかよおい。すっげぇ気持ちいんだろ、なぁ」


「きついっ、あっ、ひぎゃっ、あっそこはぁっ‼︎」


「ゴリッゴリだぜ坊主、お前のメスイキポイント。おらどうだ、気持ちいいか! おら何とか言ってみろ、このメスガキが‼︎」


 さっきまで気遣いの塊みたいなおじさんが、今度は一転して荒々しく攻撃的な言葉で僕を責め立てる。ヤる前からこのような言葉遣いであれば今頃ベッドの上で股なんか開いちゃいないだろう。今この興奮しきった状態で言うからこそ抜群の効果を発揮する。僕は止まらない自分の声を何とか片手で抑えながら、おじさんのセックスを心ゆくまで堪能していた。それもすぐに手首を奪われ、押さえつけられ、ナマの声を響かせる事となるのだが。


「……ここはラブホだ。声、抑えてんじゃねぇよ。聞かせろや。もっと、もっとだ」


「無理無理無理っ、恥ずかしっ、あっ、ああああっ‼︎」


「いいねぇ、そそる。それぐらい恥じらってもらった方が……うっ、すげっ、締まり、よくなったぜ。ひひひ」


「あ〜〜〜〜っ‼︎」


 テンポのいいセックスに、僕はもうずっと翻弄されっぱなしだ。おじさんも汗をかきながら激しく呼吸をしていて、さっき全力疾走で走った時よりも激しい。なのに体力切れという概念がないのか、とにかく力強く全力で腰を振り続けてくれた。遠慮のない腰つきが、僕の体を確実に蝕んでいく。おじさんの太くて長いモノは指でも届かない箇所にまで到達し、そこをこじ開けるようにして腰を回されると声にならないほどの快感が僕の全身を駆け巡っていった。


「――――――――っ⁉︎」


「定年で退職するまで現場で働いてたからよ、開通工事はっ、ん゛っ、得意なんだぜ。へへっ……土方仕事なめんなよっ、おらっ‼︎」


 得意げに舌ペロを見せつけてくる犬のおじさん、その顔はエロいという言葉だけでは言い表せないような凄みがあった。今はおじさんの何を見てもこう、スケベなオーラが出ていると言えるだろう。顔も、腕も、上半身も、脚の部分も、男らしさ満載の彼の体に僕はもうとっくの昔に惚れ込んでしまった。男相手とセックスなんて……と思っていたあの時が本当に懐かしく感じてしまう。それはついさっきまでの事だったはずなのに、気づけば僕はおじさんのマズルに口を寄せていて――。


「……おいおい、いいのかよ。オレの唾液、ヤニクセェしベタつくぜ?」


「いっ、いいっ、くだっ、さいっ、あっあっ‼︎」


「へっ、じゃあよ。中にたっぷり出してからオレの接吻、おみまいしてやる。一生忘れられねぇぐらい、激しくてねっとりしたヤツな。……へへへ、お〜来てやがる、もうそこまで来てっぞ。おら、オレを悦ばせる為の締まりのいいケツ穴用意しとけな‼︎」


 ちんちんから汁も、それから全身から汗も、何なら口から唾液まで。あらゆる体液を垂れ流しにしまくっている男二人、激しくぶつかり稽古するみたくまぐわい続ける。薄暗い部屋でただお互いの熱と発散を求めて営まれる豪快な交尾は、それ以外何も考えられないぐらいすごかった。ずっと体内がジンジンして、尻の穴がキュンとなる。痛みなんてものはもう何も感じなくて、おじさんの我慢汁ダラッダラな肉竿がローション代わりとなっていて滑りがいい。尻におじさんの陰毛が当たるほど強く押し付けられてから、僕はまた大きく口を開けて快感を逃そうと必死になっていた。



「イくぞっ、中にっ、あっ、種付けするからなっ、うっ、ううううううっぐおっ‼︎ お゛っ‼︎」


 おじさんの掛け声から数秒程度だっただろうか。泡立つほどニチャニチャと肉竿を抜き挿しされ、最後は僕の体が痛くなるぐらいギュウッと抱きしめられてから止まることを知らなかった腰がピタリと静止する。ガクガクと震えるようにして、その太すぎる砲台からは活きのいい精子たちがビュウウッと吐き出された。ウォシュレットでお湯を入れられたのとは訳が違う。粘度も高く、熱も高いこの体液は、僕を男に酔わせるのには十分すぎるほどの淫液だ。


「はひ〜〜…………ひっ……キまるっ、ぜっ、あっ……おほぉっ……」


「…………ん゛んんんっ、んっ、なにっ⁉︎ なんか膨れっ‼︎」


「あ〜…………膨れたか……そうか……」


「え……」


「瘤、がな。あんだよ。肉竿の下の方に……はぁ〜……興奮しねぇと全然膨らまねぇんだが、わり、今日はすごかったみたいだ……お゛〜……」


 ボコォッと鈍い音、それから僕のケツにはガッチリと固められるようにして肉竿が静止する。無理に引き抜くとものすんごく痛い。それこそ体がバタつくほど、涙が出るほどに。外から挿れる時にはそこまで大きく膨らんでいなかった為、出入り口の限界拡張範囲内に収まっていたおじさんの肉竿。それが今はその限界値を余裕で超えている。こんなものが中から外に引きずり出されれば、鮮血による潮吹きが待っているに違いない。


「へへっ……オンナの膣によ、確実に孕ませるためにザーメン仕込む為の器官だ。便利だろ?」


「……おっ、オンナじゃなっ」


「オンナじゃねぇか。男に組み敷かれたヤツは一人残らず”オンナ“だっての。……それがわからねぇほど坊主もバカじゃねぇだろ」


 ドクンドクンと強い脈を放ちながら、おじさんのちんちんはぶるっと震えてビュッと精子か何かを吐き出した。中に出して、また出して、短い時間で定期的に粘ついた汁が吐き出される。行き場は当然、僕の腸内だけ。逃がさないと言わんばかりに腰の自由を奪われ、僕はおじさんの顔を見ながら何遍も中出しをされ続けた。


「おじさっ……あっ、またっ、入ってっ、ひあっ、もう入らなっ‼︎」


「三十分はこのままだかんなぁ」


「三十分⁉︎」


「いいじゃねぇか。その間、ずぅっとオレとイチャイチャできるんだぜ。……おら、口開けろ。さっき言ったろ」


「…………んんう゛っ‼︎」


 おじさんの言った通り、犬のマズルの中はかなりベタついてヤニ臭い唾液で満たされていた。肉厚の舌へたっぷりと絡めたそれを僕の口にねじ込み、おじさんは中をくちゅくちゅ掻き回すようにしてディープキスをする。頭ん中まで蕩けそうな、酷く興奮するキスだったと思う。男同士で接吻だなんて気色悪い以外の何物でもないのに……。おじさんが、僕の体を一瞬のうちに変えてしまった。今僕は男に抱かれて、キスされて、中出しまでされて……。オンナ、じゃないか。性別は男のはずなのに、自分がオンナみたいに思えて恥ずかしくなる。


「……ぷはっ、はぁっ……へへ……ごちそっさん」


「…………う〜……」


「てめっ、拭うんじゃねぇやい! せっかくオレがキスしてやったんだぞ!」


「だって! うえぇ……え゛っ……」


「……瘤が収まったら、また激しくハメてやるよ。今度はオレのディープキスが忘れられなくなるまで、もっと気持ちよくしてやる」


「はひっ、ひっ……」


 一つ一つの言葉が官能的で、すごくエロい。耳が蕩けそうになる低音ボイスを聴きながら、僕は徐々に膨れていく自分の腹を摩っては男の種付けというヤツを味わった。歳上で性欲も衰えそうな年代の犬おじさんが、僕のような若い雄に中出ししている。それがとてつもなくスケベなことに思えてきた頃、僕の小ぶりで細めな肉竿はムクムクと大きくなっていった。


 それを見逃さなかったおじさんはゆっくりと忍び寄るようにして手を当て、軽くニチャニチャ扱きながらこう言い始める。



「へっ……男の味ってのも案外、悪かねぇだろう?」





 この短時間に携帯電話の時計を見ること、数十回。僕は待ち合わせシンボルの銅像付近で辺りをキョロキョロ見渡しながらボーッとしていた。



 ……あの犬のおじさんと、一体何を話せばいいのだろう。先週の休みは初対面なのにあんなことをベッドの上で激しくヤった手前、顔を直視することも恥ずかしくてできないかもしれない。


 もう一度、また会うと決めたのは僕の方だった。激しく交尾したあの日に無理矢理連絡先を登録させられていたわけだが、あちらかは一切アクションがなかったのだ。それを耐えきれなかった僕が衝動的にメッセージを送りつけて……はぁ……何してんだろうなぁ僕……。彼女にフラれて、男相手にまさかの交尾させられて、挙げ句の果てにその男が気になって連絡しちゃうって……。何と挨拶してやろうかわからなかったが、それより今はあのおじさんにまた会えることを少なからず嬉しく思っていた。



 ふと横から会話が聞こえてくる。待った〜? って。それは女性の高めな声で、その返事として低くてガラガラな声の主が登場する。……大柄な熊と、細身でキレイな狐のカップルのようだ。僕の目線は一方に釘付けとなって、なぜだかそこから離せない。


 あの熱くて激しかった夜のあとで、僕はどうにも大柄な男性獣人のことを普通の目で見られなくなっていた。道を歩く巨大な獣人を見るたび、ついつい目がそちらへいってしまうように。今までまるで興味なかったはずなんだけど……。熊獣人……でっけぇなぁ……。股間からぶら下げたブツがズボン越しにでもよくわかるほどで、あれが勃起なんかしたら……彼女さんは絶対こんなの受け入れられないだろう。いや、女獣人の膣は人間よりも拡張範囲が広かったりするのだろうか。僕がこの前振られたあの彼女も、今頃新しくお付き合いした“熊”と楽しんでいるのだろう。それがなぜか、少しだけ羨ましく感じたのはなぜだろうか。



「――っ、――――っ、おいっ、聞いてんのか!」


「へ? あ……」


 これからどこへ行く? そんな雄熊と女狐の会話に聞き耳を立てていたその時だ。何か雑音みたいな音が混じってくるなぁと思えば……はは、ははは。いたわ。この前一緒にオトナの遊びをヤった、アロハシャツにサングラスという異質な格好の犬おじさんが。それも太眉を逆ハの字にして、ちょっと不機嫌そうなツラで。


「どーこ見てると思ったらよぉ、お前……」


「あ、いや、これは!」


「そんなに大柄な獣人に興味あんのか。ああ? 熊なんかジーッと見てやがって。……それともこの前のこと、もう忘れたわけじゃねぇだろうな」


「あっ、ちょっと、外でそんなとこ握らなっ、あっひっ‼︎」


 人目につかないように壁の方へ向きを変えられ、僕の股間を何の躊躇もなく弄ってくる。何ならズボンの中に直接手ぇ突っ込んで肉竿を握りしめられた。……気持ちよさ、というよりかは痛さを感じるほどの強い力だ。


「……お望みなら、忘れられねぇようその体に刻み込んでやってもいいんだぜ。雄の犬獣人と盛り合う、最高の気持ちよさってヤツをよぉ」


「い゛っ…………しばらくは、いい、です」


「ホントかぁ? 期待して硬くしてんじゃねぇだろうな。ええ?」


「もっもうやめてっ、これ以上その話はっ‼︎」


「ガハハハハ! まぁいい。そのうち、自分からねだってくるようなオンナになるのも時間の問題だ」



 たった一つのきっかけ。男好きな男に、男の味を教えられた僕は――。



 今日はどこへ行こうか。相談しても、彼は何も言わずに僕の手を引っ張って歩き始めた。きっと散歩がいいのだろう。まったく、どうしてこう犬ってのは歩くのが好きなんだろうか。


 ……今度はちゃんと、行きたいところぐらい調べておこう。そうだな、カップルにおすすめのお店、みたいなヤツで。



 こんな間柄でも、僕らはまだ付き合っちゃいない。



了 

女性にモテない僕は犬おじさんにモテてしまった

Comments

60超えですが、獣人は人間よりちょびっと寿命がながいので中身は50代ぐらいです!アロハサングラスのおっちゃん、実は意外と好き……。犬おっさん、かわいいので定期的に書きたくなりますね🐕犬はいいぞ…。

ぱぱぱんだ🐼🐾ぱぱを

おっちゃん定年ていう事は60超えてるんですね? アロハにサングラスの犬おっちゃんかわいい……ぱぱをさんの久しぶりの犬獣人ご馳走様でした!

@hiroji


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