『宮田家の別荘暮らしの春秋』(3)
Added 2024-05-26 12:47:41 +0000 UTC五章 お父さんによる剃毛(35ー41) 35 その夜、弥生はお風呂に入るのをちょっと躊躇した。その日のうちに陰毛を剃るつもりだったのに、その機会を失って、少し伸びたままの状態だったので、裸を見せるのが心配だった。しかし、風邪を引いているわけでもないのにお風呂をやめるというわけにもいかず、弥生はやむなく入ったが、どうしても腰の引けた姿勢になってしまった。 いつものように、お父さんと一緒に湯船につかったが、幸い、お父さんは何も気付いていない様子だった。 (明日こそは、機会を見つけて、剃らなきゃな) 弥生は湯船の中で、目をつぶって思った。 しばらくそうしていると、背後からお父さんは 「弥生、一旦、出なさい」 と言った。今までそんなことを言われたことはなかったので、弥生は(えっ?)と思った。 (出るの?なんで?お父さん一人でゆっくり入りたいのかな?) 弥生はどうもお父さんの本意が分からなかったが、ともかく、「出なさい」と言われたので、 「う、うん。分かった。出る」 と返事して、湯船から出た。扉を開けて、お風呂場から出て行こうとした。すると、お父さんは、 「あ、そういう意味じゃないよ」 と言った。 (は?どういうこと?) と弥生は振り返って、意味が分からず混乱した。 「ちょっと、そこで待ってなさい」 とお父さんは言って、自分も湯船を出て、床の上に突っ立ている弥生の横を通り過ぎて、扉を開けて、お風呂場から脱衣所へ出て行った。 (どういうこと?) と弥生が思う間もなく、お父さんは再びお風呂場に戻ってきた。その右手には何かのチューブの容器とT字剃刀が握られていた。 (あ、剃刀だ……) 弥生はそれを目ざとく見つけて、心中、只ならぬ予感を覚えた。 お父さんは弥生の正面に立って、見下ろした。全裸の二人は「……」と見つめ合った。 弥生は、状況を理解できないまま、間が持たなくなって、お父さんの顔を見上げたり、その手に持っている剃刀に注目したり、視線をキョロキョロさせた。 「よし、いいね?」 お父さんは一言言うと、弥生の真ん前で膝をついて屈んだ。 (何が?) 弥生は思いながら、その動作を観察していると、お父さんはチューブの蓋を開けて、その中身を少量、指先に取った。 「お、お父さん、それは?」 弥生の声は我にもなく震えた。 「これはね、剃刀を使う時のクリームだよ」 「お父さん、ヒゲを剃るの?」 と弥生は訊いたが、お父さんはそれには答えなかった。 (違うの?じゃあ、何……?) しかし、すでに弥生の脳裏にはある考えがよぎった。心の奥底では、そういうことなのだろうと半ば確信していた。ただ、それを認めるのは恐ろしかった。弥生の胸はドキドキと高鳴った。 お父さんは、そのクリームのついた指先を弥生の鼻先に突き出して、 「ほら、嗅いでごらん」 と言った。弥生は顔を近付けて、鼻をクンクン鳴らした。甘い香りが鼻孔をうった。 「いい匂いがする」 「そうだろ」 「……それをどうするの?」 弥生は消え入りそうな声で訊いた。しかし、お父さんは、やはり、それには直接には答えず、 「じっとしてて」 と言って、右腕を伸ばして、指先を弥生の股間へ近付けた。 「わっ。お、お父さん、何するの!?」 弥生は思わず一歩後ずさった。 「じっとしてなさい。やさしくしてあげるから」 お父さんはその腕を伸ばしたままの姿勢で言った。 (やっぱり、そういうことか。ううっ。ど、どうしよう……) 弥生は自分の予想が的中したものの、やはりアタフタと狼狽した。瞬間的に、弥生の頭の中には色んな思いが去就した。いっそ、この場から走って逃げようかとさえ思って、チラリと背後の扉の方を見た。しかし、結局は、弥生はこの運命を受け入れた。感情的にならず、理性的に考えて、 (今この場は、そうするしかない) と諦観するだけの判断力がすでに弥生には備わっていた。 弥生は勇気を出して、後ずさった足を戻して、再びお父さん一歩近付いた。 お父さんは無言でニコリと微笑んだ。 その指先は弥生の股間にピトッと接触した。 36 お父さんの指先は、弥生の股間の表面をクルクルと動いて、肌の上にクリームを伸ばしていった。 「んぁ……」 弥生はあまりのことに、頭の中が真っ白になった。自分で直視するに絶えず、そこから視線を逸らせて、口を半開きにして、心持ちあごを上げて、お風呂場の天井を見るともなく見つめた。 (ああ、私、お父さんにお股を触られている……。こんな風に触られたら、毛が生えてるの、絶対に気付かれてるよ……) ただ、お父さんは何も言わず、黙々と股間の丘の全体へクリームを塗りたくっていた。 「くすぐったい?」 とお父さんは顔を上げて、弥生に訊いた。 「うん……」 もちろん、くすぐったいのはくすぐったかったが、問題はそのような肉体的感触というよりも、精神的なものだった。 (うう、私、お母さんにだって、こんな所をこんな風に触られたのって、幼稚園ぐらいの時が最後なはずだよ。しかも、それは、体を洗うためだったし。お父さんに、直にお股を触られるなんて……。しかも、陰毛を剃るためのクリームを塗るために……。) 弥生はどんな顔していいのか分からなかった。怒ったようにふて腐れたらいいのか、ありがとうと感謝したらいいのか、どうしようか決めかねて、顔つきも心の中もオロオロしていた。 しかし、お父さんの方は相変わらず、淡々と無言で塗っていくだけで、「もう生えてるね。弥生も、大人だね」などとからかうようなことを言ったりはしなかった。その気遣いは弥生にも伝わって、その点は感謝したい気持ちだった。 ただ、お父さんの手付きは、わざとではないだろうが、かなり力強く、クリームをグリグリと肌に摺り込んだ。ヌチャヌチャと音がたって、扉の外にまで聞こえそうだった。 (こんなにまでして、ご丁寧に塗り込まなければいけないものなのかな……) 弥生はその何とも言えない感触に、声を抑えきれなかった。 「ふぁ」 「もうちょっと我慢しなさい」 「だって、くすぐったい……」 弥生は消え入りそうな声で言ったが、正確にはくすぐったいというよりは、何とも言えない感情に襲われつつあった。体の奥がムズムズしてきて、変な気持ちになりそうだった。ちょっとでも油断すると、「あっ……」という艶めかしい声がもれそうで、弥生は、それ以上してほしくないような、してほしいような、複雑な心理だった。 かなりの長い時間が経過したように思えた。 (まだするの?お父さん、そこを触って、クリームを塗ることを楽しんでいるじゃないの?) 弥生は、必要以上に弄られているような気がして、とうとう口を開いた。 「お、お父さん……」 「何だい?」 「えっと、あの……。そ、そこを剃るんだよね?」 弥生はつい勢いで、単刀直入にそんな風に訊いてしまった。事ここに至れば、それはもうお互いに分かり切ったことであって、わざわざ口に出して確認するなど愚かしいと分かっていたが、成り行き上、思い切って訊いた。 「そうだよ」 とお父さんは、事も無げに言った。 「私、自分でできるけど」 「お父さんがしてあげるよ。こんなところを自分でしたら、ケガするだろう?」 「ん……」 「弥生、今まで、クリームを使わずに、剃ってたんだよね?」 「うん」 と言うように、弥生は無言でうなずいた。 「剃刀だけじゃ肌を痛めるからね。だから、ちゃんとこういうものがあるんだよ。ほら見てごらん」 とお父さんはチューブを弥生に渡した。 弥生は股間にグリグリと刺激を受けながら、そのチューブ容器を手に取ってながめた。表のラベルには英語でシェービングクリームと書いてあるのは読めたが、今の弥生の心理状態では、それ以上の細かい文字を読む余裕はなかった。 37 「よし、こんなもんかな」 とお父さんはようやく塗る作業をやめた。 (いよいよか) 弥生はチューブの容器から視線を外した。 お父さんは手を洗面器で洗うと、T字剃刀を持って、弥生の方を見た。それは「じゃあ、始めるよ。心の準備はいい?」と訊いているようだった。弥生も無言でうなずいて、「うん、いいよ」という顔をした。この辺りの呼吸は以心伝心で通じた。 お父さんは膝をついたまま、さらに一歩にじり寄って来て、左手を回して弥生の尾骶骨の辺りに置いた。 「体を動かしちゃダメだよ」 と言いつけておいて、お父さんはさらに顔を近付けた。弥生は見下ろすと、自分のお腹とお父さんの鼻先はほとんど接するばかりの距離だった。 お父さんは左手の人差し指と親指を使って、弥生の股間の皮膚をピンと伸ばすように張って、そこにそっと剃刀を置いた。 「……」 弥生は呼吸を止めた。 お父さんはゆっくりと剃刀を上から下へ動かした。それは音もなく肌の上をスッと滑った。 (ちゃんと剃れたかな?) 弥生はとても気になった。お父さんも目を細めて、剃刀と肌を見比べていた。弥生は「剃れた?」と訊きたかったが、そんなことを訊くのは気が引けた。しかし、お父さんは剃刀を洗面器に突っ込んでジャブジャブと濯いだので、おそらく無事に剃れたのだろう。 お父さんはまた剃刀を弥生に近付けた。再度左手でクリームを肌に塗り広げると、剃刀を接触させて、ゆっくりスゥッと動かすと、剃刀を放して、その跡を確認すると、剃刀を洗面器で濯いだ。お父さんはその繊細な動作を何度も繰り返した。 弥生は、他人に股間の毛を剃ってもらうなど、最初は恥ずかしく、そして怖くもあったが、実際にやられてみると、少しくすぐったいだけで、痛くもなんともないので、もう安心してお父さんに身を委ねた。自分の股間の所から、シュッシュッという小さな音が聞こえる毎に、弥生は、 (ああ、ちゃんと剃れているんだな) と思った。 ただ、その作業が繰り返されているうちに、お父さんの左手の指先が置かれる場所は徐々に下がってきて、ついにお股の丘の所にまで至って、その隆起した高低差を抑えつけるように、指先をグッと圧をかけた。 「あ、あう」 と弥生はつい声を出した。 「どうした?」 「お、お父さん、そこは……」 「じっとしてなさい」 「でも、だって」 「こんなややこしい所を自分でしたら、きっとケガするぞ。お父さんがやってあげるから」 お父さんはそこの場所を指先で抑えながら言って、弥生の我儘を許さなかった。 (お父さん、珍しく、やけに強引だな……) と弥生は思った。しかし、自分の方に、剃刀を無断で使ったという非があるので、あまり強くは出られなかった。弥生はそれでもまだ何か言おうとしたが、その時、剃刀が股間の割れ目の間近の皮膚に接触したので、もう何も言えなくなって、身をすくめるようにして押し黙った。 お父さんの指先は、弥生の股間の割れ目をグイっと左右に開いた。弥生はゴクリと唾を飲み込み、グッと両方の拳を握りしめて、直立不動の姿勢になった。その辺りの敏感な肌の表面を剃刀はソロソロと這い進んだ。弥生の背筋にはゾクゾクしたものが走った。 38 弥生は、上から見下ろしていると、T字剃刀の先端部分は自分の股の下に隠れてしまっていた。 (そんなに奥の方まで剃るわけ?) と弥生は、両足の間に剃刀を差し込まれながら、意外に思った。 (とういうことは、そんな所にまで毛が生えていたってことだよね。そうだったのか……。なんせ、自分ではあまりよく見えないからな……) 弥生は、今まできちんと剃っていたつもりだったのに、実際には部分的にしか処理できておらず、自分で気付かないだけで、これまでずっと、お父さんには剃り残した毛を見られていたのではないかと心配になった。 「弥生、足を開いて。やりにくいから」 「こう?」 「もうちょっと」 弥生は肩幅ぐらいに両足を開かされた。 お父さんの持つ剃刀はさらに股の奥へ進んだ。弥生の視点からは、剃刀は左右の太ももの間へ潜り込んで、胴体のほとんど真下にまで到達したようだった。 (そんな奥まった場所にまで剃刀を当てる必要があるのだろうか……) 弥生はそれを訊きたい気もしたが、実際に訊いたら、「そうだよ」と言われるのがオチかと思って、その質問は飲み込んだ。また、剃られるのを嫌がっているか、不満に感じていると誤解されても困るので、大人しく黙っていた。 お父さんの剃刀を持つ手は、股の奥へ奥へと進んだ。その辺りは弥生自身でも直接見たことはほとんどない領域だった。弥生はくすぐったさやらで、いたたまれない気持ちになって、 「ふっ、ふっ」 と喘ぎ声をもらしながら、両手の拳を無意味に空中で泳がした。 ただし、お父さんは慣れた手つきで、その入り組んだ狭い場所を、首を曲げて下からのぞき込むようにして、剃刀に角度をつけて、器用な手付きで小刻みにサッサッと剃り続けた。 「お父さん、あの、そこまでしなくてもいいんじゃないかな……」 「まあ、折角だから。全部きれいにしたらいいじゃないか」 お父さんは戸惑う弥生を宥めるように言った。 弥生からは剃刀がどう動いているかは見えず、感覚のみが頼りだった。皮膚の上を剃刀の刃でスッと撫でられる感覚と、お父さんの太い指が股間の丘や割れ目の辺りの肉を抑えつける感覚が、交互に続いた。 弥生は拳をさらに固く握って、体を動かさないように耐えていたが、そのうち自分でも説明のできない場違いな笑いが込み上げてきて、 「ふひひっ」 と噴き出してしまった。 39 「こんなもんかな」 とお父さんは言って、手の動きを止めた。 「終り?」 「うん、もう足を閉じていいよ」 弥生は普通の姿勢に戻った。 お父さんは洗面器の中で剃刀をバシャバシャ洗った。 弥生は、両足の間をクリームの残滓と毛の切れ端に塗れさせたまま、それを眺めていた。 「よし、次はそっちを洗い流そうか」 お父さんは洗面器のお湯を入れ換え、それを弥生の前に置いた。 (お股を洗いなさいってことだな) と弥生は理解して、床に膝をついて、手を伸ばして、洗面器を持ち上げようとした。しかし、お父さんは、 「待ちなさい」 とそれを押し留めた。 「何?」 「足を開いて」 弥生は床に両膝をついたまま、再び開脚させられた。そして、お父さんは弥生の両膝の間に洗面器を置き直した。 「何をするの?」 「洗ってあげるよ」 「えっ?」 お父さんそう言うと、手の平で洗面器のお湯をすくって、弥生の下腹部にパシャパシャとかけ始めた。 「お、お父さん。私、自分で洗うけど……」 「洗ってあげるよ」 「で、でも……」 「まあ、まあ、いいから、いいから」 二人でそう言い合っている間も、すでにお父さんの手は弥生の両足の間に差し込まれて、そこからはピチャピチャと水音が立ち始めた。 (剃るのをお父さんにやってもらうのはともかく、クリームを洗い流すのまではしてもらっていいのかな……。いや、いいはずはないよ。こんなことをされるのって、まるで小さい子の扱いじゃないか。私、もう毛が生えている年齢なのに、そんな扱いをされるって、もうなんかチグハグだな……) 弥生は内心では戸惑っていたが、面と向かって「いやだから、やめて」とは言い出しかねた。 お父さんは弥生の困ったような表情を見て、 「こんなのされるの、いや?」 と訊いた。弥生は無言でコクンとうなずいた。 「どうして?」 「だって、こんなのって……」 「こんなのって?」 「……こんなのって、小さい子供みたいなんだもの」 「弥生はまだ子供だよ」 「違うよ。私はもう大きいよ」 「そうかな。お父さんから見れば、まだ子供だよ。だから、お父さんが洗ってもいいじゃないか」 「うう……」 弥生はさらに何か言おうとした。しかし、何というべきか迷った。その間にも、お父さんの手は弥生の股間を縦横に撫でていた。 (でも、やっぱり、こんなの変だよ。なんか、すごく気まずい。それにしても、お父さんは平気な顔をしている……。ふーむ、お父さんとしては、こんなことをしても、特に何も思わないんだ。じゃあ、私も変に恥ずかしがることないかな。あ、でも、こんな姿を万智に見られたら、絶対バカにされるだろうな) 弥生はそのような愚痴とも不平ともつかないようなことをのどの奥でブツブツ言っていると、そのうちに、お父さんは、 「はい、もう、洗い終わったよ」 と言った。そして、最後の仕上げという感じで、洗面器で何杯もお湯をお腹と背中にザアザアとかけてもらった。弥生の意思とは裏腹に、結局の所、不本意ながらも、最後までお父さんに洗ってもらったということになった。 40 「よーし、これで、いいかな。もう一回、湯船に浸かっておく?」 「いや、いい。私、もう出る」 弥生はもう早くお風呂から出たくてしょうがなかった。 「本当にいい?」 「うん」 「大人しくジッとできて、えらかったじゃないか」 お父さんは褒めて、頭をポンポンとした。弥生は今になって、改めて恥ずかしさが込み上げてきた。陰毛を剃ってもらい、さらに洗ってもらうという一連の作業が終わって、弥生はそそくさと逃げるようにお風呂場から出ようとした。しかし、その時、(あ、そうだ)と急に思い立って、 「お父さん、してくれてありがとう」 と振り返って、一応はお礼を言った。 「ああ、いんだよ。後で自分でも、剃ったところ、確認してごらん」 お父さんはそんな露骨なことを言ったので、弥生はまた顔を赤らめた。その顔を見られないように、急いでクルリと振り返って、お風呂場の扉を開けた。 脱衣所で一人になった弥生は、「ふう」と息をついた。 タオルで体の水滴を一通り拭き取ると、鏡の前に行き、早速、お股を自分で確認した。誰も見ていないのをいいことに、 「よいしょっ」 と言って、片足を上げて、足の裏を洗面台に乗せるという大胆な開脚の姿勢になった。弥生は自分でも下品だと思ったが、微妙な場所なので、そうでもしなければ見えないので、やむなくそうした。弥生は目を凝らして、鏡の中の自分のその場所をのぞき込んだ。 (おお、きれいだ) 両足の間は生まれたままの状態で、万智のそこと同じ状態だった。 見かけだけでなく、指で触るとツルツルで、今までにない程に滑らかだった。弥生がこれまで自分でいい加減なやり方で剃ったのとは触り心地が全然違っていた。弥生は、股間の奥の方にまで指をやって、いつまでもそこら辺りをキュッキュッと撫でて、肌ざわりを堪能していた。 しらばくの間、その場所を触ったり、眺めたりしていたが、お風呂場の中からガタンと音がして、 (あ、お父さん、もう上がってくるな) と思って、慌てて足を床に戻した。 弥生は慌ててパンツを穿いた。剃刀で綺麗に剃られた肌にパンツの生地が接すると、それはスベスベと変な感触で、慣れるまでしばらく時間がかかった。 41 弥生はお風呂から出た後も、興奮はなかなか収まらなかった。 床についてからも、その興奮は続いて、夢の中にまで、お風呂場でされたのと同じ情景が出てきた。そのせいで一晩中、眠りが浅く、朝になって目覚めた後も頭はボンヤリしていた。 弥生は布団の中で起き上がらずにウツラウツラしていると、すでに布団を畳み始めた万智に、 「お姉ちゃん、もう朝だよ」 と起こされる始末だった。万智は相変わらずいつも元気だった。 寝不足気味のまま、朝食のため居間に入ると、すでにお父さんは食卓に座っていて、新聞を広げていた。それはいつもと朝の風景だった。 弥生は昨夜のことがあるので、お父さんと顔を合わせるのが恥ずかしい気がしたが、お父さんの方は新聞からチラリと顔を上げて、 「おはよう」 とあいさつをした。弥生も、 「おはようと」 と返したが、何となく気まずくて、お父さんの方を正視しかねた。ただ、お父さんは何事もないかのような無表情だった。その姿が変にわざとらしく、弥生はちょっと笑いそうになった。 (今、この場所には万智もいるからね……) しかし、お父さんの様子があまりに自然で、演技であるとは思えなかった。 (昨夜のことって、もしかして夢だった?) 弥生は一瞬そんな風に考えてしまった。しかし、弥生は、ツルツルになったお股の感触を思い出して、 (いや、昨夜のあれは夢じゃないよ) と改めて思った。弥生の方も、何事もなかったかのように自然に振る舞った。 お父さんに陰毛を剃ってもらうというのは、年頃の弥生にとっては、甚だ大変な思いをさせられる体験だった。 しかし、後から後から生えてくるのが陰毛の厄介な所で、好むと好まざるにかかわらず、一回したらそれで完了というわけにはいかない。弥生は表面的には涼しい顔をしていたが、その二日後には、 (もうそろそろ、また剃らないとな) と気掛かりになってきた。 (さて、今回はどうしたものか。剃るなら剃刀を使った方がいいのだけど、前回怒られたから、無断使用するわけにはいかないよな。でも、お父さんに『剃刀、貸して』ってなんて言い出しにくいな) しかし、あまりグズグズしていると、陰毛の方はすぐに伸びて目立ってしまう。お風呂場で万智に見つかって、からかうようなことを言われるのはイヤだし、お父さんに見つかったら、「伸びているから剃ってあげよう」と言われて、また剃ってもらうという破目になるかも知れない。 (しょうがないから、お父さんい頼んで、借りようか、そうするしかないよな) と一旦は思った。しかし、実際にはそんなことは、なかなか言い出せず、ズルズルと先延ばししてしまった。 その翌日、もういい加減剃らないと、目立って見つかる危険が出てきた。 (もう、本当に、そろそろ頼まななきゃ) 弥生は勇を鼓して決めた。 六章 書斎でのお手伝い(42ー48) 42 ちょうどそんな頃合いのある午後に、 「弥生。お父さんの仕事、手伝ってくれ」 とお父さんに頼まれた。 「仕事の手伝い?いいよ。何したらいいの」 「別に難しいことじゃないよ。こっちに来てくれる?」 お父さんは弥生を書斎に導いた。 書斎はお父さんの個室兼仕事場になっていて、そこには弥生と万智は無断で立ち入ってはいけないという約束だったので、弥生は少し緊張しながら、その部屋へ足を踏み入れた。 「この図面に消しゴムをかけて欲しいんだよ」 お父さんは机の上に並べてある図面を指し示して言った。 「なんだ、そんなことか」 弥生はどんな難しいことを頼まれるのかと幾分か身構えていたが、ペンで清書した図面に残っている鉛筆の下書きを消すという簡単な作業だった。 もちろん、断る理由はないし、むしろ、家のことで自分が少しでも役に立てるのはうれしいので、弥生は声を弾ませて、「いいよ」と答えた。 お父さんと弥生は机の前に二人並んで、一緒に消しゴムを動かした。大事な図面なので、破らないように慎重にした。十数枚もあったが、二人で手分けしてすると、三十分程で終わった。 「これ、終わったよ」 弥生は最後の一枚をお父さんに渡した。 「ありがとう。これで全部、完成だ」 お父さんは、図面を束にまとめて、封筒に入れて、鞄にしまった。鞄の金具をガチャガチャさせながら、「あれは確か三日前だったよね?」とさりげない口調で、あたかも独り言のように訊いた。 「あれって?」 と弥生は訊き返したが、それが何のことかは察しがついた。 「あれだよ」 (……) 弥生はしばらく黙っていたが、気付かない振りをするのも変かと考えた。躊躇しつつも、 「えっと、つまり、剃ったこと?」 と自らそのことを口にした。弥生は恥ずかしさで顔が火照った。 「そう」 (お父さんは、いきなり何を言い出すんだろうか……) 「もうそろそろしきゃね。今日ぐらいに」 とお父さんは言った。言っていること自体は尾籠だが、陰の無い明るい口調だったので、弥生はその雰囲気に引きずられるように、 「そ、そうだね。私も、そう思ってた」 と思わず本音をもらした。 「いい物を見せてあげるよ」 「いい物?」 「うん、これだよ」 お父さんは机の引き出しを開けて、小箱を取り出した。その蓋を取って、内部から小さな器具を取り出した。 「それは何?」 「剃刀だよ」 「剃刀?」 弥生は顔を近づけた。それは本物の剃刀とでもいったらいいのだろうか。T字の剃刀ではなく、小型の包丁のような形状で、全体的に金属製で、照明の光をキラリと反射していた。それは散髪屋さんで使われているものだというぐらいの知識はあったが、実物を見たのはおそらく初めてだった。 「ほら、手に持ってごらん」 「いいの?」 「刃を触らないように、気を付けなさい」 「うん」 弥生はその剃刀をそっと手に取ると、小さい割には金属の重さがズッシリきて、思わず「おお」とうなった。 その剃刀の鋭利な刃先を眺めているうちに、ホラー映画で殺人鬼がこんな剃刀を振り回して、犠牲者の首をカッ切るという場面を頭の中で連想してしまい、恐ろしい気持ちになって、持っていた剃刀をすぐに元の場所に置いた。 「なんか、これって、怖いな」 「きちんと使えば、大丈夫だよ」 お父さんは弥生の大袈裟さな反応を笑った。 「これ、いつ買ったの?前の買い物の時?」 「いや、もともと持っていたんだよ。でも、万智が見つけて、弄ったりすると危ないから、机の奥に隠していたんだよ」 「ふーん、なるほどね」 「万智には、これ、内緒だよ」 「うん」 「じゃあ、これを使ってみよう」 今度はお父さんがそれを手に取って言った。 43 (使うっていうのは、つまりは、剃るために使うんだよな。私の体の毛を剃るために……) 弥生はそう理解したが、口には出し兼ねてモジモジしていた。 「怖い?」 「怖くはないよ」 「いいね?」 「……うん」 弥生は本当は少し怖かったが、見栄もあって「嫌だ」とは言えず、微かに首を縦に振った。 お父さんは「じゃあ」と言って、机の引き出しから、クリームのチューブを出した。それを見て、弥生は(はて?)と首をひねった。 (剃るっていうのは、今ここで剃るって意味なの?今夜、お風呂で剃るんじゃなくて?) 「どうかした?」 「お、お父さん、今、ここでするの?」 「そうだよ」 「お風呂場でするんじゃなくて?」 「一回、明るい場所で試しておいた方がいいから。なんせ、お父さんも他人にするのは初めてだから」 「そうなの……」 弥生はそう言われればそうした方がいい気もしたが、いまいち釈然としなかった。 (お父さん、ここにクリームを用意していたってことは、初めから剃るつもりでいたんだよな。ということは、図面の消しゴムかけなんていう他愛もない仕事を手伝わせたのも、この部屋に私を呼んで二人きりにさせるためだったんだろうか……。多分、そういうことだろうな……) 弥生はそのように推理した。しかし、かと言って、騙されたという認識は無く、 (うーん、まあ、いいかな……?) という位の心境で曖昧な表情を浮かべていた。 弥生はそんな顔で何となくお父さんの顔を見上げていると、お父さんは、 「じゃあ、脱いで」 と言った。 「あ、うん」 弥生はそう返事はしたものの、 (こんなところで脱ぐのか) と思った。上着のシャツのボタンをつまみながら、お風呂場でもない普通の部屋の中で服を脱ぐのは変な気分がした。 お父さんは弥生の心配そうな顔を見て、安心させるためか、 「万智は来ないよ」 と言った。お父さんの言う通り、この書斎は子供達は立ち入り禁止という約束だったので、いきなり万智が入ってくるということは無いはずだった。 そうは言われても、弥生は内心、葛藤があった。年頃の少女としては、ちょっとは恥じらった素振りを見せた方がいいのではないかと思った。しかし、かと言って、あんまり過度にイヤイヤをすると、本気で嫌がっていると誤解されかねず、我儘な奴だとは思われるのは避けたかった。 弥生はそういうアヤフヤな状態で、お父さんの顔色をうかがいながら、ともかく、脱ぎ始めた。いつもの習慣で上着のボタンに手をかけると、お父さんは、 「上は脱ぐ必要ないよ。お風呂に入るんじゃないんだから」 と注意した。 「あっ、そうだね。えーと、じゃあ、スカートだけ脱げばいいのかな」 しかし、スカートを脱ごうとして、その必要はあるのだろうかと思い返して、「ねえ、スカートは脱いだほうがいい?」と弥生は顔を上げて訊いた。 「どうしようか。脱がなくてもできるけどね。まあ、脱ぎたければ脱ぎなさい」 「えーと、どうしよう」 弥生はどうしていいか分からず、相変わらず煮え切らない態度で、「どうしようか」とお父さんにすがるような視線を向けた。お父さんはまどろっこしいと感じたのか、 「じゃあ、まずは寝なさい」 と言って、弥生を体を抱き上げて、畳の上に横たわらせた。弥生はいきなり手荒な扱いをされて、「わあっ」と驚いたが、抗うのはグッと我慢した、 さらにお父さんは無言で、仰向けになっている弥生のスカートをガバリとめくって、パンツを丸出しにさせた。弥生はもう少しで、「ひやっ」と叫びそうになったが、それも飲み込んで、なんとか無抵抗の姿勢を貫いた。 44 弥生は背中を畳につけた寝たままの姿勢だったが、頭を持ち上げて、お父さんの一挙一動を見逃すまいとした。 「脱がすよ」 お父さんは言うと、弥生の返事を待たず、パンツの腰の所に指をかけた。 (脱がされるっ) 弥生は思わずゴクリと唾を飲み込んだ。 しかし、なぜかお父さんは、そこまでして手の動きを止めた。やや不審気な様子で、パンツに顔を近付けて、 「あれれ、これって……」 とつぶやくように言った。弥生は、自分のパンツに何かおかしな所でもあるのかと思って、不安になった。 「どうかした?」 と弥生は恐る恐る訊いた。 「これって弥生のパンツなの?万智のじゃないのか?」 「えーと……」 弥生はさらに頭をもたげて、今自分が穿いているパンツを見下ろすと、(あ、これか)と思った。それはピンクの生地にアニメのキャラクターがプリントされているというパンツだった。 お父さんから見れば、そんな幼稚な柄のパンツは万智ぐらいの年齢に相応しいように思えたのだろう。ただし、弥生は、学校で着替えのある日とそうでない日で、着用する下着をちゃんと区別していた。体育のある日などは、もうすこし大人っぽい地味なのを穿いていた。 (女の子用の下着なら、多少、華やかさがあっても普通だと思うけどね。それに、私と万智はパンツを一緒に使っているのを、お父さん知らないんだっけ……?) 弥生はそういう自分の下着事情をお父さんに教えようかと思ったが、今のこの状態で、そんな事を事細かに説明するのは場違いかと思って、弥生は単に、 「えーと、これ、私のだよ」 とだけ言った。お父さんは、 「へえ、そうなのか。ずいぶん可愛らしいの穿いてるんだね」 とパンツの前部分のプリント指でなぞりながら、その事実を今日初めて知ったかのように、意外そうな口調で言った。 (改めて指摘されると、やっぱり幼稚かな……) 「弥生って、まだこういうアニメのやつが好きなの?」 「うーんとね……」 特に好きというわけではなく、あまり深く考えず惰性で穿いていただけだが、こんな所でパンツのことでお父さんと言い争いをしても意味はないので、「うん」と答えておいた。 「まあ、いいや、脱がすよ。いい?」 「いいよ……」 「じゃあ、ちょっと腰を浮かして」 弥生は言われた通り、背筋を反らせて、お尻を畳から浮かせた。そうしながら、ふと、思うことがあった。 (待てよ……。今穿いているこのパンツ、きれいかな。おしっこの染みがついていて、お父さんに見られたら嫌だな……) そんなことを考えている途中、パンツはサッと腰から引き下ろされた。 「ひやっ」 「もう、楽にしていいよ。お尻を下ろして」 お父さんはそのままパンツを足首から抜き取って、「ほら、脱がしたぞ」と見せびらかすように、弥生の顔の前にヒラヒラとぶら下げた。 「お父さん、それは私が持っておくよ」 弥生は手を伸ばして、お父さんの手から、さっきまで穿いていた自分のパンツを奪うようにもぎ取った。その布地の内側に残されていたおしっこの染みは、残念ながら、お父さんに確認されてししまったようだったが、ともかく、弥生はそのパンツを素早く丸めて、手の平の中に握りしめた。 弥生は畳の上に横たわって天井板の木目を見上げながら、書斎の中で裸の下半身を露出しているということと、おしっこをちびったパンツをお父さんに見られてしまったという二つの理由で、すごくぎこちない気持ちになった。 しかし、お父さんは、そんな弥生の気持ちを知ってから知らずか、変わらぬ調子で、 「足を開いて」 と命じた。 45 「よし、じゃあ、足を開いて」 「……」 「開いてごらん」 「う、うん」 弥生は仰向けに寝たまま、天井を見ながら、両足を三十度ぐらい開いた 「もっと広げられないかな」 「こう?」 「膝を横に広げてだね、こうして足を曲げて……」 お父さんは弥生の太ももを持ち上げるようにつかんで、膝の位置を置き換えた。 弥生はお父さんにされるがままになっていると、両足は大胆にガバリを開かされ、前の部分だけでなく、肛門さえ見えるのではないかと思える程の大股開きにさせられた。その両足の配置は、まさしく正常位で女が男を受け入れる時の姿勢だった。しかし、弥生はまだそのような知識を持っていなかったので、自分が性交の時の姿勢をとっているとは気付かず、単にきまりが悪いと思うのみだった。 「じゃあ、これ、塗るよ」 お父さんはチューブからクリームを指先に搾り取って、それを弥生のお股にペタペタと塗り始めた。 弥生はそうされるのは初めてではないが、自分の微妙な場所に、お父さんの太い指先でグリグリと塗り込まれると、やはりくすぐったく変な感覚がした。弥生は天井を見ながら、「ふっふっ」と含み笑いをして、それに耐えた。 (いよいよだ) 弥生は思った。しかし、お父さんは横の机に向かってゴソゴソやっていた。それがあまりに長くかかるので、弥生は寝転がったまま横目で見ると、お父さんは剃刀を何かの台に押し当てるようにして、規則正しく前後に動かしていた。弥生は、(なんだろう)と思って、頭を上げて、 「何をやってるの?」 と訊いた。 「研いでるんだよ」 「研ぐ?」 「こうやって砥石で刃先を鋭くしておかないと、うまく剃れないからね。本物の剃刀ってなかなか面倒なんだよ。でも、ちゃんと研ぐと切れ味はこっちの方がずっといいんだよ」 「へーえ」 弥生は感心したように言いつつも、 (何だか用意が悪いなあ。最初からそうしておいてほしかったな) と不満が無いではなかった。お父さんは、それが聞こえたかのように、 「昨晩、ちゃんと研いでおいたから、これは、仕上げだよ。刃物って使う前には、こうやって水になじませておいた方いいんだ。それに、そこも、ちょっと時間を置いて、クリームで柔らかくさせた方がいいからね」 と言って、弥生の開脚した両足の付け根の辺りをあごで指した。 弥生はすぐにされると思っていたのに、こんな風に間が空いて、手持無沙汰になった。そのうち、ガバリと開脚しているお股の辺りがスース―して心細く感じた。一旦両膝を閉じようかという気にもなったが、 (まあ、いいか) と思って、そのままの格好でジッと横たわっていた。 最初は、書斎で剃られるのなんて嫌だという気持ちは強かったのだが、このように焦らすように待たされると、早くして欲しいという心理なってしまったので、弥生はそれを我ながら不思議に思った。 ずっと真上を向いているのは照明が眩しいので、弥生はまぶたを閉じた。弥生の耳にはシャーシャーとお父さんが剃刀を研ぐ音だけが聞こえてきて、 その規則正しいリズムが眠りを誘った。弥生はウツラウツラしてきて、本格的に寝そうになった。その時、 「よし」 というお父さんの声が落ちてきて、弥生はパッと目が覚めた。 (今度こそ、いよいよだな) と弥生は視線を向けると、お父さんの握る剃刀の刃はキラリと光っていた。 「いいかい、弥生。この剃刀は本当に危ないからね。ちょっとでも動いたら皮膚がスパッて切れてしまうから、絶対に動いたらダメだよ」 とお父さんはくどいぐらいに注意した。弥生は寝たままの姿勢で「うん」とうなずいた 46 お父さんは弥生の額に手を押し当てて、後頭部を畳に付けさせた。そして、もう一度、 「こうやってジッとしてるんだよ。動いちゃダメだよ」 と言って、弥生の開脚した両膝の間へ移動して、そこに座り直した。 弥生からはお父さんの手元は見えないので、お股の辺りの触覚に神経を集中させた。 「やるよ。スカートがピラピラしないように抑えといて」 「分かった」 弥生は本物の剃刀で剃毛されるという初めての体験に臨んで、スカートの裾をしっかり握って、全身を固く強ばらせた。 お父さんは左手で弥生の左太腿の付け根付近をグイッと抑えて、両足をほとんど百八十度近くにまで開脚させると、剃刀をゆっくりと股間の肌の表面に近付けた。弥生はゴクリと生唾を飲み込んだ。 次の瞬間、弥生の股間の丘の右側に、硬く冷たい物がピトッと当てられて、「ん」と声をもらした。 お父さんは手首を小さく動かすと、その度に、肌の上を剃刀がスイと撫でるように滑った。シュッ軽快に抵抗なく剃れているようだった。弥生はくすぐったいようなムズムズする感触を味わった。視界の端には、キラリと光を反射する剃刀がチラチラと映った。 お父さんは弥生の股間の皮膚に指先を食い込ませる程の力で押しつけていて、弥生は身動きしようにも、できないぐらいだった。 (そうやって、剃りやすくしているんだな) と弥生はタジタジになりながらも、理解できた。 お父さんは親指と人差し指で肌をググッと伸ばして、そこに剃刀をシュッと滑らせて、そして、指先の腹で撫でて、ちゃんと剃れているかを確認した。そのような一連の作業を手際よく繰り返した。 弥生はそれらの異なる刺激を交互に受けているうちに、気持ち良いような悪いような奇妙な感覚に陥って、背筋にはゾクゾクとしたものが走った。我慢できず、「ああ」と声をもらして、グッと目をつぶって、顔をしかめた。 しばらくすると、股間の辺りからの音が途絶えた。お父さんは押しつけていた指も外した。弥生はそっと薄目を開けると、上体を起こして剃刀を紙で拭っているお父さんの姿があった。 「終わった?」 「ああ」 (なんだ、もう終りか、あっけなかったな) 始めるまでには何かと準備で手間取ったのに、剃る事自体はわずか一分ほどで済んでしまった。すぐに弥生は起き上がろうとした。するとお父さんは、 「待ちなさい。そこも拭いてあげるから」 といって、押し留めた。そう言う通り、弥生に股間をゴシゴシと拭い始めた。 (……剃るのをやってもらうのはともかく、ここまでやってもらっていいんだろうか) と思いつつ、結局は、そのまま最後まで拭いてもらった。 「よし、起き上がっていいよ」 とお父さんに声をかけられて、弥生はようやく上半身を持ち上げて、あぐらをかいて座った。スカートを捲って、うつむいて、剃って拭いてもらった股間のその跡を自分で触って確認した。 (おお、きれいにツルツルになってる。これが本物の剃刀の威力か。さすがだな) と弥生は感心した。 お父さんは、無言で弥生を見つめていた。それは「どう?」と訊いているような表情だった。弥生は、何か感想を述べた方がいいかと思って、しばらく口ごもっていたが、 「うん、きれいに剃れてる」 とだけ小さな声で言った。 47 弥生は立ち上がると、パンツを足に通して、スカートの裾を整えて、身づくろいをした。 お父さんは剃刀をきれい拭いて、元の小箱の中に収めると、 「万智に見つからないように、また隠しておこう」 と言って、それを机の引き出しの奥へ戻した。弥生はそれを横目で見ながら、 (また机にしまっちゃうのか。じゃあ、私が勝手に使うってことはできないな……) と思った。お父さんも立ち上がって、 「仕事を手伝ってくれて助かったよ。また何かあったら頼むよ」 と言って、弥生の肩を叩いた。 「うん。必要な時は、いつでも呼んで」 と弥生は言ったが、ふと、それは「いつでも必要な剃って」と言っているような気がしないでもなかった。 弥生は一人、お父さんの書斎を出た。廊下を歩きながら、 (書斎の中でパンツを脱いで、それでお父さんに毛を剃ってもらったなんて、ウソみたいな話だな) と我ながら不思議な気持ちだった。しかし、股間には、お父さんに指先で押された時の感覚はまだほのかに残っていた。弥生はそこを何となく手の平で押さえながら、居間へ向かった。 居間に戻ると、万智が食卓に座っていた。自習しているはずなのに、ノートには鉛筆で落書きばかりしていたらしかった。 万智は戻ってきた弥生を見上げて、 「どうだった?ちゃんとできた?」 と訊いた。弥生は剃毛のことを指摘されているのかと思って、 (えっ?何で万智がそのことを知ってるの?) と驚いた。しかし、万智は普段通りの様子だった。 「お父さんの仕事手伝ったんでしょ?」 「ああ、そのことね。うん、ちゃんとできたよ」 と弥生はホッとして、取り繕うように答えた。 その後、弥生は万智の勉強を手伝ってあげた。 しかし、その練習問題は弥生には簡単すぎて退屈で、そのため、計算や漢字の書き取りなどをさせながらも、弥生は頭の中で、さっきの書斎での情景を思い描いていた。 (私、万智に対しては、こんな風に教師口調でえらそうにしてるけど、お父さんの前では、お股をおっぴろげて、毛を剃ってもらったんだよな……) その二つの立場の乖離はあまりに大きく、弥生自身でも滑稽に感じた程だった。そして、お父さんに毛を剃ってもらっているという秘密は、決して万智にバレてはいけないと改めて思った。 48 弥生は万智の勉強を見ながら、さらに考えを巡らせた。 すでに発毛しているということ、そしてそれを父親に剃毛してもらっているということが恥ずかしいというのは紛れもない事実だが、その一方で、弥生とお父さんとが二人だけの秘密を共有しているということは、万智に対して、ある種の優越感を持てる理由にもなった。 兄弟あるいは姉妹という存在は、特に年齢の幼い期間は、親から寵愛を自分の方だけへ引き寄せようとするものである。何か物品をもらうのであれ、何かの行為をしてもらうのであれ、自分一人だけが親からの世話を受けるというのは、盗み食いのような邪な甘美さが伴った。 ただ、弥生の場合は、すでに小六ということもあり、また、思考能力は年齢以上の成熟していた。弥生はある重要な点を直感的に察していた。それは、お父さんは剃毛を積極的にしたがっているのではないかという推測だった。 一番最初に剃毛された時は、発毛していることを知られた恥ずかしさ、裸の股間を見られているきまりの悪さ、剃刀への怖さなどで、オドオドと戸惑うだけで、そういう冷静な観察はできなかった。しかし、二度三度と回数を重ねる度に、剃毛されることにも慣れて、お父さんの様子を観察する余裕も出てきた (お父さん、やけに積極的だなぁ) とは薄々感じてはいたことではあった。しかし、弥生はそれについては、親が子供を世話をする義務感から出ているのだと思っていた。そのため、 (私、お父さんにこんなことまでしてもらって悪い気がする……) と気後れしていた。しかし、ふと、その積極性は、義務感などという高尚なものではなく、単に、面白がっているだけなのではないかという疑問を覚えた。どちらなんだろうとちょっと判別しかねたが、しかし、剃毛している時のお父さんの顔つきはと言うと、あからさまにニヤニヤしたりはしないが、どうも堪能している様子がうかがえた。 (お父さん、きっと、したがってるんだ。なんかよく分からないけど、楽しんでいるみたい) お父さんといえど、一人の人間であり、一人の男であるので、当然、茶目っ気とか悪戯心は持っているだろう。 剃毛は、お父さんにとっては迷惑ではないし、むしろ、お父さんは本心ではしたがっているのなら、させてあげれば喜ぶはずだ。恥ずかしがるのは別に構わないとしても、こちらとしては、気後れを感じる必要などないのだ、というのが弥生の出した結論だった。 そのように考えると、弥生は前向きの明るい気持ちになれた。それに加えて、お父さんとはさらに親密になった気分だった。