サーヴァント。聖杯戦争を戦い抜くためのマスターの使い魔。当然、サーヴァントには予断を許さぬ強さが求められる。…カルデアに設置された特設ケージの中ではそんな「強さ」にこだわる二人のサーヴァントがにらみ合っていた。
「さあて、ぶん殴りの時間だ。覚悟はできてんだろうな、アキレウス」
にいっとした笑みを浮かべながら語るのはベオウルフ。金髪褐色肌にたくましい、まるで彫刻のような筋肉。獣そのものの闘志を放つベオウルフはボキボキと指の骨を鳴らすと、ファイティングポーズをとりつつ、全身の筋肉にぐっと力を入れ隆起させるとにいっと笑みを浮かべた。…そして、
「よろしくな、ベオウルフ。アンタと戦うのを楽しみにしていたんだぜ?」
そう返答を返すのがアキレウス。逆立てた髪に無駄のない筋肉。ベオウルフほどに隆起したそれではないが、その代わりにしなやかで柔軟性があるそれ。オレンジのトランクスと黒いオープンフィンガーグローブをつけたアキレウスはぐっと力を入れ腹筋の割れ目を露わにさせると不敵な笑みを返した。
「随分と、いいサンドバッグになりそうじゃねえかアキレウス。…ここ最近はちいっとストレスが溜まっていてな。…そう簡単にくたばってくれるんじゃねえぞ」
「ほう、奇遇だね。俺もここ最近は消化不良でね。…アンタが俺の相手にふさわしいといいんだが?」
「なら、さっそく殴り合うとしようや。殴れば全部わかる。てめえの強さも、根性も、どっちがつええかってのもな」
「は、そうだな。俺のが強いってことが明らかになっちまうな。…口だけでないことを期待するぜ、べオウルフ」
まるで今からケンカでもするかのように上半身だけ服を脱ぎ捨て、拳を握りこむベオウルフ。一方、しっかりとしたトランクスに黒いオープンフィンガーグローブを身に着け、さながら格闘家の装いのアキレウス。正反対にも見える二人はにらみ合う。そして!
カーンッ!
鳴り響くゴングと共に二人の闘志がさらに燃え上がる!
(———強いのは、俺だ!)
最初に拳を握りこんだのは———ベオウルフ!
「うおおおおおおっ!」
ベオウルフの逞しい腕が唸りを上げる!ボクサーやキックボクサーのような格闘家のパンチとは違う、腕力にものを言わせた喧嘩の拳!ベオウルフはそれをアキレウスの顔面に向かい振り抜く!
「おっと!…そんな喧嘩殺法で俺に敵うと思ってんのか!?」
アキレウスはそれを冷静に見つめると、タンッ!とステップ。身軽にかわしながら距離を取ると———!
「シッ!」
バシィッ!
ベオウルフの顔面にジャブを一発!———格闘家の放つようなそれがベオウルフの顔面を捉えた!———が!
「ははっ!軽ぃなあ、アキレウス!」
「ッ!」
「そんなんで…俺を倒せると思うなよ!」
ベオウルフはひるまない!むしろその痛みを楽しむかのようにさらに前に出ると———!
「オラァッ!」
ベオウルフは無造作に足を前に出す!鋭い前蹴りがアキレウスの脇腹を狙う!
「ちっ!」
バスゥッ!
アキレウスは焦りながらもそれを肘でブロック、あまりの鋭さにじんじんと痛む腕を感じながらも———
「オラよッ!」
アキレウスはさらに前に出るとベオウルフの首に手を伸ばす!———狙うはその腹、首相撲!
「その腹筋、ぶっ壊してやんぜ!」
膝蹴りを叩きこもうとアキレウスは手を伸ばし———
ガシィッ!
「っし!」
アキレウスはベオウルフを首を捉えると首相撲!
「とっとと…寝かしてやんよ!」
一気に膝を叩きつけて勝負をつけようとするも———その時!
「ふん」
「なにっ!?」
ベオウルフは巧みに体を屈め、首相撲からするりと抜けると———
「オラ、足元がお留守だぜ!」
ガスゥゥッ!
「ぐっ!
体を屈め、アキレウスの軸足に足払い!———綺麗に足を取られたアキレウスはそのままドタンッ!と床に転がると
「ははッ!狩ってやんぜッ!」
ベオウルフはマウントポジションを取るべく、アキレウスに飛び掛かる!———が!
「ちぃっ!」
タンッ!
アキレウスはすぐさま体制を立て直しながらバックステップ、ベオウルフのマウントポジションから素早く逃げ出すと、距離を開け———
「ちっ…」
舌打ちをしながら、体勢を整える。ベオウルフも追い打ちをしないようだった。
「どうした、アキレウス?まさか、この程度な訳ねーよなあ?」
「当然だッ!いきなり本気を出したらつまらねえだろ?」
「だよなあ?せっかくの殴り合い、もっと楽しもうぜ?…せっかく逃がしてやったんだ。あんまり失望させんなよ」
「ふん。たかが喧嘩野郎かとも思ったが…油断はできねえな、ベオウルフ」
「はっ!そう思うんならとっとと全力を出しな。勝つのは…俺だッ!」
ダンッ!
再びベオウルフが力強くケージの床を蹴り、アキレウスに接近!———その時!
「シッ!」
バスバスッ!バスッ!
「ッ!?」
接近したベオウルフは『ジャブ』を放ち、驚いたアキレウスはそれをなんとかブロック!———そう『ジャブ』!先ほどまで喧嘩スタイルの延長線上で、腕力にものを言わせ振り回すような拳しか打たなかったベオウルフが突如、格闘家のような動きを見せる!
「随分と…手を抜かれてたってか!?」
アキレウスはすぐさまその事実を脳内処理、それを飲み込むとにいっと笑みを浮かべる!そして!
「シィッ!」
バシィィッ!
反撃!ベオウルフにローキック!その軸足を狙うも———
「効くかッ!」
ベオウルフはローキックを喰らいながらもそのまま突進!
「オラァッ!」
ワンツーパンチでアキレウスの顔面を狙う!
バスバスゥッ!
「ちっ!」
アキレウスはそれをブロック!———瞬間!
「シィッ!」
ドスゥゥゥゥッ!
「———ッ!」
アキレウスのボディーフックがベオウルフのレバーに綺麗に突き刺さる!アキレウスは一瞬、息を詰まらせるも!
「なめ…んじゃねえッ!」
反撃のストレート!ベオウルフの顔面を打ち貫こうとした、その時!
「ッらあぁぁぁッ!」
ベオウルフの体が回転!アキレウスのストレートを髪の毛一本の差でかわすと———
バキィィィィィッ!
「ぐあっ…!?」
バックハンドブロー!回避も兼ねたベオウルフの一撃がアキレウスの頬を叩いた!
「くっ…!」
こめかみを打たれふらつくアキレウス!形勢は不利と判断、すぐさまタンッ!とバックステップを踏み込み、距離を取ろうとするも———
「遅ぇ遅ぇ遅ぇッ!」
ダンッ!
ベオウルフはすぐさまステップ!あっという間にアキレウスの内側へと入り込むと———!
「さあ!覚悟しなぁッ!」
ドッボオオオォォォォォッ!
「がっ!?」
ベオウルフの剛拳がアキレウスの腹を突き上げる!
「ぐ…あっ…!?」
強烈な一撃!———アキレウスは体をくの字にしながらがはっと唾を吐き出す。
「どうした、アキレウス?…この程度で終わるほど、テメエの腹筋はヤワじゃねえよなあ?」
みりっ…!みりみりっ…!
「がっ…あっ…!」
ベオウルフはさらに拳をアキレウスの腹筋をねじ込むように突き上げてやると———
「ぐあ…あ…がはあっ!」
アキレウスはこみあげる痛みに思わず、その腕がだらんと落ちる!
「ちっ、この程度かよ。期待外れにもほどがあったな…」
ベオウルフはあっけなさ、歯ごたえのなさに思わず舌打ちをすると———
「さっさと…寝ちまいなあッ!」
その腕の筋肉がさらに隆起!アキレウスの腹筋に突き刺した拳をさらに突き上げ———アキレウスの腹筋が今まさに、ぶち破られようとしたその時!
「なめ…んじゃ…!
「ッ!?」
「…ねぇぞッ!ベオウルフッ!」
アキレウスの目が輝く!そして、その拳がぎゅっと握りこまれると———!
バキィィィィッ!
不意を打ったアキレウスの突き上げるようなアッパーがベオウルフの顎を捉える!
「ぐはあっ!?」
アッパーの直撃を顎にもらったベオウルフ!不意を打たれた一撃に思わずふらつくと———!
「もらったぁッ!」
バッシィィィィィィィィィィッッ!
アキレウスのハイキック!———ベオウルフの側頭部を吹き飛ばし、その体をケージの床へと転がすと———アキレウスはすぐさまバックステップ。追い打ちをせず体勢を整えた。
「はあ…はあ…!」
「ちっ…!」
ゆっくりと起き上がりながら、打たれた顔面を確かめるように触れながら起き上がるベオウルフ。そして、アキレウスもまた、大きく肩で息をしながらもベオウルフに突き上げられた腹をさすった。
「はあ…はあ…やるじゃねえか、ベオウルフ。腹、効いたぜ?」
「てめえもな、アキレウス。あそこでハイキックたあ。…はっ、血が燃えるぜ。だがな…てめえじゃ俺には勝てねえ」
「どうかな?…俺の蹴りも…随分と効いているように見えるんだがな?」
「はっ!てめえこそ!随分と…痛そうな腹筋してるじゃねえか」
互いににらみ合いながら不敵な笑みを浮かべるベオウルフとアキレウス。…そして!
「っしゃあ!」
今度はアキレウスが仕掛ける!アキレウスはタンッ!と軽快にベオウルフにステップイン!
「オラ、来やがれッ!」
そんなアキレウスにベオウルフはミドルキックで牽制するも、アキレウスはタンッ!とバックステップ!ベオウルフのミドルキックをすからせると———
「本当の速さってやつを…教えてやるよッ!」
タンッ!
「ッ!」
まるでゴムが跳ね返るように前へと突撃!———その速さに驚くベオウルフとの距離を一瞬で詰めると!
「シッ!」
バキィィィィィィッ!
ベオウルフの顔面にストレート!その拳がベオウルフの顔面を貫いた!
「…はっ!やるじゃねえか!だがな!」
ベオウルフはそれを顔面に受けながらも、さも効いていないかのようににいっと笑みを浮かべると!
「てめえの拳じゃ…俺は砕けねえ!オラ、もう一発!腹にぶち込んでやらぁっ!」
ベオウルフの剛拳がうなりを上げる!それはアキレウスの腹をもう一度!めり込もうとした———その瞬間!
「シィッ!」
ドスゥゥゥゥゥゥッ!
「があっ!?」
アキレウスの膝がベオウルフの腹にめり込む!———ストレートはただの布石。アキレウスのベオウルフを仕留めるための膝蹴りこそが本命!
「二度も同じ手を食わねーよ」
「くぅっ…!」
ベオウルフの顔に脂汗が浮かぶ!———瞬間、アキレウスはバックステップ!そして!
「こいつも…持ってきなぁッ!」
タンッ!
アキレウスが飛ぶ!それと同時、アキレウスは膝を突き出し———!
バッキイイイイィィィィィィッ!
「うぐあああっ!?」
アキレウスの飛び膝蹴りがその顔面を貫く!ベオウルフはもろに受けると、天井を見上げながらバランスを崩し———!
ドタァァァァァンッ!
「———ぐうっ!」
背中からケージの床へと倒れこむ!
「っしゃああ!」
アキレウスはさらに追撃!サッカーボールキックでベオウルフに蹴りを入れようとするも!
「ははっ!」
ベオウルフはバンッ!と床を叩くとすぐさま転がりながらもダンッ!と飛び跳ねるように起き上がり———!
「オラァぁぁッ!」
バキィィィィィッ!
「がはっ!」
アキレウスの顔面にストレート!だが、
「オラ…よっ!」
ドムゥゥゥゥゥッ!
アキレウスもまた、ボディーブロー!ベオウルフの腹に重い一撃を加えると———
「くっ!」
「ちぃっ!」
二人はタンッ!とバックステップ!…互いに距離を取り、ファイティングポーズを取ったまま不敵な笑みを浮かべた。
「へ…へへ…!やるな、アキレウス…!初めこそ肩透かしかと思ったが…!」
「お前こそ…!その筋肉は伊達じゃねえな、ベオウルフ!…だからこそ、負けられねえなあ!」
「なら、もっと喰らわせてやるよ、アキレウス。テメエのツラに!腹に!二度と立てなくなるまでなあ?」
「やってみろ。逆に沈めてやるよ。…どちらが上か、わからせてやる」
そして二人はギリギリとにらみ合うと———
「うおおおおおおおおっ!」
再び、リングの上でぶつかり合った。
「はあっ!…はあっ!…やるじゃねえか…!」
「ぐっ…はあっ!そっちこそ。ごほっ…!」
それから。ベオウルフとアキレスは長い時間ぶつかり合う。力に優れ、拳での攻撃を得意とするベオウルフ。半面に素早さに長け、蹴りでの威力ある攻撃を得意とするアキレウス。片方の拳がめり込めば片方の蹴りが体を穿つ…そんな一進一退の攻防が続いた結果、二人の体は満身創痍。互いの顔に、体に無数の痣をつけた二人は不敵な笑みを浮かべる。
———思うのは一つ。こいつにだけは負けたくない!お前より強いのは、この俺だ!そして、
「行くぜ、ベオウルフ!…ふッ!」
バキィィィッ!
「ぐっ…!」
アキレウスのミドルキック!———満身創痍でフラフラするベオウルフの脇腹にきれいに食い込むと、
「まだまだぁッ!」
タンッ!バシィィィィィッ!
「ぐあっ!?」
さらに追撃!素早いステップで距離を詰めたアキレウスの鋭い左フックがベオウルフの顔を殴りつけると———!
「ははっ!楽しいなあ、アキレウス!」
ドスゥゥゥゥゥゥッ!
「ぐっ!?」
ベオウルフの反撃のボディーブロー!アキレウスは体をくの字に曲げると———
ガシィッ!
「オラ…さっきのお礼だ、もってけ!」
ドッスゥゥゥゥゥゥゥッ!
「があああっ!?」
ベオウルフはアキレウスの肩を掴み、鋭い膝蹴り!アキレウスの腹筋にベオウルフの膝が食い込む!
「くぅっ…!」
タンッ!
かはっと、アキレウスは口から赤い血を吐きだす。致命的なダメージ!———だが、アキレウスがこの程度で降参するはずもなく、すぐさまバックステップを踏み、距離を取ると———
「オラ、逃げんな!もっと殴って蹴って!やりあおうや!」
突っ込んでくるベオウルフ!
「オラァァァッ!」
ベオウルフの剛拳のストレートが再びアキレウスを襲う!———瞬間!
「ふッ!」
「っ!?」
アキレウスは、そのパンチを避けながら体を回転!———そのまま足を延ばすと!
「シィッ!」
バキィィィィィィッ!
「がああああっ!」
ローリングソバット!アキレウスの蹴りがベオウルフの脇腹を蹴りつけた!…瞬間!
「オラ、俺からも…お返しだぜ!」
ダンッ!ドッスゥゥゥゥゥゥゥゥッ!
ぐうっ!?
アキレウスの踏み込んだボディーアッパーがベオウルフの腹筋を貫き、ベオウルフが体をくの字に曲げた!———瞬間!
「がはっ!」
ベオウルフもまた、口から赤いものを吐きだす!こちらもクリティカルヒットだ!だが———!
「ぬううううううっ!」
「うおっ!?」
それでも、ベオウルフはアキレウスが見せたようなローリングソバットを繰り出すと、虚を突かれたアキレウスは慌てて距離を取る。そして、
「はあ…はあ…!ごほっ!」
「へへっ…はあっ!はあっ!…ぐはっ!」
互いに距離を置いたベオウルフとアキレウス。逃げることのできないケージという檻の中、二人は互いににらみ合う。口からは血がつうっとながれ、二人の足元に点々を赤い跡をつけた。
「どうした、アキレウス…へへ、随分つらそうじゃねえか」
「はっ!それは…お前だろ、ベオウルフ…!」
「へっ!まだまだ…!もっと殴って蹴って、楽しもうや、アキレウス」
「残念だが、俺はマゾヒストじゃないんでね。…もうごめんだ。次でケリをつけてやるよ」
———二人の間を荒い吐息が交差する。10秒、20秒。二人の間に静寂が流れ、そして———
「…行くぜッ!」
「来いやッ!」
『うおおおおおおおおおおおっ!』
ベオウルフとアキレウス!二人は同時に駆け出し、
「オラァッ!」
「シィッ!」
互いに同じタイミングで拳を振り抜く!それは———
―――――――――――――――――――――――――――――
【if】
ベオウルフの頬を貫いた!(アキレウス勝利END)
・このまま進むとベオウルフ勝利END。
―――――――――――――――――――――――――――――
「オラァッ!」
「シィッ!」
互いに同じタイミングで振り抜いた拳!それは———
バッキィィィィィィッ!
「がっ…!?」
「ごはぁっ!?」
それは、アキレウスの頬を貫くと同時、ベオウルフの頬も貫いた!———だが!
「おおおおおっ!」
ベオウルフは止まらない!アキレウスの拳を受けながらも、べオウルフはさらにアキレウスに接近、二撃目を叩きこもうとした———その瞬間!
「もらったぁッ!」
ガシィィッ!
「ッ?!」
アキレウスがタックル!———その両手がベオウルフの腰をがっちりとクラッチすると、
「うおおおおおおおおっ!」
ドッサァァァァァァァッ!
「ぐううううっ!」
アキレウスはそのまま!ベオウルフを持ち上げ地面へと叩きつけた!そして!
「へへッ!」
ガシィッ!
「ッ!」
アキレウスはマウントポジション!ベオウルフに馬乗りになり、その拳を固めると———
「うおおおおおおおおおおっ!」
バスゥッ!バシィッ!バキィィィッ!
「ごはあっ!?」
ベオウルフにパンチの嵐!アキレウスはひたすらにマウントパンチを繰り返した!
「オラオラオラッ!」
バスゥッ!バシィッ!バキィッ!
「———ッ!」
ひたすらに両腕を上げ耐えるベオウルフ!そして!
「これで…終わりだぁッ!」
バッキィィィィィィィィッ!
アキレウスのマウントパンチがベオウルフのガードをかいくぐり、その顎を貫いた!
「ぐはあああっ!?」
脳震盪でも起こしたのだろう、ベオウルフはこちらをギッとにらみつけるも、その腕がだらんと落ち———
「…はっ!俺の勝ちだな、ベオウルフ!」
アキレウスはにいっと笑みを浮かべた。そして!
「シィッ!」
バッシィィィィィィィィッ!
アキレウスのフィニッシュの一撃がベオウルフの頬を殴りつけ———!
「———ッ!」
ベオウルフはがはっ!と血を吐き出し———そのまま、動かなくなると。
「へっ、俺に勝てると思ったかよ、ベオウルフ!本当に強いのは…この俺だ!」
アキレウスはそう言い、勝利宣言をしようとした———その時だった!
「…ぬりぃパンチだなあ?」
「ッ?!」
「パンチっつーのは…こういうもんだろ!」
バキイイイィィィィィッ!
「うぶっ!?」
マウントポジションを取られながらのベオウルフの剛拳がアキレウスの顔面を直撃、そのまま吹き飛ばす!———油断していたアキレウスは、ケージの中を転がりながらも体勢を整えようとするも———
「オラオラァッ!」
「ッ!」
ガシィッ!
べオウルフは突撃!アキレウスと手四つで組み合うと、互いにギリギリと押し合った!
「やったと思ったか、アキレウス!残念だったなあ…ふっ!」
「ちっ…!あれで仕留められねえのか…よ…!」
「はっ!あれくらいでくたばるかよ。さあ、もっと殴って蹴って!楽しもうじゃねえか、あぁ?!」
瞬間。
「———オラァッ!」
「うあっ!?」
互いにて組み、押し合っていたベオウルフの筋肉がアキレウスを押し切る!———アキレウスはバランスを崩し、その体が無防備になったその瞬間!
「オラァァァァァァッ!」
ドッボオオオオォォォォォッ!
「———ッ!がああああっ!」
ベオウルフのボディーブローがアキレウスの腹に食い込む!そして!
「オラオラオラッ!」
ドスゥッ!ドスゥッ!ドッムウウゥッ!
「ぐあ———…ッ!?」
ボディーアッパーの連打!ベオウルフの剛拳がアキレウスの腹をモロに突き上げた!
「っがああああああああああっ!?」
アキレウスはその一撃に足元がふらつく。———だが。
「ふん」
ベオウルフはアキレウスに追撃をすることなく、そのまま一歩、大きく後ろへと下がると———
「はあっ!はあっ!…はあっ!」
「どうした、アキレウス。———随分と苦しそうじゃねえか?」
ベオウルフはくいくいっとアキレウスを挑発。
「く…ぅ…!」
アキレウスは腹を押さえ、ふらふらしながらも———!
「誰が…!苦しそうだっつーの!」
ダンッ!
アキレウスはステップ!前に出ると———!
「うおおおおおおおおっ!」
バスバスッ!バシィィッ!
ワンツーからのミドルキック!———ベオウルフはファイティングポーズも取らず、それを全身で受け止めると。
「…ふん、ぬりいな」
「なっ…」
「始めこそ驚いたが、慣れちまえばこんなもんか」
ベオウルフはアキレウスに3連撃を受けながらも身じろぎ一つせず、ぺっと唾を床に吐き捨てる。そして!
「そろそろ…俺の『本気』を味わってもらおうかぁッ!」
バッキィィィィィィィッ!
「ぐううううううっ!」
ベオウルフはふらつくアキレウスのその足にローキック!強烈な蹴りがアキレウスの軸足を痛めつけ、その動きが止まると———!
「ふっ!はっ!シィッ!」
バスバスッ!バキィィィッ!
「ぐはあっ!」
ワンツーからのアッパー!ベオウルフの剛拳がアキレウスの顔と顎に綺麗に入り———
「オラよ!」
ドスゥゥゥゥゥゥッ!
「ぐうっ!」
続く前蹴り!ベオウルフの足がアキレウスの腹を蹴りつけ吹き飛ばすと———!
ガッシャアァァァンッ!
「ぐあっ…!?」
吹き飛ばされたアキレウスの背中がケージのフェンスを背負った!———その瞬間!
ダンッ!
「ッ!」
ベオウルフは大きく踏み込み、前に出る!アキレウスはとっさにガードを固めようと腕を上げようとした———その時!
「さあ、耐えてみろやぁッ!」
踏み込んだベオウルフの剛拳がうなりを上げ、下から上へと突き上げる!そして!
ドッボオオオオオオオオオオォォォォォォッ!
アキレウスの腹筋を壊すようなベオウルフの剛拳!ボディーアッパーはアキレウスの腹筋を突き上げ、貫くかのようにその体にめり込むと———
「———っがああああああああああああっ!」
アキレウスはがはっ!と、何度目かの血を吐き出した。そして、それと同時。
「あ…あ…!」
アキレウスは目をカッと見開く。そして、ベオウルフをなんとか、にらみつけると———
「…へっ」
ぐっ…ぐぐぐぐっ…!
「が…あっ…!?」
ベオウルフは、抵抗を続けようとするアキレウスの腹筋をさらに突き上げるように拳をねじ込む!みりみり、めりめりとその拳を突き上げ、腹筋を破壊する感触が走ると同時、アキレウスの目はだんだんと、力を失い、そして———
「が…あ…ッ!」
アキレウスは最後、小さく息を吐き出すとガクリ、と力を失った。
「ふん。まあまあ楽しめたな」
ベオウルフは満足そうにそう言うと、拳を引き抜き———
どっさぁぁぁぁぁっ!
完全K.O。腹筋を完全に崩壊させられたアキレウスはもはや、声すらも出せず、仰向けにケージの床へと沈むと、大きく肩で息をするだけでピクリとも動けない。…見事、アキレウスを叩きのめしたベオウルフはにいっと笑みを浮かべながら舌なめずりをすると、倒れたアキレウスの腹を踏みつけた。
「俺の拳の方が一枚上手だったなあ、アキレウス?…また殴り合おうや、てめえならいつでも歓迎するぜ」
ベオウルフはアキレウスを見下ろしながら不敵な笑みを浮かべる。…アキレウスはぼやける意識の中、見下ろすベオウルフと踏まれた、壊された腹筋を感じながら、小さく、呟くのであった。
「次は…ぜってえに負けねえ…今度…沈むのはアンタの方だ…ベオウルフ…!」
【ベオウルフ勝利END:屈強すぎる拳】
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※登場キャラクター 【ベオウルフ】
今作品では「拳が得意」という設定のサーヴァント。原作のサーヴァントをなるべく活かせるように、力に優れなかなかひるまないという特性を持たせてみました。それ故、アキレウスよりも筋肉が育っている。
「殴り合いが大好き」「バーサーカー」という設定より、「コンビネーションを多用するのではなく、一発一発を重視するスタイル」「それでいて、コンビネーションや格闘技術がないわけではない」「突撃からのインファイトが得意」「戦い上手で、喧嘩スタイルの振りをしながら格闘技術も持ち合わせ、虚を突ける」という側面を持たせてみました。