「っし!ハーリー、喰らえ!」
ギッリィィィィィィッ!
「ぐっ…くそ…お…!」
蛇我に負けたハーリーが強くなるために荒療治。B&Hメンバーによるスパーリング大会。…とはいえ、兎真と獅子のコンビにあっさり敗北。虎太郎にはセクハラされてギブアップ。続く悠馬も虎太郎と同程度の実力。ハーリーはあっさりと、悠馬の腕ひしぎ十字固めに腕を取られると、必死に体をよじり、何とか打開をしようとする。…そんな姿を見ながら、虎太郎は考える。
(…やっぱ、ハーリーのプロレスは今一つつまんねえな…)
虎太郎の時もそう。兎真と獅子の時もそう。そして、今の悠馬の時もそう。…ハーリーは確かにプロレスの知識もあるし、筋トレをがっつりしていただけあって筋肉の下地もできているが…プロレスラーとしての持ち味、というものが薄いのだ。
(…プロレススターで、CoS軍相手ならそれでもいいんだろうけど、プロレスラーとなると、な)
プロレスというのは普通の格闘技とは違う。強さを競い合うだけでなく、魅せる必要がある格闘技なのだ。魅せるためにプロレスラーたちは技を磨き、ベビーやヒールなどの特性を付与したり、時にはシナリオを用意し互いにしのぎを削り合う…。プロレススター、街のヒーローとして戦うのであるならば、魅せる、という部分は不要なのだが…
(…まあ、あいつはプロレススターからプロレスラーになった特殊な奴だからな。強くなるためにも、今が試練時か)
虎太郎はハーリーの話を思い出す。総帥・蛇我に手も足も出なかったハーリー。そんな蛇我のプロレス———命を懸けた残虐ファイトを主とする、その意向をを真っ向から否定するためには、ハーリー自身も「残虐ファイトではない、魅せることができる」プロレスラーとして成長するしかない。
ぐっぎいぃぃぃぃ…!
「どうだ、ハーリー!ギブアップしろ…!」
「く…う……うぅぅぅうっ!」
タンッ!タンッ!タンッ!
ハーリーの手がマットを叩く。———ギブアップだ。
「っしゃあ!」
悠馬はガッツポーズを取り、ハーリーは散々に絞め上げられ、痛めつけられた全身をかばいながら、しゅん、と下を向いた。
「…ハーリー、しょげんな」
「悠馬先輩…」
「強くなるためにはもっともっと、頑張らねーと!めそめそしてる暇はねーぞ!蛇我の野郎にまた会った時!抵抗しなきゃ!」
「…そうですね!すみません、くじけてて!」
「…ハーリー」
「虎太郎先輩!」
「頑張るのはいいが、もう少しプロレスラーとして成長しねえとな」
「プロレスラーとして…」
「そうだ。悠馬、ちっと相談があるんだが…」
その時だった。
prrrrrrr!
———電話が鳴る。このジムで電話が鳴るときというのは、対外ロクでもないことで———
「悠馬先輩―!虎太郎先輩―!ザッキーたちが暴れてるって!」
「なにぃ!?もうか!」
「裏路地のところ!オレ達先に行くから―!虎太郎先輩たちもよろしく―!」
「あ、おい待て!兎真、獅子!二人だけで行くなっつの!」
「ハーリー、テメエはここで待って…」
「いえ…行きます」
「…ハーリー」
「さっき言われたじゃないですか。蛇我に負けたからってくよくよしている暇なんてないんです。ザッキー相手でも!鍛錬になる!」
ハーリーはそう言うと手の甲にキス———光があっという間にハーリーを包み、
「…よし!」
ハーリーはプロレススターへと変身すると、
「行ってきます!」
ハーリーはB&Hジムを一気に駆けだした!
「おい、ハーリー!無理すんじゃねえぞ!すぐ行くからな!」
「虎太郎、俺は兎真たちを見て来るから、お前、ハーリーな」
「ったく!手間かけさせやがって!」
…先輩たちの声を背に受けながら、ハーリーは暗くなった天祥市を駆けていく。
(…兎真たちは裏路地の、どっち方面に行った?…こういう時は、左方向っと!)
ハーリーは真っ暗な裏路地のT字路を左に曲がる。そして———
「…あ?」
「お前は…!」
「…なんだ、テメエ?どっかで見たこと…って、ああ。うちから逃げ出したプロレススター君か…!」
ハーリーの目の前、ただ一人夜の街でたたずんでいたのは。
———金髪、背の高いプロレススター。CoS軍幹部、鴉螢斗であった…。
【続く】