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ミケ空
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ハリネズミへの荒治療③

「っし!ハーリー、喰らえ!」

 ギッリィィィィィィッ!

「ぐっ…くそ…お…!」

 蛇我に負けたハーリーが強くなるために荒療治。B&Hメンバーによるスパーリング大会。…とはいえ、兎真と獅子のコンビにあっさり敗北。虎太郎にはセクハラされてギブアップ。続く悠馬も虎太郎と同程度の実力。ハーリーはあっさりと、悠馬の腕ひしぎ十字固めに腕を取られると、必死に体をよじり、何とか打開をしようとする。…そんな姿を見ながら、虎太郎は考える。

(…やっぱ、ハーリーのプロレスは今一つつまんねえな…)

 虎太郎の時もそう。兎真と獅子の時もそう。そして、今の悠馬の時もそう。…ハーリーは確かにプロレスの知識もあるし、筋トレをがっつりしていただけあって筋肉の下地もできているが…プロレスラーとしての持ち味、というものが薄いのだ。

(…プロレススターで、CoS軍相手ならそれでもいいんだろうけど、プロレスラーとなると、な)

 プロレスというのは普通の格闘技とは違う。強さを競い合うだけでなく、魅せる必要がある格闘技なのだ。魅せるためにプロレスラーたちは技を磨き、ベビーやヒールなどの特性を付与したり、時にはシナリオを用意し互いにしのぎを削り合う…。プロレススター、街のヒーローとして戦うのであるならば、魅せる、という部分は不要なのだが…

(…まあ、あいつはプロレススターからプロレスラーになった特殊な奴だからな。強くなるためにも、今が試練時か)

 虎太郎はハーリーの話を思い出す。総帥・蛇我に手も足も出なかったハーリー。そんな蛇我のプロレス———命を懸けた残虐ファイトを主とする、その意向をを真っ向から否定するためには、ハーリー自身も「残虐ファイトではない、魅せることができる」プロレスラーとして成長するしかない。

 ぐっぎいぃぃぃぃ…!

「どうだ、ハーリー!ギブアップしろ…!」

「く…う……うぅぅぅうっ!」

 タンッ!タンッ!タンッ!

 ハーリーの手がマットを叩く。———ギブアップだ。

「っしゃあ!」

 悠馬はガッツポーズを取り、ハーリーは散々に絞め上げられ、痛めつけられた全身をかばいながら、しゅん、と下を向いた。

「…ハーリー、しょげんな」

「悠馬先輩…」

「強くなるためにはもっともっと、頑張らねーと!めそめそしてる暇はねーぞ!蛇我の野郎にまた会った時!抵抗しなきゃ!」

「…そうですね!すみません、くじけてて!」

「…ハーリー」

「虎太郎先輩!」

「頑張るのはいいが、もう少しプロレスラーとして成長しねえとな」

「プロレスラーとして…」

「そうだ。悠馬、ちっと相談があるんだが…」

 その時だった。

 prrrrrrr!

 ———電話が鳴る。このジムで電話が鳴るときというのは、対外ロクでもないことで———

「悠馬先輩―!虎太郎先輩―!ザッキーたちが暴れてるって!」

「なにぃ!?もうか!」

「裏路地のところ!オレ達先に行くから―!虎太郎先輩たちもよろしく―!」

「あ、おい待て!兎真、獅子!二人だけで行くなっつの!」

「ハーリー、テメエはここで待って…」

「いえ…行きます」

「…ハーリー」

「さっき言われたじゃないですか。蛇我に負けたからってくよくよしている暇なんてないんです。ザッキー相手でも!鍛錬になる!」

 ハーリーはそう言うと手の甲にキス———光があっという間にハーリーを包み、


「…よし!」

 ハーリーはプロレススターへと変身すると、

「行ってきます!」

 ハーリーはB&Hジムを一気に駆けだした!

「おい、ハーリー!無理すんじゃねえぞ!すぐ行くからな!」

「虎太郎、俺は兎真たちを見て来るから、お前、ハーリーな」

「ったく!手間かけさせやがって!」

 …先輩たちの声を背に受けながら、ハーリーは暗くなった天祥市を駆けていく。

(…兎真たちは裏路地の、どっち方面に行った?…こういう時は、左方向っと!)

 ハーリーは真っ暗な裏路地のT字路を左に曲がる。そして———

「…あ?」

「お前は…!」

「…なんだ、テメエ?どっかで見たこと…って、ああ。うちから逃げ出したプロレススター君か…!」

 ハーリーの目の前、ただ一人夜の街でたたずんでいたのは。



 ———金髪、背の高いプロレススター。CoS軍幹部、鴉螢斗であった…。


【続く】

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