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ミケ空
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Vision⑦

 FNのボクシング。負けたら犯される…そんな掟を真っ向から否定した「反逆者」水瀬慧。

「畔柳社長!…あの水瀬慧が…!」

「白木君、見ていたよ。テオ君相手に、慧君がついに、ねえ」

「…ついに、水瀬慧が我々に屈しましたね」

「ん?白木君はそう思うのかね?」

「違うのですか?我々の敷いたルールを拒絶し、反逆者となった水瀬慧がこうしてテオ=ジェラルドを自ら抱いた…これは屈したということなのでは?」

「はっはっは!君にはそう見えるか。…だが、残念ながらおそらく、それは外れだねえ」

「え…?どういうこと…ですか?」

「ま、それはこの後答え合わせと行こうか。…では白木君、慧君を明日にでも呼び出してくれたまえ」

「…かしこまりました」

「そして、もう1つ。仕事がある。いいかね…?」



 コンコンコン

「…失礼します」

「やあやあ、慧君!よく来てくれたねえ!そして…昨日の試合!ナイスファイトだったね!勝利、おめでとう!」

「…ありがとうございます」

「ふっふ、僕たちのことが信用できない…と言った感じだね」

「ッ!」

「ふふ、君は存外、ポーカーフェイスというものが苦手みたいだね。まあ、快君のこともある。仕方ないと思っているし、そのくらいのことは些細な問題だ、気にしなくてよろしい」

「…ありがとうございます。あの、快は…」

「うむ。変わりないよ。Curse Breaker!で薬を使い、一度君に襲い掛かってしまってからはしばらく気落ちをしていたけどね。…最近は良い友人ができたようで、随分と安定しているよ。もちろん、君との約束も忘れていない。君が試合に出続けてくれる限り、勝とうが負けようが、いつか快君を返す、という約束もね」

「…それで、今日のご用件は…?」

「うむうむ。今日はね…ズバリ、君の昨日の試合のことを聞きたい。君は反逆者であることを望みながら、テオ君に勝利した後、彼を抱いたね?なぜなのか…そう思ってね。君がこちらに屈した、と言う者もいるが…僕はそうには思えなくてねえ」

「…俺は…」

「どんな発言をしても構わない。…君の本音次第では今後の快君との約束も変わってくるからね。もちろん、どれだけ失礼な返答をしたとしても約束を反故にしないことも誓おうじゃないか」

「…俺は、反逆者をやめたんです」

「その理由は?」

「…俺は、胸を張って快を助けたい、そう思っていました。負けた相手への追い打ちだなんて、俺は嫌だった。だから、そんな信念を貫いて、快を胸張って助け出したかった。…けど、今の俺では、それは無理なんです」

「ほう、無理…か」

「はい。俺は、FNに来てたくさんの強敵と戦いました。そして、自分の実力を嫌というほど思い知らされました。…同級生だった北村一輝。チャンプである寺田智。それに、翔に、立花さんに、竜に。そして、テオに。…多くの人に負けて、抱かれて。その度に震えました。今回、テオに負けてリベンジする間…色々と特訓して思ったんです。確かに、信念を持つことは大事だ。だけど、そのせいで快の救出が遅れてしまったら、元も子もないのではないか、と」

「…なるほど。これもまた、快君を想って、か」

「はい。俺の一番の目的は快を助けることです。そして、その為にまずすべきことは信念を通すことではなくて…FNのルールに則り、快を助けること…そう、感じました」

「はっはっは!君はずいぶんと、素直だねえ!いやいや、気に入った!」

「………」

「慧君、やはり君は、僕たちに屈したわけではなかったんだねえ。目標のため、行動を変え、自分自身を変える…それができるのは君の強さだと僕は思うよ」

「…俺一人では無理でした。皆がいてくれたから…そう、思います」

「ふっふ。その皆がいることも、君の強さだよ。…徳のない者に人は集まらない」

「…ありがとうございます」

「いい回答を聞かせてもらった。———君に2つ、プレゼントをしよう。1つは…これだ」

「これは…封筒?」

「開けてみたまえ」

「……新たな二つ名…姫勇者!?」

「そう!姫勇者!反逆者を卒業した僕の見立ては正しかった!ということで、新しい二つ名はどうかと思ってねえ!」

「そ…それにしても姫勇者…姫って…」

「僕としてはギガンティック反逆者がいいと思ったんだが…白木君がこれがいいって押し切ってねえ…?慧君もギガンティックの方がいいと思わないかね?ほら、なんか強そうだし!」

「え…!?」

「君さえオッケー出してくれれば、そっちにするんだけどなあ、どうだい!?」

「ひ…姫勇者でお願いします…」

「なんだ、残念。…まあ仕方ない!では、公表はインタビューを受けてもらって、新しいカードと共に、という感じで行こう!そして、もう1つ、プレゼントだ。それは———」




「…よろしかったのですか、畔柳社長?」

「うむ。彼はここまでよく働いてくれた。ならば、そろそろ…というものだよ。それよりも白木君、頼んでいた仕事だが…」

「はい。昨日の水瀬慧VSテオ=ジェラルドの試合結果の売り上げです。…Curse Breaker!ほどではないにしろ、かなりの売り上げを叩きだしました。水瀬慧はこれからも、うちの稼ぎ頭となる逸材でしょう。…だからこそ、なのですが…」

「ふっふ、見ておくといい、白木君。今後、目を見張る展開となるはずだ…慧君の活躍から目を離さないように…ね」

「…それと、そんな水瀬慧に挑戦相手が。



 …こちら、ラルフ=エヴァンス。テオの恋人だそうです」

「はっは!いいねえ。敵討ちか!ぜひ試合を組むとしよう。では、白木君?」

「はい、すぐに取り掛かります」

 …不穏な空気渦巻く上層部。秘書・白木には畔柳社長の言葉がいまいち理解できないでいた。…稼ぎ頭、水瀬慧に近いうちに弟の快を返すという約束。稼ぎ頭だからこそ、もっと試合をさせるためにも快を返すべきではない、そう考える白木はこれから何が起こるのか、疑問を感じつつ、慧とラルフの試合の段取りを組み始めるのであった…。


【続く】

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