XaiJu
江戸山乱理
江戸山乱理

fanbox


『ジェットコースターに乗る前にはおむつを穿く』(5)完

九章 ジェットコースターからサービスセンターへ(42-45) 42 ジェットコースターに乗る  芽衣子はママと彩香の間に挟まれて、両手を引っぱられるようにして、サービスセンターを後にした。スカートの下では、股間はおむつに包まれている。そんな状態で屋外を歩くのは、ちょっと不思議な感じがした。  三人とも無言のままだったが、芽衣子はどこへ向かっているのか、ちゃんと理解していた。  到着した先は、やはり、ジェットコースター乗り場の階段の所だった。 「よーし、乗ろう」  と彩香は元気に言った。 「そ、そうだね」  芽衣子は正直、気が進まなかった。しかし、この名物ジェットコースターに乗るためにおむつを穿いたのだから、今になって乗らないという選択肢はなかった。 「じゃあ、行ってらっしゃい」  ママは手を振って、二人を見送った。その時、ママは芽衣子のスカートの上からおむつのお尻をポンポンと叩いて、ニヤッとした。 「何よ、ママ……」  芽衣子は、その意味をすぐには捉えかねた。それは、「いくらこわくっても、ちびっちゃだめよ」という意味なのか、それとも、「おむつをしてるから、ちびっても安心ね」という意味なのか、すぐには判別できなかった。立ち止まって、考えていると、 「お姉ちゃん、行くよ。こわいの?うふふ」  と彩香に促された 「お姉ちゃんを見ててあげてね」  とママは言った。 「はーい」  と彩香は、緊張気味の芽衣子とは対照的に、元気だった。  逃げないようにか、彩香は黙って、芽衣子の手を握った。芽衣子は、 (うう、私、お姉ちゃんなのに、なんだか、妹に引率されてるみたい。いつもと逆だ)  と思いながら、乗り場に向かう階段を重い足取りで、一段一段上がっていった。  その途中で、彩香はママの真似なのか、芽衣子のお尻をポンポンと叩いて、 「これ穿いてるから、ちびっても安心だね」  と言った。さすがに芽衣子もむっとなって、 「こ、これは万一の場合に穿いてるだけだもんね」  と理屈にもならない強がりを言った。ただ、周りには人目もあるので、おむつを穿いているとばらされるわけにもいかず、この場で口喧嘩するのは、芽衣子に分が悪かった。 「いひひ」  彩香は愉快そうに笑っていた。  芽衣子は早くも泣きそうな気持ちになった。しかし、ジェットコースターに乗って、おもらしさえしなければ、彩香に「ほら、ちびらなかったでしょ」と大きな顔をできるのだから、要はそうなるか、ならないかだけの話だった。 (その成否の結果は、今から数分後には明らかになる……。さて、どうなることやら)  芽衣子は他人事のように思った。  乗り場はかなり高い場所にあった。芽衣子は途中まで階段を上って、手すりから身を乗り出して、下を見ると、それだけでブルっときて、ちびりそうになった。 (いかん、いかん)  と思って、芽衣子はお腹に力を入れた。  階段を上りきって、ようやく乗り場のプラットフォームにまで来た。  ジェットコースターの長い車両はすでに到着していた。二人は係の人に案内されたが、運が良いのか悪いのか、車両の先頭だった。 「おー、先頭だ。やったー」  と彩香は怖いもの知らずで、歓声を上げた。  そこで二人は横座りになると、安全バーが頭上から下りてきて、ガチャンと鳴って、肩の所でガッシリと固定された。 (もう逃げられない)  という思いが芽衣子の中で一層強くなった。再びこの場所に戻ってきたら、その時は、果たして、おむつは乾いているのか濡れているのか、もはや、神頼みでもするしかなかった。  彩香は隣の芽衣子の太ももをポンポンと叩いて、 「お姉ちゃん、きっと大丈夫だよ」  と励ました。しかし、芽衣子は、そのわざとらしい口調を聞いて、 (彩香は、私がおもらしするのを期待しているみたいだな……)  と、その本心を見透かすことができた。 43 意外な結末  出発の合図がピーと鳴った。それと同時に、車両はレールの上をガチャンガチャンと動き出した。芽衣子はまだ心の準備ができていなかったのだが、車両はそんなことはお構いなしに前に進んでいった。  最初は、ゆっくりゆっくりと急な上り坂のレールを登った。芽衣子の心臓はドクンドクンと鼓動して、緊張で胃の辺りが気持ち悪いほどだった。一方の彩香は、 「おお、動き出したぞ」  と言って、実に楽しそうだった。姉妹なのに、気質は全然違うらしかった。  車両はレールの頂点まで登りきって、その向こう側の急な下り坂が芽衣子の視界に入った。 (いよいよだ……)  芽衣子はギュッと目をつぶった。次の瞬間、加速がついて、体がフワッと不気味に軽くなった。車両は猛烈な勢いで上下左右に揺さぶられた。しかも、グルグルと縦方向に何度も宙返りをして、もはや、どちらが空で、どちらが地面かも分からなくなった。  芽衣子は知らず知らずのうちに、自分でも意味不明な叫び声を上げているような気もしたが、それも車両の轟音と周囲の乗客の喚声で掻き消された。  時間の感覚まで狂って、それは三十秒程で終わったようでもあり、あるいは逆に、五分程も続いたようでもあった。  車両にブレーキがかかって、涙でぼやける目を薄っすら開けると、プラットフォームが近付いているのが見えた。芽衣子はようやく、この苦行が終わったことを知った。 (……)  あまりの衝撃で言葉も出ず、服の袖で涙を拭いながら、もう二度とこんな乗り物には乗らないと誓った。  芽衣子は何かを忘れている気がした。 (えーと……。あっ、そうだ。おしっこだ)  一呼吸遅れて、ようやく、肝心の問題へ思いが至った。涙が零れるのは全然構わないが、おしっこが出るのは是認できない。しかし、もらしたという感覚は記憶に残っていなかったので、おむつが濡れているはずはなかった。 (大丈夫のはずだ、きっと)  濡れていないことを確認するため、芽衣子は自分でおむつの股間をさりげなく触ってみた。その瞬間までは自信たっぷりの余裕しゃくしゃくの状態だった。しかし、そこはほのかに温かかった。 (温かい?温かいってどういうことだ?体温でそうなったのかな。いや、違う。濡れているんだ、おしっこで……。なんでよ。いつの間にもらしたんだ、全然憶えてないよ。無意識的にちびっちゃったの、私?えぇ、嘘でしょ……)  どうやら、おむつがおしっこを吸収する速度が早すぎて、おしっこで濡れているのを感じる暇もなかったらしい。おもらしたことに気付けなかった自分に、芽衣子は驚くというよりも、呆然としてしまった。 44 濡れたおむつと彩香の本音  車両は再びプラットフォームに元の位置に停止した。  芽衣子は座席で固まっていたが、他の乗客たちも降りて行き、また、係の人にも促されて、やむなく腰を上げた。立ち上がると、スカートの下で、おむつの股間の部分にズシリとした重さを感じた。 (私、自分で気付かないうちに、こんなにたくさんもらしていたのか……)  芽衣子は恥じ入って、いたたまれない気持ちになった。しかし、それと同時に、おむつをしていて本当に良かったと思った。  二人は並んで階段を下りて行った。  彩香は芽衣子を見上げて、 「どうだった?」  と意味ありげな表情で訊いた。 「やっぱり、こわかった」 「そうだね。で、そっちは?」  彩香は視線を芽衣子の腰辺りに向けた。芽衣子が黙っていると、彩香は、 「おむつ、濡れた?」  と露骨に訊いた。 「あんまり大きな声で言わないでよ。周りに人がいるんだから」 「あ、うん。……で、どうなの」  彩香の追及に、芽衣子は、 「どうもなってない」  と顔を横に振った。しかし、やましさはすぐに顔に出てしまった。 「お姉ちゃん、嘘ついてるでしょ。顔を見たら分かるもの。本当はもらしたんだよね」 「……」 「ねえ、そうでしょ?」 「……うん」  最初、芽衣子は嘘を貫き通すつもりだった。しかし、濡れたおむつを股間につけている状態で、そんな気概を持つのは無理だった。 「どれぐらいしたの?」  彩香は気になるのか、そんな細かい所まで詮索してきた。 「ほんのちょっとだよ」  芽衣子は、うるさい奴だと思いながら、事実とは異なることを答えた。 「していてよかったじゃん」 「……うん」  どうせおもらしするのなら、前回のようにパンツもスカートも濡らしてしまうよりも、今日のようにちゃんとおむつを穿いておくのが賢明な分別というものだろう。芽衣子はそのように自分を納得させた。  彩香は歩きながら、ずっと愉快そうなにやけ顔を浮かべていた。ただ、周囲に人目があるせいか、囃し立てるようなことは言わなかった。  芽衣子はそんな彩香を横目で見ていて、一つのことに気付いた。おむつを穿いておしっこをちびった姉を見て、彩香はうれしがっているというよりは、うらやましく思っているようだった。  芽衣子はその見立てが本当に正しいかを判断するために、探りを入れてみた。 「ねえ、彩香。やっぱり、私ぐらいの年齢でおむつを穿くって、やっぱり変だよね」  とわざとしょげた感じを出して言った。 「うーん……。ちびるのなら、穿いた方がいいんじゃないかな」 「穿いた方がいいって、彩香はそう思うのね?」 「うん」 「もし、彩香が同じ立場ならどうする?やっぱり、おむつ穿くよね」 「穿くかな……」  と言いながら、そのような情景を想像したのか、彩香は照れた態度を示し始めた。  芽衣子はその反応を見て、自分の推測は正しかったのだと思った。 45 再びサービスセンターへ  二人は階段を下りて、地上へ戻った。そこではママが二人の帰りを待っていた。  芽衣子はママの顔を見ると、気持ちが萎縮して、自分の粗相を伝えるのを躊躇した。  しかし、彩香の方が勝手にしゃべりだした。芽衣子のその気持ちを酌んだのか、あるいは、何も考えていないだけなのかは不明だが、 「お姉ちゃん、おしっこしちゃったって」  とあっけらかんと言ってしまった。  ただ、それを聞いても、ママは怒ったりはせず、 「あら、そうなの。もう……」  と苦笑しただけだった。 「ちょっと、しちゃっただけだよ」  と芽衣子は口の中でブツブツと言い訳にもならないことを言った。しかし、ママはそんな芽衣子の言い訳などは聞き流して、 「替えてもらわないとね」  と言った。  芽衣子は、その「替える」という言葉が引っかかった。 (替えるって、パンツに替えるって意味だよね……)  しかし、今、それをママに問いただすのも気が引けて、 「う、うん。そうだね」  と同意しておいた。 「じゃあ、芽衣子。またサービスセンターに行って、係員さんに替えてもらいなさい。一人で行けるよね」 「うん。大丈夫」  芽衣子はそう答えて、一歩踏み出すと、 「私も、ついていく」  と彩香は言って、追いかけてきた。 「あなたも来るの?」 「いいじゃない、別に」  と言って、彩香は芽衣子の手を握った。結局、二人は一緒に行くことになった。彩香は変に張り切っていて、芽衣子と繋いだ手を引っぱるようにして、サービスセンターに向かった。  彩香がわざわざ付いてきた理由として、芽衣子は一つの推測と立てた。 (彩香もおむつを穿きたいと望んでいるのではないか?)  と芽衣子は考えていた。どうもさっきからそのように思い当たるふしが多いような気がしていた。それを裏付けるように、彩香は、 「ママは、さっき、『替える』って言ってたけど、パンツに替えるってことだよね」  などという質問を芽衣子にぶつけてきた。 「そのはずだけどね。新しいおむつに替えるっていう風に思った?」 「えっ、いや……」 「この次は、お化け屋敷とかにも行くから、またおむつを穿かせてもらった方がいいかもね、うふふ」  と芽衣子は自嘲的な冗談を言った。そして、彩香の反応をうかがった。  彩香は「ははっ」と愛想笑いをした。しかし、そうしつつも、内心は若干動揺しているようだった。芽衣子は、 (私の考えは正しかったみたいだな)  と確信した。さらに踏み込んで、 「ねえ、彩香。あなたもどう?」  と思い切って訊いた。 「どうって、何が?」 「おむつよ」 「どういうこと?」 「穿いてみたいと思わない?」 「えっ、私が?」 「そう」  芽衣子はそう言い切って、彩香の顔を見た。彩香はしばらく、困惑気な顔をしていたが、やがて、心の中で踏ん切りがついたようで、「うん」とうなずいた。芽衣子は、説得が成功したと確信して、 「私がおむつに穿き替えるんだったら、その時、余分にもう一枚ぐらい貰えると思うんだけどね。彩香のため貰っておこうか?」  と訊いた。 「本当に?」 「うん。それでいいかな」 「……」 「どう?」 「……うん、お願い」  と彩香は顔を真っ赤にさせて、小さく言った。 「ふふ、彩香は素直な子だね。じゃあ、私から係員さんに頼んでみるからね」  と芽衣子はお姉ちゃんらしく、自信満々の口振りで言った。 十章 新しいおむつ(46-50) 46 係員との再会  芽衣子はサービスセンターの扉の前に佇んだ。そばにママがおらず、子供だけで内部に入っていくのは少し心細かった。それに要件が要件なだけに、余計に気が引けた。  しかし、いつまでもこんな場所で突っ立ているわけにもいかないし、それに、濡らしたおむつがようやく冷えて重くなってきて、早く替えてほしいという思いも切実だった。芽衣子は自らを鼓舞するように、その扉を押した。芽衣子に続いて、彩香も中へ足を踏み入れた。  カウンターの向こうの係員は、顔を上げてこちらを見ると、すぐに芽衣子を認識した。 「あら、芽衣子ちゃん。また会ったわね。久しぶり」  などと旧知の仲のような口振りで言って、ニコッと笑った。 「こ、こんにちは」  と芽衣子は硬い笑顔で応えた。歓迎されたのはありがたいが、その対応は少し馴れ馴れしすぎるのではないかとも思った。しかし、今はそんなことより、ここに来た理由を説明しなくてはいけない。とはいっても、「おもらしして、おむつを濡らしたので、替えてください」などとは、真顔で言えるせりふではなかった。芽衣子はこの期に及んで、 「えっと……」  とつい口ごもってしまった。 「どうしたのかな?」  と係員はカウンターから出てきて、芽衣子のそばで腰をかがめた。芽衣子は、 (察してよ。私に言わせないでほしい……)  と思いながら、しばらくモジモジしていたが、とうとう、自らスカートの裾を持ち上げて、その下のおむつを見せて、 「これ、しちゃったの……」  と言った。うまく言葉をしゃべれない小さい子供みたいな真似をしてしまって、芽衣子は自分でも、あまりいい気はしなかった。しかし、ともかく、そんな遠回しな伝え方でも、係員は十分理解してくれたようだった。  係員は一歩近づいて、 「そのままにしておいて。ちょっと触らせてね」  と言って、芽衣子のおむつへ手を伸ばして、その状態を調べ始めた。おしっこを吸ってプニプニになったおむつの弾力を堪能するかのように、執拗に揉み続けた。  芽衣子は股間をモゾモゾとまさぐられたせいか、急に尿意を催した。 (うっ、おしっこしたくなってきちゃった。ジェットコースターに乗った時に全部出たんじゃなかったのか)  尿意は徐々に強さを増していったが、芽衣子はお腹に力を入れて我慢した。  係員は芽衣子のおむつの濡れ具合を確認すると、満足気に一人でうなずいた。そして、今度は彩香の方を向いて、 「二人ともしちゃったのかな?」  と訊いた。 「いえ、したのはお姉ちゃんだけです」  と彩香は首を振って、ハキハキと答えた。 「あら、そうなのね」 「うん」  彩香は自分の言葉が相手に信用されていないと思ったのか、芽衣子の真似をして、自分もスカートの裾をひょいと持ち上げた。その下からは、リボンのついた純白のパンツが現れた。もちろん、それは濡れていなかった。  妹の彩香は乾いたパンツを穿いていて、姉の芽衣子は濡れたおむつを穿いている。その顕著な対比を、芽衣子は無心で見ることはできなかった。 47 突然の事故  彩香はパンツを濡らしていないということを係員に見せつけるように、腰を前へ突き出して、 「調べてもいいよ」  と言った。係員は、当初はそんなことをするつもりはなかったのだろうが、彩香に調子を合わせてやって、 「じゃあ、調べましょうか」  とおどけたように言って、彩香にしたのと同じように、彩香のパンツの股間に手を触れて、そこをまさぐった。 「ね、濡れてないでしょ?」 「そうね」  その二人の会話は芽衣子への当て付けではなかったし、そのことは芽衣子自身にも分かっていた。しかし、くやしい気持ちになるのはやむを得なかった。そう思って、変に力んだのが良くなかった。何の前触れもなく、芽衣子のおむつの中で、おしっこがピュッとほとばしった。 「えっ?」  と芽衣子は心の中で、他人事のようにつぶやいた。しかし、とっさにやばいと悟って、おしっこを止めようとした。しかし、それは勢いよくシャーと出続けた。 (わわっ。だめだめ、ど、どうしよう)  と慌てふためいているうちに、不思議と心地良い気持ちになってきて、我慢するどころか、逆に力が抜けてしまい、いつの間にか、おしっこはすっかり出し切っていた。芽衣子は全身をブルッと震わして、「ふぅ」と小さくうめいた。  それは十秒にも満たない一瞬の出来事だった。ちびったおしっこは、おむつにすっかり吸収されて、さっきよりも重さが加えられ、ほんのりと温かくなった。芽衣子はそれを股間に感じながらも、 (今の、なんだったんだ……?)  と信じられない気持ちだった。油断していたとはいえ、こんな状況で、突然おもらししてしまった自分に、芽衣子は我ながら、呆然とした。しかし、幸いなことに、係員と彩香はしゃべっていたので、芽衣子の変化には気付いていない様子だった。  その直後といっていいタイミングで、係員は芽衣子の方へ向き直って、 「じゃあ、こっちへいらっしゃい」  と言って、芽衣子の手を引いて、奥の部屋へ導いた。  芽衣子は廊下を歩き始めたが、そうすると、太ももの間で濡れたおむつがタプンタプンと揺れた。さっきのおもらしは、ちょっとに思えたが、実際はかなりの量のおしっこをしてしまったらしかった。 「お姉ちゃん、じゃあね」  と彩香は、連れて行かれる芽衣子に手を振った。芽衣子も空いている方の手を振り返した。 48 再び例の部屋へ  お着換えのための部屋は、当然、さっき来た時と比べて、何の変化もなく、相変わらず幼稚園の教室のような雰囲気の場所だった。  芽衣子はテーブルの横の、これまた前回と同じ場所に立たされて、 (おむつを穿かされた時は、絶対にちびるもんかって決めていたのに、あっけなく失敗しちゃったな。しかも、二回も……)  と複雑な心境だった。  しかし、そんな感慨に浸る暇もなく、係員は、 「じゃあ、スカートの裾を上げて」  と言って、芽衣子自身におむつを丸出しにさせた。上から見下ろすと、おむつはおしっこを吸って、ふっくらと丸みを帯びていた。  係員は芽衣子の正面に膝をついて屈むと、おむつの前部分をホタホタと叩いて、「ふふっ」と謎めいた微笑を浮かべた。それは、「こんなにいっぱいもらしちゃったの?すごいね」とからかっているかのようだった。その表情のまま、 「脱がすね」  と一言だけ断ると、おむつの両脇のテープをベリベリと剥した。  大量のおしっこを含んだおむつは、大袈裟に言えば、一抱えもある程に嵩高く、それがドサリと落ちるのを、係員は片手で器用に受け止めた。  芽衣子は、股間が外気に晒されて、ヒヤッと感じた。素肌のお股と濡れたおむつの両方を同時に見られる恥ずかしさに、赤くなってうつむいた。  係員は、脱がせたおむつの内側を無遠慮に観察して、 「結構したのね」  と感心したような、呆れたような口調で言った。芽衣子は、 (そんなもの、ジロジロ見ないでよ)  と照れながらも、腹立たしくもあった。  係員は芽衣子のおもらしに対しては、怒ってもおらず、嫌そうでもなかったが、その量のおびただしさには驚いたようだった。 「芽衣子ちゃん、いっぱいおしっこしたのね。ジェットコースター、そんなに怖かったのね」 「……うん」  二回目のおもらしのことをわざわざ自分から報告する必要はないので、芽衣子は黙っていた。 「自分でも見てみる?ほら」  係員はおむつを両手にぶら下げて、濡れた内側を芽衣子に向けた。デロンと長く伸びたおむつは、そのほぼ全面がグッショリ濡れて、薄黄色に染まっていた。芽衣子は見まいとしたが、自分の意識とは逆に、視線はそこへ釘付けになった。 「うわぁ」  と芽衣子は恥じ入らずにはいられなかった。 「ね、すごいでしょ。自分でもそう思うよね。ふふ。まあ、でも、これはもう、こうしておきましょう」  係員はおむつをクルクルと折りたたんで、一個の丸い塊にした。そして、それを手の平に乗せて、その重さを量るように、しばらく腕を上下させていたが、 「あなたも一度持ってみなさい。かなり重いよ」  と言って芽衣子に手渡した。芽衣子はそれを片手で受け取ってみると、予想以上にズシリと重く、 「おおっ」  と軽々しく声を上げてしまった。 49 もう一枚のおむつ  芽衣子自身にスカートの裾を上げさせたまま、係員は芽衣子の股間を濡れタオルでゴシゴシと拭き始めた。  足元には丸めたおむつがぞんざいに置かれていた。芽衣子は視線のやり場に困って、それを見るともなく見ながら、おしっこに塗れた体を、下腹部からお尻まで、懇切丁寧にきれいにしてもらった。  係員は拭き終わると、しゃがんだまま、 「どうする?」  と上目遣いで訊いた。しかし、芽衣子は何のことを訊かれているのか分からず、「何?」というように首を傾げた。  係員は無言で立ち上がって、部屋の隅の収納ケースの所に行き、そこから何かを取り出した。戻ってきて、芽衣子に見せた。それはおむつだった。さっきまで穿いていたのと同じウサギさんの柄のものだった。 「えーと、それは……」 「おむつだよ」 (それは見れば分かるけど) 「これでいいよね」 「あのー、パンツは?」 「パンツもあるけど、こっちにしたら」 「……なぜ?」 「可愛いじゃない。どっちにする?」 (私が決めるの?)  芽衣子は、係員とママとの間で、そういう約束でも交わしていたのだろうかと勘ぐった。  二人は、しばらく見つめ合った。係員はニコニコしていた。芽衣子はその笑顔に引き込まれるように、 「おむつにする」  とつい無意識的に答えてしまった。 「じゃあ、そこにゴロンとして」  と係員は促した。前回と同じように、芽衣子はじゅうたんの上に寝転がされて、おむつを穿かされた。  芽衣子は仰向けの足を曲げた姿勢で、大きく開脚した両膝の間から、おむつを当てている係員を見上げて、 「あの……、おむつをもう一枚、欲しいんだけど、貰えないかな……」  と思い出したように頼んだ。 「あら、どうして?」 「妹の彩香にもあげたいの。多分、彩香もおむつを穿きたがっているはずだから」 「そうだったの」 「うん、お姉ちゃんだけずるいって思われているみたい」 「いいよ」 「ありがとう」 「よし、ほら、穿けた」  係員はしゃべりながらも、テキパキと手を動かして、最後におむつのテープを留めると、完成の合図のように、その前をポンポンと叩いた。  芽衣子は寝転びながら、頭だけを持ち上げて、新しいおむつに包まれた自分の下半身を眺めた。新しいおむつはフワフワと柔らかく軽やかで、穿き替えさせてもらったことを感謝したい気持ちになった。心機一転して、さっきのおもらしが嘘のようにさえ思えた。  係員は芽衣子の太ももをやさしく撫でた。芽衣子はうっとりとして、しばらくの間、幸せな気分に浸っていた。 50 妹と一緒に  芽衣子と係員は部屋から出て、サービスセンター内で待っていた彩香と再会した。 「今回は早かったね」  と彩香は言った。 「うん」  芽衣子は新しいおむつに穿き替えたせいか、気持ちもすっかりと改まっていた。おもらしについて彩香から受けた嘲りに対する腹立たしさも、何のしこりもなく消え失せていた。 「じゃあ、今日一日、残りの時間を楽しんできてね」  と係員は手を振った。 「あ、はい。色々ありがとうございました」  芽衣子と彩香は礼儀正しく一礼した。やさしい係員との別れを惜しみつつ、姉妹はサービスセンターを後にした。  周囲を行きかう人々の中を、二人は並んで歩いて行った。  お互いに言いたいことはあったが、先に口を開いたのは彩香で、 「替えてもらったんだよね」  と訊いた。 「そうだよ。ほら」  芽衣子はそう言って、道の真ん中で、自らスカートの裾を一瞬めくって、穿かせてもらったばかりの新しいおむつをチラリと見せた。 「えっ、それ、おむつじゃん」 「そうだよ。係員さんに頼んで、パンツじゃなくて、おむつを穿かせてもらったんだよ」  芽衣子のその口調は、意図的ではなかったが、つい自慢気になってしまった。  彩香は「へぇー」と驚いて、感に堪えないといった様子だった。そして、何か言いたげな素振りで、言うか言うまいか迷っていたが、ついに耐えきれず、 「ねえ、どうだった?」  と声を低めて、恐る恐るといった感じで訊いた。 「何が?」  と芽衣子はわざととぼけて訊き返した。 「……えーと、あれだよ」 「おむつのこと?」 「そ、そう。もらえた?」 「やっぱり気になるんだね」 「もう、じらさないで。で、どうだったの。もらえたの?」 「もらえたよ。はい、これが彩香の分だよ」  芽衣子はそう言って、上着のポケットに隠していたおむつをサッと取り出した。彩香はそれを見るなり、「おお」と叫んで、人目につかないうちに、素早く受け取った。  早速、二人は一緒に近くのお手洗いに入った。芽衣子は、彩香がおむつを穿くのを手伝ってあげた。  お揃いのおむつを穿いて、彩香も戸惑いながらも喜んでいたし、それを見て、芽衣子もうれしくなった。  その日、芽衣子と彩香は、スカートをチラリとめくって、それぞれのおむつを見せ合ったりしながら、遊園地での数時間を楽しく過ごしたのだった。(完)


More Creators