夜19時、とあるトレーニングルーム。
———キュッ!キュッキュッ!
「シッシッ!シッ!」
バスバスッ!
「シィッ!」
リングの上ではFNとは思えない、プロレベルともいえるハイレベルな試合が繰り広げられていた。
「広瀬先輩、隙ありッ!」
一人は黒髪に黄色いグローブ、青ラインの入った白のトランクスを身につけた男。アマチュアで「無敗のヒーロー」と呼ばれるも、プロで連敗、FNに落ちぶれてきたボクサー、立花将。そして、
「———ッ!と、相変わらず素早いな、立花ッ!」
そんな立花と互角にやり合っているのが黒髪に金髪メッシュの入った長身の男。FNの事務員兼レフェリー兼コーチ兼選手であり、アマチュアで「鷹の目」と呼ばれた立花の先輩、広瀬孝。———元は同じジムの先輩、後輩。アマチュア時代、ともに凄腕と二つ名までつけられていた二人はリングの上でのスパーリング!激しい駆け引きに見学をしていた観客代わりの選手たちが「おお」と声を上げた———その時だった。
カーンッ!
「はあっ!はあっ!…広瀬先輩、つえー…!」
「はは、立花こそ。負けんぞ…!」
インターバル。二人は息を整えながらコーナーにもたれかかった、その時だった。
ピピピピピピッ
「…お?スマホ?」
「俺だ。すまん、立花。おそらく上層部からだ。…少し席を外す」
広瀬はグローブを外すと、スマホを取り———
「もしもし、広瀬です。…はい、その資料ですか?それについては…」
電話の相手と話をしながら、立花にすまん、と頭を下げるとトレーニングルームを去っていく。
「…ん-、広瀬先輩、やっぱ忙しいよなあ…」
対戦相手もいなくなり、ぐっと伸びをする立花。仕方ない、とリングを降りようとした———その時だった。
「ぎゃっはははははは!」
「ひひひひひひっ!」
「…お?」
「立花先ぱぁい?暇ならオレとスパーリングしてくれませんかぁ?ぎゃはははははっ!」
リングに登ってきたのは、「チーム:ブラックブラッド」…通称ブラブラ団の一人、小川信二。金髪のモヒカンヘアーにまるで血を思わせるような赤いグローブにトランクスを身に着けたボクサである信二と、その近くにる今田晃樹は立花にニヤニヤと笑みを浮かべた。
「なんだ、ブラブラ団の…小川信二じゃん。なんだよ、オレとスパーリングして―の?」
「っス!上級者の試合ってのを見てみたらオレもどこまで通じるか!挑戦してみたくなってー!ぎゃはははは!」
「ふぅん、別に構わねーぜ!…言っておくが、オレはつえーぜ?」
信二の言葉に、立花はにっとガッツポーズで答える。
———こいつらも不良集団って言うけれど、リングに上がれば同じボクサー!強い奴に挑戦したいって気持ちはよくわかる!なら、先輩として!しっかりと面倒見てやろうじゃねーの!
…真面目で純粋で、優しく熱血漢な立花。だが、いや、だからこそ。人の悪意には気づきにくい。立花が笑顔でそう答える中———
「ひひひひひっ!」
リングの上でやり取りする立花の死角に入るように、晃樹はこっそりと移動をすると———
「俺等の罠とも知らず、馬鹿な奴…!」
コーナーに無造作に置いてある立花のスポドリをあけ、ピンク色の小瓶の薬をその中に混ぜ込んだ!———FNで流行っている超即効性のある、副作用がない媚薬「ピンクファイア」。
「ひひひひっ!1ラウンドさえもてばいい。そうすれば、立花の野郎はこいつを飲んで信二の魔の手に…ひひひひひっ!」
こうして、仕組まれた試合とも知らず、立花は信二とグローブタッチをし———
カーンッ!
ゴング!戦いの火ぶたが切って落とされると———!
「さあ、まずは小手調べだ!…避けてみなあ!」
タンッ!
立花は軽くステップ!
「うお、はえ…!」
信二は立花のステップの速さに驚いた、その瞬間!
「驚く暇なんざ…ねーぜ、信二ッ!シッ!」
ドスゥゥゥッ!
「うごあっ!?」
信二の中に潜り込んだ立花はボディーに一発!その黄色いグローブを叩き込むと———
「ふっ!」
タンッ!
再びステップ!
「くそ、どこ行きやがった!」
一発入れられ怒りに染まる信二はぐっとガードを固めると立花を警戒するも———
タンッ!タンタンッ!タンッ!
ステップ音はすれども姿は見えず、
「くそ、どこ行きやがった!」
周りを回るような高速ステップに信二が思わず歯ぎしりをした、その時———
「シッ!」
バシィィィッ!
「ぶへえっ!?」
今度は左フック!立花は信二の顔面にグローブを叩きつけてやると———
「さあ、反撃して来いよ、信二!ヒーローは…伊達じゃねえぜッ!」
バスバスバスッ!バスッ!バシィィィィッ!
「うご!?お、ああああああああああっ!?」
…立花の猛ラッシュが、信二を襲うのであった…。
そして。
カーンッ
「ふう♪」
1ラウンド終了のゴング。———立花に四方八方から打たれ、ボッコボコにされた信二はヘロヘロとしながらコーナーに戻ると、
「う…ぐぅ…」
「ひひひひっ!しーんじ!…大丈夫かよ?」
「くそ、あの野郎…ちょこまかと…!」
信二は椅子にどかっ!と腰かけながら、大きく肩で息をしながら渡されたスポドリを口にした。
「ひひひひひっ!もともとお前とヒーローじゃランクも実力も差がありすぎるからな?逆に、よく1ラウンド持ったと思うぜえ?えらいえらい♪」
「てめ、茶化すんじゃねえ!…けど、ま」
信二は息を整えながらもふっと笑みを浮かべる。———視線の先には、晃樹のピンクファイアを混入されたスポドリを飲み込む立花の姿!
「…ひひひひっ!作戦は成功♪…広瀬のヤローも圭太がうまく足止めしてるみてーだし?あとは信二があのヒーローをぶっ飛ばしてパコパコしてやるだけだぜえ♪」
「おーよ。おとりになってくれた圭太の為にも、ここでヒーローぶっ飛ばして!オレらの名前を挙げてやる!」
…信二はバン!と胸の前でグローブを合わせ、気合を入れなおす。そして———
カーンッ!
第2ラウンド!
「1ラウンド、あんだけ殴られたのにまだくじけねえってか!…見直したぜ、信二!」
「るっせえ!一発くらい返してやらなきゃ気が済まねーんだよ!」
「いいねいいね、その感覚!けど、オレを捉えられると———」
思うなよ。立花がそう言おうとしたその瞬間!
どくんっ!
「———え?」
立花の中の何かが跳ね上がる。———瞬間!
「隙ありぃッ!」
バキィィィィッ!
「うぶっ!?」
信二の豪快なストレート!立花は赤いグローブに顔面を打たれ、吹き飛ぶと———
ばくんっ!
「———あ…あ…!?」
自分の体の異変に気付く。
「体が…熱い…!?」
立花はふらふらしながら、それでもなんとかダウンを免れると———
「はあっ…はあっ…はあっ…!?」
自分の体の熱さ、そして、ドキドキと跳ね上がる心臓に、試合中にもかかわらず思わず自らの体を抱きしめた!
「なん…だ…これ…!?」
「ぎゃはははははは!」
———そんな立花に信二がにいっと笑みを浮かべ、グローブをビシッと突きつけた。
「ばぁーか!」
「…っ!?」
「テメエの飲み物にピンクファイアっていう強力な媚薬を混ぜといてやったんだよ!ぎゃははははは!…ようやく効いてきたようだなぁ?」
信二の言葉に立花は目を虚ろにさせながらも———
「く…そ…!」
ファイティングポーズ!信二と立ち向かおうとするも———
「ぎゃはははは!ざまあねえなあ!」
「うっ…ぐうっ…!」
媚薬で熱くなった立花の全身には力が入らない。即効性、というだけあり立花の全身はさらに熱く燃え上がる。そして、熱く鋭敏になった皮膚はちょっとしたトランクスのこすれ、空気のこすれですらも全身に快楽信号を発し———
「ぎゃっはははははは!リングの上で勃起かよ!マジなさけねー!ぎゃははははは!」
「あ…あ……あ…!」
立花は、ついにリングの上でファイティングポーズを取りながらも股間を勃起、テントを作ってしまい———
「く…そ…!くそ…!」
その目に涙が浮かぶ!———が!
「さあ、今までの借りを返してやるよ…耐えてみなあ、ヒーロー!」
ダンッ!
信二は正面からステップ!拳をぎゅっと握りしめ———
「オラァッ!」
バキィィィィィィッ!
「ぐ…あ…!?」
立花の顔面に正面からの豪快なストレート!———媚薬の官能的な熱さと快楽で動けない立花をもろに吹き飛ばすと、
くんっ!
「あうっ!?」
立花はロープを背負う!だが、そのロープの軋む感覚すら立花の股間に響き、立花は思わず、体を前屈みにしながらロープを掴んでしまうと———
「オラオラオラ!嬲り殺してやるぜえ!ぎゃはははははは!」
ドスゥッ!バキィッ!バキャアアアアアアッ!
「あ———!?ぐ…あがっ…!?」
信二の拳が立花の腹を突き上げ、顔面を殴りつける!———媚薬で朦朧とする立花は、動くこともできず。
「ぎゃははははは!オラオラオラァッ!」
バキィィッ!バスゥッ!ドムゥゥゥゥゥッ!
「う…ぐ!?…あ……!」
ただただ、信二のパンチに殴られ、嬲られ!———殴られる痛みすらもが快感へと変わり、その股間がびくびくと震えあがった、その瞬間!
ガシィッ!
「っ!?」
信二はコーナーに掴まる立花にクリンチ!抱き着くようにその体をホールドしてやると———
むにゅっ!
「ひっ…!?」
「ぎゃははははは!どうした、ヒーロー!…オレ様の足がチンポに当たっちまって気持ちいいってか、ああ?!ぎゃっははははははは!」
むにゅっ!むにゅっ!もにゅっ!
「あ…あああああ…!?」
クリンチしながらの信二の膝が立花の股間を攻め上げる!———信二の膝小僧に立花の股間の、硬く、長いモノが当たり———
「ぎゃっはははははは!マジダッセ!マジダッセ!オラオラ!ヒーローがこんな様でいいんかあ!?ええ!?」
信二の声が張り上がる。
「あ…あ…!」
耐えがたい現実、信二の言葉!———立花の全身が悔しさに震える。だが、それでも立花の股間のモノはそれを嬉しく思うかのようにさらに硬度を増すと———
「オラァッ!トドメをさしてやるぜえ!」
ドンッ!と、信二はクリンチ状態の立花を再びロープへと押し付ける!そして!
「オレ様の必殺の『黒血』!受けて…見やがれぇぇぇぇぇぇッ!」
信二のグローブがぎゅっと硬く握られる!そして、それは円を描くように立花の腹へ!吸い込まれるように放たれると———!
「うおらあぁぁぁぁぁぁっ!」
ドッボオオオオオォォォォォォォッ!
「がああああああああああああっ!?…あ…あ…ッ!?」
信二の必殺のボディーブロー!『黒血』が立花の腹を突き刺すようにと食い込んだ!———そして、
「っらぁッ…!うおおおおおっ…!」
メリッ…メリィィッ…!
「がっ…!?あ…がはっ…!?」
信二は叩きつけたボディーブローをさらに喰いこませ!立花の腹を突き破らんとする勢いでさらに突き上げた、その瞬間!
「———がっ!?」
びゅくんっ!どびゅっ!どびゅるううううううううううっ!
信二のボディーブローで腹筋を壊された衝撃!それが快感となり立花の全身を駆け巡り———立花は、絶頂を迎えると。
「あ……あ………!あ……」
「ぎゃっははははは!———オレ様の『黒血』、死ぬほど気持ちいーだろ?ぎゃっははははははは!」
信二は立花のトランクスが濡れたのを確認、貫きあげた拳を引き抜くと———
「うあ…っ…!」
ドサァァァァァァッ!
立花は力尽き、リングマットへと沈んだ。———卑怯な手段を使ったとはいえ、信二の勝利。
「ぎゃーっはははははは!世の中!卑怯な奴が勝つんだよお!ヒーロー如きがヴィランに逆らってんじゃねえぜええ!」
信二はそんな立花を笑い、踏みつけ———その体をリングの中央へとひきずると、ぺろりと舌なめずりをした。
「ぎゃっはははは!さあて!次はいよいよお待ちかね!———ヒーロー処刑ショーだ!おらおら!盛り上がりやがれ!」
———まさかの信二に勝利に沸き立つ会場。
「う…ぅぅ……!助…けて……ひろ…せ…」
殴られ、イかされ、無様な姿を晒された立花はリングマットに沈みながら涙をこぼす。———その時だった!
バァンッ!
「立花ッ!無事かッ!」
「———あぁ!?」
突然の来訪者!大きく開かれたとの音と大声に会場が水を打ったようにシン、となる。
「———!貴様、良くも立花をッ!」
現れた広瀬はトレーニングルームを駆け抜ける!そして、タンッ!と身軽にリングに上がり、立花へと駆け寄ると———!
「ひ…ろせ …せんぱ…!」
「立花、大丈夫か!遅くなってすまない…!」
「う…う…!」
「泣くな泣くな。…少しだけ、休んでろ」
広瀬はそう言うと、立花の頭をそっとグローブで撫で———信二をギッとにらみつけた!
「…立花が世話になったようだな?小川信二」
「あぁ!?」
「貴様らの策略は、お前のところの片割れの圭太から聞いた。随分しぶとく足止めされちまったが…これ以上はやらせん…!」
広瀬はぐっと拳を握りこむ!———まさかの乱入者。信二はちっと舌打ちをすると、ファイティングポーズをとった。
「まあいい!テメエも立花みてーにぶっ飛ばしちまえばいいだけだ!ぎゃはははは!チーム:ブラックブラッドの三人で!テメエら二人を回してやるから覚悟しなあッ!ぎゃっはははははは!」
【続く】
☆イラスト(1枚目から順に):yukibou様、アマツ様、yukibou様、ショウ様