『宮田家の別荘暮らしの春秋』(5)
Added 2024-05-26 12:50:46 +0000 UTC八章 おもらしのお仕置き(54ー62) 54 次の日、弥生はお風呂場に一歩足を踏み入れると、ふと頭の中に昨日の記憶が蘇ってきて、一人で顔を赤らめた。 (私、昨日はすごいことをしたな) と思いながら、洗面器で体にかけ湯をしていると、その濡れた刺激のためか、尿意を覚えた。 (あれ?さっきまでは、そんなにおしっこに行きたくはなかったのに、急に行きたくなった……) 弥生は、今までにない自分自身の生理的反応に、我ながら狼狽した。ただ、お風呂場は薄暗いので、湯船につかっているお父さんには、その微妙な変化には気付かれないだろうと思った。しかし、その予想に反して、お父さんは何かを察したようだった。 「ん?弥生、どうかした?」 「いや、別に……」 「おしっこしたいの?」 「ち、違うよ」 弥生はお父さんにいきなり図星を突かれて、焦って思わず強く否定してしまった。 (素直に『おしっこしたくなっちゃった』と正直に言って、面倒だけど、もう一回お風呂場を出て、パンツを穿き直して、お手洗いに行っておいた方が良かったかも……) と弥生は頭の片隅で思ったが、一旦「違う」と断言してしまった手前、そうするわけにはいかなかった。それに、その時は、我慢できる程度の尿意だったので、そこまで重くは考えなかった。 弥生はさりげない素振りで、お湯につかるため片足を湯船に入れた。お父さんも、おしっこのことはもう訊かず、「よし、きなさい」と言って、両手を伸ばして受入れた。 いつものように弥生は湯船の中で、お父さんに後ろから抱きかかえられるようにして、お湯につかった。しかし、じっとしているとどうしても尿意を意識してしまって、手足がぎこちなく強ばった。 「お湯、熱い?」 とお父さんは訊いた。 「いや、ちょうどいいよ」 と弥生は答えた。お父さんは、弥生が普段と様子が違うと気付いていたようだったが、それ以上の追及はしなかった。 (これからはちゃんと、お風呂の前にお手洗いに行っとかないとな) と弥生はあごまでお湯につかりながら反省した。すでに尿意はある程度感じていたが、だからと言って、慌てて湯船から出ると、「なんだ、おしっこしたかったんじゃないか」とお父さん笑われるかも知れないと思って、弥生はあえて長い時間つかっていた。 心の中で一から百まで数を数えて、もうそろそろ出てもいいだろうと思って、 「私、もう出るね」 と言って、湯船の中で立ち上がった。 弥生は湯船から出て、床に足をつけた。その途端、急に尿意が高まった。お湯の中だとそうでもなかったのに、それはズンと下腹にきた。 (おぅっ、これは……) と思わず声を上げそうだった。当初は体を洗い終わってから、お手洗いに行くつもりだったが、この感触だと、もうそこまで我慢できる自身はなかった。 (しょうがない。今からすぐにお手洗いに行こう。脱衣所で体を拭いて、パンツを穿いて、お手洗いでおしっこをして、また脱いでお風呂場に戻ってくるって、無駄な二度手間だけど、やむを得ない……) 弥生は背後の湯船につかっているお父さんに一応は、 「私、ちょっと、お手洗いに行くね」 と肩越しに一言声をかけて、お父さんの返事も待たず、扉へ向かった。 尿意のために、ついつい前屈みになりそうだったが、切羽詰まっているとは思われたくなかったので、変に見栄を張って、さも余裕があるような素振りで、背筋を伸ばしてスタスタと進んだ。 しかし、数歩進んで扉の前まで来て、扉を開けようとノブを回そうとしたら、そこにセッケンの泡がついていたらしく、手がツルツル滑って回せなかった。 (なんだよ、これ。もうっ) 焦って慌てたせいで、ドアノブは相変わらず、手の中で虚しく空転した。 55 弥生は苛立って、腕に力をこめると、ドアノブはようやく回って、扉は少し開いた。しかし、それと同時に、股間からチュッとおしっこが少しばかりもれた。 「わわっ」 弥生は、その瞬間に限っては、恥ずかしいとは感じず、純粋に驚いただけだった。わずかな量とはいえ、まさか間に合わずに、ちびってしまうとは思ってもみなかった。 (おもらしって、嘘でしょ?) と自分でも信じられない気持ちだった。しかし、それは嘘ではなく、現実に股間からは温かいものがチョロチョロと噴き出し続けていた。 (と、止めなきゃ) と弥生は必死の思いだった。しかし、その思いとは裏腹に、一旦出始めたおしっこはなかなか止められず、それどころか、その勢いはますます高じるばかりで、内股になった太ももから、サラサラと温かい水流がすねへ伝う感触を自覚した。 「ふぁあ……」 弥生は吐息ももらし始めた。正直なところ、我慢していたおしっこを解放するのは、とても気持ち良く、のけ反って喘ぎ声を出しそうな程だった。おしっこの方は、もうお手洗いでしているのと変わらない勢いだった。弥生は立ったまま、おしっこをジャージャー出して、お風呂場の床にボトボトと音を立てて零れ落ちた。 ドアノブを無意味につかんだまま、体をグネグネと悶えさせている弥生を見て、当然、お父さんも、何かそこに異変が生じていることを悟った。 「弥生?」 お父さんは湯船につかったまま、首を伸ばして、訝し気に訊いた。 (ああ、お父さんに見られちゃった。おしっこをもらしているところを見られちゃったよぅ……) 弥生は下半身を自分のおしっこでビシャビシャにさせて、床には大きな水溜まりをつくって、その生温かさを感じながら、「どうしよう、どうしよう」と心の中で何の役にも立たない嘆きを幾度も発した。 「弥生」 とお父さんはもう一度言った。 弥生はもう泣きそうになりながら、恐る恐る振り返った。お父さんは怒ってはいなかった。困ったような顔をして、少し笑っているようでもあった。 (何て言われるんだろう……?) 弥生はそれを知りたかったが、同時にそれを知るのが怖くもあった。 「なんだ、おしっこ我慢してたのか」 お父さんは鼻で笑うような言い方だった。 「うぅ、だって」 弥生は馬鹿にされたように感じた。そして、いい年をしておもらしをしたのだから、馬鹿にされるのも当然だと思って、悲しくなって、ウグッと泣いてしまい、もうそれ以上は言葉にならなかった。泣いて相手の機嫌を取ろうとするのは褒められたことではないとは自分でも分かっていたが、一旦泣き出すと「うっ、うっ」と嗚咽が止まらなくなった。 「そんなに泣かなくったっていいじゃないか。おしっこしたぐらいで」 お父さんは気を使ったのか、もらしたとは言わなかった。 「だってぇ……」 と弥生は泣きながら、不機嫌になって、すねだした。もう駄々っ子のようになってしまった。 「もっとこっちに来なさい。それで、また、しゃがみなさい」 お父さんは湯船の中で立ち上がって、グズグズ言っている弥生に命ずるように言いつけた。弥生は素直に従って、その場にしゃがんだ。 (洗ってくれるんだな) 弥生はそう思って、お父さんの動きを横目で見ていると、お父さんはまずは洗面器のお湯を何杯もバシャバシャと扉付近の床にかけた。 「ほら、こうやって流してしまえ、それで仕舞いじゃないか」 そう言われればその通りだった。家の中の畳や絨毯の上でおもらししたわけではなく、お風呂場の中なので、水で流せば、もうそれだけで、おもらしは跡形もなく消え去った。 もし、さっき無理してお風呂場から出ていたら、脱衣所や廊下の途中でもらしていたかも知れない。そうなったら、パンツを濡らすという悲惨なことになっていただろうし、そんな姿を万智に見られたらもう最悪だった。きっと、「わぁー、お姉ちゃんが、おもらししたー」などと嬉々として囃し立てて、そんな下らないことを言って、ずっと馬鹿にしてくるのは目に見えていた。まかり間違えば、そうなる可能性は十分にあり得たのだから、もらしたのがお風呂場の中だったのは、まさに、不幸中の幸いだと言えた。 それに、もっと冷静に考えれば、このおもらしによって引き起こされた被害というものは全く何も無いのだった。 (うーむ、じゃあ、特に嘆く必要は無かったかな……。ちょっと騒ぎ過ぎたかも……) と弥生はそういう意味でも恥ずかしさを覚えた。 56 弥生は膝をかかえるようにして、小さくなってしゃがんでいた。 「洗うよ」 というお父さんの言葉に、弥生は無言でうなずいた。 そうして洗ってもらったのはいいが、お湯を洗面器で何杯もかけられ、さらにセッケンをつけた手で、下半身をゴシゴシと擦られた。 (おしっこで濡れただけなんだから、ここまで念入りにしなくてもいいのでは……) と思ったが、今の弥生はえらそうに苦情を言える立場ではないので、口には出さなかった。 お父さんの手付きはいつもより強かった。それは気のせいではなかった。 (もしかして、お父さんは、怒っているのだろうか) と弥生は少し心配になって、お父さんに股間や太ももを洗ってもらうのを、微動だにせず、されるがままに受け入れていた。 お風呂場には、クチュクチュと弥生の肌の上を撫でるセッケンの音だけが、しばらくの間、鳴り響いた。弥生はもういい加減、「お父さん、もうそのへんでいいよ」と言いそうになった。 かなりの時間が経過してから、お父さんの手の動きは弥生の太ももの上で止まった。 (終わったかな?) しかし、弥生は右横で膝をついているお父さんを見上げると、お父さんは真顔でこちらをジッと見ていたので、何だろうかと、ちょっと不審に思った。 「終り?」 「ああ、そうだよ。洗うのはね。じゃあ、セッケンを洗い流そう」 とお父さんは言った。弥生はその言い方には、やはり引っかかるものを感じた。 お父さんは、セッケン塗れの弥生の体をお湯できれいに洗い流すと、 「手を前につきなさい」 と言った。 「えっ」 と弥生は訊き返した。聞き間違えたかと思った。しかし、お父さんは、 「手を前につきなさい」 と同じことを繰り返した。 (手をつくって、どういうことだ?) と弥生は意味が分からず、ポカンとした表情でお父さんを見つめ返した。 「こうして、手を床に置いて、四つん這いになりなさい」 とお父さんは弥生の手首をつかんで、グイッと前方へ引っぱって、濡れた床の上に両方の手の平をつかされた。 「な、何?いきなり…… 「弥生はおもらしするようないけない子だからね、お父さんがお仕置きをしてあげるよ」 お父さんはそう言うと、弥生のお尻の柔らかい部分の肉を指でつまんだ。 「あうっ。……えっと、お、お仕置きって……」 「おもらしをした罰で、お尻叩きをするから、大人しくしなさい」 「ええっ?お、お尻叩きぃ!?」 弥生は、最初は聞き間違いかと思った。しかし、お父さんは自分を四つん這いの姿勢をさせようとしているので、そのように考えるしかなかった。 (で、でもお尻叩きなんて……) あまりに突然なことで、弥生はおっかなびっくりで、戸惑っていた。しかし、お父さんは、 「ほら、お尻をもっと高く上げなさい。そんなんじゃ、叩けないよ」 と言って、片腕を弥生の胴体の下に差し込んで、その下腹部の辺りを手の平でグイッと押し上げた。弥生の体は軽々を持ち上げられて、膝が浮いた。思わず、「あぅ」とのどから声がもれた。硬いお風呂場の床の上に、両肘と両膝をついて、背筋を反らして、腰を高く上げて、四つん這いの格好にさせられた。 「うう、こんな風に、お尻を突き出す格好なんて、恥ずかしいよ……」 と弥生は独り言のように小さな声でブツブツとつぶやいた。お父さんは、それが聞こえているのか聞こえていないのか、弥生の背中を手の平でゆっくりさすりながら、 「よーし、いいよ」 と満足そうだった。 57 弥生は四つん這いの窮屈な姿勢のまま、目の前の床を見つめながら、この種の行為をされることについて、思いをはせた。 お父さんから叩かれたり打たれたりされたことは、これまでの人生で一度たりともなかった。ただ、万智がお父さんの膝の上に腹這いに乗せられて、泣き叫びながらお尻を叩かれていたという情景を、弥生は見たことがあった。しかし、それも何年も前の出来事で、どこまで本当の記憶かは実に曖昧だった。もしかしたら、何かのテレビ番組で見た光景とごっちゃにしているのかも知れなかったし、あるいは、そもそも夢だったという可能性もあった。 いずれにせよ、弥生は自分がそういう目に遭った経験はなかったので。今初めて体罰を受けるという境遇に置かれて、不安と恐怖で胸がいっぱいになった。 「お、お父さぁん。こ、これ……」 「しっ。あんまり騒ぐと、脱衣所にいる万智に聞かれるかも知れないぞ」 とお父さんに言われ、弥生は今更ながら、 (そ、そうだった。万智がまだ脱衣所でくつろいでいるかも知れなかったんだった……) と気付いてハッとした。弥生はお風呂場でお父さんと二人きりだと思い込んで、結構大きな声でグズグズ文句を垂れたのを思い返した。(万智が扉の向こう側で聞き耳を立てているなんてことはないよな……)と心配になった。まさかとは思ったが、弥生はこれ以上大きな声を出さないように口をつぐんだ。 「よぅし」 とお父さんが言ったのが、弥生の頭上で聞こえた。 (うっ、いよいよ叩かれる……) 弥生は、今からどんな痛い目にあわされるのだろうかと思って、下半身を緊張させた。 背後なので見えないが、まずはお父さんは手の平で弥生のお尻を揉みしだくように撫で始めた。そして、小手調べといった感じで、お尻をピシャリ、ピシャリと五回程、軽く叩いた。 弥生はこの後、本格的にバチンバチンと打たれるのだろうと思って、歯を食いしばって、身構えていた。しかし、それはなかなか来なかった。 (どうしたんだ?やけに間を空けるなぁ……) ともどかしく思っていると、お父さんは、 「もういいよ」 と言った。 「えっ?」 「もういいよ。立ちなさい」 「もういいって……。じゃあ、これでお仕置きはおしまいってこと?」 弥生は上体を起こしながら、信じられないといった表情で訊いた。 「そうだよ」 お父さんは平然と真顔で答えた。 (なんだ、これだけか。呆気なかったな……) 弥生はホッと安心したが、肩透かしを食った気分でもあった。本当にお仕置きが終わったのだろうかと、まだ半信半疑で、不思議そうな顔でぼんやりとお父さんを見上げていた。 一呼吸おいて、弥生は「あっ」と理解できた。お父さんはきついお仕置きをするみたい言っていたが、それは全くの冗談で、ふざけて脅かしただけだったのだろう。要するに、おちょくられたのだと理解できた。 「ねぇ、もしかして、私のこと、騙して脅かしたの?」 「はは、そうだよ」 「もぅ、お父さんっ」 弥生は、痛いことをされると本気で心配した自分が馬鹿みたいに思えた。それは恥ずかしくもあったが、それよりも、お父さんのことが腹立たしく思った。弥生は怒って何か一言言ってやろうとした。しかし、そうしようとしたら、急に涙がポロポロこぼれた。 「何で泣くんだよ、あれぐらい、全然、痛くなかっただろ?」 お父さんは弥生の肩に手を置いて慰めた。しかし、弥生にはそれもまた、からかっているように感じられた。 「うん。痛くなかった……」 弥生はその点は事実を答えざるを得なかった。ただ、本当に怖い思いをしたということは伝えたかった。しかし、くやしいことに、口を開くと余計に嗚咽が出てきて、言葉にならなかった。弥生は、もはや、自分でもなぜ泣いているのか良く分からなくなって、「うっ、うっ」としゃくり上げるばかりだった。 (私、最近、泣いてばかりだな……) と情けなく思った。 58 「もう一回つかるぞ」 お父さんは言った。しかし、弥生は「いやだ」と駄々を捏ねて抗った。お父さんは、「まあ、そう言うなよ」とあやしながら、抱き上げて、半ば強引に湯船に引き入れた。結局、そのまま二人はお湯の中に体を沈めた。 弥生は少し落ち着いた。とりあえずは泣きやんだが、まだすねた素振りをしていた。いつものように、湯船の中では、お父さんは弥生の小柄な体を後ろから抱きかかえた。 「もう怒ってないね?」 「ん……。怒ってない……」 「じゃあ、よかった」 弥生は、すでに冷静さを取り戻していて、泣いてしまった自分のことを恥じていた。そして、その照れ隠しの意味もあって、あんなひどいことをされたのだから、その代りとは言ってはなんだが、ちょっとお父さんに甘えても許されるだろうと思った。自分の背中を後ろのお父さんにもたせかけて、 「支えてよ」 と頼んで、自分の頬をお父さんの胸に擦り付けるように、身を委ねた。 「なんだい、急にベタベタ甘えてきて」 とお父さんは言いつつも、弥生の今の気持ちをちゃんと理解しているようで、それ以上は何も言わず、黙って両手で弥生の体をギュッと締めつけた。弥生はそうされると、すぐにわだかまりは霧消して、また元の仲に戻れた気分だった。 (もうしばらく、こうやっていよう) 弥生はそう思って、お父さんの腕の中で目をつぶった。 しばらくの間、弥生はお父さんに抱かれていたが、お父さんのあぐらの膝の上にお尻を乗せていると、ゴツゴツと膝やくるぶしの硬い骨に当たるので、弥生は腰をモゾモゾさせて、座りの良い場所を探した。 「どうかした?」 「なんか、座り心地が悪くて……」 弥生は、体の場所を右に寄せたり、前後にずらしたり、腰をひねったりしたが、お尻がしっくりする体勢がなかなか見つかなかった。そんなことをやっているうちに、お父さんは、 「落ち着かないやつだな。じゃあ、お父さんがこうやって抱えてやるよ」 と言って、横座りになっている弥生の両足の間へ、両腕を前後から差し入れて、下から持ち上げるような体勢で、抱え直した。 お父さんの左手は弥生の背中側からお尻を支えていて、右手は下腹部から両太ももの間に潜り込ませて、ちょうど手の平が股間の丘を覆うという状態になった。 「よいしょっと」 とお父さんは両腕に力を入れて、お湯の中で弥生の体をグイッと引き寄せたので、弥生の体の側面とお父さんの胸はピタリと密着した。 水面下なので、そうされていることは直接には見えなかったが、弥生は自分の股間の上にまともにお父さんの手の平の圧力を感じて、必ずしも平静な気持ちではいられなかった。ただ、そこに特段の意図はなさそうだったので、そのようにされるがままに任せて置いた。 それだけなら大して気にはならなかったが、ある拍子にその指先の動きがクイッと強く動いたりした。場所が場所なだけに、弥生は、 (んっ……) とくすぐったいような微妙な感覚を覚えた。 目をつぶってその動きに注意を払っていると、お父さんは体を揺らしながら、一定のリズムで手の動きを強めたり、弱めたりしていて、それはあたかも股間全体をやさいしくマッサージしているかのようだった。 (何だろう……。無意識的にそうしているだけなのだろうか。それとも、わざとしている?) もしかして、そうやって触って、そこをまだ剃らなくていいかどうかを調べているのだろうかと疑ったりした。 弥生はちょっと股を閉じて、反応を試すように、お父さんの手を締めつけてみた。すると、お父さんは、 「どうした?窮屈?」 と言って、弥生の体をまた抱え直した。 弥生は、本気ではなかったが、「んんー」などと言いながら、少し体をひねって、逃れようとする素振りを形だけ示してみた。それに対しては、お父さんは、 「ほら、じっとしてなさい」 と少しきつめに言って、腕にもさらに力を込めて、背中とお腹からギュッと抱きしめて、有無を言わせないという勢いだった。 59 弥生は湯船の中でほとんど身動きできない状態になった。 (お父さん、今日はやけに強引だなぁ……) とちょっと奇妙に思いながらも、頭をお父さんの胸にもたせかけていた。 そのうち、のぼせてきたのと、眠くなってきたので、頭が少しボンヤリとしたが、やはりそれが気掛かりで、「うーむ」と心の中でうなりながら、思いを巡らせた。 そうすると、ある一つの考えに行きついた。 (こんな風に変にお尻やお股を揉まれるのって、お父さんはふざけたり、遊びのつもりではなくて、実は、お仕置きのつもりなのではないか?) という疑いを持つに至った。 その時、何の前触れもなく、弥生の頭の中に、幼稚園の頃のある記憶が思い浮かんできた。なぜかは知らないが、今日は色々とよく昔のことを思い出す日だった。 その思い出というのは、幼稚園で同じクラスの男の子がおもらしをした時の光景だった。その男の子は弥生と仲良しで、よく一緒に遊んだものだった。 前後の事情までは記憶していないが、ともかく、その男の子がおしっこをもらして、半ズボンの前を濡らしてしまった。そして男の子は、弥生たち大勢の園児の見ている前で、保母さんに服を脱がされて、下半身をスッポンポンにされてしまった。 保母さんは男の子の裸体をタオルできれいに拭くと、着替えのパンツ穿かせる前に、小さいおちんちんを指でつまむと、もう一方の手でペシペシと叩いた。 もちろん、保母さんは本気で叩いたわけではないし、顔つきも深刻な表情ではなく、遊んでいるかのように笑いながらだったが、口調だけは、「おもらしするような悪いおちんちんには、お仕置きが必要だね」とわざとらしく怖い声を作って言っていた。 当の男の子の方も、皆の前でそんなことをされて、恥ずかしそうにはしていたが、嫌がってはいなかった。むしろ、案外平気そうでニヤニヤしていたので、そういう扱いは何度もやられて、慣れっこになっていたのかも知れなかった。 弥生はそれを遠巻きに見物しながら、普段やさしい保母さんが、おもらしをした子にはそんなことをするのかと驚いて、幼心にも異様に映ったので、脳裏に刻み込まれたのだろう。 弥生は湯船の中で、半分眠りながら、薄れかかった昔のそういう情景を思い出して、 (お父さんがやたらと私のお股を触るのって、もしかして、お仕置きのつもりなのかも?) という可能性に気付いて、ハッと目を見開いた。 (お父さんはおもらしをした私に、本心ではきつい罰を与えたいと思っているのでは……。お父さんがこんな風に私の体を触るのも、『そのことに早く気付きなさい』という謎をかけているのでは……) 弥生はそのように解釈すると、自然と体は緊張で硬直して、呼吸も細くなった。その変化に対して、気のせいかも知れないが、お父さんの手の動きはさらに激しくなったようだった。それは、「ようやく、気付いたのかい?」とでも言っているかのようだった。 今からきついお仕置きをされるかもと想像して、弥生は、 (あわわ……) と慄いた。 60 一旦それに気付くと、弥生の想像は頭の中で勝手に膨らんでいった。 お仕置きは、この後すぐお風呂場の中でされるのか、あるいはお風呂を上がった後に書斎などで改めてされるのか、どちらかは分からないが、ともかく、おもらしした男の子がおちんちんをペシペシ叩かれるのなら、弥生の場合は、おちんちんの代りに、お股の辺りを叩かれるはずだった。弥生はお父さんの前で立たされて、「おもらしするなんて、悪い子だね。でも悪いのは弥生じゃなくて、ここだからね」などと言われ、両足を広げさせられ、その間の場所を何度も何度も叩かれるという状況を想像した。 現実にそんなことをされたどうしようかと考えた。まずは最初に思ったのが、「そこは、いやだ。私の大切なところだから」と大袈裟に嫌がって、逃げるという選択肢だった。 しかし、と弥生は思い返した。お仕置きが怖いという思いはもちろんあったが、その一方で、自分が犯した過ちの償いとして、お仕置きを受け入れるべきだという気持ちもないではなかった。 弥生は悩んだ。そして、 (お父さんにそうされるのは嫌か?) と自問自答した。「嫌ではない」というのが自らが返した答えだった。さらに、心の奥底からは、それ以上の思いが湧き上がってきた。 (むしろ、好きなお父さんにされるのなら、一度ぐらい、そういう体験をしてもいい) という積極的な意気込みさえ覚えた。弥生は、自分がそのような図太さを持っていることに、我ながら驚いた。 そんなことを一人で考えていると、体がカッカッと熱くなって、頭がフラフラしてきた。。それはお湯が熱いだけではなかった。お父さんはそれに気付いたのか、 「のぼせてきたね。そろそろ、出ようか」 と言った。 弥生はもう熱くて、湯船から出たいのはやまやまだったが、出たらお仕置きが始まるのではないかと恐れた。まだ心の準備が整っていなかったので、弥生は即答しかねた。 「どうする?もう出ようか?」 とお父さんは再び訊いた。 「……うん。出る」 弥生はようやく覚悟をきめて答えた。自分で立ち上がろうとしたが、それより早く、お父さんは、 「よし、じゃあ運んでやろう。つかまりなさい」 と言って、弥生を抱いたそのままの姿勢で、湯船の中で立ち上がった。 お湯の中から出されると、浮力が無くなって、体がずり落ちそうになった。弥生は両腕をお父さんの首に巻きつかせて、ヒシと抱きついた。それに合わせて、お父さんも弥生を抱え直した。お尻を下から支えるお父さんの腕に、弥生の全体重が乗った形になった。弥生はそれが気になって、内股になって、腰をモジモジさせたが、お父さんは意に介していないようだった。 「お父さん、私の体、重くない?」 「大丈夫、大丈夫」 (こんなことまでしてもらっていいのかな……) 弥生は思ったが、あまり深く考える暇もなく、そのままお風呂場の扉の前まで運ばれた。 「よし、ここで自分で立ちなさい」 お父さんは弥生をそこに下ろして、二本足で立たせた。そして扉を開いて、「さあ」と言って、弥生を外へ促した。 弥生は振り返りならが、お風呂場から脱衣所へ片足を踏み入れた。 「じゃあ、先に出るけど、お父さんはどうするの?」 「お父さんは、もうちょっとつかってから出るよ」 「うん、わかった」 弥生はその扉を閉めると、ただ一人、脱衣所に佇んた。それは毎日の習慣のはずだが、今日に限って、置いてきぼりにされたかのような錯覚を覚えた。鏡に映っている自分の裸体をボンヤリ眺めながら、 (とりあえずは、お風呂場でお仕置きはされなかったな……) と当てが外れた気持でいた。 61 お湯に長くつかっていたためか、あるいは興奮のためか、弥生の体は熱く火照っていた。とりあえず、濡れた肌をタオルで拭きながら、 (お仕置き、されると思ったんだけどな……。私、勝手な勘違いをしてたのかな?) と一人、つぶやいた。しかし、 (うーむ……。いや、でも、後からされるのかも知れない。寝る前に、書斎に呼ばれて、そこでされるのかも……) とも考えられて、まだどちらとも結論を出せなかった。 弥生は何だか、じれったくなって、いっそ、お父さんに、お仕置きをするのかどうかを問いただしてみたい衝動にも駆られた。しかし、まさかそんなことはできるはずもなく、もどかしい気持ちになった。 (まあ、いずれにせよ、今夜中には分かることだ) と自らを慰めた。 脱衣所はシーンと静かで、寂しいぐらいだった。その辺りにも人の気配はないので、万智はもうすでに居間か寝室へ戻ってしまっていたらしかった。 (万智には、私のおもらしのこと、ばれていないよな……。そのはずだけど、お風呂の中の会話を全部盗み聞きした上で、居間に戻ったという可能性もあるよな。まだ完全には安心はできない) おもらしして、泣いてしまったなどいう事実を知られたら、お姉ちゃんとしての立場がなくなるのは確実だった。弥生はお風呂からは出たが、色々と気掛かりなことがあって、胸がいっぱいだった。 ただ、今更焦ってもしょうがないので、ゆっくり時間をかけて、体を拭いた。 まだ熱かったので、しばらくパンツ一枚だけの裸のまま、自分でうちわで扇いで、体を冷やした。 (ふう、じゃあ、戻るか) 弥生はパジャマを身に着けた。そして、ちょっとドキドキしながら、廊下を歩いて、居間に戻った。しかし、その中をのぞくと、そこは無人だった。 (万智はもう寝たのなか?) 今度は、弥生は二人の部屋に向かった。 その襖を開けると、敷いてある二組の布団の右側に万智はすでに横たわっていた。電灯はまだ点いていたが、万智はもう寝かかっていた。 「あ、お姉ちゃん。お風呂、長く入ってたんだね」 と万智は眠そうな声で言った。 「う、うん……」 と弥生は答えながら、何かいつもと違う様子はないかと、万智の顔をのぞき込んだ。 「どうしたの、お姉ちゃん。私の顔をジロジロ見たりして」 「い、いや、別に……」 弥生は、万智が普通と同じ調子だったので、おもらしのことはばれていないようだと判断して、その点はようやく安心できた。 十五分後、二人の部屋の中は、照明は消えていて、橙色の小さい豆電球だけが点灯していた。 横では万智はすでに安らかな寝息を立てていたが、弥生は薄暗い中で、目をパッチリ見開いてた。 弥生は、お父さんが自分を呼び出すために、この部屋に来ることを予想していた。いつ何時、部屋の襖がガラリと開かれて、お父さんが顔をのぞかせて、「弥生、お父さんの部屋に来なさい」と呼び出されるかも知れないと、心配していた。もっとも、その感情は心配というよりも期待といった方が正確のようだった。ともかく、そういう理由で、ある程度の眠気はあったが、あえて寝入らないように我慢していたのだった。 ただ、布団をかぶって、何もしないでぼうっとしているのは退屈なので、弥生は色々と考えを巡らせた。昔の記憶をまた思い出して、万智がお父さんにお尻を叩かれている情景を頭の中でもう一度再現した。 62 暗く静かな部屋の中なので、その情景は弥生の脳裏により鮮明に蘇った。 あぐらをかいているお父さんの膝の上で、万智は体を長くしてうつ伏せに横たわっていた。すでに万智は恐怖のためか、「うっ、うっ」と泣きじゃくっていた。スカートは背中までめくられて、可愛いアニメキャラクターのプリントパンツも太ももまで下ろされていて、小振りなお尻が丸出しにされていた。 お父さんは右手を振りかぶって、その柔らかく丸い膨らみへ素早く打ち下ろした。ビシと鋭い音が鳴って、万智は「あっ」と叫んで背筋を反らせた。その後は、お父さんは無情にも、ビシビシ連続的に打って、万智の剥き出しのお尻は瞬く間に赤く変色してしまった。 それを見ているだけの弥生も、辛い気持ちになった。 しかし、と布団の中の弥生は思った。 (しかし、本当にそんなことあったのかな?万智は小さい時からそんないたずらっ子でもないし、お父さんも激しく怒るような性格でもないし……。ひょっとして、それって全部、私の想像の産物なのかも……) それを気にしつつも、その想像をさらに続けた。 弥生は自分が同じ目に遭う情景を思い描いた。想像の中では、いつの間にか、お父さんのあぐらの上に横たわっているのは、万智から弥生に入れ替わっていた。パジャマのズボンを膝まで下ろされ、パンツをずらされて、お尻を剥き出しにされた。お父さんはしばらくの間、その膨らみを愛でるように撫で回していたが、やがて、「じゃあ、叩くぞ」と宣言した。弥生は「うん」とうなずいた。その直後、お父さんの右手が振り下ろされた。 弥生は寝床の中でそんな想像に耽っていると、変に興奮してしまい、目がギラギラと冴えてきた。 (呼び出しがあるなら、もうお父さんもお風呂を出てからかなりの時間が立っているから、もうとっくに来てなきゃおかしいよな) それが気掛かりになって、もう辛抱できなくなった。ついに、様子を見に行こうと思った。 弥生は万智を起こさないように、そっと布団を抜け出して、音を立てないように襖を開けた。廊下をソロリソロリと歩いて、その曲がり角からにゅっと首だけを出して、お父さんの書斎兼寝室の様子を外側からうかがった。その部屋の中では、電灯はすで消えているようで、物音も全くしなかった。 (お父さん、もう寝ているのか。なぁんだ。私、お父さんに呼び出されるのを今か今かと待っていたのに……。一人で身構えていて、なんか馬鹿みたい。私ももう寝よう) お仕置きを潔く受ける覚悟を決めていたのに、結局は今夜は何事もなく、弥生は安心したような、がっかりしたような気持ちになった。 (お父さん、私の粗相を許してくれたのかな?それとも、初めから私の一人相撲だったのか……) と廊下をトボトボ歩きながら思った。 弥生は部屋に戻って、布団の中にもぐって、目を閉じた。寝ようとしたが、すぐには寝付けなかった。 ぼんやり天井を見上げてジッとしていると、股間の辺りに、さっきお父さんに湯船の中で撫でられた時の感触がじわっと蘇ってきた。 弥生の右手は自然に動いて、パジャマのズボンの上から、そこを手の平でギュッと抑えた。そのままの姿勢で、左右にゴロゴロ寝返りを打ったり、股を開いたり閉じたりして、そのムズムズする感触をごまかしていたが、そのうち、いつの間にか意識を失った。弥生は朝まで夢も見ずに眠った。