直球で行ってしまえば、羽地兎真はチビである。同年代の不動獅子が平均よりかなり大柄なのもあり、兎真はますますチビに見える。…だからこそ。
「がはははははー!オラオラ、どうした、チビレスラー!」
「う…うぐぅ…!」
プロレス、という技と技を真っ向からぶつけ合い、受けあうこの格闘技では、兎真はどうしても後れを取りやすい。単純に体格が小さいからこそのパワー不足、そして、打たれ弱さ。
「おっらぁぁぁぁぁっ!」
ぐぎいぃぃぃぃぃっ!
「うわあああっ!?」
真夏の野外プロレス大会。真っ暗な夜の花火とスポットライトに照らされながら、アルゼンチンバックブリーカーで背骨を決められた兎真の叫び声が上がる。
兎真―!負けるなー!
兎真くーん!頑張れー!
「う…ぐぅぅ…!」
声援を受け、兎真は必死に体をよじる。…が。
「がっはははははー!お前みたいなチビが!俺から逃げられると思うなよー!オラオラ―!」
「うわあああああっ!?」
簡単に抜け出せることができるわけもなく、兎真はさらに背骨を極められる!———やがて。
「がーっはははははー!」
「う…ぐ……ちく…しょ…」
アルゼンチンバックブリーカーを決められ、限界に達した兎真はぐたり、と全身の力が抜けていく。
「ふん!すばしっこいだけの兎ヤローが!捕まえちまえば…こっちのもんなんだよ!」
そして、兎真はその体をダァンッ!とリングマットに叩きつけられくたり、とその意識を失うと。
「ふん」
ぐりっ!
その肩を踏みつけられ———1,2,3.兎真はフォールを決められた。
「がーっははははははー!チビ如きが調子に乗ってんじゃねーよ!がーっははははははー!」
…真夏の野外大会。花火が打ち上がる中での兎真の敗北。
(く…そ……)
兎真は大舞台での敗北に悔しさの涙を浮かべると、そのまま、意識を失うのであった…。
「うおー!よくも兎真を—!許さないぞー!」