H&Bジム。現在はCoS軍の襲撃を受けヒーロー、だなんてこともやっているが、やはり本業はプロレスだ。試合が組まれれば皆、その目に闘志を携えてリングに上がり、プロレスという名の命がけの格闘ショーを繰り広げる。…だが、たまにとんでもない試合を組まれることがある。———その一つが、「FN」と呼ばれるとんでもない地下格闘技場で行われる「異種格闘技戦」だ。
「っしゃあ!」
その日、異種格闘技戦の依頼を快く受け入れた浅上虎太郎はFNのリングの上で気合を入れる。———このFN、地下格闘技場の「見世物」として、敗者を勝者の慰みものにする、というとんでもない場所ではあるのだが、H&Bジム切ってのオープンスケベである虎太郎はこれこそヒールレスラーにふさわしい!と、しばしばFNの試合に参加をする始末。そして、今日、虎太郎の前に立ちふさがるのが———
「よぉ、プロレスラーの子猫ちゃん?俺の相手をしてくれるのはテメェか」
虎太郎と同じくらいの身長、鍛えられた腕や腹、闘志に満ちたその風貌———何より、その顔に虎太郎は見覚えがあった。
「あ…テメエ…!そうだ、間違えねえ!Lionで主演やってた…!獅童勇斗!」
「おっと、俺のファンかい?わりぃねえ。今はここのボクサーだもんでな」
「あ?!なんでテメエが…!」
「ま、色々。そうだな…この拳が血を求めたから、とでも言ったら満足するか?」
勇斗はにいっと笑みを浮かべると虎太郎に向けくいくいっと挑発。———そうだ、と虎太郎は思い出す。相手が何だろうと関係ねえ、リングの上に立ったなら、やることはただ一つ!
「へっ!その顔、オレ様がもっといい顔に整形してやるぜ?」
「来な、その顔、もっと見られるようにボコってやるよ」
そして!
カーンッ!
「Fight!」
プロレスラーVSボクサー!異種格闘技戦の火ぶたが切って落とされる!…が。
「………」
「………お、どうした、プロレスラーの子猫ちゃん?来ねえのか?」
「はっ、虎太郎って呼べや。っつか、子猫はテメエだろ、獅子野郎」
「虎が獅子に勝てると思ってんのか?」
二人は互いに距離を取り合いながら口で挑発を繰り返すのみ。ボクサーの勇斗からしてみれば、プロレスラーの虎太郎の投げ技を警戒。プロレスラーの虎太郎からしてみればボクサーの本場のパンチだなんて喰らおうもんならひとたまりもない。
(うかつに踏み込めば相手に飲まれる)
互いにそう感じながらも、先手を切ったのは———
「っしゃああ!」
虎太郎!虎太郎は勇斗の足を狙った足払いを仕掛ける!
「っと!」
勇斗はそれを軽くトンットンッとバックステップで避けると———
「っしゃ、もらったぁっ!」
虎太郎は腕を前面にガードを固め、体勢を低くすると突撃!
(獅子野郎の足に喰らいつく!)
戦車が突撃するかのようなスタイルで虎太郎は勇斗の足をクラッチしようと前に出ると———
「シッ!」
バスゥゥゥゥッ!
勇斗の迎撃のボディーブローが虎太郎のガードに喰いこむ!喰いこみ、そして!
ばがんっ!
「くっ!?」
(なんだよ、この威力…!マジかよ…!?)
勇斗のボディーブロー、ボクサーのパンチの一撃が虎太郎のガードをふっとばす!———虎太郎は慌ててバックステップ、距離を取ろうとするも、
「オラ、にげんなよ、子猫ちゃん!」
バスバシィィィィッ!
「———がっ!?」
勇斗はそんな虎太郎にすぐに追いつくと、踏み込んだワンツー!勇斗の赤いグローブが虎太郎の顔面に喰いこむと———
「シッ!シッシッ!」
バスゥッ!バシバシィッ!ドムゥゥッ!
「ぐおっ…!?」
虎太郎の鍛え上げられた体に勇斗のパンチが次々と叩き込まれる!
(くっ…はええ…!)
もともとプロレスラーでも鈍重な動きの虎太郎、ボクサーの勇斗の動きにはついていけず———
「シィッ!」
ドムゥゥゥゥゥッ!
「ごはあああっ!?」
勇斗のボディーブローを腹にもろに受けると、虎太郎は体をくの字にしてふらついた!
(くそっ!掴んじまえばこっちのもんなのに…!)
痣と赤みを増やしていく虎太郎。———勇斗はにいっと笑みを浮かべながらも、
「オラオラッ!」
バッシィィィィィッ!
「ぐはあああああああああっ!?」
獅子の拳を、虎太郎の体に打ち込みその体力と闘志を奪いにかかるのであった…!
【続く】