よ、皆、俺のこと覚えてっか?!…なにぃ!?忘れただと!?許さん!俺は伝説になる男だぜ!?…ったく、しゃーねーな。俺の名前は「秋山凛(あきやま りん)」。
———憧れの人を追っかけてたらFNに巻き込まれ、金欲しさに参加した伝説の男だ!…え?伝説なのに知らないって?伝説になる予定なんだからいいんだよ!それにな!今の俺は!『伝説の勇者』を目指してるんだぜ!…なんの伝説かっていうところを探すところから始まるけどな。そんな俺の今日の相手は…
①イケメン爽やか?アイドルボクサー「天堂葵」
FNに許可をもらって、俺は色んな所にある地下格闘技場へ武者修行。
(…にしても、ほんっと、地下格闘技場って色んなところにあるんだな…)
俺は畔柳社長にもらった地図を見る。赤丸のところが地下格闘技場だよー、と言われたのだが…
(FNほど大きいのは少ないけど、小さいのならこんなにも…か。よし!翼の野郎なんざに負けてられねえ!俺は伝説を残せるでっけえ男になる!そんな勇者になるため!修行だ!)
FNに色々な便宜を敢行してもらった俺はとある地下格闘技場へと足を向ける。それにしても、FNのネームバリューっちゃすげえもんだな。畔柳社長のおっさんがくれた、なんか、許可証?あれ見せたらどの地下格闘技場も顔を真っ青にしやがんの。…で。
「おー、君が秋山凛君か」
「っス!よろしくお願いします!」
「うちはエロなしの殴り合いがメインの地下格闘技場だ!早速今日夜、頼むよ!」
すげえラフな説明とともに、今日さっそくリングに上がることになったんだけど———
レディィィィィィィィィィィスッ!エェェェェェェェンドッ!ジェントルメェェェェェェェェェンッ!
大きな喧騒と共にカッ!と照らされるスポットライト。中央に映し出されリング———
『さあ、まずご紹介しますのはあのFNよりやってきた刺客ッ!その赤いグローブは返り血の色か!?秋山ァァァァァァッ!リィィィィンッ!』
(FNほど広いって訳じゃねえけど…この緊張感は変わんねーな)
俺はマイクコールを受けながらリングイン。鮮やかな赤茶の髪に、それなりに鍛え上げらた体。それらを赤いグローブと黒のトランクスで身を固めた俺は。
「っしゃあ!見てろよ!オレの強さ、わからせてやるぜッ!」
大きな声を上げると会場がわっと盛り上がる。そして———
『続きまして!紹介いたしますのは…本日デビューの新進気鋭のイケメンルーキーにしてアイドルッ!! 天堂ゥゥゥゥゥッ!葵ァァァァァァッ!!」
名前をコールされ現れたのは———
(あ?なんだ、あいつ?アイドル?)
黒髪に穏やかな表情、いうなれば、格闘技とは無縁そうな無害な表情の男。眩しい照明が降り注ぐリングに静かに足を踏み入れる葵に合わせ、観客がひときわ大きく騒ぎだす。———どうやら、こいつはこのリングでは「アイドル」という扱いのボクサーらしい。
「やっぱりデビュー戦は緊張するよね。でも皆、初めての勝利、もぎ取ってくるから…応援、よろしくね!」
さらさらとした黒髪をなびかせて、女性ファンの黄色い声が混じる歓声に黄色いグローブを嵌めた右凛を掲げてみせる葵。細身に見えるが身体は締まっており、青いトランクス姿はそれをさらにカッコよく映えさせる。———凛はそんな葵に思わずはあ、とため息をついた。
(んだよ、無駄に髪の毛さらさら、んで、イケメンアイドル?…ああいうお調子者って奴ほど無償に潰したくなるんだよなあ…)
凜はふと、翼の顔を想いお出す。…そうだそうだ、あいつも随分にお調子者だった。
「よお。ナンパ野郎。運が悪かったなあ、俺が相手で。…潰してやるぜ?」
凛は葵に向かい、下品に首を掻っ切るポーズをして見せると。葵は薬、と笑みを浮かべた。
「こちらこそ!君が相手でよかったよ!オレのデビュー戦の相手になってくれてありがとう。…キミみたいなわかりやすいモブキャラが相手だとファンの子たちも喜んでくれると思うから」
「なっ!?」
「ふふ、そういうのわかりやすいのも、また、イイよね」
そう言うと、葵もまたグローブの親指を下に向ける。———同時にふたたび観客席から葵コールがが巻き起こり———
「てめえ!調子に乗りやがって!ぜってー潰すッ!———観客どもも見てろ!俺の雄姿!その目に焼き付けておくんだな!伝説になる!様をッ!」
俺はそう言うとギッ!と野性的な目つきで葵を睨みつけた。
「絶対に負けられねえ…あんな、見た目だけのいい子ちゃんってやつにはなあ…!」
カーンッ!
ゴング!グローブタッチを済ませた凛は、早速ぐっとファイティングポーズを構えるとタンッタンッと軽快にリズムをとる!
「来な、アイドル野郎。格の差ってやつを教えてやるぜ?」
赤いグローブでくいくいっと挑発。…翼の野郎に負けないためにも、勇者ってやつになるためにも!ここで負けられねえ!葵の様子を見ることを決めた凛はじっとその目をにらみつけると———
「あれ? 突っ込んでこないんだ?君の口ぶりだとイノシシみたいなことをすると思ったんだけどなあ」
肩透かしを喰らったような表情で呟く葵。
「…だったら、お望み通りこっちから仕掛けてあげようかなっ!」
タンッ!
葵はステップ、ミドルレンジに足を踏み入れると———
「シッ!」
バスバスッ!バスッ!
素早い左ジャブの連打から、右のストレート!が、
(っし!予想通り!)
葵のパンチをみて凛はにいっと笑みを浮かべた!思った通り、こいつ、細い体同様にパンチも軽い!なら…!
「おせぇっ!」
凜は葵の隙を穿つようにダンッ!と踏み込むと力任せの右ストレート!
「ッ!?」
葵はとっさに両凛を顔の前へと上げて凛の右ストレートをブロックするが!
「くうっ…!?」
想定外のパワー!ガードで凛の勢いを殺しきれず、仰け反るように後ずさる!
「って、やっぱり油断禁物ってことかよ!」
葵はタンッとバックステップ、反撃の隙を伺おうとすると———
「にがしゃしねえぜ!」
瞬間、タンッ!とステップを踏んだ凛はあっという間に葵へと肉薄!
「くっ!」
その速さに驚く葵に、どや顔を見せつけてやると———
「遅ぇぜ、アイドル!」
その顔面を潰すように、ワンツー!———が!
「くっ!」
パシィッ!
葵は凛のジャブをパーリング、続くストレートをなんとかダッキングで避ける!そして!
「なら…まずはアンタのスピードを削ってやる!」
傾いた体勢を立て直しつつ、葵が拳を振り上げ———!
ドスゥゥッ!
ボディーフック!
「ちぃっ!」
凛はやるなバックステップを踏み、距離を取る———と思わせ、すぐさま反転!
「勝負だ…喰らいやがれえぇッ!」
今度はこちらから!ダッキングをしながら葵の腹を目掛けてのボディーストレート!
ドムゥゥゥゥッ!
「ぐぷぁ…っ!?」
凛の一転攻勢に対応できない葵の腹に赤いグローブがめり込み、その口から白いマウスピースがはみ出し、唾液が漏れ落ちる。
「く……効いたぁ…!」
「へっ!顔じゃなかっただけありがたく思うだな!」
葵はダメージを受けつつもとっさにバックステップし、距離を取って凛の追撃から逃れるつつ———
「シッ!」
回り込むように凛の顔面へとダブルのストレートを打ち込む!が、
「へへっ!軽い軽い!」
凜はそれをダッキングで悠々と避けると———
「これで、おねんねさせてやるよ!」
葵の顎に向かい大ぶりのアッパー!———気を良くした凛は一気に勝負を仕掛ける!
「っしゃあああああッ!」
———が!
「そんな大振り当たらないよっ!」
葵は軽くバックステップ、凛のアッパーを大きく空振りさせると———
「がら空きだよ!」
ドスゥゥゥゥッゥッ!
「うぐぉっ!?」
瞬間。葵の凛が鳩尾にめり込み———
「ぐっ…!」
凛は思わず顔をしかめる。———思ったよりもパンチが重い。だが!
「負けて…られっかよおッ!オラァッ!」
バッゴッォォォォォォッ!
「ぶふぅっ!?」
凜のストレートが葵の頬を抉ると、凛の口からまたもやマウスピースが顔を見せ、大量の唾液が宙に吹き散らされた!
「うぐっ……イイパンチ…もってるじゃん…!?」
葵は虚勢化余裕かわからない笑みを浮かべその場に踏みとどまると———
「こうなったら…我慢比べだね、あまり好きじゃないんだけど?」
「ああっ!?」
「僕みたいなアイドルって言うのはさ、君と違ってスマートに勝ちたいんだ。だけど…たまにはこういうのも、ファンの皆は喜ぶってねえ!」
ドッムゥゥゥゥゥゥゥッ!
「ぐうっ!?」
葵のボディーブローがリンの腹にめり込む!———が!
「奇遇…だな!我慢比べだなんて…俺も趣味じゃねえっつーの!俺は…!翼のアホを超えて伝説になる男だっつの!」
凜もまた、気合を入れて持ち直すと———
「うおらっ!」
ドスゥゥゥゥゥゥッ!
「がっ!?」
葵の腹にボディーブロー!
「くっ…!君、生意気ッ!」
ドスゥゥゥゥゥッ!
「がはっ!?テメエこそ…もっときたねー性格、観客に晒してみろっつーの、このエセアイドル!」
ズドムゥゥゥゥッ!
「ぐはあっ!?」
———アイドルである葵と、それなりにイケメンである凛、二人のボディーブロー合戦に観客は大いに盛り上がる!そして!
ドスゥゥッ!ドムゥゥゥッ!ドボオォォォッ!
「ぐうっ!?
「がはっ!」
「負け…るかっつの!」
「君のような猿みたいなやつに…!アイドルの僕が…負けるかっての!」
二人の意地と意地がぶつかり———
ドボッ!
「が…あっ!?」
「ふふっ!」
葵のボディーアッパーにリンの腹筋がついに悲鳴を上げ———そのガードが緩み、凛の顔面ががら空きになったその瞬間!
「最後は…華麗に行かせてもらうよ、伝説の踏み台くん♪」
「て…め…!」
「シィッ!」
葵のアッパーががら空きになった凛の顎へと迫る!———その時!
「へっ…まだまだ、伝説!なめんじゃねえええええッ!」
凛は無意識に体を動かすと———
ガスゥッ!
「うっ?!」
エルボーブロック!葵のアッパーを肘で撃ち落とし———今度は葵の体が無防備になると!
「オラァァァァァァッ!」
ひゅっ!と風を切る音と共に凛の赤いグローブがうなりを上げる!上半身のばねだけで放ったストレート!至近距離だからこそ、のその一撃が葵へと迫り!
バシィィィィッ!
「くっ!?」
葵の整った顔面にクリーンヒット!———葵は思わず足をふらつかせ、3歩、足をもたつかせると———
くんっ!
その背中がロープを背負う!
「しまっ…!」
葵が冷や汗を流す、その瞬間!
「もらったぁっ!———シィッ!」
ダンッ!と踏み込んだ鋭いストレート!———ガードされても構わない、凛は葵の胸元をわざと狙い鋭い右ストレートを放つと———
バキィィィッ!
「ぐっ!?」
凜の予想通り!慌ててガードした葵のグローブを吹き飛ばす!そして、今度こそ!本当に!葵の体に何の障害もなくその体ががら空きになると———
「さあ!ロープを背負ってオレのパンチが避けられるか———!やってみなあ!シィッ!」
凜はもう一度、鋭いストレート!葵の顔面に赤いグローブが吸い込まれるように放たれると———
「く…うっ!」
ブロックを崩された葵の体がぐらり、と揺れる!瞬間、葵の上半身はまるでダッキングをとるかのようにその頭が下がり———
ひゅおっ!
「なっ…?!」
必殺の一撃!そう思った凛のストレートは葵の頭上を通り抜ける。———葵のラッキーの賜物。盛大な空振り!葵の目の前に、凛のがら空きの腹筋が映ると———
「ふっ!」
ドスゥゥゥゥッ!
「がはっ!?」
「へへっ!調子に…乗ってくれちゃって!」
ドスッ!ドムドムドムッ!ドスゥッ!ドッボオオオォォォォッ!
「ぐあっ!?がっ!あっ…がああああああああああっ!?」
凜に密着した葵は、超至近距離からのボディーブローの連打!———凛は何とか、逃げ出そうとするも、
「ふふっ!無理無理…逃がすわけないっつーの!」
ドッムゥゥゥゥゥゥゥッ!
「ぐああああっ!?」
逃げ出せない凜に、葵の強烈なボディーが襲う!
「く…ぅっ…!」
凜の表情がだんだんと青ざめていく。———あまりにも腹を打たれたことによる限界。
(や…べえ…!くそ…!あんなん…あり…かよ…!)
凜は足が震えて来るのを感じつつも、何とか逃げようとステップを踏むも———
「ふふっ!遅い遅い!さあ、僕のボディー連打から逃げてみなよ!」
ドムゥゥッ!ドボォォッ!
「くあっ…?!」
葵の追撃のボディーは止まらない!
(く…そ…!こうなったら…!)
とうとう追い詰められた凜!凜は最後の手段、とばかり———
ズドムッ!
「ぐ…!」
「ふふっ♪」
「調子に…!」
「っ!」
「乗ってんじゃねえ!くたばれっつーの!」
こんなアイドルもどきに一方的に腹ばかり殴られるのがむかつく!———凛は怒りに任せ、葵の顔面に、打ち下ろすような、死角からの鋭いストレートを放つと!
「ふふっ」
凛の背中に悪寒が走る!瞬間、葵はそのパンチを見越していたかのようにふっと顔を反らし———
「ッ!?」
凜は大きく空振り!葵の目の前でがら空きな体を晒すと———
「もーらい♪ちょっとは教えてあげるよ、身の程ってやつを…ねえ!」
バスゥッ!
「がっ!?」
ドムドムゥゥゥゥゥッ!
カウンター気味に突き上げるアッパー、そして、そこから続くボディーブローの連打!
「が…あっ…あがっ…!?」
凛はもろにそれを受け、思わず膝がガクン、と揺れると———
「ByeBye♪」
バッシィィィィィィィィィィッ!
葵のアッパーが凛の顎を捉える!青いグローブが打ち上げられると同時、凛もまた、その視界が天井へと向くと———
「あ……!」
(俺の…マウスピース…!)
凜の血塗れのマウスピースが宙に舞うのが見える!———そして、その体がぐらり、と倒れそうになった、その瞬間!
「シッ!」
ズドムッッッッッ!
「ッ!!!!」
「ふふ、油断した、でしょ?———やっぱ、君を仕留めるには最後はここを潰さないとねえ、伝説の踏み台くん♪」
葵のボディーブローが凛の腹をきれいに貫いた。
「が……あ……!」
凛は体をくの字に曲げ、口からごぽり、と血塗れの唾を吐き散らす。そして、その体が文字通りに吹っ飛ぶと———
ドサァァァァァァァッ!
『Down!』
わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!
葵の一撃に!ついにの決着!———観客たちは大いに沸き上がった!
「ふふ♪どう、僕のボディーは?…ありがとう、凛君?僕のアイドルボクサーとしての踏み台になってくれて♪———君ならいつでも大歓迎だよ♪」
凛は葵の言葉を聞きながら、ぴくぴくとその体を震わせた。———全身が痛む。散々に打たれた腹筋はもう壊れてしまったようで、息をするだけでも前進に痛みが走る。でも…
(…こんな…こんなエセアイドル…なんかに…!負けるだなんて…!)
それよりも辛いのは圧倒的なまでの悔しさ!———武者修行一戦目。踏み台にされてしまった凜は、もっと強くなることをリングマットに沈みながら、誓うのであった…。
【続く】
Thalys
2025-03-14 15:33:02 +0000 UTCミケ空
2025-03-14 10:21:46 +0000 UTCThalys
2025-03-14 05:00:46 +0000 UTC