桃猫と博士~契約不履行~【閑話×非エロ】
Added 2019-09-30 04:52:00 +0000 UTC「随分と機嫌が良くないね。」 そう言って、何時もの様に、腰に回した手をギリッと強く抓られた、胡散臭い覆面をした白衣男博士は。 口惜しげに手を引っ込める。 「どういうことなのか、説明してくれる?」 ジロリと睨みつける桃矢に、ため息をつき、覆面越しでも面倒そうな反応は、彼の視線をさらに厳しいものにする。 「わかった、解ったから睨まないでくれ。君が聞きたいのは、実況や撮影周りの手引き役であるはずの君も被害にあってる事についてだろう。」 手を上げて降参だというようにいう博士に、その通りだというようにナイフの変わりに睨みつける視線を突き刺す勢いで。 続きを促す。 「元々、猫閨は、オカルト好きなんかにはちょっと話題になっていた神隠しが実在する町ってことは知ってるよね?」 「ああ、なんかそういう言い伝えがジジババ世代でされてる。なんて話を旧住宅街のヤツラが言ってたね。」 「その、背景確認は正直何をやっても取れていない。」 「は?」 「まぁ、単純に人であり、科学力がちょっとばかし漫画やSF的技術を用いたところで解明されないレベルの何かだってことだけが判明した。」 「そんなのある訳。」 「そう、人身売買組織がというなら、ソレを潰して。摩り替わっていい金儲けをしつつ。少年少女のトラウマ軽減をモットーに僕はココに来たんだけどねぇ。色々とイレギュラーが多いのさ。」 「いや、しれっと、人身売買と摩り替わってってあたりで、ヒーロー本部の司令が言う台詞ではないと思うのだけど。」 「ソレを言えば、ダークヒーローではなくヒロインポジにあたるピンク担当の君は、自身の保身や出世の為に枕営業をしやすくするためにこの組織を活用してるという事実だって十分エロ本的設定だろう。」 「そういうメタ発言はやめてくれる。」 「まぁ、薬物による記憶操作や、認識操作は出来る。でもソレ以上のレッド君のサイズ変更や、僕や共謀者たちの技術をはるかに越える悪戯に関しては目下調査中といったところだよ。」 「つまり?」 「そうだね、共謀関係にあるのは、オカマ幹部が率いる、暴行や人身売買を好む外道揃いの組織だけど。あそこは人外の力が扱えるわけじゃない。あくまで組織力として、国内外にはびこる悪者ではあっても人間の出来ることしかしないし。薬物系のモノにしか肉体改造なんかでは関わってない。」 「?同じ人間的なモノでも、快楽だけを満たす辻斬り的なやつらは、うちと協力関係に無いってこと?」 「さすが、理解が早いね。そういうことだ。ヴィランと大仰な肩書きを名乗ってる彼らについては。僕や、共謀組織は全く知らない。むしろ共通の敵ではあるといったところかな。」 「やってることは同じなのに?」 「まぁ、君ら純粋な被害者側から見ればそうなるけど。僕や共謀組織については、動画や画像、会員制という形式でそれなりの利用者への配慮をして、リスクを最小限に金儲けも行っている。」 言っていて誇れるものではないが。 子供たちの記憶にも肉体にもトラウマが残らないような配慮をしていることを知っているため。 そのあたりには突っ込みきれず桃矢は、不快感を浮かべながらも、ソレ以上の言葉は発さず続きを促す。 「………。」 「対し、自称ヴィランは報告を受ける限り、犯人の首謀者は全て子供だ。そして、人ならざる力としかいえないような道具を開発駆使して。集団ヒステリーともいえる催眠状態を起こせる技術があったり、触手的なものなど、医学や科学では解明できないものを駆使したものも少なくない。」 「つまり、技術ですら既に負けてるってこと。」 「勝ち負けでいうのは悔しいけれど。そうだね、技術だけで言えば彼らのほうが勝っているし。底が知れない。」 何の生類かも解らない書類にサインをしながら博士は淡々と答える。 「ニャンニャンダーが、元々は人身売買組織の会員を愉しませる、パフォーマーとして利用されるために作られた組織なのは知っていたけど。随分いい加減じゃない?博士、貴方との契約は、僕が営業する上で利益があるなら、他のメンバーにヒーローが負ける出来レースであることを悟らせない協力をするって言うものだったはずだけど?」 「実際、ソレは守っているでしょう?君の悪評や、枕営業した事実は一切外には漏らしてない。」 「枕営業といっても、パイプを何故か持っているアンタと寝ただけで、ゲスいゴシップが悦ぶような相手と寝たわけじゃない。もし、コトが露見しても。謎の外国人に悪戯されたかわいそうな経歴がつくだけだ。」 「はは、今更純情ぶっても、似合わないZO☆」 「純情ぶってるんじゃない、これでも清純系なんだよ僕は。」 「ゲスい性格してよく言うよ。君に正体を知られたのは僕の誤算だったけど、最初にこの取引を持ちかけたのは僕じゃなくて君じゃないか。その地点で、君の性格は相当悪いと思っているよ。」 「それはどーも。」 「勿論、僕は、そこが好きで君の記憶を消さずに、ニャンニャンダーに抜擢したわけなんだけど。」 「………。」 「まぁ、勢力図だのなんだの、契約不履行だ。なんて言いたいみたいだけど。君がごねてる理由は大凡予想がついているよ。君だって思春期の坊やだものね。」 クスクスと笑う博士に対し、露骨にいやな顔をしながら桃矢は問う。 「何が言いたい?」 「君、茜君や、藍君に対して特別な情があるから、ここに協力してるよね?」 「は?」 「あれ?自覚無いの?茜君が始めてココに来た時、事情を盗み聞きして、子供なりにいっぱい頭を働かせて本当に酷い目にはあわないようにするためにココを訪れた。本当に利口で打算的なら君子危うきになんとやら無視だって出来たはずだ。」 「そんなわけ。」 「ソレを仲間を売る汚い仕事を全面に押すことで。自分は善意なんてものかけらが無いとアピールするのに、ツメが甘い。変身する必要だって出動時間帯以外必要ないのに。ヴィランに襲われてる藍君を見かけて。助けに入った事がスーツの記録端末に残ってたよ?」 ヴィランを名乗る正体不明の少年たちの出現に、焦ったとはいえ、仮にも司令を勤める。 謎の技術を持つ男に詰め寄った事はしっぱいだったとこの地点で悟るには遅すぎた。 「別に責めてるわけじゃない、ただ、君は捕食者には向いていないし。今後協力者を続けるなら、コレ以上問答の必要も無いと思うけど。どうかな?」 つまり、程よく媚びる蝙蝠くらいでいれば可愛がってやる。 けれど、ソレ以上反論したり、事実を仲間たちに暴露すれば記憶を消すか、肉体的ダメージが伴う仕事を回すと。 覆面から覗く、酷薄な翡翠色の瞳が物語る。 奥歯をかみ締め、不満を飲み込み。 元々、最初の暴力による年越しイベントでの大舞台以外は。 他の三人の端末が壊された場合や。意識を奪われた場合の中継役としてニャンニャンダーにされた自身には。 この男に利用される以外の選択肢が無いのだと再認させられる。 この男が言うような理由ではない、茜や。藍、おまけの刈安に特別な感情があるわけが無い。 そう思いながらも、何度か反射的に首を突っ込んでしまった事件について説明不可能な感情が生まれつつある事に苦い顔をする。 「君のそういう、大人ぶっていても子供らしさが消えないところは美徳だよ。 そういい、マスクをずらした博士に唇を奪われ、舌先から、表面口腔全体を舐められる。 クチュクチュとかき回されるたびに。 脳を撫で回されるような不快感とも、快感ともいえない感覚に体を震わせながら。 パワーバランスが既に崩れているといいながら、未だ愉しそうに、様々な危機的状況を迎合する博士と名乗る男の意図と。 今後自身や、軽率にヒーローを名乗り。お人よしな慈善活動を行う彼らが経験するであろう。 ナニかに対し。苦い感情を抱くのだった。