「が…あっ…!?」
ドサァァァァァッ!
『Dwon…!Knock Out!T.K.O!』
カンカンカンカーンッ!
「ふふ♪どう、僕のボディーは?…ありがとう、凛君?僕のアイドルボクサーとしての踏み台になってくれて♪———君ならいつでも大歓迎だよ♪」
———響く観客の声。くっそムカつく葵の声。そして、背中に感じるリングマットの冷たさ…。
「いやー!凜君、いい試合するねえ!見事な負け…じゃない、ナイスファイト!また気が向いたらぜひうちに来てくれよ!葵も君を待っているからねえ♪それじゃ、またねー!」
…失意に終わった武者修行という名の地方巡業第1戦。凜はぐっと拳を握りながら地下格闘技場を出て行った。
「…くっそ、あんなエセアイドルに負けるだなんて…!」
今でも思い出せる、葵のあのムカつく顔!人を見下しまくった、あんな奴に負けるだなんて、絶対に許さねえ!
「犯されなかっただけましだったけど…もっとだ!…もっと強くなるぜ、俺は…!翼なんかどうでもいい、まずはあの葵だ葵!ぜってーいつかぶっ飛ばすからな!」
凛はそう呟きながら、次の地下格闘技場へと向かう。…今回はそんなお話。
『レディィィィィィィィィィィスッ!エェェェェェェェンドッ!ジェントルメェェェェェェェェェンッ!』
…2日後。凛が出向いたのはまた別の地下格闘技場。
「…ふうん、ここは前んとこよりさらに小さいんだな。でも…」
わぁぁぁぁぁっ!頑張れよ新人―!
おい、賭けてんだから負けんじゃねーぞー!
「小さい分、観客の熱気も伝わってくる…!いいね、オレが伝説を残すには十分なロケーションだ!」
新たな場所。新たな試合!青コーナーである挑戦者としてリングインした凛は胸元でバァンッ!とグローブを叩きつけると気合を入れなおす。…個々の地下格闘技場はFNよりもさらにさらに小さな地下格闘技場。エロはなしの純粋なる殴り合いの場所。そして、特徴的なのがリングネームを通す、ということ。そんな凜の前に現れたのが…!
「…お前が今日の対戦か...余裕で勝てそうだな!」
「あ!?」
赤コーナー。現れたのは黒髪をツンツンとおったてた黒いグローブの男!少し年上だろうか。不敵に睨みつける表情には迫力を感じられる、いわゆる歴戦の王者って感じの顔。だが、それ以上に目を引いたのが…!
「っと、その前に…ここのチャンピオンの『The・ドラゴン』ってんだ。よろしくな?」
(…すげえ、なんだあの筋肉!)
新人デビュー戦から連戦連勝中のThe・ドラゴンは仁王立ち!鍛え上げた肉体に6つにコブができた腹筋見せつける!———FNでもなかなかお目にかかれないほどの鍛え上げられた筋肉に凜は思わず目を見開いた。
「ふん、俺の筋肉に恐れをなしたか、あ?」
「う…!」
「…なるほど、敵じゃねえな」
そう言い放つThe・ドラゴン。…だが、凜は飲み込まれていたことに気が付くと———!
「っと、何調子に乗ってくれてんの?だーれがビビってるって?」
「…あ?」
「こっちは負けられねえ奴がいっぱいいるんだよ!テメーみてーな筋肉ダルマ如きに…!」
「なっ!?筋肉ダルマだと…!」
「そーだよ、筋肉ダルマ!随分と鍛えた腹筋な分、ぶち破るのが楽しそうだぜ」
凛はそう言うと自分の腹をポンポンと叩いてみせる。
「さあ、楽しもうぜ?The・ドラゴン!」
「テメエ…!その鍛え切れてもない腹!ぶち破ってやる!」
———一瞬即発の二人。翼や葵、負けられねえ奴が増えた凛VSチャンピオンとして、誇りにしている筋肉を馬鹿にされたことが許せないThe・ドラゴン!二人がぐっと睨み合った、その瞬間!
カーンッ!
ゴングが鳴り響くのであった!
「っしゃあ!行くぜ!」
開幕!ファイティングポーズを構える二人!凛はジャブを散漫的に打ち放ちながら、距離を取った!
(あんだけすげえ筋肉だ…!パワーはすげえんだろうが…)
「オラァ!」
バスバシィィィッ!
「ぶっ!ぶぶっ!?」
(ビンゴ!筋肉に振り回されて動きはおせえ!ならばこの試合、もらったぁ!
凛はThe・ドラゴンの顔面の隙間を縫うようにワンツーを当てながらヒットアンドアウェイ!素早く距離を取るとにっと笑みを浮かべた!
「全力で来いよ、潰してやるぜ、The・ドラゴン!いや、チャンピオン!」
「なかなかやる!…が、これからだっ!」
The・ドラゴンはファイティングポーズを取ると姿勢を低くしながらステップイン!
「ふんっ!」
ぶおっ!と、まるで岩のようなストレートが凛の顔面を狙う———が!
「へへっ!のろま!」
凜はさらにバックステップ!それをかわし———
「野郎ッ!逃げるな!」
ダンッ!と突っ込んでくるThe・ドラゴンに向け———
「逃げてるよーに見えてんなら———よく見とけ!」
タンッ!バキィィィィィィッ!
凜もステップイン!The・ドラゴンに踏み込み、リズムを狂わせながら鋭いフックを打ち当てると———
「よっと!」
タンッ!とバックステップを踏み、再びThe・ドラゴンとの距離を開けた!
「へへっ!どうした?チャンピオン!いいようにあしらわれて、悔しくねーの?っばーか!」
「ぬうううううっ!」
怒りに燃えるThe・ドラゴン!The・ドラゴンはさらに猛進!
「へっ!闘牛かよ…!喰らえッ!」
凜はThe・ドラゴンをあしらうかのようにカウンターストレート!その拳がThe・ドラゴンの顔面にめり込もうとした———その時!
「ふんっ!」
The・ドラゴンは体をぐっと曲げダッキング!
「うおっ!?」
凛のストレートがThe・ドラゴンの頭上の空気を切り裂くと———!
「チャンピオンを…舐めんなよッ!」
ドスゥゥゥゥゥッ!
The・ドラゴンの黒いグローブが凛の腹筋に喰らいついた!
「———ぐっ!?」
(…っ!?や…べ…!」
その剛腕からのボディーストレートに凛が思わず苦悶の表情を浮かべると———!
「今度はこっちの番だぜ!ふっ!ふっ!ふんっ!ふんっ!」
顔面にジャブ!ジャブ!
「くっ!」
苦悶の表情の凛はそのジャブをガードをあげ、何とか防ぐも———
「オラオラ!腹ぁ殴られてぇのか!あぁ!?」
ドスッ!ドムッ!ドムッ!
「ごはっ…!?」
がら空きになった腹筋に右ボディー3連打!
「がはははははっ!薄っぺらい腹筋だあ、おい!」
「う…ぐ…!なめ…んな!」
凛はギッと睨みつけ反撃!The・ドラゴンにストレートを叩き込もうとするも———!
「はっ!おせえ!」
バシィィィィィィィッ!
The・ドラゴンはアッパー!凜の薄っぺらい腹に打ち込むボディーブローをそのままアッパーカットへと変更、顎へとその黒いグローブを叩き込むと———!
「がはっ…!?」
凛の口からマウスピースが飛び出る。それが宙を舞うと同時、凛はふらり、と体のバランスを崩し———
ドタァァァンッ!
「ぐうっ!」
『Down!』
———The・ドラゴンの一瞬のリベンジに観客は大いに盛り上がった!
「———ふん、聞こえるか、凛」
「ぐ…うっ…!」
「———チャンピオンに勝てると思うなよ?」
The・ドラゴンは舌なめずりをしながら親指を下へと向ける!瞬間!
わぁぁぁぁぁぁっ!チャンピオーン!
The・ドラゴン!The・ドラゴン!
観客たちがThe・ドラゴン色一色に染まりあがり———
「———ッ!」
凛は、立ち上がりながらその声に思わず辺りを見回した。
「ふん。このリングでもはやお前の味方は存在しない」
「…っ!」
「せいぜい気張るんだな!チャンプのいい引き立て役になってくれよ!」
ダンッ!
立ち上がりファイティングポーズをとる凛にThe・ドラゴンは猛攻!
「シッ!シッシッ!…がはははは!オラオラ、腹に力入れろ!」
バスゥッ!バスバスッ!ドッムゥゥゥゥゥッ!
「———ごはっ…!?」
ジャブでガードを上に挙げてからのボディー!———食い込むボディーアッパーに凛は呼吸が乱れ、苦しさに足が止まり。
「うっ…ぐうっ…!」
凛の顔が絶望色に染まる。
(…つ…ええ…ここで…また……負けんのかよ…!?)
「ふん、雑魚が」
The・ドラゴンが吐き捨てる。そして!
「そろそろ寝かせてやるよ…大人しくするんだなあっ!」
びゅおっ!
The・ドラゴンのストレート!黒いグローブが岩のように凛の顔面へと迫り———
バキィィィィィィッ!
「ぐああああっ!?」
凛はそれをもろに喰らい、吹き飛ばされ———
トンッ!
「っ!?」
その背がコーナーを背負った、その瞬間!
「がははははっ!トドメだぁっ!」
ダンッ!と踏み込んだThe・ドラゴンのボディーアッパーが放たれる!
(くっ…ここまでかよ…!オレは…オレは…!)
———その時だった。
(…あ?)
それはまるで走馬灯のようなものに思えた。凛の頭に翼の、そして葵の顔が浮かび上がる。———そして!
「…くぅっ!」
バスゥゥッ!
その瞬間!凛はコーナーを背負いながら肘を下へと繰り出し———The・ドラゴンのボディーアッパーをエルボーブロック!
「なにっ!?」
仕留めたつもりが防がれたThe・ドラゴンの顔が驚愕に染まった———その瞬間!
「テメエ…!舐めんじゃねえ!」
バキィィィィィッ!
「ぶはっ!?」
凛のストレートがThe・ドラゴンの顎先にめり込む!そして!
「散々…!腹ばっか狙いやがって…このッ!」
ダンッ!
凛は前に踏み込み、コーナーから脱出!The・ドラゴンに肉薄すると———!
「シィッ!」
ドムッ!ドムゥゥゥゥッ!
「———ぐうっ!?」
The・ドラゴンの腹に2発!ボディーアッパーを叩き込む———も!
「俺の腹筋に…その程度が効くかぁっ!」
The・ドラゴンはそれを自前の腹筋でがっちりと受け止める!———瞬間!
「ばーか!狙いはボディーじゃねえ…こっちなんだよ、たーこ!」
バッシイイイィィィィィィッ!
The・ドラゴンが凛を仕留めたのと同じ!ボディーアッパーからの軌道を変えての顎へのアッパーカット!
「ご…はっ…!?」
The・ドラゴンはモロにそれを受けると、口からがふっと黒いマウスピースを吐き出した。そして、ぐらりと体が揺れ、リングに吸い込まれていくと———!
ドタァァァンッ!
「が…あ…!ぁ…!」
The・ドラゴンはついにダウン!リングに大の字になり———
「ごはっ…!」
そのまま、唾を吐き散らすとぐるぐると目を回し———その頭の付近にころん、と黒いマウスピースが転がり落ちた。
『D…Down!』
ワァァァァァァァァァァァァッ!
レフェリーの声が響くと同時、観客たちが大きな声を上げた!
『す、すげえ…!見たかよ今の!』
『あの凛ってやつ、すげーぞ!おい、凛!こっち見てくれー!』
『りーん!りーん!』
辺りに響く観客たちの声が凛を包む。それと同時、凜の心にこみあげるものが沸き上がり———!
「っしゃあああああああっ!やったぜえええええええっ!」
久しぶりの勝利!凜は雄たけびを上げると同時コーナーを駆けあがり、ガッツポーズを見せた!…そして。
「へっへ!ざまーねーぜ!The・ドラゴン!」
「う…うぐっ…!きさ…ま…!」
「へっへーんだ!腹ばっか狙うからこーなるんだよ、ばーっか!!ま、これに懲りたら二度と調子に乗るんじゃねーぜ!ちゃーんぴおん!あ、もう元か!はっはっはー!」
凜はThe・ドラゴンにさらに調子に乗った一言を浴びせると、意気揚々とリングを降りるのであった…。
「いやー!実に気分がいいね!うん!…やっぱ、勝つっていいよな。伝説の勇者になるためにも、もっと勝ち星上げなきゃ!そのためにできること、やるぜえ!」
「ぐっ…覚えてろ、秋山凛…!次にここに来た時は必ず…潰す…ッ!」
【続く】