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虎のおじさんを拾った

めり〜〜くりすま〜〜す。ぱぱを🐼🐾です。



お待たせしました!300円プランのお話が書けましたので投稿します。最近投稿ギリギリだな……これも全部イベント用の原稿のせいなのと、仕事が繁忙期なせいなんですけど😇


今回は虎おじさんと人間くんの話です。甘くてエロい話にしてありますので、どなたでもお楽しみいただけると思います。薄味だったらすまん。


すごく冷えてきたので、虎のおじさんの冬毛で温めてもらったらいいんじゃないですかね🐅



ではでは、あとは今月終わりのブログ記事でお会いできたらなと思います。あとは少しでも新刊の情報が出せたらいいですね……まだ入稿できてないので、入稿し終えてからじゃないと告知はできないかなぁ……。ではでは、良いクリスマスを〜〜〜!




※以下、本編。

****


 着こんでも着込んでも震えるほどの低気温、そんな季節に乾いた喉を潤わすのは……そう、コレ! 手に持った瞬間、じんわりと温かい熱が広がっていく。カロリーなんて気にしていたらおいしくないだろう? 子供なら間違いなく、そして大人でも多くの人が大好きなホットスナック――骨なしフライドチキン。それも長方形みたいな大きさにして揚げた、結構デカいヤツ。コンビニエンスストアで紙袋に入れられたそれをニコニコ……いやちょっとニヤつきながら、僕は自動ドアを開けて外へと出ていった。


 まさかそんなところに、何者かが置いた膝ぐらい高さのある段ボールの荷物が置かれているとも知らずに。


「うわっ、わっ、ああっ‼︎」


 会計を済ませたあと我慢できずに店の中で紙の皮を半分剥いでしまった肉の塊。それが意図せず手から離れ、僕は大きく手を伸ばす。何かにつまずいて、宙を舞いながらグルングルンと回転していく熱々の長方形チキン。コンビニのホットスナックでは一番か二番目に人気のその肉は、そのまま重力に従って地面へ向かって斜めに落ちていき――。



「…………あ?」


「………………ん……」


 落ちていく、はずだった。だが半分皮を剥かれて中身が露出した肉の塊は、それはもう大きなマズルと立派な牙よってガブリと挟み込まれていて。……虎、だ。頭にタオルを巻いた、ちょっと怖めな虎のおっちゃんが僕の購入したアツアツの肉をマズルで咥え込み、ハッ……と思ったのだろうか手を突っ込んで口から肉を取り出してくれた。ヨダレの糸、ついちゃってるんだけど……。



「ん……ぐ、あ、いや、これは、すまん。つい……反射的に……」


「え……あ、あの……ありがとうございます……なんですけど……」


「は、ははは、地面に落ちるぐらいならと思って。その……」


 これは……今更返してもらったところで……。そしてなぜだか目の前の虎獣人は抑えきれないヨダレと鼻息を荒くして興奮を隠せない様子だ。重力に従って落ちていくチキンをマズルで挟み込んだのはナイスキャッチだったが、これはもう……弁償してくれとも言えないし……。なんかこう、すごく興奮してない? 大丈夫かなこの虎……。



「……よ、よかったらどうぞ」


「え…………いいのか?」


「え、ええ、もうおじさんの口の中に入っちゃってますしね……はは……はは……」


「……っ、じゃっじゃあ、わり、もう我慢できなくて……へへへ、そ、そうか、勿体ねぇモンな、わりいな兄ちゃん。いやぁ、災難だったな……はは、ははは……うっ……はぐっ……んっ……んふぅっ……」


 このチキンのサイズ、人間にとってはそこそこボリュームのある食べ物なはずなのに。大型獣人にとっては全然大した量ではないのだろう。丸呑みするようにして飲み込まれたチキン、そして相当おいしかったのかペロペロマズルの周りで舌を出し始める彼。ネコ科特有のちょっとザラついてそうな舌がべろんべろん動き回り、軽く顔を毛繕いするようにして腕を動かし始める。そ、そうか、おいしかったのならまぁ……落ちた地面にそのまま放置して蟻に食わせるよりはいい、のかも。


「…………その、ごちそっさん。奢って返してやりてぇんだが……金がなくて……」


「へ? あ、ああ、いいんですよ、無駄にならず美味しく食べてもらえたなら。僕はまた今度買いますから」


 あんなところでダンボール荷物に躓いてチキンを落としてしまうなんていうショックな出来事があったけれど、名前も顔も知らなかった虎の彼がうまそうに食べる顔を見れたからまぁ……いっか。へへ、あの人ガテン系の仕事してるのかな。結構汗臭くて、その、横を通った時にいいニオイがした。はぁー……こちらこそご馳走様でした。いいものが見れたから、別の意味でお腹がいっぱいになってしまう。


 一般人にそんな空中に放り投げられた肉の塊を食されたら、ただただ落ち込んでいただけだろう。だがどうだ、僕の手からこぼれ落ちた肉を食べたのは……あの見た目的にもカッコよくて大好きな獣人だ。そりゃあ、心も踊るというものだろう。獣人の口、でっけぇし牙もすげぇよな……歯茎を見せながら迫力ある捕食、もうたまらんっ……。


 うまそうに肉を食べてくれた虎に軽く挨拶をし、僕はさっきの出来事を何度も頭の中で思い返しながら道を歩いていく。映像機がそのまま脳の中に突っ込まれているかのごとく、さっき虎が申し訳なさそうに、でも我慢できないといった様子で肉を噛みちぎって食べる様子を何度もリピート再生するのだった。



「…………」


 さっきはアクシデントがあったものの、不幸中の幸いというヤツで。僕の頭の中にはあのタオル姿の虎がしっかりと焼きついていて、何ならさっきチキンのニオイで充満していた鼻腔内が虎の雄臭いニオイに上書きされている。はぁ……いいニオイだったよなあの人……いや一般的に考えたら全然いいニオイじゃないけど……。


 結局コンビニでは明日の朝食にしようと思っていたおにぎりを買っただけとなってしまったが、これもまた運命というやつだ。あまり気にしなくてもいいだろう。むしろここからまた何かが始まったりしてな。数日後、同じような時間にコンビニへ行ったらあの虎と偶然はち合わせて……なんて……。



 ……それにしても、だ。さっきから誰か後をつけているような気がしてならない。そう思ってふと後ろを振り返ってみても、誰もいないし……。何だろう、僕、そんなに金目のモノも持ってないはずなんだけど……。


 気味が悪くなって、それから僕は早歩きをするように道を駆けていく。わざと曲がる回数を増やしたりして、追っ手から逃れるようにして。だけども背後から見つめる気配は全然消えないし、むしろなんか近づいているような気がして……。あれ、ラッキーだと思っていた出来事の次はアンラッキーな出来事が?



 何とかたどり着いた自宅のアパート前でゼェゼェ息を切らす僕。視界がボヤける中、突如電柱の影からにゅっと現れた大きなモノ。僕は咄嗟に飛び跳ねて驚き、その場で尻もちをついてしまった。


 その電柱から飛び出した、自分の目線のかなり上にある相手の顔を見て僕は、あっ……と声を上げて指をさしてしまう。



「えっ、あっ、さっきの‼︎」


「や、やぁ。その、すまん! 他にアテもなくてな……」


「あっ、アテ?」


 虎、だった。今度会えるかなと思っていたあの虎が、まさか別れて数分もしないウチに感動の再会を果たしたのだ。僕が呼吸をゼェゼェさせているのに、虎の彼は息一つ乱さずに僕の前で腕を組みながら見下ろしている。でっけぇ……ほんとデカい、身長差二倍ぐらいない? 僕が人間だからというのもあるけれど、真下にいたら首が痛くなるぐらい見上げないと顔が見れないのではなかろうか。さっき鼻の中にこっそりと忍ばせておいた虎のニオイがまた嗅げる、そう思ったのか鼻がヒクついて止まらない。やべっ……バレないといいんだけど……。一度きりの出会いだったはずの人物が目の前にいることで、僕の心臓はいつもより二倍近いスピードで鼓動を早めていた。


「…………本当に失礼なことを承知で頼むんだが……ちょっと、いっぺん、風呂……貸してくれねぇか」


「……へ?」



 これが、僕と彼の。初日の出会いとやりとり。この時僕が見ず知らずの虎おじさんにシャワールームを貸してやらなかったら、彼は今頃もう別のどこかへ行っていただろう。人生というものは、何が起こるかわからない。



 僕が大の獣人好きで運が良かったな、そう心の中で言いながらどうぞどうぞと彼をアパートの一室へと招き入れたのだった。名前も顔も知らない、しかも僕が食べようとしていたアツアツのチキンを咄嗟に食べてしまった、図体のデカい虎の彼を。





 時は進み、あれから数ヶ月。年も明けたが、まだ春は遠い気がする。住んでいる場所は木造のボロアパートなので、きっとまたお部屋は冷えた冷蔵庫みたいになっているだろう。暖房代もバカにならないので、最近はリモコンを隠したりしてるし。……気を抜くと、アイツが電源をつけてガンガンに部屋を温かくしていそうだから。



「ただいま〜。…………お〜〜い、ただいま〜〜」


 玄関で声をかけても、リビングからはうんともすんとも音が聞こえてこない。いないはずはないだろう、何せあの虎は今……宿なし職なしのダメ男なのだから。


「んー……コンビニにでも行ったかな……いやでも今月の小遣いはもう使い込んだはずだし……ま、そのうち帰ってくるか」


 自分が仕事で使っていたワイシャツを洗濯機にぶち込み、中を確認して……ははは、あったあった。アイツの下着、めっちゃいいニオイするんだよな……ふぅ……。数ヶ月前に偶然知り合ってしまった虎獣人おっさんの履いていたヨレヨレトランクスに顔を埋めたあと、名残惜しいが僕は洗濯機の電源ボタンをグッと押してさよならバイバイした。キレイな状態に生まれ変わってまた僕の前に姿を現してくれるだろうが、どちらかというと味付けされたトランクスの方が……。


 手洗いうがいをしてすっかりと冷えきった手や体。こんな可哀想な体を温める為にはそう、これ。冬場に欠かせないコタツ! 僕はスライディングするようにして廊下を走り抜け、コタツ布団を持ち上げて下半身を滑り込ませる。だがちょっと硬めなボヨンという鈍い音と共に、僕の体はいとも簡単に弾かれてしまった。



「んわっ! なっなに‼︎」


「いちちち……おいおい、蹴飛ばすんじゃねぇや。痛いだろ」


「いや……え、え?」


 足の骨に響くような痛みに軽く泣きそうになりながら摩っていると、中からニュッ……と大きな虎の顔が姿を現した。お前、どこ入っとんねん。こんな人間用の小さなコタツに全身を埋めるヤツがあるか。しかも温度が強っ‼︎ 強で電源入っとる! こんなに冬毛でモコモコ……いやゴワゴワなのに、これ以上熱したら汗をかくぐらい暑いだろうよ。


「もう……こんなところにいたんですか。これじゃ僕が入れないっすよ」


「お前が暖房機のリモコンを隠すのが悪いんだろ」


「冬場の電気代、めっちゃ高いんですからね。知ってますか? これ誰が払ってるか」


「う…………そ、そんなことより。ほれ、ここ座れここ! オレの膝の上、空いてるぞ〜ほれほれ。虎の冬毛はあったけぇんだぞ〜」



 満面の笑みでそう誘いかけてくる虎に、僕は断る理由もなく吸い寄せられていった。……あったかい、毛皮が電気毛布みたいに熱い。頭の上に顎を乗せられ、ゴロゴロと喉を鳴らしながら彼は僕をギュウッと抱きしめてくる。痛い、力加減、間違ってる。でも……悪い気はしない。だが彼はこれで許してもらえると思っているのだろうか。そろそろ食費もキツいんだがなぁ。



 宿もない、職もない、しかも自分より歳上、最近はぐうたら生活中のおっさん。夢にまで見た獣人おっさんとの共同生活は、決して良いことばかりではなかった。いや、これは……僕が悪いのか? 僕が甘やかしたせいなのか?


「今夜のご飯、なんだ?」


「あー、今夜は鍋にしようかと思って」


「いいねぇ。へへっ……肉多めに頼むぜ?」


「野菜たっぷりにしておきました」


「はぁ?」



 居候をしながら当然のようにメシを請求してくる彼に、僕は強く言えやしなかった。はぁ……あの時の偶然やってしまった餌付けで、まさかこんなことになるとは。部屋のあちこちに散らばった縞模様の抜け毛、毎日コロコロで掃除しても無限湧きする獣人の体毛にはうんざりだ。でも彼の何のストレスもなさそうな顔を見ると楽しそうで、さっきイヤな想いをしたこともすぐ忘れてしまう。僕、多分ダメな存在なんだろうな。好意を寄せている人に対してこう、自分を犠牲にしてしまうというか……振り回されやすいというか。



「……大牙(たいが)さん、すごく言いづらいんですけど……大牙さんが来てからその、家計がかなり苦しくて……」


「…………お、おう、そうか。悪いな」


「実家には帰らないんですか?」


「いっいやいや、あんなところ! 二度とごめんだ! オレはここがいい!」


「うーん……」


 コンビニで買ったアツアツのチキンを餌付けしまったあの日から、僕はこの虎のおっちゃんである大牙さんをウチで引き取ることになった。ガテン系の仕事着を着用していたのは、どうやらご実家の父が営む建設会社の制服らしい。なんでも、あのコンビニで出会った日は父親と大喧嘩をして実家を出ていった当日だったのだそう。しかも大事な財布を実家に忘れ、一文なしという状態で。


 空腹で倒れそうになった時、命を救ってくれたのはお前だ。そう言いながら、一生の頼みだと土下座して彼は僕の家へと乗り込んできている。すごく運命的な出会いをしたものだと自分でも思うのだが、それでもこの関係を長く続けるのは……。


「……じゃあせめて働いてください」


「…………オレぁもう、現場仕事はゴメンだ。向いてねぇ」


「いやいや、現場仕事以外にもたくさん種類ありますよ。僕だって現場仕事なんて出来ないですし……」


「……オレ、アホだからよ。頭使う仕事、できねぇんだ。建築ってヤンキー上がりのアホばっかやってる仕事だと思ってたけど、実際そうじゃねぇんよな。ちゃんとした知識があってやれる仕事だ。……オレ、勉強はからっきしだからよ」


 きっとそういう所で親父さんに叱られ、大喧嘩にまで発展したのだろう。少ししょんぼりしながら僕を抱きしめる力が強くなった。……いってぇ、骨が折れるだろが。そう言いかけたが、このハグを止めさせるのは何か違った気がした。



「……じゃあ僕と一緒に、何か探してみますか」


「…………続かねぇかもしれねぇぞ」


「まぁやってみてダメだったらまた別のとこ探せばいいですよ。合わない仕事とか、合わない上司とか、入ってみないとわかないこともありますしね」


 ちょうど時期かなと思って、僕は駅に置いてあった求人がたくさん載ってある雑誌を手に取って持ち帰っていたのだ。おっちゃんの股座の上で開き、僕らは一緒になってページを一枚ずつめくっては流し見する。二人でこうして見るの、結構いいなこれ……。すごくドキドキする。職探しどころではなくなりそうなので、今はムラムラする気持ちを抑えておくことにした。


「おー、いいなこれ。ケーキ屋とか楽しそうじゃねぇか」


「大牙さんは絶対やめた方がいいですね」


「なんでだ‼︎」


「つまみ食い、止まらないでしょう。だからこんなに腹が……」


「う…………」


 ウチに転がり込んでくる前は、もっと筋肉質だったと思う。それが堕落した生活を続けていくにつれ、彼の腹はそれはもう熊や猪に匹敵するほどボヨンボヨンになっていた。そんなヤツがケーキ作りの仕事? 未経験歓迎とは書いてあるものの、すぐにつまみ食いをしまくってクビになるのは目に見えている。



「……お、じゃあコレなんかどうです?」


「どれどれ――」



 たまたま、本当に偶然目につけた所。それはネコ科だけが働くことを許された、配送関係の求人だった。




 正月明け、今日も布団の中にあったであろう熱が冷めていくのを感じながら起床をする。……そうか、もう行ったか。暦の上では休日だが、大牙さんの会社は年がら年中山ほど仕事がある。毎日ダルいダルいと言いながらも仕事に行ってくれるのは、おそらくメシの為なのだろう。


 彼が働いて稼いだ金は、彼の食事代として消えていくことが多い。稼いだ給料を半分以上僕へと手渡し、じゃあ来月も頼むぜと口角を上げながら上機嫌になる。僕はあなたの専属コックではありませんと何度も言ったが、それでも彼は僕に金を渡し終えるまで寝かせちゃくれなかった。



 一体いつまでこの家に上がりこむつもりなのだろう。おかげでこっちは毎日おっちゃんのことでムラムラしっぱなしで大変だ。


「今日は昼頃帰ってくるって言ってたっけかー……」


 今の時刻は一般的な企業の始業時間とそう変わりない。ならもう少し寝ていても……。休日に堕落した生活を送っている僕は、もう何度目かわからない二度寝、いや三度寝をキめて布団でゴロつく。



 結局彼が帰ってくる予定時刻の三十分前に起床した僕は、慌てて昼のメシを作り始めるのだった。今日は焼きそば、でいっか。


「……やべっ、もう帰るってか。んー……焼きそばでいっか……」


 毎日、彼の食欲は止まることを知らない。一番彼の食欲旺盛な時間は夜だ。なので昼はどんなに簡単なメシで済ませても文句は言わないが、夜はすごく不機嫌になる。こんなに金を払ってやっているのに、メシはこれだけかとか。いやいや、居候している身で何をおっしゃる。そう思いながらも、彼に力勝負では敵わないことも重々承知しているので……。僕は半分脅されながら生活していると言っても過言ではないやもしれない。


 そうこうしている間に玄関の鍵がこじ開けられる音がし、僕は料理の手を止めて急いで出迎える。


「お〜〜腹へった〜〜……」


 帰宅後、第一声がそれかよ。そう突っ込みつつも、僕は彼の格好に思わず生唾を飲み込んでいた。


 …………その、エロすぎ。宅配会社から支給された制服、そして帽子。しかも帽子はツバを逆向きにして被っていて、ちょっとヤンキーっぽい。そこがまたグッとくるし、何よりこのクソ寒い季節なのにちょっと体毛が汗ばんでいるのがまた……。


「うひょ〜、あったけ〜〜」


「うわっ、わっ‼︎」


 帰宅後早々、出迎えてやるとドタドタ音を立てながら廊下を走ってきて……。この虎の熱い抱擁によって僕の体の熱は一気に持っていかれる。凍えるほど寒い外の空気、それから汗によって更に冷たくなった虎の体毛が、ぬくぬくしていた僕の体をヒンヤリとさせてきた。……やっべー…………汗臭っ……。鼻をヒクつかせると、おっと……と言いながら彼は脱衣所に行ってしまう。


「先に風呂、入ってくらぁ」


「う……うん……」


 あらかじめそうなるだろうなと思って沸かしておいた風呂、その様子を見てニコッと牙を見せつけるスマイルをした大牙さん。本当は僕も一緒に入りたかったが……このアパートが獣人ではなく人間用に作られているのでそれは叶わない。何なら大牙さん、湯船で体育座りしないと入れないほど狭いし。


「……もっと嗅いどきゃ良かったかな」


 再び焼きそばのニオイを嗅ぎながら、僕は鼻に残ったアイツのニオイを思い出す。仕事終わりの蒸れた雄のニオイは、僕の股間に即効性があった。すぐ硬くなって、汁が出て……。半勃起でおさめながらも、すぐに風呂から出てくるだろうから今は処理なんて出来ない。例え処理したとしても……獣人は鼻がいいからすぐにバレるんだ。一回そういうことがあってから、お互いの距離がもっと近くなったような気がするけど。でも僕が大牙さんのことを性的に好いていることは、バレたらマズい。このちょっと大変で、幸せな生活が終わってしまうかもしれないから。



「お〜今日は野菜少ないな! へっへっへ……」


「最近野菜が値上がりしちゃいましたからね……。決して大牙さん好みの肉たっぷり野菜なし焼きそばにしたわけではないです」


「んあ? そうか。いや〜〜でもあんな草、入ってねぇ方がウマいだろ」


「野菜をただの草呼ばわりするのやめて!」


 本当は人間一人だけが入る予定だった小さめのコタツ。その両側で下半身を埋めて、僕らは昼食を済ませる。まだ出来立てだというのにガッツいたせいで、あちぃあちぃとザラついてそうな舌を出しながら苦しんでいる大牙さん。だけど余程おいしいのか、特盛りで乗せてやった大皿の焼きそばをペロリと平らげていた。


「んめっ……ふぅ……」


 皿に残った焼きそばソースも愛おしそうに舐め続ける彼を見ていると、人間と獣人の違いがよくわかる。舌、なっげぇな……。本当にネコがそのままデカくなったみたいな。皿を直接舐める行為はマナー的にはあまりよろしくないが、飼い猫がそうやっていると考えればまぁ……イヤ、じゃないな。むしろふぅん……と思いながら眺めてしまう。


「食った食った。さぁて、午後はゆっくりすっかなぁ」


 コタツでゴロ寝しながら、彼はコタツの真向かいで僕の体に足の裏を当てながら腕を頭の後ろに組み始める。こんなところで寝たら風邪をひくぞと言ってやるも、彼は一度たりとも聞き入れてはくれなかった。……こんな巨体を支えてるってのに、足裏の肉球はすげぇ柔らかいんだよな。中で軽く手に取って揉んでやると、彼はくすぐったそうに笑って脚をバタつかせる。


「こらっ、やめろっ! ……あ? ……おいおい、なんだこりゃ。溜まってんのか」


「あっ、いやっ、これは」


 じたばた動かされている間に、僕の顔よりもデカい足の裏が股座を一瞬だけかする。ほんの一瞬、一回だけの出来事。ちょっと半勃ちしていたイチモツの硬さを、彼は足裏で感じ取ったのだ。さっき眠たそうに仰向けで寝転がっていたはずの上半身がヌッと目の前から現れ、僕は目を丸くしながらちょっと後ろに下がる。ちょっとヤラしいニヤニヤした顔で舌なめずりをすると、大牙さんは続けてこう言い始めた。



「へへへ……オレもよ、溜まってっから。今日も一緒に抜くか?」


「…………」


「もう何度もやってるからいいじゃねえか。なぁ、男同士、溜まるモンは溜まるんだしよ」



 彼が家へやってきて、それから同居し始めた頃から一番変わったこと。それは……お互いの体を使って性欲を発散することだった。



 きっかけは本当に偶然、見てしまった彼の自慰行為。やはり獣人は人間に比べて性欲が何倍にも強いらしく、毎日適切な処理をしなければ気性が荒くなったり気分が悪くなったりと大変なようだった。前までは僕から隠れるようにして処理していたのだが、ゴミ箱いっぱいにオナティッシュを詰められたら僕だってもう我慢はできない。しかもかなりニオイがキツいので、注意せざるを得なかったのだ。


 注意の仕方もかなり弱々しいもので、臭すぎて無理というよりはムラムラしすぎて無理といった方が正しい。獣人の精液は……むしろすごくいいニオイに思える。だが嗅いだだけで自分の体温が数度ほど上昇するような気がして、それに勃起が止まらなくなった。精力増強剤を直に飲まされているような感じで、それからは何かを察した大牙さんが一緒に性処理をしようと誘うような形となって……。


 今じゃ、何の躊躇もなくお互い手コキし合う仲となってしまった。



「ひゃっ、んひゃぅ……あっ、あっ‼︎」


「いいぞっ……はぁっ、もっと強く、握れっ!」


「大牙さっ、つよっ、強すぎっ‼︎ もっとゆるめっ、んぁああっ‼︎」


 汚れるからという理由で浴室の方まで行き、僕らは二人で横並びになりながらお互いの肉竿を抜き合っていた。湯船を溜め込むバスタブの縁に座り込みながら、僕は大牙さんのを、大牙さんは僕の肉竿を握りしめてニチャニチャと激しく扱き続ける。僕もそこそこ我慢汁の量が多い方だが、大牙さんには敵わない。既に床には粘液の水たまりができていて、尚且つ僕が射精した時に出す精子の量に近い我慢汁をぶっ放すのだ。雄として勝てる要素がどこにもない。そして浴室内に籠る雄獣人の蒸れたニオイがまた、僕の体を火照らせていった。


 冬場の浴室は寒いことこの上ない。だから温かいシャワーをこれでもかというほど流して、中で蒸気を溜めさせて……。擬似的なミストサウナを作り、ヤり合っていた。お互いの股間が見えづらくなるが、それでも手から伝わる感触は変わりない。僕は頭の中で大牙さんのブツを鮮明に思い浮かべ、時折イきたそうにニヤつく彼の顔を見ながら楽しんだ。



「出るっ、う゛っ、出ますっ、あっあっああっ‼︎」


「オレもっ、出すぞっ、今日はすげぇっ、出そうだっ、う゛っ‼︎」


 狭い浴室内、ベージュ色の壁に向けて出される特濃の上澄み液。僕はほんのちょびっと壁にぶっかけただけだが、大牙さんの目の前はそりゃもうペイント爆弾でも投げたかのように大きな黄ばみ汁が打ちつけられていた。一発目だというのに濃すぎるし、量も凄すぎるし、何なら射精後の余韻に浸る間もなく僕は彼の射精をジッと観察し続ける。グルルル……と唸り、天井を向きながらも尚射精を続け、一分ほど汁がビュッビュッと出されてからようやく彼の射精が収まった。


「…………おーすげー……」


「排水溝、詰まらないですかねこれ」


「大丈夫だって。猪じゃねぇんだしよ」


 これよりも濃い体液を、猪獣人が? そう頭の中で考えただけで、僕の体はボッと音を立てて発熱し始める。やべっ……また興奮してきた……。射精後すぐには回復しない僕だったけれど、まぁ秒で勃起しましたよね。その様子を見てふぅんと大牙さんに言われ、それから肩に腕を回されながら僕はグッと抱き寄せられる。



「…………なぁ、こりゃ獣人の間で流行ってる話なんだがよ――」



 彼がゆっくり、静かな口調でそう話し始めた。一体何を言い出すのかと思えば、その話は僕が頭でよく想像していた内容そのものだった。




「……いやっ、いやいやいやっ、それはいくらなんでも‼︎」


「でも気持ちいいんだぜ? な? いっぺんやってみねぇか。ケツ使ってよぉ、死ぬほどお互いヨがって、イき狂うんだ」


 大牙さんが前に勤めていた、父親が会社経営をしているという建設現場。そこでは現場社員が性欲発散の為にケツを貸し借りするのが一般的だったようだ。まずその話の時点で僕の頭はもうついていけなくなったのだが、何なら大牙さんもたまに後輩のケツを掘って発散していたとか何とか。ケツの方は若い頃に使われて以来使っていないと言っていたが、まさかそんな同人誌みたいな性欲発散方法が今の現代でも獣人の間で流行っているとは思いもしなかったぞ。


「んはっ、いきなりそんな太い指はぁああっ⁉︎」


「いーから。そこで四つん這いになれよ。……痛かったら止めてやるが、適正があるかはやってみねぇとわからねぇだろ?」


 太長い縞模様の毛がついた指をマズルの中に入れ、ジュポジュポ音がするぐらい唾液をまぶして……彼は僕のケツをイヤらしく触る。日頃からスケベばっかりしてそうなオヤジの手つき。僕のケツは昔友人に勧められてちょっと拡張したことはあったが、当然ホンモノの獣人とヤった経験は一度もない。夢にまで見た、偶然と言えどもうまくいきすぎているこの展開。ケツが切れて爆散しようが、僕は大牙さんとヤれる絶好のチャンスを逃すわけにはいかなかった。


「爪はさ、引っ込めてやっから。安心しな。へへへ……久方ぶりだな……どれ……」


「でもっ、人間のケツはっ、さっ……んひっ、さすがにっ……」


「いんや、人間でも入るヤツは入るぜ。オレが保証してやる」


 ……大牙さん、人間の雄ともヤったことがあるのか。正直、一人センズリばっかりコいてるのだと思っていただけに少しショックだ。そ、そうか、経験豊富……なのか。それに引きかえ僕は……僕の方が、経験人数も浅いし相手は人間だけだったし……。


「おっ、いいねぇ。ココだろ、ははは。わかりやすいヤツ」


「ぎゃっ、んあっ、あっあっ、そこばっか、あっ‼︎」


「こうやってよ、気持ちよくしてからどんどん指、増やすんだ。痛かったらケツが引き締まって全然緩まねぇしよ」


 大牙さんの前戯、もとい拡張スキルはそりゃもう手慣れたもので。風呂場の鏡に映り込む自分の姿が、まるで自分ではないようだった。なんだ、これ。めちゃくちゃ気持ちよさそうに口を開けて、舌を出している人間がそこにいる。これが今の自分自身の姿だと認識するのにそう時間はかからない。後ろにはさっきからずっと鼻息をフンフン鳴らしながら嬉しそうにケツを指でほじくる大牙さんの姿。この顔はメシを前にして期待している、嬉しそうな顔だ。


「……おい、イクんじゃねぇ。楽しみはとっとけ。人間ってヤツはザーメンが無限に出てこねぇ生き物なんだろ?」


「あ……」


 ギュウッとキンタマの付け根を握り潰すかのような握り方。僕はケツでイキそうになっていたところを、彼の手によって意図的に止められていた。いつ、どこでわかったのだろう。僕が……ケツの刺激だけでイキそうになっていたのを。


「一緒にぶっ放すとよ、気持ちいいんだぜ。いつもセンズリで同じことやってんだろ? それと同じだよ同じ」


「…………うん」


「ははは、どうしたお前。メスの顔になってるじゃねぇか」


「だっだって、こここ、こんなに、上手だなんて‼︎」


「あ〜、まぁオヤジとか現場の先輩たちにヤり方は手取り足取り、イヤってほど教わったからな。まぁその名残りだ」



 ……手取り足取り、か。羨ましすぎて鼻血が出そうだ。僕は頭の中で大牙さんと、その周りで働く屈強な雄の獣人のことを妄想しながらケツを拡げていった。やがて人間ではあり得ないほどのサイズに拡がっていくのだが、普段であれば絶対にここまで穴が大きくなることはないだろう。……獣人フェロモンってのは、やはり使い方によっては薬にも毒にもなる。ただの人間をこうも簡単に獣人用の種壺として体を変えさせてくると、僕は彼と一緒に過ごしてはいけないのではないかと錯覚してしまう。


「……ん、まぁ。あとはコイツで直接拡げるしかねぇやな」


「あ……でっ、でかっ、なんか今日、デカい気がします……」


「興奮すっとなぁ、膨張率やべぇんだわ。今日は特にそうだな」



 自分の肉壺をほぐして、僕とこれからイヤらしい交尾とやらをする。それら一連の動作に興奮したのか、大牙さんの肉竿は今まで直接見てきた中でも一番デカい肉竿へと変貌を遂げていた。それこそ、大根の一番太い部分ほどはありそうなサイズ。ドボドボと音を立ててそうな我慢汁の湧き具合、そして体液はそのまま垂直落下して糸を引きながら床を汚していく。浴室の床中が虎の我慢汁でいっぱいになってしまうのではないかと心配だ。


「…………ひっ‼︎ あっ、やっぱきっ、キツいかもっ、あっ……」


「やっぱ先っちょでもかなりの締め付けだなこりゃ。……へへへ、じゃあよ。こうして……」


「ひゃっ‼︎ なっなにっ、あっ‼︎」


 いよいよ獣人の肉竿を挿入する、その瞬間だった。やっぱり太すぎて入らない、そう思っていたら首筋にはザリッとしたヤスリで擦られたような感触が。鏡を見るまでもなくわかる、大牙さんが顔を近寄せて……僕の体を舐めてきた。これには流石の僕も驚きを隠せずに、終始えっえっと困惑してしまう。一瞬の戸惑い、それが彼の求めているものだとも知らずに。



「がああああっあっ⁉︎」


「お゛っ……へへっ、成功っと。どうだ、気ぃ紛れただろ?」


 餌を求める池の鯉みたく、僕は口をパクパクさせながら大牙さんの肉竿をケツで受け止める。しかも、恐る恐る腕を自分のケツに回してみると……いや、あり得ない。なんで。大牙さんのゴワゴワな陰毛がピタリとケツタブに押し当てられているし、自分の手で確認してもたぷたぷのキンタマが僕の股下に置かれているのだ。


「……んあああっ、あっ……」


「まだまだきっちぃからな。……こうしてたらよ、お互いの熱でまたイヤらしい気持ちになんだ。それにお前、毛ぇ生えてねぇから寒いだろ? しばらくこれで暖まろうや」


 四つん這いで虎の獣人にナマで挿入された、その事実だけでもご飯五杯ぐらいはいけそうな体験なのに。僕は大牙さんに覆い被さられ、背中側から痛いほどギュウッと抱きしめられていた。肩に首を置かれ、彼の荒い鼻息がイヤというほどに聞こえてくる。それになんかチクチクするな……。野生動物時代の名残りなのか、大牙さんの頬には僕の肉に刺さりそうなほど立派な長いヒゲが生えていた。


「……あっつ、すご…………」


「獣人の毛皮を甘く見んじゃねぇぞ。あったけぇだろ……ほれ、ゆるくなってきやがった」


「あっあっ、んあっ、ひっ、んひっ‼︎」


 バチュンとスタートの音がしてから、僕らの交尾が始まりを迎える。既に我慢汁と大牙さんの唾液でぬるぬるになった僕のケツは、何の突っ掛かりもなく彼の肉竿を受け入れてギュウッと肉壁が包み込む。腸というものは入り口からすぐのところで曲がっているらしいが、先ほど根元まで咥えさせられて背後から抱かれている間に真っ直ぐの状態にまで矯正されていたようだ。オンナの膣では決してできない、奥までズッポシハめてからの雄交尾。僕は生まれて初めての感覚に心と体を振るわせ、今にも泣きそうになりながら耐え忍び続けた。


「ひゃだっ、あっ、すごっ、あっ、あっ‼︎」


「う゛〜〜……きっちぃ〜〜……」


 初釜が、しかも獣人サイズのものを受け入れられているだけでもすごいというのに。それを自分好みのキツさに変えようと、大牙さんは汗をグッショリかきながら腰を振り続けた。僕が吹っ飛びそうになると上から手のひらを押し当て、僕の手の甲をギュッと握りしめる。やべっ……こんなことされたら僕、僕はっ……。


「無理無理っ、ああっ、大牙さんっ、んっ‼︎」


「へへっどうしたぁ、イきてぇか。イきてぇよなぁ。さっきまでずっと我慢してたんだ、こっからはもう遠慮なく出しちまっていいぞ‼︎ おらっココ、突いてやる‼︎」


「あ゛〜〜〜〜あぁあああっ‼︎」


 一度弱点も知られている以上、僕は大牙さんにイき狂わされる未来しか見えない。床に激しく撒き散らす、二度目の射精。さっきセンズリで痛いほど扱かれて瀕死状態になっていたというのに、今や精子を出したくてたまらない淫乱な肉竿になっている。もっと、もっと出したいと僕に訴えかけては勃起を繰り返しているようだ。萎える、なんてことはあり得ない。その様子を大牙さんも感じ取っていたのだろう。片手を僕の肉竿に添えながら、彼は小刻みに震えて僕を犯し続ける。


「気持ちい〜〜……やっぱ雄はナマ交尾に限るな! オレとよ、死ぬほど交尾してイきまくろうや‼︎」


「あっあひっ、ひっ‼︎」


 首筋にカプッと、甘噛みをしながらそう言い放つ彼。一瞬血が出たんじゃないかと思うほどの痛みがあった気がしたが、鏡を見てもそこにはただちょっと凹んだ僕の肉体があっただけだった。本気でヤれば、おそらく一生残るような傷を残すことも容易いだろう。自分の弱さ、そして獣人の強さを改めて思い知りながら僕は大牙さんとまぐわい、狂っていった。


「大牙さっ、出してっ、大牙さんもっ、あっあっ!」


「おう! んじゃあ遠慮なくタネ、つけっからな! ここまで仲、深めたんだ。遠慮はいらねぇやな‼︎」


「はひっ、好きなだけっ、あっ、ひぃいいっ‼︎」


「虎の子、孕むまでケツから抜かねぇかんな! 覚悟しとけや! おらっ、特濃ザーメン出すぞっ、ん゛おおおおおっぐおっ、お゛っ‼︎」


 浴室全体が激しく振動し、おそらくお隣さんの方にまでその揺れが伝わっているに違いない。だが僕らの、親睦を深め合った仲で営まれる性処理を邪魔できる者はいない。騒音のクレームが来ようが、今は部屋から出られないのだから。この時間だけは僕と、大牙さんだけの空間だ。


 強く雄叫びを上げるようにして、それから大牙さんは僕のケツで信じられないほどのザーメンを発射し、注ぎ続けた。種付け、その言葉の威力通りの凄まじい量。すぐに腹が膨れ上がり、彼の蒸れてグショグショになった手のひらを自分からギュウッと握りしめながら僕も盛大に果ててゆく。


 大牙さんの体重で僕の体が床につけられ、それから床の硬い感触とケツで中出しされている感触、ダブルで僕の体を刺激されて……。二人の雄の近くに流れていく、僕の僅かな量の精子。ケツの方では間違えて引き抜いてしまったのだろう、そこからドロドロとした熱くてたまらない汁がどんどん溢れては排水溝へと流れ落ちていった。


「はっ……わり抜けちまった。いや、抜いた方がいいかもしんねぇな。このままだとよ、ほれ」


「……わ、うっ、うそっ……こんな……」


「こりゃ本当に虎の子、身ごもっちまうかもなぁ。ガッハッハッハ!」


 胡座の上に座らされ、前半身が見えるように鏡へと体を向けさせられる僕。イヤらしく笑いながら頭に顎を乗せ、大牙さんはゴロゴロと喉を鳴らしながら僕をギュウッと抱きしめた。……腹が水風船みたく膨れ上がった、人間の僕を、愛おしそうに。



「もっぺん、どうだ。流石にもう入らねぇかもだから、いっぺん中に出した種を排水溝に流しちまえばまだまだヤれるだろうよ」


 とんでもない提案をしながら股間を腫らす彼を見て、僕もまた同じ気持ちとなる。ヤりたい、死ぬほど交尾して、気持ちよくなりたい。獣人という種族の底知れない力の一部を見せつけられた僕は、もうただの雄としていられなくなった。ガバガバになりかけているケツの穴が、もう獣人の味を忘れられることはないだろう。最初は死ぬほど痛かったのに、終わって引き抜かれてみたら喪失感と何とも言えない気持ちよさの余韻で頭がおかしくなりそうだった。




 昨夜の出来事は、今も鮮明に覚えている。記憶だけではなく、体もがしっかりとその熱と興奮を覚えていた。体の至る所に擦り付けられた虎の剛毛を見て、僕は鼻をムズムズさせながら複雑な気持ちとなる。最近抜け毛、すごいからなぁ……くしゃみが止まらなくなりそうだ。


 ケツも痛すぎてジンジンするし、獣人と雄交尾なんてものをヤれたのは奇跡に近いが……しばらくはやりたくないかもしれない。



「う〜…………うぐ……はっ……はぁっ……」


 何か苦しそうな声を鼓膜でキャッチした僕。ふと左隣を見れば、そこには眉間にシワを寄せた大牙さんが。何か掴みたそうに手をピクピクさせているが、一体どんな夢を見ているのだろう。


「大牙さん……大牙さん……」


 声をかけてもう゛〜〜とか、グルルル……と威嚇しかされない。どうしたものかと思ったその時、僕は昔どこかで出会った野良猫のことを何とはなしに思い出した。


「……んがっ……ぐるる……ん…………」


 さっきまで苦しそうにしていた顔が、一気に楽なものへと変化していく。顎、だ。顎が弱点らしい。というか、触って喜ばれる場所とでも言った方が良いだろうか。それは大きくても小さくても、ネコ科の多くは撫でられると気持ちのいい場所なのだろう。僕はワシャワシャと顎の周りに手を当ててやりながら、彼の面積が広すぎる頭頂部を指の腹で軽く掻いてやった。



「…………オヤジ……」


 オヤジ? ……ああ、お父さんのことか。もう喧嘩別れして、実家を飛び出して……僕のところで住み着いてから一度も会ってなさそうだもんな。嫌いだ何だと言っておきながら、やっぱり心配なんじゃないだろうか。起きたら今度、お父さんの話とか聞いてみようと思う。今まで何となく避けていたから、聞きづらかったんだ。


「……うわっ‼︎」


「はぁ〜……はぁっ……ふぅ…………ぐぅ……」


 そんなことを考えているうちに、大牙さんはなぜだか僕の体を腕で抱き寄せてきて――。横向きで、後ろからガバッと抱きつかれるような形で僕も布団に寝かされる。顎が肩の部分に乗せられ、彼はずっと喉をゴロゴロ鳴らして……。



 そのゴロゴロ音と振動は、他人を意図も容易く眠りの世界に落とせそうなほどの威力がある。僕は大型虎獣人の喉鳴らしによって、二度寝の道を無理矢理歩まされる事となった。



 それから二人一緒に目が覚めたのは、時計の長い針と短い針が両方とも上の方へ回る頃だった。



虎のおじさんを拾った

Comments

ネコ科のゴロゴロ音と共にずっしりとした顎を乗せられるの、控えめに言って最高ですね……

ぱぱぱんだ🐼🐾ぱぱを

顎のせ肩のせ♡

@hiroji


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