格闘の盛んな都市、”真”王闘市。
その街外れにある大きな廃工場団地は、全国各地からやって来た猛者たちが昼夜問わず激闘を繰り広げる、ストリートファイトの聖地となっていた。
格闘家である俺も、とりあえずここに来れば手頃な対戦相手が見つかるので、時間が空いたときにはよく来ている、お気に入りの対戦スポットの一つだ。
今日もまた結構な数の観衆が見守る中、俺は闘っていた。
相手は俺より一回り体格の大きなマッチョ男。
一発当たると怖そうだが、スピードは大したことがない。楽勝で避けられる。
一方、見た目通り耐久力はかなりあるようで、俺の打撃を数発喰らっても全く効いていないみたいだ。
”あれ”を使うしかないか。
「はあぁー!!」
膠着する試合展開にマッチョ男もそう思ったのか、手に意識を集中させ始めた。
すると、マッチョ男の手が青い光を帯びる。
【闘気】と呼ばれるそれは、体内を流れる気を集め、練り上げてできるもので、身体の様々な部位に宿らせて攻撃力や防御力を上げたり、飛び道具として放ったり、色んな使い方ができる。
そしてそのエネルギーは、半透明の様々な色の光や炎などの形で可視化される。
「いくぞ!必殺、青光拳!」
飛びかかってくるマッチョ男。名前そのままの青い光を纏った拳を打ち込んでくる。
だがそれもまたスピードはほとんど変わらないもので、あっさり躱した。
つもりだったのだが、
「うわっ!?」
ほんの少し擦った腕に痛みが走る。
(攻撃判定が大きくなってるのか!)
これだとマッチョ男の単調で大ぶりな攻撃でも、かなり危険だ。
「ふふっ、効いているようだな…まだまだいくぞ!青光拳!」
優位と悟ったのか、一気に攻め立てようとするマッチョ男。
(だが、それを使えるのはお前だけじゃないぜ)
マッチョ男の拳をギリギリで躱して懐に潜り込むと、右手に闘気を集中させる。
「破砕撃!!」
赤い炎の闘気を纏った拳がガラ空きのマッチョ男の顎を捉えた。
「ぐごおぉぉーーーー!!!」
一撃。
野獣のような叫び声を上げながら吹っ飛んだ巨体は、廃工場の壁に激しく叩きつけられ、その壁を少し抉った。
「あぐぁ…」
白目を剥き、泡を吹いて崩れ落ちるマッチョ男。
その姿に観衆も沸く。
KO!
YOU WIN!!
そんな声が聞こえそうなくらい、清々しいまでのKO勝ちだ。
でもまあ、すこしやりすぎたかな。
「…結構あるな」
賭けで集めた賞金を貰った帰り道。
マッチョ男は(俺は知らなかったが)それなりに名の知れた格闘家だったようで、オッズは俺の方が高かった。
ま、お陰で稼がせてもらえたな。
俺は格闘家で、主にファイトマネーで暮らしている。
とはいってもオフィシャルな格闘大会の賞金だけでは食っていけず、ちょっとイリーガルな地下格闘、賭け試合、格闘ショー…とにかく闘うことに関するいろんなことで食いつないでいた。
幸い格闘の盛んなこの街ではそういう求人に困らないからありがたい限りだ。
「あっ、おじさん!」
帰宅しようとすると、家の前で隣の家の娘、葉月とばったり遭遇する。
それだけ言うと、葉月はさっと自分の家に入った。
慣れた感じのいつもの会話だ。
(全く、休む間もないな…さて、俺も準備して行くか)
とはいえ、さっきまで闘ってたんだし、着替える必要も無いか。
さっき貰ったファイトマネーを自宅の玄関に置くと、俺は近所の神社へと向かった。
to be continued